(123)88 『時差を超え 大空を超え』2
光井さんと別れた帰り道
さっきの言葉が気になり、ずっと考えてる
「濡れるって、雨が降るって事? でも、今日の降水確率は0%だったんだけどなぁ」
空を見上げても、雲ひとつない青空
「この空で、里保ちゃんが居る場所とも繋がってるんだ」
今頃あっちは夜かな
きっと、ぐっすり眠ってそう
「……ん?」
今、何かが光った様な
ヒュルルルルルルルルル
「ええっ!?」
抜ける様な青空から、水の塊があたしに向かって降って来る
「ちょっえっな何ナニなにっ!?」
見えない位の遠い所から降って来る水とか!
当たったらあたし死ぬんじゃない!?
ヤバイヤバイっ!
ぶつかるーっ!
ピタッ
「……え?」
「何がどうなって……」
浮いたままの水の塊をよく見ると
「これって〝さやまる〟じゃん!」
説明しよう!
〝さやまる〟とは!
里保ちゃんこと、鞘師里保が生み出したオリジナルマスコットキャラクターの事であーるっ!
「宙に浮いた水の塊が〝さやまる〟の形をしてる……まさか!」
「かのんちゃ~ん」
「〝さやまる〟が喋った!?」
って言うか、この声
「里保ちゃん!」
「そっちに〝さやまる〟を送ったんだけど、届いたかな?」
海を越えて!?
どんだけ凄いんだ君は!
「言い忘れてた事があったんだけど、折角だから新しい技を試してみた~」
常任離れし過ぎでしょ!
いや、能力者の時点で離れてるっちゃ離れてるけど
「ちなみに、録音みたいなものだから会話は出来ないよ~」
伝書鳩じゃん!
どっちにしても凄いわ!
って言うか、言い忘れてた事って
「おやすみ~」
「それだけかっ!」
なんて能力の無駄遣いなんだ!
「……ま、嬉しいよ。里保ちゃん、ありがと」
水で出来た〝さやまる〟が、笑った様な気がした
なんとなくだけど
〝さやまる〟越しに見える空は、とても綺麗な色をしている
新しい技を身に付けて、ホントに頑張ってるんだな
あたしだって負けないよ!
ん?
〝さやまる〟の顔が歪んできた様な……
まさか!
バシャンッ!
「冷たっ!」
〝さやまる〟がただの水になって、あたしにかかった
里保ちゃんの能力の効果が切れたんだな
って言うか
「全身ビショビショじゃん……」
ポッココン
通知?
ケータイを確認すると、里保ちゃんからだった
里保ちゃん
( 届いた? )15:08
15:08(届いたよ!)
15:08(てかさやまるかかったわ!)
15:09(全身水浸し!)
里保ちゃん
(あー)15:09
(やっぱり)15:10
15:10(やっぱりって)
15:11(わかってたのか!)
里保ちゃん
(何分くらい?)15:11
15:12(1分くらい)
15:12(服が張り付いて気持ち悪いんだけど)
里保ちゃん
(そっか)15:13
(水も滴る良い女?)15:14
15:14(反省しろよ!)
里保ちゃん
(ごめんなさやし!)15:16
15:17(謝る気ある?)
15:22(でも嬉しかったよ)
里保ちゃん
(ありがと)15:23
15:24(どんどん凄くなって尊敬するよ)
15:31(あたしも頑張るね)
15:42(まさか)
「また寝落ちかーっ!」
作者コメント