(114)38 「かのがまもるんだろうね」
いつだって、一緒だって決めてたんだ。
迫りくる、ダークネスの大軍勢。
気がつけば、追い詰められていた。
香音は、愛刀を抱きしめ倒れている里保を背に思う。
今でも里保ちゃんがやられたなんて、信じられない。
うちらの中で最強だった、里保ちゃん。
道重さんがその才能を高く買っていた、里保ちゃん。
その里保ちゃんが、あっさりと死んでしまった。
信じられない。信じたくない。
今だって、いつものように寝起きの悪い不機嫌な顔をして起き上がってくるように見える。
けど現実は非情だ。そうはならなかった、そんな言葉がむなしく響く。
他のみんなは、無事逃げおおせているだろうか。
里保ちゃんとあたしがここで足止め役を買って出てから、あまり時間はたってない。
けど、食い止めてみせる。こいつらだけは、一歩たりとも先には進ませない。
香音が、大きく息を吸った。
同時に、ダークネスの群れが一斉に襲い掛かる。
すると、ぱん、という乾いた音とともに香音が弾け消えた。
違う。香音は、物質透過の能力を極限にまで高めた上で、自らの体を拡散させたのだ。
こうなってしまうと、もはや肉体の再形成は不可能。
だがしかし、香音だったそれは、粒子レベルで敵の体内に入り込む。
筋肉を、内臓を、脳を心臓を侵してゆく。
白目を剥き血を吐き次々倒れてゆくダークネスたち。
その場に立っているものは誰も、いなかった。
あたしは消えても、ずっとみんなのことを見守ってく。だから…
香音が残した最期の思いもまた、風となって消えていった。
投稿日時:2016/02/10(水) 03:35:32.77