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(122)121 「新たな部屋主」1

喫茶リゾナントには、二か所の居住スペースが存在した。 
一つは、かつてのリーダー高橋愛が使用していた部屋。 
そしてもう一つは、田中れいなが使用していたロフト。 

時は流れ、新たな居住者を迎えることとなる。

「ほ、ほんまですか?」 

リゾナンターの新人・尾形春水は、リーダーの譜久村聖の言葉に思わず跳び上がる。 
今まで物置と化していた部屋を片付け、上京してきた春水たちのために貸与する。
それは、様々な事情で実家というものを持たない彼女たちにとって、まさに渡りに舟とも言える提案だった。 

「うん。ただし、道重さんと里保ちゃんが使ってたから一緒にお片付けお願いね」 
「SURE!もちろんやらせてくださいっ!!」 

かつての居住スペースは、先代のリーダーとエースに引き継がれていた。 
そんな彼女たちの部屋だった場所を片づけ、その部屋で暮らすのは誉れの極みである。
野中美希の発音のいい英語も響き渡るわけだ。 

「それじゃうちがロフト使うから、野中ちゃんは部屋のほうでええよ」 
「え、いいのはーちん」 
「道重さんが使ってた部屋もええけど、やっぱ目指すのはエースやからな」 

なるほど、春水には別の目的もあるようだ。 
ただ、美希としても断る理由はない。むしろロフトはおっちょこちょいの彼女だと、慌てた時に転落する恐れもある。

「わかったよ、じゃあそうしよう」 
「話がまとまったところで、行きましょか譜久村さん!」 

勢い勇んで2階の階段へと足を向ける春水だが。 

「その前に、二人に渡さなければならないものがあるの」 

聖の、後ろ手に持っていた紙の手袋。 
気になっていたと言えば嘘ではなかったけれど。


更新日時:2016/05/28(土) 22:05:09



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