リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第13話(ミラー)
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_, ,_
川*’ー’)<<胸の高鳴る方へ
前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第12話
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1216453335/
まとめサイト
PC:http://resonant.pockydiary.net/index.html
携帯:http://resonant.pockydiary.net/index.cgi
掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/
テンプレ>>2-16ぐらいまで
黒服を来てダンス踊ってるのはモーニング戦隊リゾナンターなんだよ
悪と戦う正義のヒーロー女集団なのさ
でも彼女達は普段は普通の社会で人間として暮らしてる
隊長の高橋は普段はジムで筋トレするOL、小春はアイドル、光井は女子高生、田中は孤独な不良
などみんなそれぞれ人間界で普通の生活を送ってんだよ
だけど悪の化身ダークネス邪鬼が街で暴れた時に
みんな集合して黒服を着て踊ってリゾナンター変身するわけよ
それを表現したのがあのPV
210 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2008/04/13(日) 20:08:59.27 0
ガキさん実は敵のスパイっていうのはどうだ?
でも悩んでるんだリゾナンダーたちの優しさに触れて
そして最終回で彼女は決断を迫られることになる・・・
259 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2008/04/13(日) 21:05:08.45 0
リゾナントイエロー(高橋)
リゾナントライトグリーン(新垣)
リゾナントオレンジ(亀井)
リゾナントピンク(道重)
リゾナントブルー(田中)
リゾナントレッド(久住)
リゾナントパープル(光井)
リゾナントインディゴ(ジュンジュン)
リゾナントグリーン(リンリン)
…
9人揃ってモーニング戦隊リゾナンダー
↑このPVから妄想するスレ
高橋:リーダー兼スカウトマン
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新垣: 実は敵のスパイ
しかしリゾナンダーたちと共に過ごすうちその優しさに触れて悩み始めている
ttp://toromoni.mine.nu/up/files/data/17/toro17101.jpg
光井:成績優秀の普通の女子高生だがいじめられっこ
エリートの両親は夜遅くまで帰ってこず家でも孤独
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久住:超人気売れっ子モデル
プライドが高く世の中は全てお金が解決すると言い放つ彼女はワガママな面もあり周囲を騒がせることもしばしば
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田中:幼い頃に事故で両親を亡くして孤児院で育つ
学校にも行かず不良仲間と遊ぶ荒れた毎日を送っていた
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亀井:道重とはとても仲の良い大親友
2人で将来一緒にケーキ屋を経営するという夢がある
しかし生まれつき重度の心臓病を患っていた為病室に閉じこもる日が多かった
道重: 亀井とはとても仲の良い大親友
2人で将来一緒にケーキ屋を経営するという夢がある
大学生
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ジュンジュン・リンリン: ビザが切れたけど日本に滞在したい謎の中国人
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強く・・・なりたいんだろ?
大切な人を守るために・・・
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あいぼん・・・れいなはもう昔とは違うと
守るべきものが見つかったけん
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・・・定期連絡です
特に変わった動きはありません
はい 何か動きがあればすぐ知らせます・・・
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ビザが無いのか
一つだけ日本で仕事を続ける方法がある
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そのハナシ・・・
ノッタアル!
さゆも・・・
絵里も・・・
一緒に戦う・・・!
2人の夢を守るため
同じような夢を持った人たちを守るため・・・
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こんな私でも誰かを救えますか?
ttp://toromoni.mine.nu/up/files/data/17/toro17113.jpg
はあ?
何で小春が見ず知らずの人助けなきゃいけないわけ?
そんなの誰かに任せておけばいいじゃん
必殺!
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ttp://ng2.or.tp/ReinaT/souce/ReinaT_4387.jpg
リゾナントロボ…
発……
ttp://toromoni.mine.nu/up/files/data/15/toro15213.gif
高橋愛:精神感応(リーディング) /瞬間移動(テレポーテーション)/光使い(フォトン・マニピュレート)
新垣里沙:精神干渉(マインドコントロール)
亀井絵里:傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ) /風使い(ウィンド・マニピュレート)
道重さゆみ:治癒能力(ヒーリング)
さえみ(姉人格):物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)
田中れいな:共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)
久住小春:念写能力(ソートグラフィー) /幻術(ハルシネーション)/発電(エレクトロキネシス)
光井愛佳:予知能力(プリコグニション)/心の浄化(ハート・プリフィケイション)
リンリン:念動力(サイコキネシス)/発火能力(パイロキネシス) ※手で掴める物限定
ジュンジュン:念動力(サイコキネシス)/獣化(メタモルフォシス(トゥ・ビーストorパンダ))
ジュンジュン獣化参考画像
http://resonant.pockydiary.net/file/panda.jpg
リゾナントブルーRPG
ttp://www4.uploader.jp/dl/reinachan/reinachan_uljp00256.zip.html
上とは別物
ttp://www4.uploader.jp/dl/reinachan/reinachan_uljp00277.exe.html
リゾナントブルーRPG Ver:0.2
※「RGSS200J.dllが見つかりません」が出たらここからランタイムインストールね
ttp://www.famitsu.com/freegame/rtp/vx_rtp.html
間取り
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/142-1.gif
本日のランチ
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/155-1.jpg
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/156-1.jpg
http://jp.youtube.com/watch?v=pbHlnMj9r1E
リゾナンターEDイメージ(字なし)
http://jp.youtube.com/watch?v=6veKqzAYQI0
リゾナンターEDイメージ(字あり提供入)
http://jp.youtube.com/watch?v=ijT95qkTqfA&NR=1
リゾナンター予告イメージ
http://jp.youtube.com/watch?v=wSVKqpCYrQs
まとめサイトの[検索]で「(1)」とか指定すると、第1話(1スレ目)の作品が投稿日順に並びます(降順)
(投稿日=まとめサイト掲載日時であり、スレ投下日時ではありません)
ただし、次回予告についてはシングルの順序と合わせるために
順番に並ぶように投稿日をいじってあるのでこの限りではありません
このスレに初めて来たから様子がわかんないよ、って人にはイイかも
※時々検索結果に違うスレの作品が混じりますが、本文中に張ったリンク(例:(1)123)を拾ってしまうためです
例えば
・規制食らったので転載して欲しい
・レス数多いから掲載を手伝って欲しい
など
ノ|c| ・e・) < 登場人物の能力やストーリーの背景・設定は作者さんの自由なのだ
ノノ*^ー^) < シリアル路線でもコメディ路線でもお好きなものどうぞ
从*・ 。.・) < AAを使ったものや1レス完結ものでもOKなの
从*´ ヮ`) < 他の作者さんの設定を流用するのもありっちゃ
ノリo´ゥ`リ < 気に入った話の続きや繋ぎの話を書いてみるのもありカナ☆
川=´┴`) < プロットを書いて他の作者さんにストーリーを書いてっておねだりしてもええで
川*^A^) < アーでも書いてくれるかは作者さん次第ヨ
川´・_o・) < ソッカー
君の作品を待ってる
川*’ー’)<下がるスピードが速い・・・ 立てた途端落ちたりしないように気をつけるやよ
_ _ノ
\
│ ^^
^^
oノハヽo プカプカ
从*・ 。.・) 作者さん待ちなのー
( "`U""U")
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
/ 从*- 。.-) ./
./ _/⌒ヽ、_つ/ ~ .γ⌒'ヽ_
/ (_,,.--、__.,ノ / ~ i ミ(二i
./ (_,(_ノ .,/ 丶,,_| |ノ
` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ . r-.! !-、
oノハヽo
从*・ 。.・)=つ≡つ
(っ ≡つ=つ
./ ) ババババ
( / ̄∪
/ヽ /ヽ
':' ゙''" `':,
ミ *・ 。.・ ;,
:; . っ ,つ
`:; ,;' モコッ
`( /'"`∪
今日~明日で第12話をやっつけますぜ
从*・ 。.・) 从*・ 。.・) 从*・ 。.・) (・ 。.・*从 (・ 。.・*从
(∪ つ ( ヽ00) ⊂ ⊃ (つと ) (、vv )
∋8ノノハヽ ノソハヽヽ .γ)ソ癶ヽ 〃ゞヘヾヽ (ノハλd
从*・ 。.・) 从*・ 。.・∩从*・ 。.・) (・ 。.・*从 (・ 。.・*从
(m9 ) ( ノ (ヽ(ヨ)ノ) (つ つ ( ∪)
(_)_) .(_)_) (_)_) (_(_) .(_(_)
うさちゃん戦隊リゾナンターなの!
「はい 13スレ・・突入の情報は本当でした」
「分かりました引き続き・・あっ! ターゲットが接近 通信閉じます」
ttp://toromoni.mine.nu/up/files/data/17/toro17097.jpg
「あーガキさんこんな所に みんな待ってるから早くこっちこっち!!」
ttp://toromoni.mine.nu/up/files/data/17/toro17101.jpg
「う・・うん ・・・みんな・・・」
13話ってすごいね
>>26
まとめ人様、お忙しい中いつもご苦労様です
そして全スレ>>1000を魔女が…。
ストーリーから曲の背景を自分なりに想像して曲を書いてみました
大陸的なメロディと言うかオリエンタルなイメージを出したかったので
それを感じていただけてほっとしています
静の物語なので大仰にならないよう穏やかで郷愁感のある雰囲気
サビ(?)は鼻歌で口ずさめるようなメロディと言うのを意識してます
インスパイアされて楽しくリゾナント出来ましたありがとうございます
素敵な曲ですね
今も聞いてます
胡弓みたいな楽器の音が入る所が好きです
>>44
今日は代々木だね
>>1
いつもいつも乙であります
テンプレさんが立てたこのスレを可能な限りホゼナントするのがすっかり日課になりました
>>26
ついにサボリン返上ですか!
というか休日も返上のご様子で…
本当にいつも乙です
>>34
人材豊富なこのスレですがついに作曲家さんまで降臨するとは…
またインスパイアされる作品がありましたらぜひとも曲を聴かせてください
我らがリゾナンターも所属するワンダ紺
ホゼナ)<…って、作家属性ないしw
あとはお願い
想像してみる
前スレでもやってたみたいだけど、全然参加できなかったので
放映局縁の深いテレ東で、深夜の30分枠、1クール(13回)
リゾナンターが結成される過程は、各メンバーがメーンの回
に回想シーンとして挿入する感じで
最初の2回は、リゾナンター全員の活躍がメーン
3回から10回までは、一人ずつがメーン(ジュンリンは1組ということで
11回でガキさんがダークネスに連れ去られ、12,3回で奪還バトル
圭織は光井メーンの回で出したいけど
娘。の演技力を疑うわけではないけど、ドラマに深みを出す為には
悪役には演技力のある役者さんたちを起用してほしいところでw
OGメンはカメオ出演という線で
原作は、多すぎて悩むけど映像化しやすく、特効のお金が
かからなそうな「風見鶏と夜猫」「朝焼けの街」をベースに
回想シーンは「共鳴トライアングル」のエピソードが使えそう
>>56
ジュンリンにも1回ずつ、メーンの回を作ってやってw
現状ではその辺が目一杯かな
まあ想像だからもっと奮発したらいいとも思うけど
リアリティのある想像ということで
聞かせて……)』のエピソードは使いたいところだね
愛ちゃんの声を電話で聞いて嗚咽するガキさんのカットに、リゾナントブルーの曲が
流れてきたら鳥肌モノだと思う
ガキさんを救いにいく時、れいなは行かないわけだ
从*` ロ´)<裏切りものはゆるせないっちゃ
で、敵のアジトで皆が苦戦してる時、相手を殴り倒すわけだ
川*’ー’)<れいな、あんたガキさんのこと…
从*` ロ´)<許せないから、殴りにきたっちゃ、って
馬鹿だ俺w
そういう流れは自分も好きホゼナント
今日中に完了するといいな☆(集中力的な意味で
もう少しサボってたら、エクサボリンになれたのにw
>>57
光井メーンでは、『名前』のエピソードは使えんかのう
光井を苛めてた少女をガキさんが懲らしめるという
何気に気に入ってるんだけど
いつも乙です
まとめ人さんはこのスレのエンジンです
エクサボリンはまとめの人に失礼だな
せめてペタ サボリンで
『名前』は良い話だけど、連ドラの1エピソードとしては重いかと
光井のエピソードなら『幽霊ビル』の話からの流れで、小春メーン
の『守るべきモノ』へと繋げていくのが、スムーズかと
でも『スカート穿いた王子様』まで盛り込むのは難しい
尺が(ry
川=´┴`)<久住さん、ムチャクチャ言いますね
妄想するなら多額の予算がある設定ですれば良いのにww
でも気持ちはわかります
妄想にはリアリティって重要なファクターだからね
深夜の30分枠からスタートしてジワジワ人気が出てきて
最終回で高視聴率取って、スペシャルが出来て、やっと映画化。
こう考えていかないとリアリティないんですよねww
ガキさんの居場所がわかった。
あたしたちは、仲間を取り返すためにすぐにでも行動しようとしていた。
でも、れいなだけが頑なに拒んだ。
確かに、ひとつずつ判明した事実はあたしたちにとって驚愕の事実。
実は、ダークネスのスパイだった。
あたしたちの行動は、逐一報告されていた。
その上であたしたちの前から姿を消す時、メンバーの記憶を消していた…
はっきり言って「騙されていた」のだから、れいなの気持ちはわからなくはない。
でも、ガキさんが大事な仲間であることは、やっぱり変わりのない事実。
ガキさんが1枚だけ遺していた写真。
リゾナンターのメンバーの中心で笑顔の写真。
一度に蘇ったガキさんとの記憶。ガキさんがいたから、みんなもがんばれた。
良き相談役として、良きお母さんのようなあたたかい眼差しで、みんなと一緒になって…
れーなだって、ガキさんとあんなに仲良かったじゃない…!」
「うるさい!
あんな平気な顔してれーなたち騙しとったなんて腹立つけん!!!!」
エリがれーなを抑えようとするけど、全然耳を貸そうともしない。
「もう間に合わない! 急がんと…」
みっつぃが視た未来。
その時間まで、あとわずか。
「れーな!」
「行かん! れーなは絶対に行かん!」
どうしても聞き入れないれいなを残し、7人で目的地に向かう。
しかし、れいな抜きの戦いは予想以上に苦しかった。
直接の攻撃が出来るメンバーの人数が圧倒的に足りない。
ここに、れいなのあの素早さと武術があれば、どれだけ楽になったか…
そして、さゆの治癒、エリの風の力が、れいなの能力で増幅されていれば…
ガキさんは目の前にいる。
あたしたちが現れたことに驚いて、そして涙を流したガキさん。
『助けて』という心の声が、あたしたちメンバーに届く。
それはあたしが精神感応の能力者だからじゃない。
ガキさんの心の声に「共鳴」しているからだ。
それなのに、こんなところであたしたちは終わっちゃうの…?
「うりゃあああああああああああああああああ!!!!!!」
雄叫びと共に現れ、華麗に舞うように敵を蹴散らす見慣れたシルエット。
怒りに燃えた一人の戦士が、その拳を叩きつける。
「ガキさんを返せええええええええええ!!!!!!!」
れいなの叫びがあたしたちに届く。
きっと、ガキさんにも。
「みんな、もうちょっとだけ頑張ろうか…!」
れいなはあたしたちに目を向けると、右手を高々と突き上げた。
呼応するように腕を突き上げると、まばゆい光が敵をかき消していった……
「でもガキさんにはリゾナンターの心があるんや。
だから、みんなにも心の声が届いたんやよ」
ガキさんは何度も頭を下げた。
でも、心はひとつ。もう離れることはない。
「…悪いのはガキさん…やなくて、そんなことさせるダークネスやけん」
れいなは不機嫌そうな顔で吐き捨てると、ガキさんの目の前に歩み寄る。
そして数秒立ち止まって何かを考えたあと、キッとガキさんを見据えて…
「…でもやっぱ許せんから、ガキさんのこと殴っちゃる!」
れいなが大きく拳を振りかざすから、あたしたちは止めに入ろうと慌てた。
でも、れいなはガキさんの頭を小さく小突いただけだった。
「…ガキさんのバカぁーーーーーーー!!!!」
ガキさんにしがみついて大声を上げて泣くれいなの背中を、
ガキさんもまた泣きながら優しく撫でていた。
あたしたちはそんな二人を、やっぱり笑顔で見つめていた。
作業3分の1くらい終わった時にどうしても>>63を書いてみたくなった
反省はしていない 制作40分くらいか?w
でも、いいもん読ませてもろたわ…まとめだけじゃなくて作品も書けるとか
サボリンの癖にやりおるわ…(褒め言葉です
>>77
ちょっとうるっときました
地上波30分枠の予算があったらBSデジタルで1時間枠やれないかな
そっちのほうが地方も見やすいような気がするし
>>63のレスをしたもんですが、サボリンちゃんは昭和のノリだねえ
自分は設定こそ思いつくものの、話を書いてみても、中々キャラが
動いてくれないので、思い付きをこういう形で具現化していただいて
嬉しいです
しかし結果的にペタサボリンにw
保全人…足りないのは、ビルゲイツだけw
月曜日夜10時に一本問題作投下するのでよろしくお願いします
最近のみなさんの作品はレベルが高すぎて分類が難しいw
こういう熱い話、好き!
「…ガキさんのバカぁーーーーーーー!!!!」
(ノД`)・゜・。
第12話一気に行くよ!
>>50-54 ないやいさんの作品『スパイの憂鬱6』を「番外編」
>>68-70 『新たなる敵、G現る!』を「番外編」
>>224-226 『リゾナントホラー』を「番外編」 ←作品名は「テーマ」と記述ありましたが使ってしまいました
>>268-270 夏がテーマの作品を「番外編」
>>282-297 ないやいさんの作品を「愛ガキ」
>>332 暑い時にしてあげたいこと1レスを「ミニレス館」
>>399-406 ないやいさんの作品を「愛ガキ」
>>423-433 異能力者の話を「MM。」 …愛ガキが登場人物だけどちょっと違う気がして
>>474-480 ないやいさんの作品を「愛ガキ」
>>526-535 海上の里沙奪還編を「MM。」 これもまた愛ガキのようで違いそうなので
>>566-572 『Smile Maker』前半を「愛絵里」
>>585-591 『Smile Maker』後半を「愛絵里」
>>617-623 ないやいさんの作品を「こはジュン(新分類)」
>>637-642 里沙奪還編別視点を「MM。」
>>668-676 れいな編前半を「田中れいな」
>>710-717 愛美貴編を「高橋+6期」 久々にこの分類
>>723-733 れいな能力編を「田中れいな」
>>762 マルシェイラストを「美術館」
>>793 保全みっつぃを「美術館」
>>799-806 ないやいさんみつジュン前編を「みつジュン(新分類)」
>>812-816 ないやいさんみつジュン後編を「みつジュン」
>>832-838 668のれいな編後半を「田中れいな」
>>882-885 ないやいさんリンリン編を「リンリン」
>>934-942 絵里・さゆみ・美貴と能力の話を「6期」
8~9章をくっつけて ということなのでちょっと変更
分類は全て「5期(新分類)」
あと、この作品は前後作にリンクは張りません
理由はめんどi(ry
今のところ5期分類はこれだけだし、まとめサイトの前後作リンクでいけるでしょう
リンク張り作業
・ないやいさんの作品をあれやこれやと
・[MM。](12)423→[Tanaka](12)723→[6th](12)934
・[Niigaki](06)231→[Niigaki](06)423 (やってないことに気づいた
・[Niigaki](06)231→[MM。](12)526 (リゾナント作品
・[Ai-Eri](12)566→[Ai-Eri](12)585
・[Ai-Rena](08)505→[Tanaka](12)668→[Tanaka](12)832
・[Mitsu-Jun](12)799→[Mitsu-Jun](12)812→[Linlin](12)882
作者さんにはご迷惑をおかけいたしました
第13話突入で恒例の「スレdat追加」「現行スレ修正」「過去ログ暫定URL」など完了
>>87
ありがとーございます
ほめたら更新頻度が上がる
かもしれない可能性がなきにしもあらず?
まとめちゃんがサボってるときは裏で作品書いているからだと思ってます
まとめちゃん困らせてごめんなさい
でもきっと今後も困らせると思うのですがその時もよろしくお願いします
能力話ばかり書いている人です(苦笑)
こうしてまとめて頂くと、いろんな作品が出てきましたね。
今回もよろしくお願いします(平伏)
保全に来ただけだから、うん
じゃあおやすみ
すごい量の仕事をこなされたんですね
ご苦労様でした
みんなかっこいいなー
では代々木の集会に行ってきますノシ
黒い衣装は強そうだね
>>106
気を付けて
リゾナンター達と避暑地でデートなどして
気が緩んでるのではないかね
全然勢いが無いではないか
たった今からこのスレはダークネスのものだ
恨むなら自分達を恨むがいい
貴様らの大好きなミティの話でも喰らうがよいわ
383 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2008/07/12(土) 17:17:20.29 0
もう一度里沙に会うため、人工島に乗り込んだ8人のリゾナンター。
しかし8人は敵の策略にはまり、バラバラになってしまう。仲間と合流するには、目の前の相手を倒すしかない!
「わかりますよ?あなたがそんなに冷たい人じゃないってことくらい」
「・・・そんなコミュニケーションいらねっつんだよ!!」(第11話より)
「・・・そんなコミュニケーションいらねっつんだよ!!」
ったく、こいつはどこまで甘い奴なんだ
相対してる敵に言うセリフかよ
さっさと片付けてやるよ、夜更かしは肌に悪いからな
「言うことはそれだけか」
「ふ、藤本さん」
「よせ、その名は捨てた
いまの私は永遠の美の為に闇に魂を売った
氷の魔女、ミティ」
「なぜ、あなたが…」
「なぜダークネスに魂を売り渡したか、って聞きたいのか」
「…」
「そうしたいから、そうした、それだけのことだ
お前は自分たちのことを正義だと信じてるのだろうが、私には私の正義がある
それは誰にも譲れない、私だけの誇りと言ってもいいけどな」
「そ、そんな」
その私の正義を守る為に、私は悪に手を染めた
汚いとかは言いっこなしな
要するにリゾナンターとダークネス、勝った方が、生き残った方が本物の正義ってことだ」
「違います、そんなのは本当の正義じゃない」
「甘いな、亀
もう待った無しだ
無駄だけど、構えは取って置いた方がいいんじゃ無いのか
無防備でも私は行くけどな」
あいつは哀しげに唇を噛み締めると、ファイテイングポーズらしきものを取った
ったく、何てへっぴり腰なんだ
お前、ガキんちょのこと助けに来たんだろう
そんな構えじゃヒラの戦闘員にもやられるぞ
「非情なる氷雪の精霊よ
汝らの怒りを顕し、鋭き槍となり、この者を貫け
フェンリルランサー!!」
ふん、感心にかわしやがった
まあ詠唱してる分、回避する時間もあったわけか、なら
「ぐふっ、うう」
おいおい、鼻血も出てるんじゃないのかこいつ
「相変わらずのぶざまっぷりだな、亀
さっさと立てよ、待っててやるから」
息を荒げながら、足元も覚束ないままどうにか立ってきやがった
ん、目に力は残ってるな
「どうした、無抵抗で終わっちまうのか
お前何かやる事があって、来たんじゃないのか
まったく、あんな裏切り者の為に危ない橋を渡るなんて、どこまで…」
「言わないで、ガキさんのことそれ以上悪く言わないで」
「言ったらどうするんだ
お前の好きなガキさんは薄汚いス、」
凄まじい風の一撃が来た
辛うじてかわしたが、避け切れなかったようで、こめかみの辺りから血が出てるみたいだ
来いよ、今のをもう一発出せればもしかするかもだぜ」
見ただけで、それは無理だとわかった
大事な仲間のことを悪しざまに言われた激情から、かいしんの一撃ってやつを繰り出せたが
その反動からか肩で息をついてる
それでも自分の足で大地を踏みしめてるのは、戦士の矜持か
それとも、それがお前の言う正義の力ってやつか
いいから来いよ
向って来いよ
じゃないと、私は、私は
「うわーっ」
ふらつく亀の元に駆け寄ると、その襟首を掴み拳を叩きつけた
何度も何度も
「何故だ、なぜ向って来ない
そんな弱腰で正義の味方だなんて、笑わせるな
何がリゾナンダーだ、そんなものの為に
「ふ、藤本さ…」
乾いた拍手の音が聞こえた
黒い服を着た没個性な男がそこにいた
防護服らしきものを着用した数人の戦闘員を引き連れて
「何のようだ」
「いやあ、見事なお手並みだと思いましてね
もっとも最後は少々大衆演劇が入ってましたかね」
「ふざけるな、もう戦いは終わった
こいつは戦利品として連れてく」
「まあ従来ならそれでも良いのですがねえ
それは少々レアな能力の持ち主でしてねえ
傷の共有という」
「傷の共有だと」
「ああ、あなたは何度目かの復活で多少記憶が混濁してるのですかねえ
以前資料はお渡しして置きましたが」
「その傷の共有がなんだ」
「興味を持っておられるのですよ、我らの偉大な首魁が」
「何っ」
「現在のこれの力ではせいぜい自分の周囲数メートルぐらいにしか、その影響を及ぼしませんがね
でも我々の技術を注入すれば、数百メートル、数キロ、あるいは世界中の人間と、痛みを共有できる可能性があるのですよ、こ・れ・に・は」
男は手の甲で私が抱えている亀井の頬を軽く叩きながら言った
ああ、それは貴女の昔馴染みのマルシェの研究所とは違ったセクションで実施しますけどね」
「くっ」
傷の共有だって
ああ思い出した
こいつの本来の能力
自分の傷を誰かに移すことも、誰かの傷を自分に移すことも出来る
誰かを倒す為には自分自身を傷つけなければならない負の能力
って、こいつその力を使ってれば、最悪でも相討ちには持ち込めたはずなのに
何故、そうしなかった、なぜ、なぜ
「そろそろそれをお引渡し願えませんか、氷雪の魔女、ミティ様」
「ふふ、傷の共有か
お前はそれが怖くて決着が付くまで、こそこそ隠れてたわけだな」
「ええ、それが私のような管理職の務めだと自負しておりますが、何か」
「あははは、馬鹿だよなこいつは
傷の共有能力を解放すれば、少なくとも私は倒せたかもしれないのに」
「ククク、馬鹿ですよねえ
まあ馬鹿だからこそこのご時勢に正義の味方なんてやってるんでしょうねえ」
「確かに、はははは」
本来没感情な筈の男が私につられたかのように笑ってる
防護服を着けた戦闘員達も
もっともその冷たい目は決して笑ってなかったが
「馬鹿ですよねえ、これ」
いや、馬鹿なのは、馬鹿なのは、馬鹿なのは
「馬鹿だったのは、この私だ!!
無慈悲な氷の女神よ、汝の冷たき口づけでこの者共の息吹を奪え
アイスレクイエム!!」
最兇の氷雪魔法の詠唱と共に、戦闘員達は胸元を押さえて地に倒れ付した
黒い服の男は…立っていた、両手を大げさに上げて
警戒してか幾分の距離を取りながら
「おやミティ様、御乱心ですか」
「いや、あたしは正気だ、まともだけどね」
「まあいいですけどね、どうせこれもこれもこれも大した能力の無い戦闘員ですから」
「お前は仲間をそんなふうに足蹴に出来るのか」
「厭だなあ、こいつらを倒しちゃったのはあなたでしょ、ミ・テ・ィ・様
それにこいつら如きいくらでもスペアのある部品みたいなものですし
それよりも、貴女の事ですよ、ミティ様
今ここで私の前にひれ伏して、許しを乞うならこの事は無かった事にしても良いんですよ」
「何だと」
「まあ貴女にはリゾナンターとの戦いの前線に出ていただいて、データ収集に貢献していただきましたしね」
「おや聡明な貴女なら気付いてると思ったのですがね
私達が貴女に望んだものはリゾナンターを倒すことでなく、彼女達、野放しにしておいた第5世 代以降の能力者達が実戦でどれだけ使えるかという実験台になることですよ」
「ふん、調子のいいことぬかしやがって、まあいい
さっきのあれ、無かった事にするとかいうあれ、願い下げだよ、断る」
言葉の礫をぶつけてやったが、男は何事も無かったかのように肩をすくめて、指を鳴らした
「たった今、我がダークネスが貴女に与えた力、氷雪魔法の行使は剥奪されました
もうお前はただの能無しだよ、藤本」
わたしはさっきから男と対峙しながら意識のレーダーを張り巡らしていた
やつら、各々の敵を倒したリゾナンターがこの回廊に近づいてくるのを
そして、その時は来た
ガラガラッという音と共に、回廊の壁の一部が崩れ、奴らリゾナンターが現れた
その姿は激戦を物語るように傷ついていたが、その眼には正義の光が宿っていた
「絵里ー」
「亀井さん」
「大丈夫か」
口々に叫ぶその姿の方に亀井の身体を突き放した
「ああ、あたしたった今魔女を首になっちゃってね
そいつのこと頼むわ」
「み、み、美貴様」
あはは、最高だよ亀ちゃん
君は最高にドンクサイ奴だったけど、最高にいい奴だよ
お前は皆と行きな
私はいけ好かないこの野郎を食い止めるから
ってまあやられるんだろうけどな普通
こいつビームとか出しそうだし
まあいいや、一蹴り、最後に一蹴り
蹴りがかなわなければ、頭でもいい
私の意志の全てで最後までこいつに立ち向かうよ
まあそれが、私の正義ってやつかな
誰にも屈しない、折れない心
戸惑ってるリゾナンター達と、息も絶え絶えに私に呼びかける亀の方を振り向かずに
私は男との距離を詰めた
もう思い残すことは無い
だって少なくともあいつの、亀の心には私という存在が残っているだろう
それが誰かの心の中で生きる、永遠に生きるってことなんだろう多分
「うおーーーーっ!!」
戦士の咆哮をあげながら私は突進した
以上です
クネス)おい、これでは我がダークネスの為になっておらんではないか
ホゼ)無理です、っていうか昨日嬉しい事があって舞い上がってやらかしました
後悔はしてないよ
今からまたホゼナンダーに戻ります
おのれダークネスめ
おまえらの好きにはさせんぞ、って作品の投下なら歓迎w
今は出先なので、帰ってから読ませてもらいます
バレれば命がないことを知りながら決死のホゼナントをしているやつが・・・
★ ★ ★
薄暗い蛍光灯の下。左手に増えゆくは紫、黄色、緑の斑点
鏡に映るのは、見えない鎖で繋がれた赤い目のうさぎ
7年前、力が萌え出でた
それは人知を超えた、異能だった。
怯えた両親は、自分を闇サイトのオークションに出品する
人身売買サイト ダークネス
お買い得 性別:♀ 年齢:12 能力:治癒 ネーム:ラビット
両親は、私を厄介払いできただけではなく、多額の財を得たことだろう。
私はすぐに落札された。
××製薬―
たしか、そんな名前。
それが、さゆみの檻の名前。
モルモットや、マウス…
その何十匹、何百匹の犠牲の下、新薬は発明される
もし、最初から人間に投与できれば―
どれだけ早く、新薬が開発できるだろう―
それは、実現してはならない研究者の歪んだ信念だった。
しかし、さゆみはその利害に一致する人間だった。
実験の結果を身体で示し、その上、自己治癒によって何度でも再生する。
そして、社会から必要とされていなかった
書き換えられる都合
自分たちの研究で、社会的に価値のない女の子に、生きる意味を与えられる
『彼女は、生きる意味を 社会は、早急な新薬を
私達の行為はなんて素晴らしいことなんだろう』
血走った研究者の欲望が、さゆみを地下深くに軟禁した
今まで様々な企業が、さゆみを奪おうとした。その度に階数は深くなり、監視の目は増えた
今日も、何かの細菌と新しい薬品を腕に注射される。
白かった肌は、実験の度挿される針で少しずつ変色していった。
実験の結果を待つ間、治癒をしてはいけないその付近はいくら力をかけても元には戻らなかった
それを隠すために、ピンクのリボンを巻きつける
それは安らぎであり、また同時に枷だった。
自分を着飾る逃避と、ここから逃げられないという楔。
涙は誰にも見せたくなかった。
涙は結果となって記録されるだけ。
この薬に痛みが伴うという、結果になるだけ。痛みの伴わない新薬の開発に繋がるだけ。
感情は実験の邪魔だった。
もう、諦めた。
一人で生きていくよりは、この中で誰かと共に独りの方がマシだと思おうと。
実験の時以外は普通の生活を約束された。
欲しいものが与えられてた。好きなものが食べられた。
ただ、感情だけが無かった。
その日の深夜。
足音が聞こえ始めた
放送していた新薬が出来たのだろう。実験に時間なんて関係ない。
でもいつもと、違う。奏でる足のリズム。
あんな速さ…他の研究の妨げにならないのか。新人さんなのかもしれない。
最初はさゆみに申し訳なさそうに薬品を打つのに、3ヶ月もすればモノ扱いする。
だとしても、その3ヶ月は、人として接してくれるから…新人は、好きだった
「初めまして」
さゆみとあちらの世界を隔てる、黒い直線の前でもたつくその研究員に、自分から声をかける
どの鍵かわからないのかもしれない。教えてあげようと、檻の前に近付く
「道重さゆみやろ?」
何年ぶりかに呼ばれたその名。そしてその声は、背後からだった。
鉄格子の前でまごついていたはずの研究員は今までさゆみが寝転んでいたベッドに腰掛けている。
差し出された名刺 便利屋 タカハシ アイ
これだけでも、さゆみの思考回路を停止させるのには十分だったのに、
次の言葉が流し込まれる。言葉は空気中でさゆみを待たない
「あんたを自由にする」
走るのだって何年ぶりだったろう。自分の身体を動かして発汗するのは何時以来?
ちゃんと走れてるんだろうか?
ラビットが逃げた 違う、攫われた ○○製薬か 銃は使うな! ラビットを殺すな
紅いサーチライト、蒼いレーザービーム、黄色い閃光
だだだだ、と、お決まりの音が木霊する
「撃たれたら、あああ、危ないんじゃないですか?」
「喋ってる暇あったら、足動かし!」
厳しくそう言いながらも、さゆみの手を離さない。
暇さえあればゲームばかりしていたさゆみにはわかる。
脱出って、地下から地上に向かうのが一番難しい。
さゆみの左上に赤いタイムリミットが浮かんでいる気分だった。
なのに、なんでこんなにさゆみ、わくわくしてるの?
こっから出て、何か未来があるわけではない。
この人になんの力があるのかわからない。
でも、さゆみはこのタカハシさんの手を取った
さゆみよりずっと背が低くて、たぶんさゆみよりずっと軽くて
真っ黒な服 振り乱れた髪 あんまり綺麗じゃない言葉
それでもそう この人は さゆみの王子様だった
―逃避行は、ここまでだった
行き止まり 周囲を見渡す 突破口を見つけるより早く、取り囲まれた
両手を挙げて武器を捨て、さゆみの前に立つタカハシさん
集まるレーダーの光と普通とは思えない、血眼の警備員
その中でもさゆみは怯えなかった。
むしろ、全てのライトに照らされて初めて見たタカハシさんの美しさに息を忘れた
「あーあ。出来れば普通に出たかったんやけどな」
くるりと振り向くと、彼女は小悪魔みたいな微笑を浮かべてさゆみをお姫様抱っこした
嘘。この人のどこに、こんな力が?
「綺麗な目やな」
それは相次ぐ実験で朱に染まってしまった、さゆみの目
「綺麗な肌やな」
それは生まれ持った、さゆみの色
「こっから出ても辛いことはいっぱいある。でも…その、リボンの数はもう、増えんよ」
この手はあんたの我慢の証や…やからもう、自由になってええんよ
「みなさんお見送りご苦労さん」
流れ出す閃光が、彼女に到達するより早く―さゆみたちが、光になった
気がつくと、大きな道路だった。これが高速道路ってやつなのかな
箱の中じゃない、画面からじゃない 大きくさゆみを見下ろすのは、空
眩暈がしそうなほど遠かった もう、戻っては来れないと思っていた
「…んー。終わった。今から帰るわ…」
ピッと電話を切ると、彼女が戻ってきた。
大丈夫なんだろうか。よくはわからないけど、さゆみが入れられてたあの会社…結構大きいし
それに、一体誰がこんなことを依頼したんだろ?
さゆみ、外に出れたこと喜んだけど…他の大きな会社にこれからまた入れられるのかもしれない
「ちゃうよー…うっさかったから。」
王子様は事も無げに言い放った
「あんたの声がうるさかったんやって」
「さゆみの声って、どうやって?」
言ってもないのに。願いなんて捨てたはずなのに。
その人はイライラしながら、ケータイを持った手で後ろ髪をわしゃわしゃ掻いた
「あーしの耳、聞こえるんよ。動物も人間も全部、全部」
特にこの街で、一番大きな想いの声がな。ほんと、うっさい。勘弁して欲しい。
「あんたー助けたら、これで今日からは静かやー。」
そんな理由で?たったそれだけで、さゆみをあんな怖い思いして助けたの?
「他に理由がいるんか?」
きょとんって、まるで当たり前のように言い放つ。
鋭さも甘さも内包したどこか危なげな彼女。威厳ある王ではなかった、まさに王子。
「で。あーしはあんたをこれからどうしたらいい?」
なんか、どっか帰るトコあるんか?そこに送るくらいなら、サービスするわ。
さゆみの家庭の事情を全く調べもせずに、なんてホントに欲の無い証拠だ。
でも結構酷い言葉だと思う。声が聞こえても、空気を読んだ気の聞いた台詞は言えないもんなんですね。
助けてもらっておいて何だけど…ずんずん近付いて、上から見下ろす
「じゃあ、ここに連れてって下さい。」
にっこりスマイルで差し出したのは、彼女から貰った名刺。
「うえ!?えっ!?それは無理やって!もううち居候おるし…」
「行く宛ても無いさゆみをただ自分が寝たいから助けるなんて、酷いと思いません?」
実力の伴わない正義ほど、愚かなものはないと思います、なんて続けたら
王子は口ごもって「確かに…」なんて真剣に考え始めた。
やっぱり…この人、優しすぎるんだ。
ごめんなさい。さゆみ、ただの箱入り娘じゃないんです。
「あーうん…え!?」
けーやくせいりつー なんて大きく喜ぶ
こうしたらあなた、もう断れない。さっきの電話の相手へリダイヤル。事細かに訳を話している
それには気付かないフリして空を眺める。風にそよぐ、ピンクのリボン
「迎えの車が来る。けど…給料とかホントに出せないから」
檻の中では、全てが揃った
檻の外では、何が手に入るかわからない
それでも、檻の中では絶対に手に入らないものが、もうさゆみの手の中にあった
さゆみを檻から出したこと…後悔、させませんから。
この力、あなたや…あなたが認めた人に使うのが、さゆみの今からの自由
「お助け感謝記念で、しばらくはサービスしますよ」
その言葉に彼女は、感情の読み取れない表情でありがと、と囁いた
それが、これから長い闘いを共にする、彼女との出会いだった。
☆ ☆ ☆
>>130-138 保全のくせに長くてすみません
面白かったよー
物語そのもののおもしろさは言うまでもなく
乙です!
>>118
かなり荒っぽいミティ様だけど、なんとなく勢いというか、熱いモノは伝わってきた
>>138
いやこの設定を考え付いた時点で、作者さんの勝ちだと思う
その想像力が羨ましいw
乙でした
さゆが研究所の新人が好きな理由とか本筋に直接関係の無い
細やかな描写が、物語に命を与えてると思った
早速ビルゲイツに知らせます
愛ちゃんの男前っぷりに惚れたw
新番組『アニマル戦隊リゾナンター』の設定考えてみようかな
よろしくお願いしますー
>>130は想像を掻き立てられますね(薄笑
設定もですが、描写に文体、どれをとっても凄く楽しめました。
>>144
何だか面白そうですね、単発で書いてみたい様な気がします(笑)
「ふーん、皆が超能力者という設定やねんのう」
「はい、それと同時に動物の精霊の力を借りてヒロインに変身するという設定です」
「さゆみ、うさちゃんがいい
必殺技はうさちゃんビーム」
「ええ基本的には現在の@の設定をそのまま移行という形でいいと思うのですが、
それだといくつか問題があるんです
まず光井さんのパンダとジュンジュンさんのレッサーパンダとでは、音的にかぶってしまうので
どちらかにポピュラーなパンダになっていただき、もう一人の方は新たに何か別の動物キャラを
受け持っていただきたいと」
「小春ホントはキツネ嫌だなあ」
「絵里はセーラームーンに変身したい」
「あっしはバンビかい、まあかわいいかのう」
「それじゃ一人がかわいそうなの」
「ハイ、リンリンはテディベアプードルがいいデす、バッチリです」
「はいはい、皆勝手に発言しないの
で、二人はどうなの」
「光井、私はどっちデもいいダよ」
「私リゾナントドルフィンになります」
「それはまた飛躍しましたねえ」
光井はニヤッと笑うとおかっぱ頭のカツラを着け、歌いだした
「♪汽車を待つ君の横で僕は~」
「イルカかよ」
「まあわかる人には最初からわかるオチやったのう」
「イルカ違いですがな高橋さん」
美貴様の最期かっこいい!!
>>138
よく思いつくなぁ~こういう話
すごい!
>>146
待たせるねぇ、王子様。
愛ちゃんは縄跳びに入る時i914しか見えなかったw
カッコよかったなぁ
禁断症状が出ました
(崖の上のホゼ)
これはいい亀美貴ですね
リゾナントしてくれてありがとう
自分でも気付かないくらいの
やがてその穴は大きくなった
でもその向こうにあるものが何かは見えなかった
穴はどんどん大きくなった
それでも穴の向こう側は見えなかった
何も見えないのではない 漆黒の闇がずっと見えていたのだ
そう気付いたときにはそれはもう穴ではなくなっていた
闇そのものになっていた
あたしはその闇に飲み込まれた
そして闇そのものになった
保全 SIDE Darkness
戻って来い!
闇なら、あっしも抱えてる。
言葉は少ないのに
何か、闇に蝕まれていく様子が(速度が)リアリティあって怖いですね
ノリo`ロ´リ<愛佳に指一本でも振れてみろっ
雷様おとすぞ!!
( ・е・)ノ<様じゃない
何とか形になりましたので載せさせて下さい
まだ少し手直しをしたい部分がありますので
ないやいさんの後 午前0時ごろを目安にうpしようと思います
よろしくお願いします
待ってました
待ってます
楽しみだ
・そこそこの長さ(14レス
・こんなのガキカメじゃないやい(特に絵里がorz
・多分鬱…ではないはず
・単発作品
以上になりますそれではしばしお付き合い下さい
心弱き者よ、我に身を委ねよ。
さすれば、お前に力を与えてやろう。
さぁ、その手を差し出すがいい。
この手を選んだその時、お前は最強の能力者に生まれ変わるだろう。
―――力が、欲しいのだろう?さぁ、この手を選ぶのだ。
亀井絵里がいなくなった。
手紙もメールも、何一つ手がかりとなるものは残さずに。
失踪する前から何らかの変化があったのなら、皆絶対に気付くことが出来た。
共鳴という得体の知れぬものによって深く繋がれた9人。
その感覚がある限り、どんな些細な変化も見逃すはずがない。
だが、それこそはただの思い上がった感情に過ぎなかったのかもしれないと。
絵里がいなくなった時に、残された8人はそう痛感した。
何も言わずにいなくなられたら、残された人は一体どうしたらいいというのだろう。
呼べど叫べど、応えを返すどころか。
全く聞こえない心の音。
何の手がかりもない人間をひたすら捜し続ける日々に、8人の体力も心もすり減るばかりで。
そんな中でも、ダークネスとの激しい戦いは続いていた。
少しずつ、少しずつ。
戦いの激しさに、徐々に絵里のことを考える余裕がなくなっていく8人。
絵里のことを忘れたわけじゃない、ただただ、皆何も考えられない程疲弊していた。
次にいつ襲撃があるのかと思うと、勝利しても家に帰る足取りは重い。
片や巨大超能力者組織、こっちはそれなりのレベルの能力者であるとはいえ、たった10人に満たない少数組織。
毎日のように戦いが行わる度に、1人また1人と少しずつ怪我の度合いが大きくなっていく。
先週なら傷1つつけられることなく勝てたレベルの能力者に、今日は傷をいくつか付けられた。
傷つく者が増えれば増える程、リゾナンターたった1人の治癒能力者であるさゆみの負担が大きくなる。
このままだと、いずれ大きな怪我をさせられた時にはさゆみの回復が追いつかずに、戦線離脱者が出るに違いない。
ジリジリと追いつめられていっているのが分かるから、皆自然と無口になる。
こんな時だからこそ、心を強く持たないといけないのだが。
それが分かっていても、心の中に生まれる焦燥感は皆を苦しめた。
どうなっていくのか考えたくもないのに、嫌でも意識させられた―――やがてくる終わりの時を。
せめて9人揃っていたら、というのは気休めでしかなかった。
共鳴によって生まれる、火事場の馬鹿力で戦い続けるのはある種自傷行為とも言えることだから。
巨大な力で敵を打ち倒す代償は、気付かないうちに体を侵蝕する。
人が生み出すには大きすぎる力によって、少しずつ自分達の生命力が削り取られていると分かっていても。
闇に迎合してまで生き長らえることに、何の意味があるのか。
そう思ううちは、まだまだダークネスに屈服するわけにはいかない。
折れそうになる心を、必死に奮い立たせる。
―――リゾナンターのサブリーダーである新垣里沙も、折れそうな心と戦うリゾナンターの1人であった。
今日はまだ勝てた、明日もまだいける。
精神力も体力も消耗したが、まだ当分は大丈夫だろう。
問題はこの戦いをもっと長期的な目線で捉えた場合、よい方向に持って行く材料がないことだろうか。
少しでも希望を見つけ出したい、その想いだけが里沙の平静さを保つ唯一の砦であった。
誰か1人でも心が折れれば、それは皆に連鎖する。
そうなったら、組織としてはおしまい。
皆の心のケアをしながら、同時に戦況を分析し今後の戦いに役立てる。
1人でやれること以上のことをやっている気がしなくもないが、それは皆同じ。
1人1人が互いを思いやり、何とかしていこうとしている。
(それにしても、こんな時だっていうのにあのバカ亀は何してるのかな)
絵里が失踪してから3ヶ月、ひょっとしたら激化していく一方の戦いに嫌気がさして出ていったのかもしれない。
元々、戦闘系能力は傷の共有という、回復能力者が隣にいることが前提でないと使いにくい能力を持った絵里。
このままではいずれ自分はリゾナンターにとってお荷物にしかならないと思って姿を消したとしても、
それを責める気には余りなれなかった。
ただ、絵里がいないことは無性に寂しいと想う。
そのふわふわとした空気で、皆を癒していた絵里。
いなくなってから気付く、ムードメーカーがいるのといないのとでは皆の士気が全然違うということを。
絵里が戻ってきたとしても戦況は大きくは変わらない、だが、それでも絵里はリゾナンターに必要な存在なのだ。
そして、気付いたことがもう一つ。
9人揃っていた時と比べると、明らかに今の8人では共鳴で得られる力が弱いのだ。
もちろん、共鳴で得られる力というのは普段の状態からは考えられないくらいの力である。
だが、1人欠けただけで驚くくらいその力が減った。
絵里が帰ってきてくれたら、リゾナンターは本来の共鳴を取り戻せる。
そうすれば、少しは楽に戦い続けることができるはずだ。
だが、それはこちらの一方的な想いであってそれを絵里に押しつけることはできない。
彼女が何故去ったのかは分からないが、戻ってくる気があるのならば呼びかけにだって応えてくれるはずなのだから。
疲れてはいるが、家に着いたら今日の戦いをまとめて分析しなければ。
曲がり角を曲がれば、マンションが見えてくる。
ようやく一息つけると里沙が安堵した瞬間、辺りに満ちる闇の気配。
瞬時に里沙は警戒態勢に入り、敵の姿を探して視線を右に左に散らす。
その姿を見た瞬間、里沙の動きは止まった。
「ガキさん、こんばんわ。
久し振りですけど、元気にしてましたか?」
「…カ、メ?」
「そんな驚いた顔で見なくたっていいじゃないですか。
あれ、ひょっとして絵里が死んだとか思ったりしてました?」
「そんなこと思ってないけど。
ねぇ、これはどういうこと?」
どういうことか分かっていながらも、問いかけてしまうのは。
目にした事実を認めたくないからに他ならない。
闇の力が溢れ、そして目の前には絵里がいる。
他に誰の姿も見えないのに闇の気配がするということは、すなわち。
「どういうことも何も、こういうことです。
力が欲しかったから、闇に手を伸ばした、それだけです」
「そ、んな…」
それは、絵里がダークネスの能力者として生まれ変わったということ。
共鳴で呼びかけても応えを返さないのは、もう絵里を呼ぶ声が聞こえない者に生まれ変わったから。
その事実に、里沙は唇を噛みしめる。
「ガキさん、絵里メチャクチャ強くなったんですよ。
この力があったら、誰にも負けないってくらい」
「それが…あんたの出した答え?
闇に手を染めて力を手に入れて、それで満足?」
「満足してますよ、これだけ強ければ大切な者を守り抜ける。
甘いんですよ、共鳴じゃどうやったって限界があることくらいガキさんも知ってますよね。
でも、この力は違う。
望めば望むだけ強くなれる、この力があれば」
「このバカ!
そんな力手に入れたってしょうがないでしょう!
どんなに強くなったって、そんな力にあたしも…皆も守られたいだなんて思わない。
だから、あたしは前のカメを取り戻す」
宣言して、里沙は自らの力を解き放つ。
いつの間にか、その両腕にはキラリと光るピアノ線。
絵里は鋭い目で睨み付けてくる里沙を見て、フッと鼻で笑ったかと思うと。
服のポケットから取り出した両刃のシースナイフを、迷うことなく己の腕に振り下ろした。
傷の共有を使って攻撃してくるとは思っていなかった里沙は、傷が生まれた腕を掴んで上体を傾けた。
キツく掴んでも溢れてくる血が、その傷の深さを物語っている。
そんな里沙の様子を見て、絵里は微笑みながらナイフを引き抜くと。
今度はそのナイフを太ももへと躊躇することなく一気に振り下ろした。
「あああああ!!!」
「んー、さすがに今のはちょっと痛いかも。
…絵里、痛覚が鈍くなってるんですよ、だからこんな真似をしても殆ど痛みを感じないんです。
おかげで、嫌いだった自分の能力が戦闘に活かせるようになって嬉しいんですけど。
ふふ、何かガキさん蝶々みたいですね、ピンで固定されて動けないって感じで」
妖しい微笑みを絶やすことなく、絵里は地面に膝をつく里沙の姿を見つめる。
その瞳に宿るのは、狂気と愉悦。
片腕からも片足からも血を流しながら、絵里は悠然とした足取りで里沙に近づいてくる。
近づかせないように攻撃をしたくても、痛みがひどくて上手く集中できない里沙。
里沙の前に立った絵里は、ふわっと微笑むと里沙に向かって血の流れ続ける手を翳す。
瞬間、絵里の手から放たれたのは―――鎌鼬。
反射的に無事な方の手でその鎌鼬を受けた里沙は、声にならない悲鳴を上げる。
こんな能力が使えるようになったのかと、里沙は絵里を鋭く睨み付けながら想う。
里沙の鋭い視線を意にも介さず、絵里は妖しく微笑んだまま。
しゃがみこんで里沙の頬に手をかけ、唇が触れそうな位置で言葉を紡ぐ。
ねぇ、ガキさん、絵里と一緒のモノになりましょうよ。
そうしたら、きっとガキさんもどれだけこの力がすごいか分かりますって」
「絶対、嫌。
あたしはそんな力欲しくない」
「んー、ガキさんって本当そういうところ融通きかないっていうか、頑固っていうか。
でも、そういうところ好きですよ」
「ありがとう、ってこの場面で言うと思う?」
「言ってほしかったんですけどね。
で、まだやるつもりですか?
ガキさんのこと好きだから、これ以上はちょっと傷つけたくないんですけど」
そう言って、愛おしそうに里沙を抱きしめる絵里。
以前と変わらない温もりと、攻撃をこれ以上加える気がないという発言。
間違いない、闇に染まったように見えるけれど、絵里の中にはまだリゾナンターとしての魂がある。
―――今なら、絵里を取り戻せる!
絵里が動けないように、痛む腕を気にすることなく里沙は腕を伸ばして絵里を抱きしめ返す。
傷ついた腕で精一杯、キツくキツく抱きしめながら。
里沙は己の持てる力を最大限に放つ。
里沙の持つ能力、マインドコントロール。
里沙の思惑に気付いた絵里が離れようとするより先に、里沙は絵里の意識へと侵入した。
荒廃しきった世界に佇むのは、絵里によく似た姿の女性。
ただ、その女性の瞳は蒼く澄んでいる。
この女性が、絵里の人格に深く侵入し主導権を握っているのか。
ゆっくりと地面に着地しながら、里沙は相手の強さを探る。
人の意識下における戦いならば、リゾナンター最強と言える里沙。
だが、自分の力でこの女性を倒せるのかは全く分からなかった。
「あなたが、絵里の隙をついて絵里を支配した人格ね?」
「隙をつくなんて失礼なことを言う。
絵里が望んだのだ、力が欲しいと。
それを叶えただけなのに、何故そんな目で私を見る?」
「カメの皆を守りたいという純粋な想いにつけこんでおいて、よくそんなこと言えるわね。
カメは確かに力を欲したのかもしれないけれど…断言してもいい。
カメが望んだのは皆を守る為の力。
皆の存在を切り捨て、共鳴の絆を断つことで得られるこんな邪悪な力なんかじゃない」
「何を分かったようなことを。
私には聞こえたぞ、強くなりたいという絵里の叫びが。
共鳴などという不安定なモノに左右されない、強い力が欲しいと」
闇色のローブに身を包む女性は、そう言ってニヤリと笑う。
嫌な微笑みだと反射的に思いながら、里沙はポケットに手を入れてピアノ線を取り出した。
この女性を倒せば絵里を取り戻すことが出来る。
―――負けるわけにはいかない。
自分の意識を半分だけピアノ線に乗せ、自在に操る戦闘術。
ピアノ線は瞬時に女性の手足を拘束し、後は力を入れるだけでトドメを刺せる状態になる。
ピアノ線を操作しながら、里沙は線に力を込めた。
手足をバラバラにされ、女性は力尽きるはずだったのに。
女性はニヤリと笑って、自らの動きを拘束するピアノ線を引きちぎった。
瞬間、里沙は片膝を付く。
自らの意識を半分乗せているピアノ線を引きちぎられたことによって、里沙の意識にダメージが与えられたのだ。
強い、里沙はゆっくりと立ち上がりながらそう想う。
おそらく、この女性は絵里の人格に同調しながら支配することによって、
2人分の力をその身に宿した状態なのだ。
女性1人の力だけならさっきの攻撃で片が付いていたに違いない。
厄介だなと思いながら、里沙は相手の様子を窺う。
「さすがに、マインドコントロールの使い手なだけあって強いね。
だけど、絵里の意識や人格を支配しているのはこの私。
私の世界で私に逆らうのは、無茶を通り越して無謀。
残念だけど、この勝負、私がもらうわ」
「…バカじゃないの?」
「何?」
「完全にあなたが支配仕切れているなら、あたしはここにいることなく死んでいたわ。
だけど、こうしてあたしがここにいるということは、カメを支配仕切れていないということ。
これって、どういうことか分かる?」
里沙の言ったことの意味を女性が知るよりも早く、里沙は声を上げた。
「アホカメ!
聞こえてるんなら、こんな奴じゃなくてあたしに力を貸しなさい!
あんた、後悔してるんでしょ?
後悔してるからあたしの前に現れたんでしょ?
助けるから、絶対にあんたを助けるから。
だから、力を貸して!!!」
その声が辺りに響き渡った瞬間、里沙へと流れ込む温かな力。
リィリィと音を立て、里沙の身から放たれる黄緑色のオーラが深い闇を貫く1本の光の柱と化す。
「馬鹿な…意識下で共鳴出来るなんて…そんなことがあっていいのか!」
「…逆に、意識下だからこそより強く、より激しく共鳴出来るのかもよ?
悪いけど、これで終わりにさせてもらうわ」
「くそ、この世界は私の世界だ、お前なぞにやられて」
女性が全ての言葉を紡ぐより先に、女性の体はバラバラになる。
鮮やかな光を放つ里沙の腕には、いつの間にか新たなピアノ線が巻き付いていた。
女性が狼狽した隙をついて、里沙は先程と同じようにピアノ線による包囲網を展開し。
女性が気付くよりも早く、女性を瞬時に拘束、そしてバラバラにしたのだった。
闇が消えていく。
明るい太陽の光と、見る者を魅了する程の青空が広がり。
そして、里沙の目の前に立つのは、失踪する前と変わらない姿で立つ絵里。
「アホカメ、本当あんたアホだわ。
あんたがいなくなって、皆がどれだけ辛い想いしたか分かってるの?
やっと会えたって思ったら、あんなのに意識乗っ取られてるしさー。
本当、勘弁してよね」
「ごめんなさい、ガキさん。
でも、絵里は力が欲しかったんです。
激しくなっていく戦いで傷を負う皆のことを考えたら。
絵里の力って、ただのお荷物にしかなってないって思ったから」
「荷物になるとかならないとか、そんなこと考えてどうするのよ!
そういう風に皆思ったことなんかただの一度だってないわよ。
…あんなものに手を伸ばすより先に、あんたはすることがあったでしょーが」
言いながら、里沙は絵里に駆け寄ると。
その体をキツくキツく抱きしめる。
おずおずと、絵里が里沙を抱きしめ返そうとした時に、里沙は再び口を開く。
「ちゃんと相談しなさい、そりゃ、あんたの欲しがってる答えを返せるかは分からないよ。
でも、あんたの苦痛を取り除くことなら出来る。
何も言わないでいなくなられるくらいなら、どう言ってあげれば苦痛を取り除いてあげれるのか
悩む方がよっぽど精神的に楽だわ」
「ガキさん、ごめんなさい」
それよりも、帰ったらちゃんと皆に謝ること。
1人で謝るのが怖いなら、あたしも一緒に謝ってあげるからさ」
その声に、ようやく絵里は里沙の体を抱きしめ返すと。
頬に涙を伝わらせながら、ふわっと微笑む。
皆がよく知っている、穏やかな微笑み。
どれだけ抱擁しあっていただろうか。
やがて、里沙は絵里の腕からそっと抜け出すと。
柔らかく微笑んで、帰るねと言った。
その声に、はい、また後でと返して。
里沙がゆっくりと意識から浮上していくのを、絵里は微笑みながら見送った。
「…あー、しんどかった」
言いながら自分の身を起こそうとして、里沙は苦痛に顔をしかめる。
程なく起きあがろうとした絵里もまた、苦痛に顔を歪めて。
お互い視線を合わせて吹き出して、また痛みに顔を歪めて地面を転がりながら。
2人は何を言うこともなく、手を繋ぐ。
伝わり合う温もりに、自然と微笑みを浮かべながら。
ようやく元の9人に戻れる。
そのことが嬉しくて、2人は皆が駆けつけるまでずっと微笑んでいた。
「絵里のアホ、今度こういうことになったら許さんから覚悟しとくがし」
「さゆみに何も言わずにいなくなるとか…絵里、後で説教ね」
「アホやとは思っとったけど、まさかダークネスの手先になってたとか…ありえんと」
「戻ってきたから、まぁ、もういいカナ☆」
「よかったー、ほんまよかったわー」
「亀井サン、皆に心配かケたかラ、バナナ段ボール10箱は買っテもらウ」
「9人揃っタことでスし、これかラ頑張りマしょウ、バッチリデース!」
その言葉達に込められた想いに涙しながら、絵里は小さく微笑む。
ようやく帰って来れた温かい場所、そして温かい仲間達。
先に見える未来が暗いものであったとしても。
それすら変えていけると思える程、皆から伝わる想いは温かくて強い。
忘れてはいけなかったのだ。
強くなることは大切なことかもしれないけれど。
皆を悲しませてまで力を得ようとすることは、愚かなことなのだと。
皆を守りたいという強い想いがあれば、闇に手を伸ばすことなくとも強くなれるのだ。
心に吹く一陣の風にそっと目を伏せて。
本当の強さを探していこう、そう想う絵里の背中を。
―――里沙は微笑みながら、静かに見つめていた。
更新は以上になります
乙です!
リアルタイムで読ませていただきました!
手に汗握る戦闘シーン超面白かったです!
さすがですね!
あと、心が通わないガキカメは読んでいてハラハラさせられました
ガキカメいいわあ
ダークネスサイドに堕ちたリゾナンターを書いてみたくて書いてみた実験作ですが
反応があってホッとしていますw
このスレに最初にこはみつを投下してから今日で丸3ヶ月となりました
初投下でいきなり小春に新しい能力を追加するという暴挙をやらかしたものの
今となってはしっかり受け入れられているようで嬉しい限り
これからも色々書いていきますのでよろしくお願いします
>>181
どんな話だろうと今からwktkしております
楽しみにしてます
3スレ目にて [Tanaka](03)128 の話が上がった後にこういうカキコがありました
> 487 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2008/05/01(木) 02:51:36.62 0
> ミティに殺された吉澤、
>
> ① ダークネスに死体を拾われて復活、中ボスになり襲いかかる。
> ② 猫ボスに拾われ、さゆえりに癒される。ガキさんの苦悩を察知し、
> 組織から離れるように促す。後にミティやチャーミーと対決する。
> ③ 死んで守護霊的な存在になり、おもに愛ちゃんを導く。
>
> こんなのを読みたいです。
この中の③のネタ つまりよっすぃが死んでしまっているという設定を元に
今回の話を書きました
・・・だがしかし愛ちゃんは出てこない罠
それでは 以下本編です
暗い部屋に入ってバッグをそこらに放るなり、倒れこむようにしてベッドへと身を投げ出す。
夜食を摂る気にも風呂に入る気にもなれず、今はただひたすらに
戦闘で疲れた身体を休めたかった。
……もっとも最近の里沙にとっては、夜ごとのわずかな眠りすら
悪夢によって妨げられることもしばしばだったのだが。
「お疲れ」
「ぅえぇ!?」
不意に声を掛けられ、慌ててガバッと身を起こした。
そのまま上半身を声のした方へ向ける。部屋の向こう側にパソコン机があるのだが、
その椅子に一人の女性が座っていた。
亜麻色をしたストレートのショートヘア、スラックスを履いた長い脚を優雅に組み、
男物のジャケットを何気なく着こなしている、その女性。
片肘を突いた上に乗せた頭を少し傾け、こちらへ向けて軽く微笑んで再度口を開いた。
「せめてシャワーくらい浴びた方がいいんじゃないかなぁ、乙女のたしなみとして」
里沙はその姿を認めると、はぁ、と脱力し軽くため息をついた。
「仕方ないじゃん、そろそろガキさんも慣れてよ」
「無理ですよそんなの」
諦めて里沙は寝床から完全に身を起こし、そのままベッドの端に腰かけて彼女の方を向き直った。
「こっちはこれから寝ようとしてたんですけど。
だいたい吉澤さんはいつも出てくるのが突然すぎます」
「いや~何しろ幽霊だからさ、いきなり出てくるのが身上というか」
そう言って彼女――吉澤ひとみは組んでいだ脚をほどき、これ見よがしにブンブンと振ってみせる。
吉澤の脚は膝から下に向かうにつれ段々と色を失って透き通り、くるぶし辺りまで来ると
完全に空気に溶け込んだかのように見えなくなっていた。
その全身もよくよく見れば淡い燐光に包まれており、常夜灯しか点けていないこの部屋の中で、
その体の輪郭は蛍火のように微かな輝きを放っていた。
「ほらあれだ、守護霊みたいなもんだと思ってよ」
守護霊というよりも自縛霊じゃないですか、とつい軽口をたたきかけて、里沙はあわてて言葉を飲み込む。
吉澤の死の原因――藤本美貴、いやミティの裏切り――に里沙は直接絡んでいなかったとはいえ、
自分がダークネスと通じている以上、彼女の死に責任が無いとはとても思えなかったから。
ほぼ即死の状態でリゾナンダーの本拠地に運ばれてきた時そのままの、今の吉澤の服装。
ジャケットの下に着たシャツの胸許があの時のように鮮血に染まっていないことだけが、
里沙にとってはせめてもの慰めだった。
代わりにそう返すとほぅ、というように吉澤が片眉を上げた。
「知ってたんだ」
「愛ちゃん喜んでましたよ。『よしざーさんが夢に出てきてくれた』って」
夢じゃないんだけどなぁ、と吉澤は軽く苦笑いする。
「ま、可愛い後輩たちを草葉の陰から見守るくらいしかできないからね、今となっては。
この足じゃフットサルもできやしないし」
そう言って吉澤は、やれやれ参っちゃうよと大げさに首を振って再度ひとしきり笑った。
里沙はそれには応えずに、そのまま視線を落とす。
押し黙ったまま自分の膝を見つめ――少しして、俯いたままポツリと口を開いた。
「どうして愛ちゃんに言わなかったんですか、私のこと」
笑うのを止め、吉澤は里沙を見つめる。
口許にはまだ笑みを残していたが、そのまなざしは何を考えているのか分からないくらい、
ただ静かな光をたたえていた。
死んでこの世の人間とは異なる存在となった今となっては、全ての真実を吉澤は知っている。
里沙が実は、ダークネスの間諜であるということも。
リゾナンダーの情報を敵に洩らしてる裏切り者、って」
膝に乗せた里沙の手に、思わず力が入る。
「みんなのことが心配なんだったら、どうして黙ってるんですか?」
「……言わないよ、あたしはね。
ガキさんが黙ってるのに、あたしがバラすわけにはいかないじゃない?」
当然のこと、とでもいうような吉澤の口調。
「命令さえあれば、私はいつダークネスのリゾナンダー襲撃を手引きするかもしれないんですよ?
なんでそんな呑気なこと言ってられるんです!?」
覚えず、里沙の口調は強くなる。
顔を上げて真っ向から吉澤を睨みつけた。
「私がリゾナンダーを壊滅させることになってもいいんですか?」
「ガキさんが、そうするのが正しいと考えたのなら」
静かに、だがはっきりと吉澤は宣する。
リゾナンダーの前リーダーとも思えぬその言葉に、里沙は一瞬息を飲んだ。
「本気で、言ってるんですか」
「勿論」
吉澤の真意を、里沙にはその表情から読み取ることができない。
「……じゃあ、何で吉澤さんは私の前にわざわざ何度も姿を見せたりするんです」
気を取り直して里沙は続ける。
「私のこと、憎いんじゃないんですか?さっさと呪い殺すなり何なりすれば、
それで済むじゃないですか。
いい加減にして下さい!私の前になんかもう出てこないで下さいよ!!
そんな暇があるんだったら一思いに私のことを」
「ガキさん」
強い鞭をビシリと鋭く打ち据えたかのような、吉澤の一喝。
瞬時にして里沙は気圧され、そのまま黙りこんだ。
「そんな――」
一転して口調を穏やかにした吉澤に対し、里沙は言葉を詰まらせる。
そんな訳無いじゃないですか、と返そうとし、けれども言葉を続けることが出来なかった。
こんなところで死ぬわけには行かない。自分には果たすべき任務があるのだから。
ダークネスに刃向かう組織リゾナンダーを内側から監視し、メンバーの――ことに高橋愛、i914の――
動向を逐次伝える。
各員の能力、特性、戦闘記録、性格や思考傾向に至るまで、事細かに。
全てはダークネスのため、そうして誰よりも敬愛するあの人の……≪天使≫の二つ名を持つ、あの人のために。
そう信じてきた。いや、それは今でも変わらない筈だ。
そして自分が潜入した、敵対組織リゾナンダー。
集まればいつも賑やかで騒がしい、時にひどく手の掛かる、それでいて敵に対する時には
抜群の団結力をもって戦う、リゾナンダーのメンバー達。
これだけ長いこと一緒にいればさすがにそれなりの情も湧かないでもないが、それはあくまで上辺だけのもの。
彼女らを欺く為の仮初めのものに過ぎない。
そう信じてきた。つい十日ほど前までは。
それによって、里沙は気付かされてしまったのだ。
いつの日かリゾナンダーへの裏切りが知れることによって彼女らに失望され、彼女らに見放されるのを――
彼女らを失うことを自分は恐れている、ということに。
しっかり者のサブリーダー。仲間思いの頼れる良き先輩であり同志。
それらは全て、彼女らを利用するための偽りの姿。
全てはダークネスとしての使命を果たすため。例え何があろうと、彼女達に心を動かされることなどありはしない。
そう思い定めてきた筈だった。
……だがそんな心の仮面は、こんなにもあっけなく外れてしまった。
失いたくないと心の奥底で願ってしまうほどに、いつの間にか自分の中でリゾナンダー達の存在は
大きくなってしまっていたのだろうか?
あの人に――安倍さんに軽蔑され、見捨てられることを恐れるのと同じくらいに。
それとも、それ以上に?
ダークネスの一員となってからずっと慕い憧れてきた、自分にとっては命の恩人にも等しい彼女。
あの人の為ならこの命も最後の血の一滴まで捧げると、裏切り者の汚名だって甘んじて受けると、そう誓ったはずなのに。
どうして今彼女の笑顔を思い浮かべようとすると、そこに愛や他のリゾナンダー達の笑顔まで重なってきてしまうのだろう?
何故自分の気持ちは、こんなにも揺らいでいるのだろうか。
他人の意思すら操りうる力を持っている筈の自分の心が、今わからない。
わからないことが、何よりも恐ろしかった。
ダークネスへの忠誠、安倍さんへの思慕。リゾナンダーへの愛着、共に戦ってきた者たちへの思い。
一体自分は、どれを取ればいい?
使命と絆とは絡み合う鎖となり、幾重にも里沙を縛り苦しめる。
……けれどもその狭間で狂気に堕ちることすら、自分には許されていない。
任務を途中で放棄することは、決してあってはならないのだから。
暗闇の内で絶望の声なき声で叫ぶ中、里沙の心はふと一つの考えに至る。
どちらをも片方を選び取ることが出来ないのなら、せめて。
自らに手を下すことも出来ないのならば――そう、例えば戦闘の中で。
使命を全うして命を落とせるのなら、それがいちばん良いのではないか?
そうすれば自分はもうこれ以上、大きすぎる選択を前に悩まずに済むのだから。
思い至り、里沙は吉澤を哀願の眼差しで見つめる。
生前強大な攻撃の能力を持っていた吉澤に、自分に最後の安楽をもたらしてもらうべく。
一瞬、憐れむような哀しみの表情がその顔をよぎり、それから静かに首を振った。
「今のあたしには、ガキさんをどうこうする力は無いよ。
もしあったとしても、そんなことはしないけど」
「何故、ですか」
何故って、と吉澤は穏やかに微笑みながら応える。あたしはもう、死んでるんだから。
「死んだ人間ていうのは、基本的にこっちの世界とはもう無関係の存在だからさ。
生きてる人間に関わったりとか、ほんとはあんまし出来ないっぽいんだよね」
「でも、吉澤さんは」
「うーん、そうなんだよねぇ。
何でかよく分からないけど、まぁ折角こうやって姿見せれるんだし?
アレだよ、テレビで野球とかサッカーの中継を見てたら、つい声援送ったり野次飛ばしたりしたくなるようなもんでさ。
まったく、さっさと成仏すればいいものをねぇ」
クスリと笑って、吉澤は続けた。
「……といったところで、いつまでこうしていられるのかも分かんないんだけど、さ」
言って吉澤は、椅子に坐ったまま身体をパソコン机の方に向ける。
キーボードの側に置いてあった飲みさしのグラスへ何気なく手を伸ばし掴んだ――正確には、掴もうとした。
吉澤の指はグラスに掛かることなく、そのまますり抜けていく。
その様子を吉澤は、ひどく冷静な眼差しでじっと見つめた。
……それでも、苦しんでる姿を見て何もしないなんて、あたしには出来ない」
そうつぶやいて吉澤は、里沙を振り返った。
「今のあたしには、ガキさんにどうしろなんてことは言えない。
もしガキさんがダークネスに最後まで従うというのなら、それでも構わない。
けれどどうかその決断だけは、ガキさんが自分で納得がいく形で下してほしい。
どんなに辛くても……ガキさんはまだ、自分の道を選択することが出来るんだから」
選択、と里沙はつぶやく。
その選択をせねばならないこと自体が、今の里沙には苦悩の元であったのだけれど。
「たとえどちらを選んでも、ガキさんはその選んだ先の人生を生きることができる。
それが結果的に間違った選択だったとしても、どんなに後悔することになったとしても、
それでもそこからまたやり直すことだってできる。
……あたしはもう、この世界に自分が直接関わることはできない。自分の道を選ぼうにも、もう道は無いんだから。
今のあたしには、みんなのことを見守ることしかできない。
ガキさんのことも、高橋のことも、……美貴のことも」
最後の名を言うときも吉澤の表情はあくまでも穏やかで、自分の命を奪った相手に対する恨みの感情はどこにも見られなかった。
「藤本さんの、ことも?」
ミティという今の名を、里沙も敢えて口にはしなかった。
「彼女が彼女なりに考えて、ダークネスに付くと決めた。
そうするだけの理由が美貴にはあったんだから、あたしはそれを責めはしない」
少し黙った後、吉澤は苦笑めいた表情でボソッと付け加えた。
「――馬鹿だ、とは思うけど」
「……ガキさんは、まだ生きているんだから。自分で決着を付けないうちに、死ぬのはダメだよ。
死んじゃったら何もかも、全部終わっちゃうんだからね」
死んだら全て終わり。月並みな言葉だ。
だが吉澤がその言葉を云う意味を、里沙は理解した気がした。
吉澤は今もまだ、戦っている。
里沙とはまた違った意味で孤独な――そして恐らくは勝ち目の無い、戦い。
「ダークネスに最後まで従うか、リゾナンダーとして戦うか。
最後までよく考えて、自分の心と戦い抜いて、自分で自分の道を切り開きなさい」
分かりました、と里沙は吉澤に頷いてみせた。
リゾナンダーでの吉澤は、普段はおちゃらけているようであってもその実は誰よりも強く、厳しく、そして心優しいリーダーであった。
たとえ敵対する組織に所属していても、そして吉澤が死んだ今となっても、里沙にとっての吉澤はやはり
尊敬すべき先輩、なのかもしれなかった。
ガキさん、お風呂でもシャワーでもいいから行っといでよ」
椅子から立ち上がり、吉澤はそう促した。
「体を温めた方が、よく眠れるよ」
「――ハイ」
思わず素直に返事をしてしまう。
それが、もう二度とその身体が温かくなることの無い人の言葉だったから。
「何なら、背中でも流そうか?」
「……そんなこと言ったって、出来ないじゃないですか吉澤さん」
「あーバレた?」
スポンジ一つ持てないなんて幽霊ってのはホント不便だよなーと、吉澤はケラケラと笑ってみせる。
つられて里沙も、こわばっていた頬がついゆるむのを感じた。
里沙はベッドから立ち上がり、バスタオルと寝間着を取って浴室へと向かった。
その背に掛けられる、吉澤ののどかな声。
「あーそうそう、寝る前にはちゃんと歯ぁ磨けYO!」
「もぅ、分かってますっ!」
里沙は思わず振り返り、そう叫び返した。
――声の先には、空になった椅子だけがぽつんと残されている。
現れたときと同様唐突に、吉澤の姿は消え失せていた。
里沙は少しの間その椅子を見つめ、再度小さくため息をついて一人浴室へ向かった。
シャワーの蛇口をひねり、湯温が上がるまでしばし待つ。
浴槽の底を叩く水の流れを、見るとなく見つめた。
ダークネスのスパイとしての自分。リゾナンダーのサブリーダーとしての自分。
一方と対するとき、もう一方の自分を出すことは出来ない。それは常に隠してないといけない。もう一つの自分を、相手に悟られないように。
両方の自分を出すことが出来る相手が既にこの世の存在ではない吉澤だけであるというのは、何という皮肉だろうか。
……それとも、救いなのだろうか。
気がつくと、浴室には既に湯気が満ちていた。
里沙は着衣を脱いで脱衣所へ放り、そのまま浴槽に入った。
即座に無数の水滴が、里沙の体を包み込む。
その思いがけないほどの温かさに、自分の体が思っていた以上に冷え切っていたことに今更ながら気づかされた。
目を閉じたまま顔を上げて、里沙はシャワーの水勢を強めた。
全ての苦悩と葛藤を、たとえつかの間であっても押し流そうとするかのように。
以上です
なお途中で出てきた小春の幻影の話は [Gaki-Koha](03)425 よりリゾナントさせていただきました
ありがとうございました
作者さんがさるさん食らったようなので代理投下させてもらいました
面白かったです。
このスレの地下に脈々と流れるガキさんの苦悩がしっかり描かれていて切ないです
それにしても2分間隔・10レスでさるさんって厳しいですね・・・
乙です
面白かったです
上手いなぁと思いました
例えば理想、例えば世界。
心理的空間を意味する多義的な其れは、いつしか"具現化"する事を望む。
"再生"と"破壊"という憂き世の迷宮を歩き続け。
蒼き世界へ渇仰した果ての先。
『何してんの?そんな思いつめた顔してぼーっと立っちゃって』
―――『共鳴』とは、『光』にも『闇』にも成りえる奇蹟。
そして同時に、それこそが世界の"抑止力"。
―――"抑止力"は佇み、微笑を浮かべた。
治癒能力(ヒーリング)
身体の持つ自己治癒能力に精神力を掛け合わせて疲労や傷を癒す力。
それは魔法の類にも近い奇跡であり、現代の科学技術でも再現不可能だとされている。
実現不可能な出来事を可能とするのが『魔法』であり
時間と資金をかければ実現できる"結果"では『魔術』だ。
故に魔法という名の奇跡をさす。
ダークネスでさえも物質による変換で再現を可能としているが
機械の演算速度と人間の脳とでは格が違う。
異能力が万物の霊長と呼ばれるヒトの中に溢れる"可能性"であるなら尚更。
そしてこれにはもう一つ、"隠された要素"が在る。
その事を、本人自身はまだ自覚していない。
「…さゆみ達は光を見つけた。かけがえのない光を」
言い放ち、ミティを見据えた。
瞳の中で輝く意志が貫かんとしているように。
「やっと"出てきたな"。シゲさんじゃあ対等に話すのは難しいからね」
「…だからその子を操り、この子を傷つけるようなマネをしたと?」
「そう。アンタは言わばシゲさんの"別世界"だからね。
そこから引きずり出すにはこれが一番効果的だったわけ。
あとアンタには前のお礼が残ってる」
「…最低ですね、アナタは」
「それほどアンタには価値があるって事だよ、"さえみ"さん?」
解離性同一性障害というのがある。
人間は自我を守るために心的外傷を自分とは違う「別の誰か」に
起こったことだとして記憶や意識、知覚などを高度に解離してしまうことがある。
そしてその「誰か」は独立した性質を持ち、さゆみの"世界"で生まれた人格。
―――『破壊』という心理空間から成りえた血縁の無い"姉"として"具現化"した。
物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)
それはまさに物質の消滅を司る破壊の総称。
対象は元素から構成される固体、液体あるいは気体の状態をとる物体。
果てには元素の根源となる素粒子にまで及ぶ。
当然、人体さえも対象内である。
自身で認識できる物質全てを破滅へと導くそれはまさに、『闇』の無限回廊。
世界を分解し消滅させる異能力。
―――全て消えてなくなればいいという願望から生まれた奇蹟の産物である。
「アンタはつまるところシゲさんの『闇』の部分なんだから
その気になれば内側から主人格の世界を潰すことだって出来るでしょ?」
「それをあの子は望んでない」
「シゲさんがじゃなくて、アンタはそう望んでないワケ?独立した存在なら
そう願うことだってあると思うけど?」
「…主人格が無くなればこの世界のバランスが崩れる。
そうなれば遅かれ早かれ、私は消えるわ」
「だからシゲさんを殺せない…と?」
「それもあるけど…」
「けど?」
"さえみ"は何かを思い出したように笑みを浮かべた。
それはあまりにも、小さな光。
小さ過ぎて、最初は全く気にも留めなかった。
だがさゆみの親友である彼女が自身への重みに耐えかねたあの時。
真っ先に気付いてくれたのが彼女だった。
そして、いつも気遣ってくれた仲間が居た。
小さな光はやがて大きなものへと輝きを増し、さゆみ達を導いた。
眩しくて目を閉じたくなるときもあった。
一緒に進むことも億劫になるときもあった。
それでも、いつも隣でその手を握り締めてくれた光が居た。
優しく、暖かく、包み込んでくれる大きな存在が。
「私は見てみたいの。その光の先に何があるのか」
相克し相反する二つの真実。
『闇』と『光』の違い。
自身が『破壊』という闇を持っていたとしても、さゆみは必要としてくれた。
それは諦めなどでも、畏怖でもない。
"姉"として愛してくれたのだ。
―――お姉ちゃん・・・ありがとう・・・
ただ、それだけ。
「『共存』…ね、まぁそっちからしてみれば、私達は『闇』みたいなモノなんだろうな」
「…でも、どこか違う。貴方達には不明瞭な点が多すぎる」
巨大組織ダークネス。その内部はあまりにも異質だ。
統一性の欠片も無い犯罪の数々。
構成員の数さえも不明、首領さえも不明。
しかも決まってリゾナンターの出動範囲内で起こる。
まるでそれは、"リゾナンターの為に"起こしているかのような。
「一番気になったのは、組織の幹部達が元々『M。』であるのにも関わらず
何故仲間を裏切ってまで『闇』に染まったのか」
「なんだ、そこまで分かってるんだ?残念だけど、それに答える気はない。
…元から『闇』なアンタには分かんないよ。人間はそんな簡単なものじゃない」
「えっ?」
ヒュッ。 ドサッ。
「……ぅっ……っ」
「っ…絵里!」
ミティは絵里の服を掴み上げると、"さえみ"の居るゴンドラへと放り投げた。
受け止めた反動で態勢を崩し、強く腰を打ち付ける。
胸の中に居る彼女は微弱な息を吐き、肌の色は真っ青に変色していく。
同じ傷を受けていてもさゆみには治癒能力によって自己回復が早い。
だが対して絵里のダメージはあまりにも深く、それを止める術も彼女には無かった。
「さっさとシゲさんに戻らないと死ぬよ?アンタには『破壊』しか無いんだから」
「…っ、待って!まだ話は…っ!」
「あとここに仕掛けた人避けの結界はあと10分しかもたないから
今の内に降りた方が良いかもね」
「っ、あなたたちのやっている事は決して赦されない。
それを続けていくっていうなら、私も容赦はしない」
「上等、別に赦されたいなんて思ってないから。アンタとは別の意味で気が合いそうだよ」
そう言って、ミティは黒いローブを翻したかと思うと、その姿を消していた。
まるで闇の中に同化したかのようだったが、何かの道具でも使ったのだろう。
同時に、さゆみ達の居るゴンドラが地上の近くへと迫っていることを知り、"さえみ"
は瞬時にさゆみへと戻った。
「…あれ、私……っ!?絵里!」
補足として、解離性同一性障害は一度「誰か」になると、主人格への記憶には残らない。
記憶や意識の喪失が顕著し、高度な同一性の疾患な為に別人格へと移行するからだ。
それは心的外傷の被害を主人格が防ぐための抵抗とも言える。
「…ん、ぁ……さゆ?」
「絵里…良かった……ホントに…」
そこは観覧車からそう遠く離れていない場所にあるベンチ。
ミティの言う結界はその言葉どおり10分後にその機能を停止し、嘘のように人が集まり始めた。
だが傷を治したまでは良かったが、眠ったままの絵里を一人で運ぶのには無理がある。
「!さゆ、傷は…っ!」
「ん、大丈夫。すぐに治したから」
「良かった……ごめんね、さゆ」
「絵里が無事なら良いよ。それに全然悪くないんだから」
「うん……」
「まさかこんな接触方法を取るなんて、さすが行動が大胆というか…」
不意に聞こえたリーダーの声。
見ると、さゆみの隣で頬を掻く愛の姿があった。
「愛ちゃん…なんで…」
「や、まぁ、声が聞こえて、小春の念写で場所を特定して、瞬間移動でダッシュみたいな?」
「アバウト…。でも愛ちゃんが来てくれてホントに良かった…」
ありがとうございます。
そうさゆみは頭を下げ、絵里もそれに習って頭を下げる。
ただ愛は苦笑いを浮かべるだけで、二人の傷があった所をソッと触れる。
「ごめんな…。辛かったやろ…?」
自分がもう少し早く来れていれば。
先程の能天気な声とは違う、あまりにも小さくて壊れてしまいそうなそれ。
さゆみは何か声を掛けようとしたが、その細い指が小さく震えている事に気付く。
心なしか瞳はいっそう輝きを増したようにも思えた。
優しすぎるその心は、今も尚誰かの声を聞いているのだろうか。
それが混同したかのように流れる雫は小さな光のようで。
さゆみは愛の手を掴み、握り締めた。
絵里もまた、もう一つの手を掴んで握り締める。
治癒能力は癒すことであり、また心への同調だ。
二人は『共鳴』する、たった一つの希望へと。
その儚く、脆い光へと少しでも近くに居て上げられるように。
だが、さゆみは気付かない。
優しさが自身を『孤独』へと誘った元凶であることを。
絵里は気付かない。
その『繋がり』を持つことで、更なる"チカラ"を求めることを。
そうして、運命の車輪は回転を始めた。
この世に幾重の絶望があることを知りながら。
書いている方もいつまで続くのだろうという思いで一杯一杯ですorz
>>203
>>217
∑何てハイレベルな物語…脱帽です(滝汗)
ガキカメに吉ガキ…まさか吉澤さんのあの設定を拝見できるとは(涙)
どちらともガキさんの葛藤が垣間見れた気がして楽しかったです。
お疲れ様でした。
乙です
『共鳴』、『光』と『闇』の物語・・・リゾナンターの大きなテーマのひとつですね
作者さんも代理投稿の方も乙でした
葛藤するガキさんの姿がリアルに想像できてちょっと目が潤みました
>>229
これからどうなっていくのか楽しみです
作者さんのペースで頑張って下さい
619 :名無し募集中。。。:2008/05/19(月) 18:01:50.44 0
ダークネスサイドに堕ちたリゾナントオレンジ
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/20/toro20552.jpg
第5話にてこれを貼ったのですが、こんな話が読みたい!という想いで貼ったものでした
実に2ケ月半越しの夢が叶いました!ありがとうございます!
今後ともないやいさんの作品を心待ちにしております
ないやいさんではないですがその画像自分も覚えてます
そして・・・細々と書いております
と期待だけ煽るホゼナント
最初はただただ怖ろしかった
果てしないその昏さが
じわじわと迫ってくるようなその重圧が
だけどあるとき気付いた
闇の持つ優しさに
その包み込むような温かさに
今まで求めても決して得られなかったものが闇にはあった
闇はあたしを救ってくれた
闇はあたしにとって母であり
闇はあたしにとって神であり
闇はあたしにとって・・・あたし自身
保全 SIDE Darkness
とりあえず3レスほど
いい加減タイトル考えよう
時には大人達とすら対等に振る舞っていて。実はその人がそこに来たのはほんの4年前、
その時のあたしと同じ年の頃だと知った時にはとっても驚いたのを今でも覚えてる。
他に身寄りのないあたし達をまるでほんとの妹や弟のように可愛がってくれて、、。
その人が新しい家に引き取られるって聞いた時は自分の事のように嬉しかったけど、
もう会えないと思ったらたまらなく寂しくて。最後の思い出に2人で乗った観覧車でも、
言いたいことは一杯あるのに胸が一杯であんまり喋れなかった。
でも、その後で2人で花火やりながら、何とか話したいことは全部話せたと思う。
最後の日、もしかしたらもうこれっきり会えないかもしれないと思ったし、でもきっと
生きてさえいればいつかまた会えるとも思った。
―――――――――まさか、こんな形で再会するなんて。
「―――やっぱり、れいなだったんだ。」
小さなため息のあと、後藤――g923は呟いた。
「真希姉ぇ、なんで、なんでぇ!」
れいなの叫びが響く。
同時にれいなの心が流れ込んできて、愛は一切を理解した。
れいなが引き取られた養護施設には理由は様々なれど同じように身寄りのない子供達が
何人か兄弟のように暮らしていて、一番上の『姉』が組織を抜け出したg923、―真希―と
名付けられたその人だった。
「喧嘩を教えてくれたおねーちゃん」
あの時は『後藤さん』としか言ってなかったから、れいなもあーしもお互いに同じ人の事を
話してるとは気付かなかったんやろね。
その『姉』が今自分の目の前にいる。
しかもその異形は、明らかに自分達の敵として―――。
「下がっとき、れいな。」
れいなの乱入で少しは余裕が出来た愛は、一歩前に出る。
「あんたじゃ今の後藤さんには勝てん。」
その名前を聞いてれいなも理解する。
先程聞いた、たった一人でアサ=ヤン本部を壊滅させた実力の持ち主。
今では敵となったその人と自分が「どこか似ている」と言われた理由。
戦い方もその他にも沢山、その人から教わったのだ。似ていない筈がない。
「そっか。そう言えば真希姉ぇが引き取られた家、後藤さん家やったと、、。」
語る口調はあくまで冷たく、再会を喜んでいるようではまるでない。
「そうやったんか。それでれいなのこと、、、」愛は先程の会話を反芻する。
そういえばあの時、『田中れいな』について何か言いかけていた気がする。
それにしても相変わらず読めない人だ、と愛は思った。
れいなとの過去は分かったし、それもあってここに現れたのは分かる。
さてそれからどうする?
れいなを(そして自分を)自らの手で始末するのか、それとも捕らえて連れ帰るか。
相変わらず言葉の多い相手ではないし、思考を読みたくても遮られる。
ふとれいなを見れば、こちらは完全に戦意喪失――むしろ茫然自失の方が正しいか。
生き別れになった姉同然の相手が、戦うべき敵として現れたのだから無理もない。
つまり敵がどう動こうが、戦えるのは自分一人である。
もっともどういうつもりであれあまり関係はないとも思う。
れいなはやらせないし、連れて行かせもしない。そう決めていた。
――――いつの間にか雨が降り始めていた。
とりあえずここまで
この先エピローグまでの間がノープランですが、どっちにせよもう大した展開はしないとだけ
盛り上がって来たね!
i914 vs g923 頂上対決の結末が早く知りたい!
保全 SIDE Darkness いいねぇ~
好きだわ
かといって両手に羽持ってあの歌を歌うのもあんまし想像つかないんだけど
覚えていてもらえるだけで嬉しいのに作品まで書いてくださっているとは…
思いっきり期待を煽られてしまいましたw
いつまでもお待ちしています
www
今回と次回はちょっとした幕間みたいなものを。
状況開始は01:25より。
「どうしたのかねー、ここ来ないと調子出ないんだけどなぁオジサン」
『諸般の都合によりしばらく休業致します』
そう掲げられた店先で、常連の客達は溜息混じりに漏らし、次々と去っていった。
喫茶リゾナントはあの日以来休業している。
店主がいなくても店を回すだけのノウハウを店員達は持っていた。
だが、店主の不在とその経緯が彼女達のモチベーションを根こそぎ奪い取っている。
カーテンの締め切られた喫茶店内。
重く垂れ込めた空気からはおよそ、
そこに7人もの十代の少女達がたむろしているという気配は感じられない。
高橋愛と、新垣里沙の離別。
同時に突きつけられた絶対的な壁。
眼前にある峻厳な現実の壁を前に、少女達は活気を完全に失っている。
周囲の同僚達と同様、田中れいなは無数の疑問符を脳裏に浮かべていた。
何故、二人は離れていったのか。
何故、二人がそこまでしたのか。
何故、二人が闇に染まらなければならなかったのか。
答えを欠いた自問自答を繰り返し、彼女の精神は人知れず磨耗していく。
明らかに情報が不足していた。
今まではすべてを高橋愛というリーダー、言い換えれば責任者に預け、そして安寧していた。
歯がゆい。
ぬけぬけとその安寧に身を任せていた自分に。
自らが身を置く現状の認識すら他人に押し付けていた自分に。
田中は胸中で自身を罵倒し、悔やみ、現状をどうすることもできない無力感に苛まれている。
あの日、高橋に張られた左頬が不意に熱を取り戻す。
あれもきっと、自分の無知が招いた愚問だったのだろうと確信している。
そしてあの時、田中は涙した。
浅はかにも高橋の繊細な部分を刺激した自分の愚かさに。
してはいけないことをしたのだという理解はできても、
それ以上の詳細を察することのできない自身の無知に。
「おー。こりゃ、また、随分な…空気、だね」
その声に、全員が精彩を欠いた動作で入口を振り返る。
人影があった。
その人影は現代的なデザインの車椅子に身を預け、
傍らには点滴装置と思しきステンレスの金属棒を携えていた。
薄暗い店内で、しかし田中れいなはハッキリとその人物に既視感を覚えた。
実際にまみえた経験はない。
だが、彼女の写真を前にその人物について語る先輩達の横顔はよく覚えている。
頬は痩せこけ、弛緩した肉体にかつての武勇の面影は少ない。
それでも尚、そこにはかつてカリスマと呼ばれた人物のオーラが充満していた。
後藤真希。
"リゾナンター"達にとっての、生ける伝説がそこにいた。
* * *
後藤真希に纏わる伝説は数多い。
膨張のひどい異界を一撃で粉砕した。
危険度SSクラスの"闇"の軍勢を単身で殲滅した。
敵対組織に囚われた仲間をものの一時間で組織の壊滅を伴い救出してみせた、などなど。
伝説とは言っても、どれも彼女と共に戦場を駆けた先輩達の口から直接聞いた"事実"だった。
どの先輩も共有した時間は決して長くはなかったが、高橋や新垣を含め、
その誰もが彼女の名を口にする時は夢見るような表情を象っていたのを鮮明に覚えている。
戦場の"戦乙女(ワルキューレ)"として名を馳せた歴戦の勇者。
その実物が今、どういう意図でか田中達の眼前に現れていた。
一息一息を区切るような話し方。
それが喉元から伸びるチューブが原因であることも、
チューブの繋がる膝に乗った機械なくして彼女の延命が不可能なことも、
医療に無知な喫茶リゾナントの面々にすら容易く想像できた。
「今日、は、つんく♂さんの、依頼で、来た。
今のみん、なは、情報が、足りなすぎて、混乱、してる、だろうから、って」
つんく♂。
時折現れる"リゾナンター"の雇い主が、おそらくは政府等の大きな機関の所属であることは
田中達にも薄々わかっていることだ。
それらの情報が意図的に伏せられているのもなんとなく認識している。
今までは、知らなくていいことも世の中にはあるのだと納得していた。
だが、今は違う。
知らなくては動けない。
動けなくては高橋や新垣を取り戻せない。
情報が必要だ。
その情報が、後藤真希を介して向こう側からやって来てくれたのなら僥倖としか呼べまい。
でもお願、い。聞いて、欲し、い。それから、何を、するのかは、君らが、決めて」
その言葉に、田中れいなは、他のメンバーと共に、強く強く頷いた。
こちらの反応に後藤真希は満足げに頷いて、
少し息を吐く間を置いてから、ゆっくりと話し始めた。
彼女達を取り巻く状況の真実を。
新垣里沙や紺野あさ美、高橋愛が、凶行に至ったその理由を。
今日は以上で区切りとさせていただきます。
過去話系は話の流れを停滞させやすいので個人的に禁じ手なんですが、
ちょいと動機づけ云々の構成ミスの関係で次回あえて書きます。
お付き合い頂ければ幸いです。では今夜はこれで。
凄く面白そうですね!
期待して待ってます
期待の保全
顕在意識の検閲を突破し、その情景を突如、脳内になだれ込ませる。
ユング
物心ついたときからそれは傍らにあった
どこにいても何をしていてもその存在を感じないことはなかった
部屋で一人のときも 雑踏の中にいるときも
深い孤独に囚われたときも 誰かの前で笑顔のときも
あたしにとってそれは最初の友達であった
対等に会話のできる唯一の親友だった
不思議に思ったこともあった
それが自分の身近に片時も離れずに存在するのは何故かと
他の者の目に映らないのは何故かと
そもそもそれとは何であるのかも分からなかった
だけど やがて知った
それの名が闇であるということを
そしてそれは自分自身に他ならないのだと
あたしは闇
闇から生まれ 闇の中で生きている
あたしは・・・闇
保全 SIDE Darkness
何一つ根拠はないけれどなんとなく感覚的に
哀しみの共鳴
i914の闇
創られた力
破滅の為の力
生きてはいけない
そう思っていた
でもばぁちゃんが
最期に言ってた
"生きろ"って
だからあーし生きるよ
ばぁちゃんの
最期の言葉を守る為
何よりも…
大切な仲間を守る為
あーしが死ぬ時は
みんなを守った時だけ
みんなが平和な日々を
おくれるそんな時まで
それまでは絶対
死なんから…
「御飯小春に全部食べられるっちゃよ!」
「小春モグそんなモグ、に食い意地」
「こぉーら!口に物を入れたまま喋らない」
「久住汚いモグモグ」
「ジュンジュンも人の事言えないの」
「バッチリデース」
「リンリン意味わからへん…」
約束やよ
「あはは!みんなもっと静かに食べれんのか!」
ずっと側にいる
守って守られて
支えて支えられる
大好きな光
蒼き共鳴リゾナントブルー
保全がわりの超短い超駄作
逃げろ!
凄く良い!
感動した!
これ・・・もしかして・・・愛ちゃんが・・・
長編にして欲しいな
カッコイイ
ないやいの本編[Koha-Mitsu](03)888 『守るべきモノ 前編-無垢な温もり-』以降の作品を読みつつ
場合によっては目から汁がでる可能性がありますので何か拭くものを準備した上でマターリお待ち下さい
それは楽しみです
ハンカチを用意して待ちましょう
その時の為にホゼナント
明日が待ち遠しい・・・
【注意】
①ダークネスの方が出ます
②長いので、今宵前半の9レスを投下させて頂きます…
「頼む、許して。許してくれー」
どんな悪人も、死ぬ間際にこう言う。自分の行いは棚に上げて、命乞いをする
あたしはそんな声をなかったことにして、心臓に小さな風穴を開ける
あっけないんだ、人間なんて。
自分がこの命を奪う行為に恍惚を覚えていることに気付く
今まで裏切られてきた、その感情を少し和らげて貰う。この命で。
そして思う、本当は自分が一番汚い醜い人間であると
「任務しゅーりょー。今から帰んね」
どろどろの心に蓋をして今日もイエに帰る
幼い頃から、抑え切れなかった破壊衝動。
自分の意思とは無関係に発動しては、周囲を破壊した。
その時にしか得られない快感と事後の拭い去れない不快感
おまえのなかにはかいぶつがいる
そう言われて肩の荷が下りたの。逆に
これは自分のせいじゃないと思わないとやっていられなかったから。
御祓いしに行こう、その言葉に従う度に殺されかけた
最初は自分の為だと信じていた。
だけど、大きくなるにつれて、その危険の方が両親の願う本題であると気付いた。
逃げ出して、裏の世界に入っても、この衝動は不要な荷物でしかなかった。
今、どういった経緯か正義の味方の真似事をしている。
自分でもわかっているんだ。
正義を振りかざして、自分の破壊衝動を処理していると。
あたしは捕食者で周囲は被食者でしかない。
『お疲れ様ー早く帰っておいでー』
彼女の組織を選んだのは、彼女が強いから。弱いニンゲンといたら、私は全部壊す。
「温かいもの食べたいな。外、雨だから。」
『おっけー。なんかスープにするね。』
そんなあたしがどうしてだろう、その日。
「ねーなっち…」『なによ?』
「ペットってさ、一匹飼うのも二匹飼うのも一緒らしいよ」『何さ?急に』
「一人?ちょっとお茶しない?」
高架橋の下、誰よりも小さくなって消えそうな、光を拾った
「やっと食べたよ。あの子、ごっちんとは違って遠慮深い」
喫茶店の一階のお客は彼女だけ。なんでもこの雨は台風のお子様らしい。
もう、今日は誰も来れそうもない。
「で、どこでひっかけてきたの?あの子」
“どこ”かだけを聞く質問ではないことをあたしは理解する。
どこから来てどこに行くのか。むしろ後者を強く含んだ言葉だ。
「わかんない。でも、食べたら出ていくってさ。」
「そいつぁーだめだよ。だって雨強いし…ね?」
何よりも重みのある「ね」だと思う。
一目見たときからわかった。あの子は何かの能力者。
この世界長いからね。わかっちゃうんだよね。
「部屋はまあ、なんとかなるし。意地でも出て行かないように引き止めてね。」
そう笑顔で言われて、口ごもるあたし。
本来的にこういうことはなっちのほうが向いてると思う。
実際、あたしもそうされたクチだし。
その子がいそいそと出る準備をしたのを見て、
あたしは動いた。
「ありがとうございましたー」
人懐っこい微笑みを浮かべる彼女―高橋愛―は、何故か接客を嫌がった。
でも、厨房で火とか使わせるのもなんか怖くて、コーヒーの淹れ方を教えたら、
一日中コーヒーメーカーの前でこぽこぽコーヒーを作るようになった。
飽きないんだろうか?
シフトはいつも、店長自ら接客、キッチンあたし、コーヒー愛ちゃん。
結構田舎の出身らしい。
なっちも大概だったが、彼女も激しい日本語だった。
そんな彼女が、どうしてこの都会の片隅で独り膝を抱えていたのか。
愛ちゃんは普段リビングにお布団をひいて寝ていたが、
あたしのロフトに上がるのがとても好きだった。
天窓から見える空が好きらしい
濁った空だと思うのに、彼女はそれを愛した。
だから夜、出撃で一人店に残すときは自由に使うことを許可した。
少しでも寂しさが消えるのではないか、そう思ったから。
会合、そう言ってなっちと出て行っていたが、さすがに気付いているんだろうね。
「気をつけて」そう言って店の内鍵を閉める彼女の目尻にはいつも涙が溜まっていた
そんな日々に変化が訪れた。
三人での買出しの帰り、工事現場の横を通ると、大きな爆発音。
「火事だー!」「な、中に人が、まだー」
あたしとなっちは、荷物を愛ちゃんに任せ、現場に向かう。
奥で聞こえる、人々の助けを求める声。
でも、ダメだ、少し入らないとわからないことだが、入り口は完全に塞がれている。
どうすれば良い?時間だけが過ぎていく。
「すんません、荷物。置いてきました。」
その言葉だけ残して、今目の前から消えたのは、愛ちゃんだった
目の前に、一定時間ごとに人間が現れる。
愛ちゃんは何度も消えては人を運び出す。
「お、オレで最後だ。」
もうろうとする意識の中で一人違うプレートを提げた男を運び出したと同時に
建物は再び爆発した。
消防車が到着したのは、その3分後だった。
「うぇほ!げほ!…えほっ」
炭で真っ黒になった愛ちゃんは煙をいくらか吸ってしまったようだ。
あたしたちは彼女を抱えて、店に急いだ。
本当は救急に任せたほうが良いのかもしれない。
でも愛ちゃん自身が、逃げましょう、逃げて下さい、そう言った。
* * * *
「お先でした」
カチャリとバスルームのドアが開いて、愛ちゃんが顔を出す。
綺麗になったのに、完全に浮かない顔。無理も無い、か。
「あの…」
「あー、ダメダメ。絶対に出て行くとかなしよ」
なっちは目の前でパタパタと手を横に振った。
「でも、あーし、あの…」
言葉が出ずに俯く愛ちゃん。
あたしは何も言わず、ソファでクッションを抱いた
「何か、特殊な力があるから、あの日、一人でお外にいたの?」
だいぶ端折った言い方だが、彼女も理解したらしい。
あたしたち異能力者について回る、力の存在からの被害。
「…しゅ、瞬間移動…と、精神…感応…持ってます」
ぽつりぽつり、彼女が過去を話し始めた。
禁じられていた能力の発動を、親友を助けるために破り、
結果手に入れた、故郷での差別と新たな力、精神感応
祖母の死と共に故郷を捨てるも
流れ着いたこの街は彼女が生きるには汚れすぎていた。
いや、精神感応なんて持ってたら、どこだって汚水だ。
生きる為に身体を求められては逃げ、
途方に暮れていたあの日、あたしに出会った。
「あたしたちが能力者だって、わかってたっしょ?」
なっちの優しい声に、愛ちゃんは一度瞳を揺らすと、こくりと頷いた。
それは、何にも知らない、お姫様の終わりの合図。
「あたしたちが、怖い?出て行きたい?」
彼女はふるふると首を横に振る。違う、そうじゃなくて…
いつまでもはっきりしない彼女の両肩を思わず掴む
ビクリと、大きく震えるそれ。ああ、そうか。心…こうやって引っ付いたほうが流れ込むのね。
それで、接客も嫌がった。
「どうしたいの?いってごらん」
「ちょっと、ごっちん」
制止の声も振り切って、あたしは続ける。逃がしたく、ないの。
「ここに、おりたい…」
なにか、そう…虫の羽音のような、小さな小さな声。
零れ落ちた本心が、彼女を締め付ける。
「じゃあ、いたらいいじゃん」
「でも、でもぉ…」
あーし、呪われてる。し、信じれんのやもん。人も自分も
「じゃあ、どうしてここにいるの!」
「やって、やってぇ」
泣き出す彼女を抱きとめる。
呪われた自分と、人は一緒にいてはいけないと理性が叫ぶ
でも、一人でいたくないと、本能が叫ぶ
二つの間で切り裂かれそうな身を必死で抱きとめる彼女
「ここにいる連中はみんな、愛ちゃんと同じ。」
みんな、同じだ。孤独に、勝てない。
だから、一緒にいよう。目を逸らそう。青暗い中に身を隠して…
居場所は、人に何よりの自信を与えるらしい。
愛ちゃんはみるみるうちに接客を覚えた。それは眩しすぎるくらいの笑顔を伴って。
そして、もう一つの顔をも担い始める。
「はい。あーしが、出ます」
彼女は強かった。何よりも抜きん出るはその俊敏性。
私が駆けつけたときにはすでに仕事を終えているほどだった。
あたしはそれを純粋に喜んだ。
あたしの愛ちゃんがこんなにスゴイ子になったぞ、そんな気持ちでいっぱいだった。
でも、それは少しずつ綻び始める。
仲間の誰かが言った。
高橋は自分の呪われた力が人の役に立つとわかって嬉しい、と。
あたしはその意見に何も言わなかった。
認めてしまうのは、嫌だったから。
自分と愛ちゃんの決定的な違いを―
くだらねえことしていないで働こうぜオヤジ
以上前半>>304-312です。後半はまた機を見て…
自分れいなちゃん地下3階へゆく!を書いてる者なんですが、
その続きの前に弄ってなかった伏線があるのでしばらくその回収作業に入りたいと思います
と、これは独り言及び言い訳でした。失礼します
明日電車の中でじっくり読ませていただきますw
乙であります
自分の過去と向き合うれいなの話も好きですが
エース格3人の織り成すハーモニーも、雰囲気があって良いです
どちらの話も続き待っております
好きな世界設定かも
続きも楽しみにしております
人物が徐々に明らかになっていく作りが面白いですね
>だから、一緒にいよう。目を逸らそう。青暗い中に身を隠して…
ここが凄く好きです・・・
起きてホゼナント
なんというか・・・うまいですねえほんと
これがまた作者によって立ち位置も背景も違うのがこのスレらしくて面白い
わたしが依存しているものが闇であるのは分かっている
それがすなわち何を指すのかということも
闇への依存は ある者にとっては安らぎとなるだろう
あるいはそれが偽りの安らぎだと理解していたとしても
だが一度闇に身を任せた者は 誰もがその深みに堕ちてゆく
出口を探そうとするその意志や気力ごと
闇を闇と認識していても していなくても
闇を闇と知っていて踏み込んでも 知らぬ間に踏み込んでも
だからわたしは戻れない
いや 戻る気もない
わたしは望んで闇に染まった
譬え望まずとも結局染まらずにはいられなかっただろうから
それ故わたしは闇になった
それがわたしの目的を果たすに当たって必要なことのすべてだから
保全 SIDE Darkness
そもそも「あたし(わたし)」とは誰なのか、想像するだけで楽しいホゼナント
このシリーズのファンです
ん~深い闇だ・・・
・キャラに感情移入して泣けるタイプの方は何か拭くものをお持ちください(多分大丈夫だとは思いますが
・こんなのリゾナンターじゃないやい
・ごめんね後編「その1」なんだ
以上になりますそれではしばしお付き合いください
そして、もう、どれだけ戻りたいと思ったとしても昨日には戻れない。
朝が来なければいいと、どれだけ願ったことか。
自分の視た未来が当たらなければいいと、どれだけ祈ったことか。
祈りは届かず、願いは叶わず。
朝になったことを告げる燦々とした日差しが差し込む喫茶リゾナント。
一睡することすら出来なかった。
胸を締め付ける悲しみが、ずっと心の中に木霊する。
誰も口を開かない。
否、開けるわけがなかった。
いつか、予知夢で視た未来。
当たって欲しくないとどれだけ思っても、ついにこの時を迎えてしまった。
もう、時計の針は進むことがあっても元に戻ることはない。
ため息すらつけない空気と、胸を締め付ける悲しみが辛くて。
愛佳の頬をまた、新たな涙が伝う。
そして、それは他の皆も同じだった。
この沈黙を打ち破るように最初に口を開いたのは、れいな。
「…どうしたらいいと。
ガキさんがスパイだったなんて…」
「どうするも何も…もう一緒にはいられないよ」
吐き捨てるように言ったのは、怒りながら涙を流す絵里。
その怒りの強さは、里沙を信じ切っていたからこそ。
それが痛いほど分かるから、誰も次の言葉を発することが出来ない。
絵里の言った言葉は、正論でしかなかったから。
スパイである里沙とこれからも行動を共にする理由は、もう何処にもない。
おそらく、もう既に充分すぎるくらいのリゾナンターの情報がダークネスには渡っている。
里沙がいなくなっても、もう手の内は全て知られていると考えてもいい。
一緒にいられないのは、感情的なものでしかなかった。
皆を欺き、ダークネスにとって有益な情報を流し続けた里沙。
―――裏切り者と一緒にいられるような神経は、誰も持ち合わせてはいない。
次に口を開いたのは、泣きすぎて目が真っ赤になっているさゆみだった。
「…一緒にいられないって言うけど、じゃあ、どうするの?
ガキさんを追い出すの?」
その言葉に、愛佳の胸に新たな悲しみが広がる。
昨日まで確かに仲間であった里沙に対して、もうそういう風な言い方をするのか。
胸に氷を押し込められたように、心臓が冷えていくような感覚が愛佳の中に生まれる。
少しずつかもしれないけれど、確かに築き上げてきた絆は。
―――もう、見る影もない。
どんなに信じても、未来は変わらないのか。
やはり、この未来が視えた時に何かをするべきだったのだろうか。
そんな疑問が悲しみと共に、愛佳の心を駆け巡る。
感情のこもらない声をあげたのは、ジュンジュンだった。
だが、その声とは裏腹に頬を伝う涙が痛々しい。
里沙のことを慕っていたジュンジュンにとっても、この現実は大きすぎた。
いつも皆のことをよく見ていて、優しく時に厳しく接していた里沙。
それも、全て自分達を信用させ安心させて自分の任務が遂行できるようにという、偽りの優しさだった。
そう思うからこそ、ジュンジュンの頬を伝う涙は止まらない。
ジュンジュンの言う通り、里沙は自らリゾナンターに戻ることはもうありえないだろう。
リゾナンターは、共鳴という感覚によって繋がれた仲間達。
そして、里沙は…ダークネスのスパイでありながら、何故か共鳴することが出来るという事実。
里沙はもう既に、自分の居場所はなくなったことを誰に聞くまでもなく知っているだろう。
知っていて皆の前に顔を出せるような人ではない、そのくらいは過ごした時間が短い愛佳でも分かることだった。
「リンリン、スパイがいルこト、知っテましタ。
知っテたけド、言エなカっタ。
まだ、そノ時は誰がスパイなノか分かラなかっタから言わナかっタだけだけド。
そレに、信ジたかっタ、心の声が聞コえていルのなラ、きっト気持ち変わルっテ」
いつもより若干拙い感じで、言葉を紡ぐリンリン。
リンリンは愛佳を除いては、一番最初にリゾナンターに裏切り者がいると知ったメンバー。
その悲しみは、愛佳とはまた違った意味で深く重い。
一度は愛佳の言葉に、裏切り者が心を変えてくれると信じたというのに。
深く傷ついて、それでも再び信じた分だけ。
リンリンの悲しみはより強く、自分のみならず他の皆の心をかき乱す。
あーし、れいな達が知るよりも先に、里沙ちゃんがスパイやって気付いてた」
その言葉に、皆一斉に愛の方を向く。
誰も口を開くことが出来ないまま、少しの沈黙が続いて。
愛は再び口を開く。
「れいなに、里沙ちゃんに鍵渡してきてって頼んだ夜。
そん時に聞こえてきた、里沙ちゃんの凄く怒った心の声が。
何であそこまでジュンジュンとリンリンを傷つける必要があるんだって、
そこまでしなくても能力確認の仕事は充分出来るでしょって」
「気付いてたなら、何で言ってくれんかったと!」
「…言えるわけないじゃん。
それに、あーし、信じたかった。
普通に考えたら、怒った声なんかあげる必要がない。
むしろ、ダークネスのスパイなんやから怒るどころかよくやってくれたって言うところやよ。
それなのに、伝わってきた声は凄く怒ってた、あれは、演技なんかじゃない本当の心の声。
ああいう声をあげるってことは、里沙ちゃんの中で何かが変わってきてるのかもしれないって。
完全なスパイだった里沙ちゃんの中で、リゾナンターっていう存在が監視対象から大切な仲間へと
変わってきてるのかもしれない、そう思ったから言わなかった。
責めてくれてええよ、知ってて黙ってたあーしは里沙ちゃんの共犯みたいなもんやし」
涙を流しながらも、淡々と言葉を紡いだ愛に。
誰もまた、何も言えずに時間が過ぎる。
誰にも言うことはないが、愛佳もまた知っていながらその事実を伏せていたという点では愛と同じ。
皆の動揺を考えたら、そして、皆に知れてしまったら居場所を失うことになる里沙の気持ちを考えたら。
何も言えるわけがなかった、それは、知っていた側の一人である愛佳も同じ過ぎるくらい、同じ想いだった。
重苦しい沈黙を切り裂くように、れいな、絵里、さゆみが叫ぶ。
「信じたかったって、そんなの無駄だって何で分からんかったと!」
「ガキさんはダークネスのスパイなんです、敵だと知らなかった時はともかく、
敵と知ってからも信じたいとかそれこそ信じらんない!」
「信じたいからって、そんな理由で黙ってるとかありえない。
それに、ガキさんが心変わりしてリゾナンターの方に味方するって言っても、
さゆみはもう、ガキさんを信用することなんて出来ない。
共鳴することが出来るのにずっとさゆみ達を裏切り続けていたガキさんのこと、
今更どうやって信じればいいっていうんですか!」
言葉の鋭さは、それだけ里沙に対する想いが深いから。
その言葉達を、まるで自分が里沙であるかのように黙って聞いている愛。
愛の心は、泣いているというのにどこまでも静かだった。
何かを決意したかのように、愛の瞳は強く澄んでいる。
「…れいな達の気持ちはよく分かった。
里沙ちゃんともう一緒におれん、そう言うのなら。
あーしは、里沙ちゃんと一緒にリゾナンターを出ていく。
敵を信じたいなんていうリーダーなんかに付いていこうなんて、今更皆も思わんやろ?」
愛の言葉に、皆の間に新たな動揺が広がる。
皆の動揺を受けても尚、愛の目の光はどこまでも強く澄んで、そこに迷いのようなものは一切浮かんでいなかった。
誰かが発言するよりも早く、愛は再び口を開いた。
「…あーしは今でも、里沙ちゃんのこと信じてる。
この声が届いているなら、きっと里沙ちゃんはリゾナンターに戻ってきてくれるって。
でも、皆はもう里沙ちゃんが帰ってきても受け入れんのやろ?
里沙ちゃんのいないリゾナンターは、もう、あーしの大事なリゾナンターじゃない。
あの日里沙ちゃんと出会わんかったら、今のリゾナンターは存在せんかった。」
愛の言葉は、皆の心に深く深く染みこんでいく。
愛と出会った時には、既に愛の隣にいた里沙。
里沙の言葉がなければ、今頃皆それぞれ何をしていただろうか。
里沙がいなくとも、いずれは愛と出会っていたのかもしれない。
だけど、今のように上手くやることが出来たのだろうかと思うと。
否、だろう。
今でこそ頼りがいのあるリーダーになった愛は、出会った頃は口下手で。
喧嘩の仲裁が上手に出来ない愛を見かねて、いつも里沙が間に入ってくれた。
一生懸命説明してくれようとする愛の言葉が分かりにくくて困っていた時、
愛の目を盗んでこっそりと、愛のフォローをしてまわっていた里沙。
「里沙ちゃんと出会って、里沙ちゃんが仲間を探そうって言ってくれたから今がある。
誰が何と言おうと、里沙ちゃんは立派なリゾナンターなんや。
そして、リゾナンターは里沙ちゃんを含めた9人でないとあーしは嫌や。
里沙ちゃんを皆が拒むのなら、あーしはもうここにはおれん」
そう言って、リゾナントの出入り口のドアへと足を向ける愛。
誰も何も言えずにいる状況を打ち破ったのは、それまでずっと黙っていた小春だった。
「待ってください、高橋さん。
あたしも一緒にいきます」
小春の言葉に、再び皆に動揺が走る。
出ていこうとしていた愛も、驚いた表情で小春の方に視線を向けた。
小春は軽く息をついてから、服の袖で涙を拭う。
この瞳を、愛佳はリゾナンターの誰よりも知っている。
いつも愛佳を救ってくれた、凛とした光を放つ瞳。
動揺がある程度落ち着いたのを見計らったかのように、小春は口を開く。
「皆、何も分かってないよ。
新垣さんは確かに、ダークネスのスパイだった。
だけど、そのことは重要なことでも何でもないよ。
皆、新垣さんが変わったみたいな言い方するけど。
変わったのは、スパイであるという事実を知った皆の目線だけで。
新垣さん自身は前と何一つだって変わってなんかいない。」
芸能人の顔を持つ小春だからこそ、言える言葉。
ちょっとでもイメージと変わったことをすると、それだけでファンや世間に色々と言われる職業に就いている小春。
身を持って体感してることだからこそ、小春の言葉は重みがあった。
スパイであることが皆に知られていなかっただけで。
里沙自身は出会った頃から何一つ変わらない、途中からスパイになったのではなく最初からスパイであったのだから。
見る側の視点が変わっただけで、それ自体は何も変わらない。
里沙が皆に向けてきたものの本質は、何一つとして変わらないものなのだ。
「新垣さんはあたしに共鳴って何なのか教えてくれました。
強くなりたいのなら、皆のことをもっと大事にしなさいって言ってくれました。
敵であるあたしに、そんなことを教える必要なんて何処にもないのに。
だから、あたしは新垣さんのことを信じたいって思います。
スパイだとかそういうことを抜きにして、ただの新垣さん自身の心を、
あたしに向けてくれた想いを信じたいって思うから、あたしは高橋さんと一緒に新垣さんのところに行きたい」
あぁ、この人はいとも簡単に皆の悲しみを撃ち抜く。
出会った頃の冷たさを微塵も感じさせない、温かく真っ直ぐな言葉。
事実の重さを知ってなお、こんな風に信じたいと言える小春。
悲しみを乗り越えて、強くなっていこうと思ったその時から。
小春はもう、愛佳が思うよりもずっと先を歩いていたのだ。
悔しいとかそんな感情は浮かばない。
ただただ、その背中に追いつきたい、隣に立てる人間でありたい。
この人と同じくらい、自分は里沙のことを信じることが出来るだろうか。
分からない、分からないけれど。
信じる、ではなくてもいいのだと小春は教えてくれた。
信じたいという気持ち一つで充分なのだと。
信じることは難しいかもしれない、だけど、信じたいと思うことなら出来る。
そして、それこそがいずれは信じると言うことに繋がって、皆を強く結ぶ絆へと変わるのだ。
バラバラになってしまったけれど。
皆の中に少しでも里沙を信じたいという気持ちがあるのなら、まだ幾らでもやり直せる。
スッと立ち上がって、愛佳は息を吸い込む。
「愛佳も、新垣さんのこと信じたいって思う。
せやから、愛佳も高橋さんに付いて行きます。
信じてもまた裏切られるかも分からんけど、それでも新垣さんのこと信じたいって思うから」
愛佳の言葉に、愛の頬から涙が伝う。
そして、まだ結論を出していない五人は。
ジュンジュンとリンリンは視線を合わせて、頷き合うと。
二人は立ち上がって涙を拭い、しっかりとした足取りで愛の側へと歩み寄った。
釈然としない表情を浮かべたままだったが、さゆみと絵里も涙を拭いて立ち上がる。
無言のままだったが、二人の心から伝わってくる声は大きく揺らぎながらも、信じたいという気持ちが確かに生まれていた。
れいなだけが無言のまま、動こうとはしない。
だけど、れいなの心もまたさゆみや絵里と同じように揺らいでいるのが伝わってきて。
七人は静かに、れいなの結論を待つ。
出来るならばれいなも共に来て欲しいという心の声は、耳を塞ぎたくなるくらい大きくれいなの心に届いていた。
どれだけの時間が過ぎたのか。
やがて、れいなは立ち上がって愛の方を見つめて、一つ大きく息を吸い込んだ。
「…皆うるさいと。
れーなも行く、信じるとか信じたいとか今更馬鹿らしいけど。
まだ、ガキさんのこと許せないって思うけど。
れーな、ガキさんに会ってちゃんと話をしたい。
…これじゃ、付いていく理由にならん?」
憎まれ口を叩いていても、れいなの心からは里沙を信じてみたいという声が確かに聞こえるから。
少しずつ、バラバラになっていた心が寄り添い合っていく。
皆の胸から、悲しみがゆっくりと消えていき。
少しずつ、温かな想いが溢れていく。
その心の声の温かさに、皆いつの間にか、ぎこちないながらも微笑んで。
よし、じゃあ里沙ちゃんに会いに行くがし、という愛の言葉に皆一斉に頷き。
そして皆、リゾナントから出ていった。
皆の気配がリゾナントから遠ざかったことを感じながら、里沙は地面へと座り込む。
リゾナントの裏口にある、人気のない駐車場。
病院を抜け出した里沙は、この駐車場で今までの経緯を盗聴器によって全て聞いていたのだった。
使うまいと思っていた盗聴器を使ってしまったことに対する罪悪感は、それ以上に強い感情にかき消される。
最初は心が切り裂かれるような強すぎる痛みに涙を流し。
そして、全てを知りながら黙っていた愛の言葉に涙し。
最後には、盗聴器を使うことなくとも聞こえてくる皆の心の声に涙を流した。
その温かさが痛くて、嬉しくて、でもすごく悲しくて。
溢れてくる涙を止めることが出来ず、声も心の声も必死に殺しながら泣き続ける里沙。
涙を止めることが出来ぬ里沙を嘲笑うかのように、里沙の携帯に一通のメールが届いた。
鈍い動きで携帯を開いて、メールの内容をチェックした里沙は。
今まで必死に殺し続けていた泣き声をついにあげることになる。
―――新垣里沙、リゾナンター離脱まで後15時間25分。
更新は以上になります
近日中にその2を投下したいと思います(多分その2で悲しみの底に辿り着けるはず
近日中が楽しみで仕方ありません!
ないやいさんおつかれさまでした
涙、涙です
早くその2を下さい!
ふっ!俺を泣かせるとは…やるな貴様。・゚・(ノД`)・゚・。
>>304-312の後半を投下します 大方の予測では、7レスです
* * * *
その日、朝から空が不機嫌だった。何か嫌な予感がした。
昔から嫌な予感だけは当たるもので、
店を閉めたその後すぐ、小さな出動要請が鳴り響いた。
「ちっさいですね…反応」
喫茶はもう一つの活動をする上での大切な収入源。
なっちとあたし。明日の仕込み、レジ締め…やらなければならないことは多い。
「あーし、一人で先に行きますよ。」
一人での行動。
確かにあの大きさなら、今の…いや出逢ってすぐの愛ちゃんでもまかせて問題はなかった
なっちに顔を向ける
「愛ちゃんに関するものは、“預かって”ないよ。じゃあ、お願いして良い?」
頑張ります、そう体全体で叫ぶと愛ちゃんは夜に溶けた
その数十分後―あたしが勝手に彼女に組み込んでいた非常ベルが、木霊した
一人急行したアタシの目に飛び込むのは、拘束された、愛ちゃん。
何があって、ああなった?
黒い防護服。見慣れた、否、殺しなれた服―ダークネスの下っ端構成員の証―
その手から伸びる見えない何かが、愛ちゃんの首に巻きついている。
どれも、愛ちゃんを拘束するに足りる力とは思えない
能力者として、何か、特殊な部類なのか?
まぁ、良い。そんなのあたしの前では、関係ない。
「酷い死に方が良い?楽な死に方が良い?」
何も言わないそいつから感じ取れる困惑。
私の名前は随分と知れ渡っているようだ…愉快。
あたしの大切な人を傷付けたらどうなるか、身を持って知るべき。
命を捧げて、この獰猛な魔物に。…今日は…目でいこうか。
―ジャッジメント・アイ―
能力を発動した目で、そいつを捉える。
緑と赤で構成されたあたしの視界の中で、天使と悪魔が動き回る。
あいつの心に流れるのは正義?悪?
悪魔は無残に天使を殺すと、判決が下された
【死刑】
「っがっ…」
胸元を押さえながら苦しむそいつの目には映らない。
アタシの目にだけ映る 地獄の番犬ケルベロス
黒光りするその狂犬は私の審判眼に依拠する、魔獣
形は、あたしが与えた
何か大きな刀のような牙で噛み付き、対象者の内部から命を削る。
あたしが眉間に皺をよせることで、徐々に威力を増す。
どう死にたい?ねぇ、苦しい?
「ごとーさん!もうやめて!」
泣き叫んだのは、愛ちゃん。
甘いね、そんなに人が死ぬのを見たくないの?それじゃ、何も守れない。
「どうして殺しちゃいけないのか、理由を言えるの?
今ここで息の根を止めないと、またどこで何をするかわからない。」
苦しむ戦闘員。優しくいたぶってるから、まだ死なない。酷く楽しい気持ち。
「この子はそんなこと、せええん!」
泣きながら、今度はわざわざあたしの体にしがみ付く。
ああ、そうか、心が漏れ出したのね、首を絞めてたから、あの戦闘員。
死ぬと決まった人間の叫びは、そりゃ苦しいもんでしょう。
死にたくなくて口だけの反省を繰り返す。
可哀想だな、愛ちゃん。そんな声まで聞こえて。
「同情する気持ちはわかる。でもこいつはここで殺さなきゃいけないの」
どうする?止めたいなら、愛ちゃんも…
そんな脅しで、殺しを続ける。
「…良いですよ」
愛ちゃんはアタシから離れると、審判眼の照準に飛び込む。
バ…そんなことしたら…
再び現れる、天使と悪魔。
結果は目に見えてる。…この裁判に無罪は存在しないから。
ケルベロスは、噛み付いていた獲物から一度身を離し、
新たな獲物―愛ちゃんにも牙を立てようと歩み寄る。
なんで、なんで。敵に?しかもあなたを殺そうとした、敵に。
この眼の仕組みを知る愛ちゃんは静かに目を閉じて、背筋を伸ばした。
そこに食らいつく、狂犬。
「ごとーさんも、ホントは思ってる!
人なんて殺したくないって、そう思ってる!」
痛みに震える体と、確固たる精神。
ダメだ、この子を殺しちゃいけない。本能がそう叫んだ。
アタシは踏ん張って、眼を閉じようとする。
殺しの中断。こんなことしたことない。視界が歪む。どうして、あたしがこんなこと…
無理矢理に瞼を下ろした。眼球の痛みにアタシは声を上げ、崩れる。
瞼が開かない。そんなあたしに駆け寄ってくるのは、愛ちゃん。
「ごとーさん!ごとーさん!!」
見えなくてもわかる、彼女はアタシの為に泣いている。
理不尽。不可解。この子も、アタシも。
気配だけで、さっきの敵もよろよろと立ったことがわかった
「逃がしてあげる、でもこんなことをするのは、今日限り。」
闇の世界の住人失格の大きな足音を立てて、逃げていく。
真っ暗な世界で、泣き続ける愛ちゃんの声だけが、光の帯のように繋がって、回る。
次に目が開いた時、愛ちゃんは、アタシにしがみ付きながら泣き寝入っていた。
あたしの目からは、一筋の赤い液体。
聞きたくはない。
でもきっと、この自分の殺しの力を恨んできたアタシの心は
胸の中の彼女に届いてしまってるのだろう。
正義の中に身を置いたつもりはない。
人の命を裁くことでしか、アタシはアタシの存在理由を見出せない。
でも、きっといつか、それを否定される。
それは、彼女が次に目を覚ました時、ほんの一瞬先かもしれない。
後藤さんは、間違ってます
それを救いと言うとしても、あたしには明るすぎた。
あたしは闇の中にいすぎた。ただ隠れていたかった。
不意に訪れたならば受け入れたかもしれない。
でもこの子の側にいることは、見えない時限爆弾を抱えながら生きていくようなものだ。
臆病者と罵られても…耐えられない、そう思った。
腕の中のこの子を拾った あの日と同じ、空が泣く、今日
アタシはロフトとアタシの飼い主ををこの子に託して、
再び、独り当ても無い闇の世界の住人に戻った。
ばいばい、アタシの最初で最後のペット
これからはなっちの言う事よく聞いてね
アタシと違って、あなたは良い子のはず。
次は、敵になってても、アタシは容赦しない
だから、 アタシを 助けてよ。
以上後半>>360-366です
感想ありがとうございました。励みになります。
まとめちゃん
作品を納めて頂く際、前半と一つにしてほりこんで頂けると幸いです
いつもありがとうございます。お世話になります
高橋さんの優しさは時に残酷ですね
乙です
愛ちゃんの光が眩し過ぎる人もいるのかもねえ
後藤さんの能力がカッコ良かったw
カッコイイ!
ごとーさんのDNAに組み込まれたような根深い闇…
でも心の深層は相反する思いに引き裂かれている…
それを読み取る高橋。
最期の一文が、めちゃくちゃかっこよかった!
後藤さんはこうするしかなかったでしょうね・・・
やがて虎になり
凶暴な牙を携えて
いつか、目の前に現れるのを待ってる
最期の言葉・・・痺れました
闇は何にも染められない
全てを逆に塗りつぶす
闇は何にも乱されない
いつでも静かにそこにある
闇は殊更美しい
触れるものを魅了する
闇は殊更頼もしい
縋るものを受け入れる
闇は殊更怖ろしい
私は私が・・・怖ろしい
保全 SIDE Darkness
今の地震でふと思いついたので…
四川大地震のことがあったもんね
ありがとう
ぜんぜ
ん 勢いが落ちないね
1年以上続きそうだねこのスレ
くる者拒まず
ねる者追わずって感じなとこが
すきだなあ
ゾッコン
な
んて
たぶん おれ
1人
川*^A^)<…
これからどうなるのという人へ一言だけ
―――もう既に決まっている未来、多分あなたはもう見えているんじゃない?
脳内でカオリンの声にでも変換しておいてください(逃走
リンリンが可哀相だろw
ここにリンリン好きがいるので2人だな…w
闇の貪欲さに恐ろしくなってきた
ゾンビネタやよぉ~
||c| ・e・)|<ちょwww愛ちゃん よりによってw
川*’ー’)<一応断っとくよ
ホラーやよ、怖い人は見ん方がいいよ
||c| ・e・)|<書いてる人間にそんな筆力ないんだけどね
川*’ー’)<ホラーが厭やったらちゃんとした作品投下するがし
市街地で発生した市民のゾンビ化現象
緊急出動したリゾナンターだが、ゾンビの余りの多さに苦戦し、
ショッピングセンターに追い詰められた
ノノ*^ー^)<私のウインドカッターで切り裂いてやりましょう
川*^A^) <燃やすノが一番デす、バッチリです
川*’ー’)<皆待って。あのゾンビは普通の人たちがダークネスの手によってゾンビ化させられた もの
傷つけるようなことはしたらあかっ!痛ぅ
川´・_o・)<高橋、顔から血が出てるダよ
川*’ー’)<……あひゃひゃひゃ、全部やっつけてやるやよ
||c| ・e・)|<愛ちゃん、ってダメだw
暴走してi914モードになってるし
川*’ー’)<終わるよ、落ちたらまた来るよ
かなーりサボっていたんですが今日~明日でここまでの分はなんとかしようかな
なんて思ったりする熱帯夜
あっちぃねみんな
再登板やよ
ゾンビの攻撃で出血し、逆上した高橋
ガキさんの制止も聞かず、光の矢で攻撃を加えていく
川*’ー’)<はあはあ、まだやよ
まだまだ動いてるやよ
川=´┴`)<光の矢でだいぶ数は減りましたなあ
でもリーダーの体力も限界に近づいてます
从*・ 。.・)<私にいい考えがあるの
アンデッドには私の治癒能力が有効だと思うの
从*` ロ´)<わかった、私のアンプリファイヤでさゆの能力を増幅するっちゃ
数分後、治癒効果で動きの活発化したゾンビ軍団の姿がそこにあった
川*’ー’)<続かんよ~
1時に投下させてもらいます
現行スレ>>337-347を読みつつ起きている方はまったりお待ち下さい
元気付けてどうするw
注意事項は>>336と殆ど変わらず
その2を複数回に分けての分割更新となります
切りのいいところで切るようにしているつもりですが悶々とする可能性は非常に高いですごめんなさい
後推敲は殆どしておりませんので誤字等あるかと思いますが見逃してくださいorz
それではしばしお付き合いください
その番号は見慣れないものであったものの、何故か取らなければならない気がして。
立ち止まって、愛は携帯の通話ボタンを押す。
「もしもし」
「高橋さんですか、私朝日病院の看護師をしております○○です」
「え、あ、はい、お世話になっております」
この看護師さんには申し訳ないことをしたなと、昨夜の出来事を思い返しながら愛は苦笑いする。
愛の言葉を信用して夕食のことを任せただろうに、愛は夕食のことを忘れて仮眠というには少々長い時間寝ていたから。
しかも、その後愛は無断で病室を抜け出して帰ってこなかったのだ。
少々の小言を言われるのを覚悟した愛の耳に、思いもかけない言葉が届く。
「高橋さん、新垣さんが何処に行ったかご存じないですか?」
「へ、里沙ちゃんがどうかしたんですか?」
暢気な返事を返す愛の様子に、皆大した用事じゃないのだろうという顔になる。
だが、皆が安心した次の瞬間、愛は手に持っていた携帯を落とす。
愛の顔に浮かぶのは、紛れもない動揺だった。
携帯を落としたまま動きを止めてしまった愛の代わりに、
愛の隣を歩いていたれいなは素早く携帯を拾い上げて耳に押しつける。
聞こえてきた内容は、愛でなくとも動揺せずにはいられないものだった。
―――病院から、里沙が姿を消した。
今朝、看護師が見回りに行った時、里沙の部屋には鍵がかかっていた。
それを不審に思った看護師はマスターキーを使って部屋の鍵を開けたら。
付き添いの愛の姿はおろか、過労と睡眠不足で倒れて入院した里沙の姿が部屋の何処にも見あたらない。
それで、看護師は愛の携帯に連絡をかけてきたのだった。
あんな状態で、一体何処に行くというのだろう。
心労が重なって殆ど睡眠も食事も取っていなかった人間が、一晩で回復して動けるものなのか。
誰かが連れ出しでもしない限り、そんなことは普通なら出来ない。
看護師はそう思ったからこそ、昨晩付き添っていた愛に連絡を取ってきたのだ。
皆の心の声の一切が里沙には聞こえていたはず。
だから、里沙は皆の前に姿を現すことが出来るはずなのだ。
複雑な想いを抱えたメンバーもいるものの、少なくとも里沙にとって悪い空気は脱したのだから。
それなのに、里沙は病院を抜け出したきり行方知れず。
皆の胸に過ぎるのは、嫌な予感だった。
おぼつかない手つきで、れいなは愛の携帯を操作して里沙の番号を探し出して通話ボタンを押す。
れいなの耳に届いたのは、おかけになった電話は電波の届かないところにおられるか、
電源が入っていないためかかりませんという自動音声案内。
スウッと、れいなの背中に寒気が走る。
ちゃんと話がしたいのに。
何故里沙がスパイなのか、そしてこれからどうしたいのかと問いたいのに。
里沙は皆に衝撃を与えるだけ与えて、何も言わずに去ろうとしているのか。
それだけはさせない、させちゃいけない。
何も分からないまま、お互い分かり合うことのないまま関係が断ち切られることだけは何があっても許してはいけないのだ。
「探すって、どうやって?
携帯繋がらないんでしょ?」
焦るれいなに、絵里は冷静な意見を返す。
だが、冷静な意見とは逆に、絵里の表情にもれいなと同じ、焦りが浮かんでいた。
携帯が繋がらないことにここまで焦るのは、誰一人として里沙の居場所に心当たりがないから。
嫌でも気付かされる、自分達は里沙のことを殆ど知らなかったということを。
里沙の自宅に行ったこともなければ、里沙がよく行くような場所も知らない。
一緒にどこかに出かけたりしたことはあっても、それは普通のお店ばかりで。
リゾナントにふらっと現れて、リゾナントから少し離れた大通りからいつもタクシーに乗って帰る。
里沙のはぐらかし方が上手すぎて、気付かなかった。
―――里沙は何一つとして、探すための手がかりになるような情報を皆に与えていない。
改めて、里沙はダークネスのスパイだったんだと思い知らされる八人。
だが、そのことに衝撃を受けている場合ではない。
里沙が、自分と皆を繋ぐ唯一の連絡手段を絶ったということは。
それはすなわち、里沙は皆に何も言わずにリゾナンターから去ろうとしているということなのだから。
分かっているのに、どうしたらいいのかと考え込む八人。
考えろ、絶対に何か里沙を見つける方法はあるはずだ。
焦る心に必死にそう言い聞かせながら、八人は里沙を見つける方法を模索する。
でも、それをやるのはリスクが高すぎるかもしれへん」
愛佳の言葉に、皆は一斉に愛佳の方を見る。
その顔は、妙案を思いついたというような表情ではない。
むしろ、思いついたのはいいがそれを実行していいのだろうかという迷いが幼い顔に表れている。
皆の視線が、言葉よりも雄弁に愛佳に促している。
その方法を言ってほしい、と。
気が進まないが、言うしかないと覚悟を決めて愛佳は口を開く。
「高橋さんの精神感応能力、これを応用すれば見つけられるかもしれへん。
ただ、それで確実に新垣さんが見つかるというわけでもないし、
高橋さんだけじゃなくて、皆にも負担が大きすぎる」
愛佳の抽象的な言葉に、それまで茫然としていた愛が口を開く。
「…あーしの精神感応能力を皆の共鳴で最大限に増幅して、この街中の人間の心の声を拾い上げて。
その何千何万、下手したら何十万という心の声が渦巻く世界、そのどこかに必ず不自然な部分がある。
里沙ちゃんはあーしとはちょっと違うけど、精神系能力者。
心の声が聞こえないようにキツくガードしているか、あるいは普通の人があげないような不自然な声をあげているか。
この方法、確かにあーしにとってリスクが高すぎるし皆にも負担がかかる、でも」
「どうしても新垣さんを見つけるなら、これしか方法はないよ。
多分、携帯を新垣さんが持ち歩いているとしても、見つけ出せるわけない。
普通の携帯ならまだしも、ダークネスがスパイに持たせた携帯なんだから」
普通の携帯なら、警察に駆け込めば何とかなるかもしれなかった。
だが、ダークネスが超能力者組織である以上、一般人が使うような携帯を持たせるわけがない。
普通に警察に駆け込んだとしても、おそらく思ったような展開は望めないだろう。
だが、愛佳の言った方法で探すということは。
愛の精神に多大なダメージが与えられるどころか、共鳴によって他の皆にも愛とほぼ同等の精神的ダメージが
与えられるということでもある。
ましてや、何万何十万という単位の人間のあらゆる声が渦巻く世界でたった一人の声を探すということは、
嫌でも長時間、その声の渦に心を晒すことになるのだ。
精神的ダメージも、肉体的ダメージもおそらく自分達が考えるよりも遙かに大きいだろう。
数日寝こむ程度で済めばいいが、下手したらその心の声の渦に自らの心をバラバラにされかねない。
その可能性があるからこそ、愛佳は言うことを躊躇ったのだ。
リスクの高さに対して、里沙を見つけられる可能性はごく僅か。
里沙を見つけ出すよりも先に、八人が全員潰れる可能性の方が遙かに高い。
皆の中に微かな迷いが生まれ、それは共鳴し増幅していく。
増幅していく迷いを断ち切るように、愛は口を開く。
「…それでも、里沙ちゃんを見つけるにはもうこの方法しかない。
なるべく皆にはダメージいかんように頑張るから、お願い、皆、力を貸して」
その言葉の切実さに、皆の中から迷いが少しずつ引いていく。
心が壊れてしまう可能性を考えると、怖さを断ち切ることはとても難しいけれど。
一番負担がかかるであろう愛の、切実な言葉。
そして、その想いは…痛いくらい伝わってくるから。
皆の心から迷いが消えるのと、愛が付いてきてと声を上げたのはほぼ同時。
走り出す愛の背中に遅れることなく、皆付いていく。
軽く息を吐きながら、愛は皆に指示を与える。
「まず、結界を張って、ダークネス側にうちらが何をしようとしてるのか分からんようにする」
その声を聴いたさゆみが、じゃあ私が結界張ると言って結界を張る。
鮮やかなピンクのオーラがさゆみの体から放たれ、程なく廃ビルは外界から遮断された世界となる。
それを確認した愛は、皆に集まってと声をかける。
「皆、手を繋いで。
で、あーしと手を繋ぐ人間は…体力的にも精神的にも余裕がある人間の方がええ」
その言葉に、愛の手を取ったのは小春と愛佳。
ジュンジュンとリンリンは先日意識が戻ったばかりだし、れいな、絵里、さゆみは先日の戦いで精神的疲労が溜まっている。
自然と、れいな、絵里、さゆみを愛から離す形で円陣が組まれた。
愛は皆の顔を見渡すと、静かに宣言する。
「心の準備が出来たら言って。
そしたら開始するから」
言い終えて、愛は目を伏せて集中を開始する。
一人一人、乱れそうになる心を落ち着かせていき。
全員の心が落ち着いたのを確認して、愛はじゃあ、いくよと声を上げた。
こんな世界を愛は感じていたというのか。
心に広がる世界は薄暗く、様々な感情が音となり、強弱やリズムを持って鳴り響いている。
この世界を支配するのは、人の心の声が奏でる雑音。
心地よい音も聞こえるが、それをかき消すほどの暗い音も聞こえる。
(あー、今日も疲れた、早く帰ってゆっくりしたいな)
(あいつマジムカつく…今度同じことしたらただじゃすまさん)
(お、あの子超可愛い、やりてー、今溜まってるんだよなぁ、あぁ、畜生、やりてー)
(あー、早く会いたいな、今頃電車乗ってるのかな?それとも、まだ駅に着いてないかな?)
(もう駄目だ、死ぬしかない…)
あらゆる声が重なることなく、同時に響きながら新たな声となって更に続いていく。
終わることのない旋律に、愛以外の七人は戸惑いを隠せない。
まともにこの音の奔流に心を傾けていたら、そのうち自分の心に狂いが生じるだろう。
だが、この音の奔流からたった一人の人間が奏でる音を探し出さねばならない。
あるいは、音がまるでしないような一点を見つけ出す必要がある。
自然と、皆繋ぎ合う手に力を込め。
この流れに心が攫われてしまわぬよう、歯を食いしばりながら皆力を放出し続ける。
皆の力を受け、愛はひたすらにこの雑音を聴き分け続けて。
辺りが夕闇に染まり、もうこれ以上続けたら愛も皆も心が崩壊しそうになるかと思われた頃。
―――雑音渦巻く世界の、小さな小さな綻びをようやく愛は見つけた。
更新は以上になります
更新乙です
ただでさえ暑い夜に悶々とさせやがってw
喜びは悲しみの後にというけれど、ガキさんが、
リゾナンターに喜びが訪れる日は来るのやら
悲しみの底までつきあいますよ
続きが気になる・・・
6人だけのチアリーダーAngel Hearts
私は運動オンチだったけど、同級生の愛に頼まれて渋々入部した
最初は気持ちがバラバラだった
コーチの厳しい指導に逃げ出したくもなった
でも愛の真摯な姿勢にいつしか皆が惹きこまれていった
目標だった大会では結果こそ残せなかったけど、それでも燃焼しつくしたという充実感があった
あれから何年たったのだろう、愛ちゃん、里沙、麻琴…
――目を覚ますとそこは私に与えられた研究室のデスク
特殊能力に関する興味深い論文を学会のデータベースからダウンロードし、紙に印刷する間も惜しみパソコンのディスプレイで読み耽っているうちに、眠っていたらしい
私とした事が何たる
でも今見ていた夢は、現実の私の経験してきたこととぜんぜん違う
Angel Heartsという名は、あの6月の雨の日
愛ちゃん、でなくi914から情報を入手する為に彼女と接触し、催眠に誘導した際に使った記憶がある
でも何故あんな出鱈目で言ったことが私の夢の中に、という疑問はすぐに解けた
「安倍さん、いつのまに」
「短い間だったけど随分楽しそうに眠っていたね」
「今の夢は、安倍さんが?」
「ここんとこあさ美ちゃん疲れてるようだったしね
でもどんな夢なのかは私にはわからないよ
ただあさ美ちゃんが良い夢を見れるようにと、願ってただけだよ」
上層部には特殊能力の創造と称して莫大な研究費を承認させている
でも本当は能力者から忌まわしい能力を消去するという研究
それは能力がもたらす恐怖で世界を支配するというダークネスの目的とはかけ離れたもの
明らかになれば私は間違いなく粛清の対象になるだろう
そのこと自体は恐ろしくない
でもあの悲しみを、能力がもたらす悲劇を防ぐ為の研究が完成するまでは
私は死ねない
だからこそ自分の心には何重もプロテクトをかけていた
無意識下で自分の真意が読まれることを防ぐ為、夢さえ見ないよう強力な自己暗示を施してきた
熟練の催眠術師、最高の読心能力者ですら私の心には踏み込めないだろう
でもこの人は、安倍さんは幼児のように無邪気なタッチで私の心を揺れ動かす
本来なら抗議すべきなのだろう
少なくとも抵抗感があることを遠回しにでも伝えるべきなのだろう
でも、出来ない
もしそうすればこの人の笑顔はたちまちに曇るだろう
そしてそのことに私は罪悪感を覚える筈
それでも実戦練習と称して精神干渉の能力者と模擬戦を行った事はある
彼らの精神干渉はおぞましい触手に脳髄の中を掻きまわされるような不快感を私の中に残しただけだった
でも安倍さんは私の心の中に積もっていたどす黒い澱を優しい雨で洗い流してくれた
だから言えない
たとえ安倍さんでも私の心の中に無断で立ち入らないでくださいとは
「ええ、ここのところ実験が立て込んでいましてね
中々ベッドで眠る時間が無くて」
「駄目だよ、夜は寝る為に暗くなるんだよ」と子供のように話す安倍さんに相槌をうちながら
白衣のポケットに手を忍ばせ、お守りを握り締める
安っぽい指輪をチェーンに通したもの
それは私達がまだ子供だったあの頃
不幸な事故が彼女を私の前から連れ去ってしまう前に、お互いで贈りあったささやかな宝物
i914の滅びの光によって消滅してしまった麻琴が唯一この世に残した名残
人は悲しみを経験すると優しくなれるというけれど
だとしたら私はどれぐらい優しくなったのかな
あの時の私は心の中を覆い尽くしたあの感情が、悲しみだとは気付く余裕も無かったから
涙すら出なかったけど
でも寂しいよ、マコがいなくて
私のやろうとしてることは人と違う力からというだけの理由で、悲しむ人をなくす為のもの
だから、見守っていてよね
私は眼鏡をずらし疲れた目を揉み解す振りをして、目元に湛えられた涙を拭った
「コーヒーでも入れますね」
数ヶ月ぶりの夢と数年ぶりの涙をもたらしてくれた愛すべき先輩の為に私は席を立った
こんな感じです
勢いだけで書いてしまいましたすいません
複数のレスの投下になれてないので、最後のレスを
消してしまって、大慌てしましたw
>>417-421
アンカーが不完全でしたね
文中でマルシェが言ってる6月の雨の日というのは、『夢から醒めて』の話と
繋がってるんですかね
また勢いで書いて、このスレを盛り上げていってください
最期の一文がいいですね
読後感がすごくいい
面白かったです
こういうの好き
今年一番の暑さを記録したある夏の日の昼下がり
今日は仕事がお休みなので、いつもより早い時間に喫茶リゾナントを訪れた里沙
しかし、お店の扉には見慣れた文字で“臨時休業”の張り紙
不審に思いながら里沙は扉を開けた
すると、途端に顔に押し寄せて来る熱風
「熱っ!なぁに?なんでこんなに熱いわけ?!」
「ぉお~…里沙ちゃん…」
カウンター席でテーブルに突っ伏してぐったりしている愛が力なく手を振った
「一体どーしたのよ?」
「クーラーが壊れたんやよ」
「うっそぉ~!なんでぇ?」
「全部小春ちゃんが悪いのっ!」
「うぉっ!」
人の気配が感じられなかったソファー席から放たれたいきなりの大声に
里沙はシェーのポーズで驚いた
「さゆみん…居たんだ…」
「絵里も居ますよ?」
「うぉぉっ!!」
普段、人が居るはずのない、レジの横に置かれた観葉植物の後ろから
いきなり現われた絵里に里沙はJOJOポーズで驚いた
「そーんな所でなにしてんのよ!!」
「ここは日陰で涼しいですよ?」
と言う割に、額に薄っすらと汗を滲ませている絵里
「ってか、クーラーが壊れたのは解ったけどさぁ…」
ぐったりした3人の様子を冷ややかな視線で眺めながら里沙は疑問をぶつけてみる
「それと小春がどんな関係があるって言うのよ?」
「久住さんが壊したんですわ…」
「うぉぉぉっ!!!」
里沙が立っている傍のテーブルの下からにゅぅっと現われた愛佳に
里沙は今ではすっかり懐かしい荒川式イナバウアーのポーズで驚いた
「それは昨日の出来事でした…
今日みたいにあっつい熱い日の出来事でした…」
愛佳は遠い目をしてポツリポツリと語りだした…
─それは暇を持て余した夏休み中の学生達と
たまたまオフだった現役アイドルが集う喫茶リゾナントで起こった
「暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑いーーーーーーっ!」
「もぉ~…小春ちゃん、うるさいの」
「今、冷えたアイスティー出したるから、もうちょっと待つやよー」
「この炎天下の中、駅から走ってくるからそんなに暑いんやないですか」
「だってだって!早く涼しいお店に入りたかったんだもん!」
「汗が引くまでの辛抱ですよ?」
「暑いよーっ!小春、もう我慢でーきーなーいー!」
「うわっ!久住さん!いきなり発電せんといてくださいよ!」
「ちょっと小春ちゃん?!なんで能力、発動してるのっ?!」
「小春のチカラでクーラーパワーレボリューショォォォーーーーン!!!!!!」
「こっ小春!やめるがし!!」
「バッ…バカーーーーーッ!!!!」
┣¨┣¨━━━━━━━━━━ン!!!!!!!!!!!!
─・・・
「クーラーが爆発したんやよ…」
「こ…小春…」
里沙は絶句した
残る4人にはもうそれ以上多くを語る気力も体力も残されてはいなかった…
店内に重く暑苦しく湿度高めな沈黙が漂う
そこに軽快な電子音が鳴り響いた
「れいなー携帯鳴っとるでー」
「え?れいなも居るの?」
そう広くはない店内を見回す里沙
しかしれいなの姿は見当たらない
と、その瞬間、誰も居ないカウンター内の冷蔵庫が勢い良く開いた
「うぉぉぉぉっ!!!!」
里沙は驚きのあまり仰け反りすぎて派手に尻餅をついた
「ふぃぃ~」
冷蔵庫の扉を内側から蹴り開けて、ひとり涼しげな顔で出てきたれいな
口の中の氷をガリガリ噛み砕きながら、自分の携帯に手を伸ばす
「入るんだ…冷蔵庫に入れるんだ…」
呆然としながら里沙は呟いた
「ガキさんも入ると?」
「いや、遠慮しとく…」
「あぁっ!田中さんっ!」
ニシシと笑うれいなに、まだ半分テーブルの下に潜ったままの愛佳が叫ぶ
「なん?」
「そのメール、見たらあきません!見る前に削じょ…」
何かが視えたらしい愛佳が慌ててれいなを制する
「なん?もう開いてしまった…と…」
从*´ ヮ`) <……。
从;´ -`) <……。
从;` -´)<……。
「た…田中っち?」
携帯の画面を見つめるれいなの顔色がみるみるうちに変わって行く
「ぁ…アカン…田中さんが…せやから見たらアカンて…」
愛佳が里沙の足元で頭を抱える
「こっ…こはっ…」
声にならない声を漏らすれいなは携帯を持つ手をワナワナと震えさせる
「田中っち…どうしたのよ…」
「れいな?どないしたんや?」
从#` ロ´)ノシ<こはらぅ!シバく!今すぐシバいてやるったい!!
鬼の形相のれいなはそう叫んで持っていた携帯を放り投げた
そしてカウンターをヒラリと飛び越えて、店の入り口に向かって走り出した
「あきません!田中さん!早まったらあきません!!」
「ぇえぃ離せ愛佳!れいなは!れいなはっ!アイツを今すぐシバく!」
愛佳がれいなの右足を掴んで必死に引き止める
「落ち着いてください田中さんっっ!!」
「あんなメール見て落ち着いてられるかっ!離せ!離すったい!!」
ちょっと半泣き入ってる愛佳であったが、ひとますブチ切れているれいなは愛佳に任せて…
里沙は店に真ん中に転がったれいなの携帯を拾い上げた
「田中っちがあんなに切れるメールって…」
一緒に覗き込む愛と絵里とさゆみ
From:ノリo´ゥ`リ
Sub :あっついですかぁ~?
Msg :小春は今テレビ局の楽屋です☆クーラーがきいててキモチぃぃ~☆
File:http://toromoni.mine.nu/up/files/data/18/toro18257.jpg
「あー…これは田中っちが怒るのも無理ないよ…ね…ってアレ?」
「「「………。」」」
「ちょっ…みんな、どうした…って、まさか…」
「小春…エエ根性しとるやないか…」
「こんなにさゆみ達が苦しい思いをしてるって言うのに…」
「絵里…もぅ…我慢の限界ぃぃぃぃぃ~~~~~っ!」
「れいな!リゾナントカー出動やっ!」
「愛ちゃん?!」
「こはらぅ!首洗って待っとるっちゃよ!」
「田中っち?!物騒だから!」
「さゆみ達が必ずタマ、とっちゃるけぇーのぉ!」
「さゆみん?!それ、ほんとシャレになんないから!」
「直行ぉ!テレビ局直行ぉっ!!」
「カメまで乗っかってんじゃないわよ、このぽけぽけぷーがっ!!」
ブチ切れた4人は店の扉をぶち抜いて出て行ってしまった…
「に…新垣さぁ~ん…」
4人に背中を踏みつけられた愛佳がうつぶせのまま、か弱い声でつぶやいた
「うん…みっつぃーは良くやったよ…」
顔を上げられない愛佳の頭を里沙は優しく優しく撫でてあげた
「新垣さん…愛佳…この先が視えて…グスッ…」
「いいから。みっつぃーは気にしなくていいから…」
愛佳の流した涙のせいで、店内の湿度がちょっと上がった
以上ですありがとうございました
ヤマなしオチなしの小ネタの割には長くなっちゃいましたorz
暑い日が続いてますがホゼナンター同志達は
イライラせずに体調にもお気をつけください!
ギャグものはテンポが命ですね
一気に読めてそれでいて笑えるとはすごいです
こういう日は外に出ないで保全するに限るよねorz
ワロタ!
でもたまに子供が死んだりするから危ないんだろうなぁ
情景が目に浮かんだww
笑わせてもらいましたww
前回ほのめかしていた過去話をちょいと載せます。
若干長い上にややこしいですが、愛さんの動機づけが気になる方は是非お目通しを。
状況開始は15:00より。
待ってます!
「わたしは…正義の味方になりたい、かな」
内心の照れを隠すように俯いた彼女を、ひどく愛しいと感じたのを覚えている。
喫茶リゾナントの店員となって数ヶ月。場所は自衛隊駐屯地敷地内にある訓練場
の宿舎だった。新人研修の名を借りた訓練はすでに四日目を終え、恒例となった
夜の雑談の最中。話題に上ったのは「何故"リゾナンター"となることを決めたの
か」という、他愛ない、それでいてとても無難なそれだった。
高橋は自分や新垣、紺野がその話題にどんな回答をしたのか今となっては想い出せない。
後に被験した計画がそのすべてを打ち砕いたからだ。
それでも尚、彼女の言葉やその時の仕草だけは鮮明に思い出せる。
それは彼女が後に死亡した感傷から来たものではない。
被験後も彼女だけは、その願望を抱き続けていたのを知っているからだ。
正義の味方。悪しきを挫き弱きを救う、
英雄と呼ばれ数多くのメディアで今なお取り上げられる存在。
その定義に則ればリゾナンターは紛いなく正義の味方だ。
異界に現れる"闇"という悪を挫き、異界に取り残された弱者を救済する役目を負った英雄。
具体例を挙げよう。高橋たちが研修を終えて間もなく、
異界が当時の防衛庁と特に折り合いの悪かった外務省の管轄する建物に発生した事案がある。
異界は人間の思念と何らかの共鳴を見せているらしく、都心部に発生率の高いものだ。
だから都心に居を構えるその場所に異界が発生したことそれ自体は不自然でもなんでもなかった。
問題なのはその異界の処理過程だ。
当時は久住や光井のような異界を予見可能な能力者が
喫茶リゾナント内にはなく、異界発生の連絡は防衛庁を介して通達された。
だが、その日は異界発生から報告までには普段の約3倍の時間がかかっていた。
更には後方支援部の弾薬供給が"事故"や"手違い"によって極端に遅れ、
喫茶リゾナント、黎明の作戦行動は普段の数十倍は後手に回らざるを得なかった。
彼女達が現場に到着した頃には既に異界の侵食は激しく、
人を喰らい強大化した"闇"の処理にも、
当時最強の名を欲しいままにしていた後藤真希がいなければ相当に時間を食ったことだろう。
そうして、その建物内にいた外務省職員には"不運にも"多数の死傷者が出て、事案は終結を迎えた。
もちろん、当時の高橋達は組織の構造やセクショナリズムに
ついてはっきりとは判っていなかったが、それでも上の方に何らかの思惑があっ
たことは肌で感じ取ることが出来た。
小川もそれは同様だった筈だ。
例え上の思惑が働かなかった場合でも、異界発生から後手に回って処理するしか
能のない彼女達には救えなかった命がいくらでもある。
やはり小川も、それを同様に経験していた筈だ。
筈なのに、それでも尚、彼女の理想が折れることは無かった。
正義の味方になって、一人でも大勢の人を救いたい。
無垢で、純粋で、理想論でしかない綺麗ごとの願望を、
彼女はそんな現実を直視して尚、抱き続けた。
―― そうして、実験の日はやって来た。
高橋達4人は他のメンバーに比較して、極端に共鳴能力の質が悪かった。
名目上はその改善を目指した臨床試験。
実体は厚生労働省の研究チームが兼ねてより実行してみたがっていた人体実験だ。
その存在が公にされていない以上、共鳴者には半ば人権がない。
倫理的な批判など表立って唱える者は誰一人いなかった。
逃げようとすればすぐに捕まり、被験を強要されることは目に見えていた。だか
ら高橋達も抵抗は一切諦めていた。
しかし小川麻琴、彼女だけは少し違った。そのあまりにも非人道的な実験を、
間違いなく自らの寿命を縮めるであろう暴挙を、彼女はそれでもどこか受け入れていた。
薬を打たれ、頭蓋を切開して脳をいじられ、
身体中に二度と消えない手術痕を刻まれてすら、彼女が揺らぐことはない。
被験から三日が経ったその日、彼女は最期にそう漏らして、高橋の腕の中で事切れた。
あの瞬間のことを、高橋は彼女のその言葉と、
彼女のその消えていく温もりの実感しか覚えていない。
周囲では新垣や紺野の怒号が飛び交っていたような気もするし、
職員達の慌てふためいた息遣いが近くにあった気もする。
しかしその時、高橋の周囲の音声は消失していた。
世界には高橋と彼女しかいなかった。
誰かを救うには力が必要だ。正義の味方には力が前提だ。
ゆえに、彼女は強大な力を望んだ。
最期までその理想を胸に抱き続け、
しかしその理想を叶えることもできず、彼女は無念を残しこの世を去った。
――れなも、正義の味方になりたいんですよ――
高橋達にとって最初の後輩が出来た頃。
いつか、小川麻琴と彼女が話しているのを聞いた覚えがある。
高橋が紺野や新垣と共に喫茶リゾナントを去らなかったのは、
もしかするとそのせいなのかもしれない。
小川麻琴の叶えられなかった理想を、自分が代わりに叶えてやれたら。
小川の死の真相すら知ることもなく、
未だ同じ理想を胸に戦っている少女を少しでも支えてやれたら。
そして高橋は残り、ひたすらに戦い続けた。
身体に限界の来た幾人もの先輩達が異動の名目で第一線を退き、
気がつくとリーダーという役職を得ていた。
決して表に出すことはしなかった強大すぎる自身の力に身体を蝕まれ、
やがてあの代行者の寄越す薬に頼るしかなくなった。
紺野の誘いは何度もあった。それでもそれを断り続けたのは、
やはり小川麻琴の理想がまだ胸の内に残っていたからだ。
自分は彼女に代わって力を得た。
なら、その自分が、一番親しかった自分が彼女の理想を叶えてやれないなんて嘘だと、
高橋は自分に言い聞かせた。
けれど、高橋は気づいてしまった。
自分や幾多の仲間達が犠牲になって守護し続けてきたこの世界に、そんな価値な
ど無いことを。人間は、自分の全てを犠牲にしてまで救う価値のある生物などで
はないことを。
自分を、友を、仲間をひたすら犠牲にして、救っているのは顔も知らない有象無
象だ。幾ら守護しても彼らは勝手に殺し合うし、幾ら従順でいても彼らはより多
くを上から見下すように求めてくる。
誰に感謝されることも、その存在を認められることすらなく、
ただ戦って傷ついて、仲間の屍を踏みつけてまた戦って。
その繰り返しの果てに、その繰り返しは無価値だとハッキリ気づいてしまった。
気づいて尚も、しばらくはまだ戦い続けた。迷っていた。小川麻琴ならきっと誰
の感謝も認識も求めない。ただ絶倫の自己犠牲を繰り返すのが小川麻琴だ。その
ことを胸に、戦い続けて果てていくのも悪くはないのだと、借り物の理想にすがり続けた。
ごめんなさい……ただれいなも強く、なりたくて…っ、けど、
そんな、悲しそうな顔させたくて言ったわけやなくて……っ
迷い続けた挙句、最後には彼女のその一言が高橋の背を押す形になった。あまり
にも小川麻琴に似た彼女。悲しい顔をさせたくなかったと涙した彼女。きっとい
つか、小川のように不運な死を遂げる筈の彼女。
それを守ろうと誓った。誰からだ。人間からだ。
共鳴者として、人類の敵として、ただ彼らの無知に復讐を果そうと決意した。
例え小川麻琴の理想に反する行為であっても。
高橋は結局小川麻琴にはなれないのだ。
有象無象の人間など何人死のうが殺そうが知ったことではない。
それが高橋愛の本質だ。
高橋自身の願望も、他にできてしまった。
ただ顔も、名前も。色んな表情を知っているあの仲間達を守ろうと、そう決意した。
もう、それだけが高橋に残されたすべてだった。
以上です。
次回からはちゃんと話を前に進めます。
盆は出かけるので次回までだいぶ間空くと思いますのであしからず。
ではではお目汚し失礼致しました。
『共鳴者』において
リーダーは単純な正義の味方じゃなかったんやね
次回も楽しみです
微妙で中途半端な作品
『守る意味』です
―哀しみの共鳴
死にたくなった時なんて数えきれないくらいあった
―創られた命
それでも今、あーしが生きているんはみんながいたから
―心がこだまする
もう泣かない。絶対に泣いたりしないよ
―蒼き共鳴
願いが一つ叶うなら…
―リゾナントブルー
共鳴する者達に幸せを
「ん…」
太陽の光が眩しくて思わず声が出てしまった
それと同時に辺りに飛び交う聞き慣れた数々の声
「――ゃん!」
「高―――!」
「………」
どうも騒がしい朝や
一体みんなは何を騒いでるって言うんやよ
あーしは重い瞼を持ち上げて目を開けた
「………へ?」
するとどうだろう
8人のリゾナンター達が神妙な顔をして自分を覗き込んでいるじゃないか
「な、なん?」
いつもは一人の朝なのにどうして今日はこんなに賑やかなのだろうか
「愛ちゃん!心配したんだから!」
「…しん…ぱい?」
「高橋さん…もう起きはらんかと思った…」
うーん…何を言っとるんや絵里もみっつぃーも
イマイチ言っている事が理解出来ない…まぁ取り敢えず身体を起こすか
「……ありゃ?」
だけど何故だか思った様に力が入らなくて起きる事さえままならない
「高橋サンまだ動イタりしたら駄目デス!」
「あんだけヒドい怪我しとったんやけ!」
「…怪我?」
「ったく!あんた本当にバカなんだから!」
「ッ…ガキさん」
怒っとるのか泣いとるのか分からんガキさんを見て全て思い出した
あーし瀕死の重傷を負ったんやったっけ
「どうしてあんな無茶な事したの!?」
「……」
「さゆみんが来るの少しでも遅れてたら愛ちゃん死んでたんだよ!?」
「……ゴメン」
「ッ…ゴメンじゃないよ…」
だってな…嫌なんよ
みんなが傷付くの
あーしきっと耐えれん
「ッ…そんなにれいな達は頼りなかと?」
違う。そんな事ない
すっごく頼りにしてるし信頼している
だから…守りたいんよ
多少無茶な事をしたって
守っていきたい
どうしてみんなそんな悲しそうな顔しとるん?
どうしてみんな泣いとるん?
あーしの中でみんなの哀しみがこだましとる
あーし…
一体何を守ったん?
こんな顔させといて一体何を守ったっていうん?
なぁばぁちゃん…
守るって何や?
ばぁちゃんがあーしを守ってくれた時もあーしこんな顔して泣いたよな
哀しい思いをさせてまで守る事が本当に守った事になるん?
分からん…
分からんよばぁちゃん…
中途半端になりますが一旦切ります
別の日に誰かの視点で続きらしきものを書きますが相変わらずの駄文になります
それでは逃げろ!
期待大!
待ってます
>>73-76 サボリンが>>63に感化されて書いちゃった作品を「田中れいな」
>>109-117 ミティ話を「ダークネス」 …1レス目の「383 名前~」ってのは消しちゃいました 参照の意味だったのかな
>>130-138 愛さゆ脱出話を「愛さゆ」
>>151-152 アニマル戦隊リゾナンターを「ミニレス館」
>>169 保全 SIDE Darknessを「ダークネス」 せっかくですので作品群に含めました
>>185-198 ないやいさんガキカメを「ガキカメ」
>>205-216 新垣×吉澤話を「新垣里沙」 …ダークネスと迷ったorz
>>221-228 さゆみ能力話を「道重さゆみ」
>>240 保全 SIDE Darknessを「ダークネス」
とりあえずここまで
ちょっと昼寝をしたらありえないくらい頭が重い
圧巻です
これまでの話が収束する過去・・・
“停滞”などとんでもないです
自分の中では一気に物語が紡がれた印象です
続きを超待ってます!
乙です
偏頭痛かな?大丈夫ですか?
お酒を飲んでなければ、薬を飲んで寝るのがベストかと
いつもありがとうございます
ただ・・・
保全 SIDE Darkness は作品群に入れるほどのものでもないと思うのですが
お疲れ様ですお体は大事にしてください
0時頃に>>404-410の続きを投下させてもらいます
もういいところで切れるようなぶつ切りにはしませんのでよろしくお願いします
乙ですお大事に
>>467
待ってます
ご苦労様です
おだいじに・・・
単なる慢性寝不足+中途半端な昼寝ってだけなので全然元気+
>>466
ご本人ですかね?
個人的には数作上がってるし秘められたストーリーを感じさせるのでそのままはもったいないと思ったんで
思ったより早く脱稿できましたので夜10時に続きを投下させてもらいます
注意書きはまたその時に
>>267-271 『共鳴者7』を「共鳴者」へ
>>279 保全 SIDE Darknessを「ダークネス」
>>287-288 保全代わり短編を「MM。」
>>304-312と>>360-366 ひとまとめにして「ダークネス」
>>325 保全 SIDE Darknessを「ダークネス」
>>337-347 ないやいさん後編1を「MM。」
>>375 保全 SIDE Darknessを「ダークネス」
>>404-410 ないやいさん後編2の1回目?を「MM。」
>>417-421 マルシェ視点の話を「ダークネス」
>>430-437 クーラー保全を「番外編」
>>445-451 『共鳴者8』を「共鳴者」
>>456-460 『守る意味』を「高橋愛」
メンバー別分類が1つ、組み合わせ分類0という珍しい更新になっております
ご謙遜を・・・
自分は個人的に保全 SIDE Darkness が大好きです
いつも楽しみにしています
保全 SIDE Darkness にリゾナントして何か書いてみたいなぁと夢見ています
>>471
待ってま~す
・まさかのバト…ル…?
・こうすることはもう1ヶ月以上前に決まっていました
・ないやいが足りない脳みそで必死に描いた非常にオーソドックスな「悲しみの底」
・最後のレスを読んだ後にリゾナントブルーを聴いていただけたら幸いです
以上となります、それではしばしお付き合いください
愛の鋭い声に、小春は必死に力を絞り出して愛が見つけた不自然な部分を念写していく。
10時間近く愛の隣で何十万もの人の感情の渦に心を晒していた小春。
今の小春はもう、静電気すら起こせない程に疲弊していた。
顔が真っ青になっている小春に、同じように顔を真っ青にしている他の皆も自分の残りの力全てを注ぎ込む。
皆、今までにないくらいのギリギリのラインに立っていた。
今ダークネスに襲撃されたら、傷一つ負わせること叶わずに全員殺されてしまうに違いない。
それでも、この念写だけは成功させねばならなかった。
念写が出来なかったらこの10時間近くが全て水泡と化す、声がする場所が何処かまでは愛では特定出来ないから。
絶対に念写仕切ってやる、その想いだけで小春は必死に歯を食いしばってその場所を写していった。
念写した画像だけでこれから里沙を探し出さねばならない。
より正確に、少しでもその場所を特定しやすいように。
小春が膝をついたのと同時に、小春の手に現れた一枚の写真。
「…これ、街外れの工場地帯だと思う。
○○会社の倉庫とかあるし」
「行ってみるしかないね、本当、ガキさんもうちょっと探しやすい場所にいてよ…」
絵里とさゆみの会話に、少しだけ皆の心に元気が沸いてくる。
工場地帯のどの辺にいるかまでは分からないから、着いたら皆で手分けして探し回る必要があった。
だが、そんなことはどうでもいい。
そこに里沙がいるとわかった以上、後は里沙が見つかるまでひたすら探し回るだけ。
皆、今からタクシー呼びますからこれ使ってください」
ゆっくりと立ち上がった小春は、ポケットから数枚の紙束を取り出す。
その紙束を受け取った愛とれいなは、こんな時だと言うのに思わずさすが芸能人と呟いた。
小春が愛とれいなに渡したのは、一万円分のタクシークーポン券の束。
これだけの金額分があれば、普通に工場地帯まで行って帰ってこれるだろう。
今まで見たことのないクーポン券をひらひらさせながら見ている愛達を横目に、
小春は慣れた口調でタクシー会社に電話した。
「…とりあえず、このビルから出ましょう。
近くのコンビニ前に二台お願いしておいたんで何分か待てば来ると思います」
小春の声に弾かれるように、さゆみが結界を解く。
結界が解かれたのと同時に、小春はスタスタと歩き出して。
その背中に、慌てて他の皆も付いていく。
コンビニ前に付いて、数分。
街でよく見かける緑色のタクシーが二台到着した。
愛の方とれいなの方と、二手に分かれて乗車して。
―――タクシーは街外れの工場地帯を目指して、走り出した。
* * *
街灯以外、暗闇を照らす灯りがない工場地帯前に到着した八人。
辺りの工場はいくつかは稼働している工場もあるものの、それ以外の工場は暗く不気味な雰囲気だった。
「バラバラに別れて探そう、見つけたら共鳴で呼べばいいし」
愛の一言で、皆バラバラに別れて走り出す。
精神的にも肉体的にも限界寸前の八人を突き動かすのは、里沙を見つけたいという想い。
こんな不気味な場所に来て、里沙は何をしているというのだろう。
ひょっとして、里沙は何者かにここに連れ去られたのか。
だが、その可能性は限りなくゼロに近いことは分かる。
里沙がスパイではなく、純粋にリゾナンターだとしたらダークネスが連れ去ったと考えられなくもなかった。
しかし、里沙はダークネスのスパイ。
自分の意思でここに来たと考える方が自然と言えた、何故こんな場所にという疑問はあったが。
工場の人間や警備員に見つからないように探し回るというのが、これほど大変なことだとは。
時に物陰に身を潜めて人が通り過ぎるまで待ち、人の気配がなくなったのを見計らってまた捜索へと戻る。
八人の服装は誰かに見られたら間違いなく不審に思われても仕方のない、普通の服装。
工場で働いているような人の服装でない以上、見つかった日には通報されてもおかしくない。
思うように探せず、時間だけが過ぎていく状態に。
焦りばかりが募っていく。
お願いだから、聞こえているのなら返事を返して欲しいという声に応える声はなく。
―――里沙が失踪したと連絡があってから、既に15時間近く時間が過ぎていた。
何とか誰にも見つからずに工場地帯の端の方まで辿り着いた愛の目が見たものは。
静かに月を見上げる小さな背中。
その寂しげな背中に声をかける前に、愛は皆に見つけたよという声を届ける。
皆に声をかけたことに気付いているだろうに、里沙は愛の方に視線を向けようとはしない。
視線を向けることのないまま、微かに震える声をあげる里沙。
心の声が聞こえなくても伝わってくる。
何故探しに来たのかという想いが込められた言葉に、愛は思わず声を荒げる。
「全部聞こえとるくせに、そんな言い方すんな!
里沙ちゃんに会いたい、会ってちゃんと話をしたいっていう声聞こえとったやろ。
なのに、何で」
「話すことなんて何もないよ、あたしはダークネスのスパイ。
何であたしがスパイをやっているのか、そんなこと聞いても何にも変わらないよ。
だって、あたしはスパイなんだから」
「変わらないなんてことない!
何も知らんまま、何も分からんままじゃあーし達は何処にも進めん」
里沙ちゃんはスパイなだけやない、大切なあーし達の仲間でもあるんだよという愛の声が、
後から全速力で駆けつけた七人の耳に届く。
八人が揃うのを待っていたかのように、里沙はようやく愛達が居る方向に体を向けた。
無表情で皆を見つめてくる里沙。
それなのに、何故こんなに胸を締め付けられるのだろう。
一歩足を里沙の方へと踏み出した愛を、里沙は視線で拒絶する。
痺れを切らしたれいなが、里沙へと声をかけた。
スパイをやっている理由とか、これからどうしたいって思ってるのか言ってくれんと。
皆のことかき乱すだけかき乱して姿を消すなんて、れーなはそんなの認めないから」
「認めるとか認めないとか、そういうこと言われてもあたしは何も言うつもりはないよ。
別にいいでしょ、あたしはダークネスのスパイでリゾナンターの敵の一人。
敵がどんな事情を持ってこういうことをしていたのか知ったところで、何も変わらない。
許して欲しいとかそういうことも言うつもりもないし、任務が完了したから帰る、それだけのこと。
もうそれでいいでしょ、何も変わらないのに話をしたって無駄なんだから」
「新垣さんはあたし達に優しくしてくれました、色んなことも教えてくれました。
あたしはその優しさを今でも信じたいって思うから、だから、いかないでください。
…言ってくれたじゃないですか、どこにもいかないって」
小春の言葉に、里沙は小さく薄笑いを浮かべる。
言葉よりも遙かに、その表情は語っていた。
スパイと知ってそんなことを言うとか頭がおかしいんじゃないの、そう言わんばかりの笑い方。
その表情に、せり上がってくる涙を堪える小春。
目尻から頬へと、涙が筋を描いた瞬間だった。
「…探したぜ、新垣」
その低めの声に、里沙の体が大きく震え。
愛を除いた七人は、驚愕の表情を浮かべて声がする方に体を向ける。
黒のロングコートに黒のレザーパンツ、黒のブーツ。
月明かりに照らされた短い金髪、端正な顔立ち。
「昨日、絵里とれいなとさゆの三人の攻撃で倒したはずなのに…」
「あの攻撃を受けて生きてるはずがないのに、何で…」
れいな、絵里、さゆみが口々に発した言葉に返事を返すことなく。
金髪の女性は悠然とした足取りで里沙の隣に歩み寄った。
女性が現れた途端、八人の心に微かに伝わってくる恐怖に震えた聞き慣れない声。
その声が里沙の心から放たれていると分かった瞬間、八人は一斉に女性目がけて飛びかかる。
「組織からの支給品ぶっ壊してどこに行ったのかと思ったら、こんなところに居やがって」
その声が九人の耳を震わせたのと、飛びかかろうとした八人が地面に崩れ落ちたのはほぼ同時だった。
鳩尾、横腹、頭…一発当たれば動きを止めるのには充分すぎる箇所全てに叩き込まれた、重過ぎる蹴りと正拳。
ほんの数秒足らずの間に、女性は八人全員にそれだけの攻撃を叩き込んだのだった。
その強さに、皆の心は激しく震える。
今まで対峙してきた相手は、傷つけられたりすることがありながらも自分達の力で倒してこれたレベルだった。
だが、目の前の相手は今までの相手とは明らかに格が違う。
確かに自分達の状態は万全には程遠かった。
いつもの自分達なら、傷の一つくらいは負わせられたのかもしれないなんて。
それは甘すぎる考えであり驕りであると言わんばかりに、女性から放たれる闇色のオーラは巨大なドーム状と化して
工場地帯を覆い、空間を激しく歪ませている。
本能が告げていた―――例え強く共鳴したとしてもこいつには勝てないと。
何とか約束の時間にこいつを連れて帰れる。
結界を張って、何をやってるか分からないようにしたつもりだったんだろうけどな…
お前達のデータは完全に把握している、ほんの微弱な力だろうともこっちは確実にその力がどこから放たれているのか、
何をしようとしているのかを知ることが出来るんだよ、あたし達ダークネスはお前達がやっているような
お遊びの組織ごっこじゃないからな」
立ち上がることが出来ずにいる八人に一瞥をくれると。
女性は俯く里沙の方に視線を向ける。
激しく体を震わせ、けして女性の方を見ようとはしない里沙。
ため息をつきながら、女性はこっちを向かせようと震える里沙の肩に手をかけようとしたその時。
「里沙ちゃんに」
「「「ガキさんに」」」
「「新垣さんに」」
「「新垣サンに」」
「「「「「「「「触るな!!!!!!!!」」」」」」」」
叫び声と共に、八人は再び女性へと飛びかかる。
先程よりもさらに重い蹴りと正拳に、骨がミシミシと軋む音が折れた感覚と共にそれぞれの内耳に届いて。
一瞬にして、再び八人は地面へと崩れ落ちることとなった。
それでも、八人は女性の方に懸命に手を伸ばす。
ボスに怒られるだろうけど、こいつら始末するかな、うぜぇしという女性の独り言に。
里沙はついに己の心のガードを完全に解いて、女性へと叫ぶ。
「帰りますから!
お願いですから、皆にこれ以上ひどいことしないで!
お願…い…しま…す…」
言葉以上にその想いは傷ついた八人の心を貫く。
里沙の心から溢れ出す想いは、八人に涙を零させるのには充分すぎる程強い。
やっと、本当に心と心が繋がったというのに。
それなのに、どうして離れ離れにならなければならないのか。
悔しくて悲しくて涙が止まらない八人の元へと駆け寄り、里沙は皆の体を起こしていく。
里沙の頬を濡らす涙を止めたいのに、止めることが出来ない悲しみが。
自分達にもっと力があったなら、里沙を連れ帰らせることはないのにという悔しさが。
里沙の想いとぐちゃぐちゃに混ざり合って、涙という目に見える形になって溢れ続ける。
女性はその一部始終を、感情の宿らない瞳で見つめていた。
里沙が全員を起こし終わったのを見計らい、女性は里沙の背中に声をかける。
「…新垣、先に帰ってお前を強制転移するように指示しておくわ。ったく、最初から強制転移で連れ戻せばいいのに、
わざわざあたしにこんな胸くそ悪ぃことさせやがって…あの女」
そう言って、女性はスッとこの場から消える。
消える前に小さく呟いた一言は、里沙の耳に届くことなくかき消えた。
あの人が迎えに来ると分かってたら、こんな風にならないようにしたのに…」
「もう謝らんでええ、謝ってもらっても、どんなことしても…もう、過ぎた時間は戻らん…」
里沙の肩に縋り付くように寄りかかりながら、愛はしっかりと里沙の手を握る。
苦痛に顔を歪めながら、他の七人も里沙の側へと必死ににじり寄って。
涙を流しながら、里沙を囲むように地面に座り込む。
「…スパイをやっていた理由、だっけ。
今更聞いてもしょうがないかもしれないけど、話すよ」
そう言って、里沙は今までのことを簡潔に話す。
本当はスパイをやるつもりはなかったけれど、自分の命の恩人を人質に取られてやむなくその命令を受けたこと。
最初の頃は皆のことを何とも思っていなかったけれど、いつの間にか皆のことを大切な仲間だと思うようになったこと。
だけど、人質を取られている以上リゾナンターに寝返ることはどうしてもできないということ。
「本当はね、バレた時に皆の記憶を消して回ろうかと思った。
でも、どうしても出来なかった。
そうしてあげた方が皆楽になるって頭では分かってたけど…でも、ね」
皆にあたしのことを忘れて欲しくなかった、そう言って涙を零す里沙。
責めることが出来るわけがない、自分が里沙と同じ立場におかれたとして。
そうすることが出来るかと言われたら、否であるから。
自分の記憶も書き換えて消すことが出来るのならともかく、里沙の能力の洗脳は自分自身には行使できない。
何もなかったように皆が暮らしている中で、自身はけして消すことの出来ない記憶に囚われ続ける。
その苦痛を思えば、里沙がそうすることが出来ない気持ちは分かりすぎるくらい分かるから。
以前里沙が言っていた言葉が、皆の心に過ぎる。
自分のこの能力が嫌いだと、自嘲していた里沙の姿。
例え皆のためと思っても、忌み嫌う自分の能力を大切な仲間に使うことが出来ないその弱さが愛しくて悲しくて。
人の命を犠牲にしてまで自分達の手を取ろうとはしないその優しさが。
里沙が今まで皆に向けてきた優しさが真実であることを、何よりもしっかりと裏付ける。
スパイとして活動し、皆を欺き続けていたことは紛れもない事実。
だが、その際に皆に向けてきた想いの数々に偽りがないということだけで充分だった。
―――新垣里沙はダークネスのスパイ、だけど間違いなくリゾナンターである。
里沙は、愛を一回キツく抱きしめた後。
一旦愛を引きはがして、同じように今度はれいなを抱きしめる。
れいなが終われば絵里、絵里が終わればさゆみ、さゆみが終われば小春。
小春の後は愛佳、愛佳の後はジュンジュン、ジュンジュンの後はリンリンと。
その行為が、もう残り時間が僅かであることを言葉を超えて伝えている。
里沙を離すまいと、皆は里沙を囲んでその体に手を伸ばした。
その温もりが嬉しくて悲しすぎて、涙が頬を伝う里沙。
本当は離れたくなかった、ずっと一緒にいたかった。
だけど、あの人の命を犠牲にしてまでこの手を取ってしまうことはどうしても出来ない。
あの人に出会ったからこそ、こうして皆に出会えたのだから。
一つ息を大きく吐いて、里沙は己の想いを皆に伝える。
カメ、そのままのカメが大好きだよ、これからも皆のこと癒してあげて。
さゆ、カメのことしっかり支えてあげてね、まだまだカメ弱いところもあるから。
小春、本当に強くなったね、その力で皆のことしっかり守るんだよ。
みっつぃー、会った頃と比べると本当に心が強くなったよね、これからも皆を導いてあげてね。
ジュンジュン、愛ちゃんの次にお姉さんなんだから、皆の面倒頼んだよ。
リンリン、いつも元気がない時に笑わせてくれてありがとう、これからも皆が元気ない時は頼んだよ。
…愛ちゃん、愛ちゃんにはこんなに頼れる皆がいるんだから、あたしがいなくてもしっかり頑張るんだよ」
里沙の言葉に、ただただ首を縦に振ることしか出来ない八人。
辺りに闇の気配が漂い始め、やがて闇が里沙の体にゆっくりとまとわりつく。
無駄だと頭では分かっていても、八人は里沙の体を離すまいとしっかりと伸ばして触れている手に力を込めた。
里沙にまとわりつく闇が、徐々に濃くなっていく。
消える間際に、里沙は一生懸命泣きながらも笑顔を作って。
「皆今までありがとう。
…さよなら」
悲しすぎる笑顔と悲しすぎる言葉を残して、里沙は闇に包まれて―――消えた。
確かに今まで触れていたその温もりは、掴んだ手の中でゆっくりと消え去った。
もう、何処を見渡しても里沙の姿は見えない。
その温もりも、もう感じることは出来ない。
「「「「「「「「うわあああああああああああああああああ!!!!!!!!」」」」」」」」
―――八人の絶叫が暗闇を突き破るように辺りに木霊した。
更新は以上となります
ちょ~続きが気になり過ぎる!!!
せつなく悲しいのう
奪ってしまう
どうするつもりなのやら
個人的にはダークネスに強制帰還させられたガキさんと安倍さんの話が
形になりそうなんですけどね
軽く飛び越え、遥か上を往くかなしさでした
運命の刻が近づいてくるごとにこの胸を締め付けます
>>491
奇遇ですね自分も同じ題材で書いています
読むのが楽しみです
夜の闇に紛れて 対する相手の動きを封じる
手も足も そしてその呼吸をも
あたしの指先から伸びる「見えない線」
意志のままに動く「生きた線」
相手を死に至らしめる「殺す線」
いつしか身につけていた このピアノ線を操る術を
気配で感じる 自分とは異質の相手であると
その時あたしは腕に隠した線を手元にセットする
気づかれぬように 悟られぬように
無防備に見せかけたあたしに自信たっぷりに向かってくる
地を蹴り上げるその脚を
凶器を振り上げたその腕を
そして 自信に溢れたその顔を
あたしは縛り付ける 指一本たりとも触れさせぬように
恐怖に顔を歪め 束縛から逃れようともがく
身体に刻まれる 赤い線
けれど あたしは殺したりしない
この手で相手を殺めることなんて 二度とないようにと
無我夢中で
振り回した とっさに拾ったその武器を
線は
相手には見えない凶器となって
あたしは
まだ その使い方もわからなくて
ただ
闇雲に その線を振り回して
いつの間にか
線が 全てを切り裂いていた
その身体を
その心を
その 命をも
夜の闇に紛れて 見えざる線を操っていたあたしは
光あふれるこの世界の中で いったい何が出来るだろう?
答えは 光の主導者が指し示すままに
答えは 光に集う共鳴者たちの願うままに
あたしはもう 闇じゃない
あたしを包む 深い闇を消し去る光を信じて
進もう あたしは今 蒼き正義の光と共にある
照らし出される道を ただ真っ直ぐに
そのために 見えざる線を 希望の線へと変えて
テーマは「ガキさんとピアノ線」
保全 SIDE Darknessの雰囲気をリゾナントさせてもらいましたが
その作者さんとは別人です
カッコイイ!リゾナントですね
保全 SIDE Darknessにはリゾナントしたくなる何かがありますよね
このままぜひ保全 SIDE リゾナンターを
明日こそ仕事探してきちんと金儲けしようと思う
次の展開への伏線もどきを張りつつべったべたな展開を書かせてもらいました
何話目のスレかは覚えてないんですが有言実行ということで既存の作者さん達が描いた
ガキさんと皆の別れ方とは違う書き方が出来てそれなりに満足しています
今後の展開も大したことのない普通のありふれた展開になるかと思いますが
他の作者さん達が面白い物を沢山書いてくださっているのでないやいはこのまま行きますw
そしてかつて「鋼線」として書かれたガキさんの武器をピアノ線に勝手に変えてリゾナントさせてもらったのですが
その設定が他の作品に活かされているのを見て嬉しい限りです→>>497さん
これからもよろしくお願いします
川*^A^)<インジュリーシンクロロイズあれ?
(;・е・)<5回目。言わなくても発動できるでしょ!
川*´o`)<だってーガキさん
(*・е・)<だってじゃなーい。ケガをなおせー
川*´A`)<神様ーエリのー口をー
続きを首を長くして待ってます!
明日こそ仕事探してきちんと金儲けしようと思う
「闇に堕ちる。闇に染まる。闇に魅入られる。
どんな言い方をしたところで、あなたたちは“闇に負けた”に過ぎません。
あなたたちは……負け犬です」
「勝ち負けの問題ではない。闇は誰の心にもある。それを受け入れるか否かだ。
お前にも見えているのだろう?お前の心に巣食う闇が」
「誰もが心に闇を抱えている。それは否定しません。
でも、だからこそ、みんな必死に闘うんです。自分の心の闇と。
私は絶対に闇に負けません。絶対に屈しません」
「果たして、そう言い切れるかな?」
「自分の中の闇に呑まれそうな私に、あの日、あの人が光を与えてくれました。
いいえ、あの人自身が光そのものでした。いまでは、たくさんの光が私を支えてくれています。
だから……絶対に……」
――負けるわけにはいかないんです!!
そう叫び、少女はその両手に自らの“光”を解き放った。
最後の力を振りしぼって。
「保全 SIDE Darkness」に触発されて書いてみた保全文でした
喫茶リゾナントが雑誌に載ったようです(スキャンしてみました)
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/28/toro28378.jpg
さて、ここに至るまでにもあの面々ですからすんなり行った訳ありません。
そんなギャグになってない感のある話もせっかくなので投下します。
短いです。3レスしかないです。
ではどうぞ。
「・・・どうしたん?愛ちゃん」
長い電話の後、受話器を元ある場所に落ち着けた愛。
そして、事もなげにこう言ってのけた。
「取材されるんやって。喫茶リゾナントが」
その日、リゾナントは雷が落ちたような騒ぎになった。
「れーなその撮影の前の日、美容院予約するっちゃ!」
「さゆみも取材されたーい!」
「絵里ちゃんもー!おめかしするぅ」
「えーーーい、うっさぁーーーーい!!」
結論から言うと里沙の落とす雷はれいな・さゆみ・絵里の作り出す騒音には勝てなかった。
諦めた里沙は耳を塞ぎ、大音量で騒ぎ立てる3人の被害から一人逃れる愛のもとに速やかに移動するしかない。
「愛ちゃん、アレどうにかして」
「うぅっ、まさかこんなに浮かれるなんて思ってもなかったんよー……」
里沙にかかればもう既にアレ呼ばわりである。
事の流れはこうだ。
地域密着型のタウン誌編集部から連絡があり、連載企画でリゾナントが取材されることになった。
以上。たった一行。これだけである。
それなのにどうしてここまで盛り上がれるのであろうか。
「あのー、盛り上がってるところ悪いんやけど人物の撮影はないと思う……んやけど……」
「思う、じゃ駄目なんですよ!さゆみの可愛さをアピールするには絶好の機会なんです!まさにチャンスなんです!」
「絵里はぁー、巻き髪とストレートとどっちがいいですかねぇ?」
「れーなだって店員っちゃよ!ということで取材には同席したいけん、よろしく~!」
駄目だこいつら、早く何とかしないと―――愛と里沙の本心がそう告げる。
* * *
さて、あの混乱から数日。
喫茶リゾナントでは愛が約束した日、取材は無事、滞りなく収録された。
れいな達は言い合いをしていたことすら忘れ、遊びに行ってしまっていた。
あまりの五月蝿さに心の中のなにかがぷちっと切れてしまった里沙が洗脳によって
3人の記憶・・・数時間分を綺麗さっぱり抜き去り改変したからである。
能力の無駄遣いと言うなかれ。
問題解決のための最善手だったのだ。合掌。
但し、その平穏も長く続かなかったことを付け加えておこう。
そう、今日は発売日である。
再びリゾナントは雷と台風が同時にやってきたような騒ぎになった。
リゾナントさせていただいた[Tanaka](09)595 (斉藤アナ登場話)の作者様.
[Other](06)798 『その名はリゾ・リゾ』の作者様ありがとうございました&こんなのに使ってすいません
高橋さんの制服に付いているロゴは見なかったことにしてください
それっぽいのが他に見つからなかったので・・・
この情報誌どこで買えますか!!?
なんかほんと段々現実世界に存在しないことが信じられなくなってきていますw
乙です!
闇に抗う少女の姿に目を覚まさせられました
私も「保全 SIDE Darkness」にやられて闇に取り込まれるところだった!
こ、こ、これは!!!
弱冠21歳の店長!!照れてる!かわいい過ぎ!
住所を伏字にしないで下さいww
掲載されたのは何ていう雑誌ですか
細かいことだけどこれ右側のページなら
ノンブルの数字は偶数になるはずですねw
とはいえいいものを読ませてもらいました!
これ顔文字はリンリンだよね…?
言葉やストーリーが凝縮してるのがカッコイイですね
>>510
久々に笑わせて頂きました
この雑誌欲しい
そうなんだよね、余計なものはいらないんだ
でも書いているうちにどんどん膨らんでいってしまってw
>>510
重箱の隅をつつくようなアレで申し訳ないが、SHOP DATEの綴りはDATAの方が
良いのでは
とはいえ、短編と併せて喫茶リゾナントを見事に表現した手際、お見事です
502←寝ぼけてました
ノノ*^ー^)<白河夜船ですよ
ネーミングセンスが悪いワラタw
他に異論がなければこんな感じ入れときます
喫茶店リゾナント
間取り
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/142-1.gif
本日のランチ
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/155-1.jpg
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/156-1.jpg
タウン誌紹介文
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/28/toro28378.jpg
いいんじゃないかな
乙です!
”リゾ・リゾ”が雑誌に載る日がくるとは・・・w
もっときれいに作ればよかった
リゾナントしていただいたのは初めてで感激デス>_<
ついにリゾナントが雑誌に紹介されたか!
このスレは本当に飽きないね!
掲載記事を見てテンションが一気に上がった!
異論なし!!
「味は今一つだが食べたら傷や怪我が瞬時に治るリゾット」と書いてしまいました
初リゾナント?嬉しいです
といってもイメージは失礼+勝手ながら「リゾ・リゾ」のことだったので何だか申し訳ない
さゆ作だと勘違いしていてそういうリゾットにしてしまいましたが
さゆは発案のみで正しくはカメ作だったのですね
・・・反省してます味もきっとおいしいです
ともあれ良いもの見させて頂きましたありがとうございます!
インターネット放送局<あっ!とおどろく放送局>
夏休み特番2008 『Resolution 宮前真 樹』
MC 宮前真 樹
http://odoroku.tv/variety/miyamae/
?
本編ではないんですが、
サイドストーリー的なものが書けてしまったので投下いたします。
しかも主役はリゾナンターじゃありません。ご注意を。
今回は主役をホゼナンターの青年に致しました。
設定上、こちらのホゼナンターの方々とは境遇がだいぶ違うとは存じますが。
いつも頑張ってくださるホゼナンターの皆さんに感謝を籠めて。
状況開始は0:00より。
寝ようと思ったけど待たざるをえない
防衛省の外局。
公にはされていない機関の、後方支援人員。
与えられる仕事は地味なものだった。
都心部を中心に発生する何らかの"異常"に際し、
その対処に回る人員の輸送や、弾薬供給、負傷者の手当て、
交通警察と連携した周辺道路の封鎖、緊急時には避難誘導などが主任務だ。
要するに現場の保全と、"異常"に直接対峙する彼女らへの微々たる支援。
彼女達は俗に"リゾナンター"、辞書を紐解けば「共鳴する者」と呼ばれている。
それに習ってか、同僚達の間からは誰ともなく自嘲気味に自らをこう呼称する者が現れた。
ただ現場を保全するだけの力なき者、"ホゼナンター"と。
――― 共鳴者~side story~『保護の全う』―――
"異常"から遠く離れた安全区域で、今日も彼は現場の保全に勤めていた。
対処人員、リゾナンターに新人が入る頃には負傷者の救護に借り出されることも
何度かあったが、最近ではそれもめっきり減っている。
噂では今のリゾナンターの面子には軽傷の怪我人程度なら治癒できる超能力者がいると聞く。
もしそれが本当なら負傷者の応急処置と救急車の手配に備えてこうして
じっと待ち構えている彼の存在は、本当に万が一の確率に備えただけの限りなく意味なきものだ。
暇にまかせて、彼はそんな自嘲的な評価を胸中で呟いた。
彼も自衛隊員だ。戦争なんて起きる筈がないなどという幻想は抱いていない。
現実に隣国や半島からは常にミサイルを照準されているし、
北海道ではロシア機の領空侵犯に年何度も空自が緊急出動させられている。
それでも、平和ボケした国民はそんなことなど知りもせず安穏とした毎日を送っている。
その平和ボケが自分達の職務の成果であるのなら彼がこれほどやさぐれることもなかっただろう。
けれど現実に有事の際、この国は間違いなく米国の庇護なくしてその有事をやりすごせない。
国防費が世界有数の額に上るとは言われていても、
そのほとんどが自衛隊員の人件費に消えているのが現実だ。
左翼勢力に先導された平和を唱える団体は日夜自衛隊の存在に抗議を示し、
その追い風の影響で彼も、駐屯地の外で職業を訊かれれば「公務員」としか答えられない。
税金ドロボー。有事には役立たず。
そんな罵詈雑言に、彼は確固とした信念を以って反論することができない。
災害出動の時にのみ評価される自分達の存在に、
ああ日本が地震の多い国で良かったなどと、
あまりにも不謹慎な考えをよぎらせたことすら経験がある。
ねじれている。
自分達は、きっと何処かが致命的にねじれている。
何度羨望の眼差しを向けたことだろう。
超能力と呼ばれる力の存在を、彼はこの職場に来て肌で実感している。
"異常"の内側には何があっても踏み入るなと、上からは厳命されていた。
そんな危険な筈の空間に、小銃を抱えて迷い無く飛び込んでいく少女達の存在。
自分にはない、特別な何かを彼女達が持っていることは容易に推測できた。
そんな非科学的な存在に、何かとんでもなく大きな国防の前線を任せているのだ。
上からの緘口令も厳重だ。
この職場に回されてくる人員は必要最低限の数だったし、
その誰もが自分のように以前の職場で何らかの問題を起こした者だった。
要するに左遷先なのだ。
おそらく自分が辞職して世間にこの事実を口外しても、
その身分や退職の経緯と、あんまりにあんまりな話の内容に、信じる者など皆無だろう。
名もない彼は、そんな憂いに埋没しながらその日の職務も全うしていた。
ただ、待機するだけという職務を。
やがて警戒態勢は解除され、今日も事後処理と要救助者の搬送で彼の一日は締めくくられる。
その、筈だった。
負傷者は二名、現在B班の一名とA班の残りの人員が非戦闘区域まで搬送中です』
突然の声に、それが自身が耳に嵌めている無線からの報告だと彼は一瞬認識できなかった。
『…? 応答願います。こちらC班、班長の高橋です。
A班に負傷者、現在そちらへ搬送中ですので――』
「し、失礼しました。こちら後方支援部医療班、現在予定通りポイントαにて待機中です。
これより救急車を要請、負傷者は到着次第こちらで応急処置を施します。
上層部への報告その他は全てこちらで引き受けます。各班はそのまま状況を続行願います」
『了解。迅速な判断、感謝します。通信終了』
血管に冷水を流し込まれたような感覚を伴い、視界が急激に広がっていくのを感じる。
まずは救急車の要請。そして周囲に展開中の後方支援部員に状況を通達する。
間もなく負傷者が二名、ここまで運ばれてくる。
報告には具体的な負傷状況などは含まれていなかった。
無線の背後には断続的な銃声が木霊していた。
そこまでの判断をその状況下で求めるのは酷というものだろう。
状況を改めて俯瞰し、自身にできる最前の行動を模索する。
医療キットを開き、ピンセット、止血帯や消毒液、捻挫や打撲用の氷に、骨折に備えた添え木の準備も整えておく。
アスファルトにビニールシートを広げ、その上に毛布を二人分敷いておく。
失血による体温の低下も懸念される。毛布はさらにもう数枚ミニバンから取り出しておいた。
「オネガイしまス!」
中国人独特のイントネーションの声が届き、
その肩にはそれぞれ一人ずつ負傷者が支えられている。
身振りをまじえ毛布に二人を寝かせることを指示し、早速負傷状況の確認に入った。
名前は確か…道重さゆみと、亀井絵里だ。
事前に預かっていた保険証に記載された名前を記憶から紐解きながら、傷の具合を確かめる。
妙な傷だった。
どちらも腹部や腕に獣の爪で抉られたような傷がある。
さらに、その箇所がどちらの二名もまるで同じなのだ。
違いと言えば亀井絵里の傷の方が若干道重のものより浅いことだろうか。
「あのっ、道重サンがワタシをかば、かばっテ、それで亀井サンがその傷共有シテ、
それで、道重サンは亀井サンの傷治ソウト、でもダメデ、全部ワタシが――」
李純がパニックを起こした蒼白な表情でまくし立てている。
内容は要領を得ないが、どうやらこの事態は自分のせいで起こったのだと考えているらしい。
9人で構成される作戦で4人も人員を欠いているというのはかなり危険だ。
先決なのは彼女を落ち着かせ可能なら現場に戻すことだと判断する。
「落ち着いて。大丈夫、この傷なら命に別状はない筈です。後はこちらで引き受けます。
お二人は早く現場へ。敵は強力、4人も欠いた状態では状況が厳しい筈です」
銭琳が彼の言った内容を咀嚼するようにゆっくりと李純に説いている。
次第にその表情から蒼白さが抜け、いま自分がすべきことを悟った真摯な顔つきに戻る。
これなら前線に戻しても問題はないだろう。
二人にはああ言ったが、失血量次第では命に別状がないなどとは言えない。
救急車の到着まではあとおよそ10分弱といったところか。
「道重さん、亀井さん。意識はありますか?
ありましたら右手の人指し指を軽く動かしてください」
漂白したタオルを腹部の傷にあてがい、止血処置を施しながら意識の有無を確かめる。
幸いどちらの右手もかすかにだが動きを見せた。
瞼はうっすらとしか開いていないが意識はあるらしい。
口元に掌を当てる。幸い呼吸にも異常はない。
「大丈夫ですよー。すぐに救急車が来ますからね。
呼吸はゆっくり、何か違和感があったらまた右手の人差し指を動かして教えてください」
両腕は肘のあたりできつく縛り、傷口はこれもタオルで塞ぐ。
傷の具合からして肋骨の損傷も心配されるが、
少なくとも横隔膜や内臓に支障を与えるレベルには至っていない。
これだけ大きな傷だと消毒液はまずい。
余計なショックと痛みを与えないことだけを最優先に考える。
後は救急車を待つのみだが――不意に、比較的(あくまで比較的にだが)傷の軽い亀井絵里が口を動かした。
何かを呟いている。
視線がこちらを向いていることから、何かを伝えたがっているようだ。
何らかの異常を覚えたのかと焦りつつも、表面上は平静を装って耳を彼女の口元へ持っていく。
一言一言を区切りながら紡がれる言葉の内容を理解し、――彼の表情はピタリと止まった。
救急車が来た。
二人は無事にタンカに乗って搬送されていく。
前線の状況の方もなんとかその後重傷者は出さず終息して、
普段とは少しだけ違う彼の任務は全うされた。
所属の駐屯地へと戻る輸送車内で、彼は同僚に肘で脇腹をつつかれた。
「なんだよお前、何かいいことでもあったのか」
「……いや、まあな。職務意識にちょっとした変化が起きただけさ」
後で、この件は他の同僚達にも伝えてやるべきだろう。
些細な、実に些細な言葉だったが、きっと何かを変えてくれる筈だ。
あの時、亀井絵里が耳元で囁いた言葉。
後方、支援部の、方々の…おかげで、私達、安心して、戦えるん、です――
それが彼女達の総意なのか、はたまた彼女個人の思いなのかはわからない。
重要なのはあの状況で、出てきた言葉が誰かへの遺言でも無念でもなく、
自分達後方支援部、"ホゼナンター"への感謝だったということだ。
自分達の存在は実に些細だ。
あまりに些細で、ともすれば不必要なのではないかと、自分でも疑いたくなってくる。
けれど違った。
意味ならあった。
必要としてくれる人が、誰よりも近くに、最前線の現場にいてくれたのだ。
その事実が、あの言葉が、ねじれていた自身の心をゆるやかに、
しかし確実にほどいていくのを実感する。
あの瞬間、きっと自分は彼女達に"共鳴"できたのだ。
限界があるのなら、最低限その限界を維持し続けよう。
それが彼女達を少しでも危険から救うなら。
きっと、自分は自分に誇りを持てる。
"ホゼナンター"の出動は不規則だ。
今日も疲れた。
有事の保全に備え、今夜はゆっくり眠ることにしよう。
以上です。
いつも保全してくれる方々がいらっしゃるから、
自分もこうして書く場所を与えて頂けるんだなと噛み締めながら書いたつもりです。
感謝の念が少しでも伝わっていれば僥倖です。
それでは、次回からまた改めて本編を進めていきたいと思います。
いいなあ耳元でささやいてもらえて(*´Д`)
ほんと耳元での囁きが羨ましいったらありません
うわ!さっきもしたのに…orz と思わず
しっかり一つ一つの保全に情熱をかけていきたいと思います
ありがとうございました
心がこもってなさそうでw
発想自体は特別すごいって思うものでもないのに一つの作品として見事に成立させてるのが
さすがとしか言いようがないです
本編の方も楽しみにしております
面白かった~!!
説得力があるんだよね文章に・・・
すごい!
ホゼナンターの一人として嬉しかったです
書き手としては保全してくださる方は居なくては成り立ちませんよね。
いろんな意味で感動です(涙)
お疲れ様でした。
>>221
の続きを投下しようかと思ったのですが
何だかこのまま良い気分で夢の中に入りたくなりますね(苦笑)
ホゼナンターひとり脱落
「ヘルミーなの」
「グワファ、見事な攻撃だリゾナンター諸君
だが私も闇の眷属の長として ただでは死なんのだよ、ナイト・オブ・ダークネス発動」
消滅の間際ダークネスがそう叫ぶと、不帰の島を揺るがす大轟音が鳴り響く
ミサイルが発射された
「くっ、最後の最後まで」
「どうする愛ちゃん」
「どうもこうもない、 みっつぃー、ミサイルの軌道を予知して、
私は瞬間移動で何とかする」
「愛ちゃん、まさかミサイルごと人のいない場所へ移動するつもりっと
危なすぎるったい」
「でも何とかしないと、このままじゃ」
「高橋さん、私も行きます」
「小春、なぜあんたが」
「接近して私の力でミサイルに電撃を加えれば、あるいは」
「でも二人であんな高いところまで瞬間移動するのは危険なの」
「わかってます、でも」
「よし、小春行こう」
「愛ちゃん」
「危ないことは判ってる、でも誰かがやらないと世界が…
愛佳はミサイルの軌道を予測
ガキさんはそれを私に報せて
他の皆は力を、さっきの戦いでエネルギーをかなり消費してしまったのは
わかってる、でもこれが最後の戦いになると思う、だから」
「わかった、やろう」
「高橋さん、久住さん、バッチリです」
快哉の声を上げる他のメンバー
「やったよ愛ちゃん、小春、早く戻っておいで」
次の瞬間高橋と久住の姿が皆の前に現れる
「やったね」
「二人ともご苦労様」
「皆が力を送ってくれたから出来たんだ」
「それに上空でも皆の声がはっきりと聞こえました」
抱擁とハイタッチを繰り返すメンバーを微笑みながら見ていた光井だったが、不意に不吉なビジョンに襲われる
それは過去一度も垣間見たことのない終末のビジョン
説明の付かない不安に突き動かされながら、ダークネスの玉座の方に吸い寄せられていく
そこには大型のディスプレイがあり、世界地図が表示されていた
「ああっ」
悲痛な声を上げる光井の様子を見て新垣が歓喜の輪から離れて、近づいてきた
「どうしたの、愛佳」
優しく話しかける新垣に、光井はディスプレイを指差す
そこに映し出されたもの
米大陸から、ユーラシアの内陸部から、太平洋の真ん中から、欧州の国々から
中近東から、核保有を宣言している国、疑惑を持たれている国から多くの光点が突き進んでいる光景
「こ、これは」
二人のただならぬ様子に他のメンバーも近づいてくる
「なにがあったと」
「光井、どうシた」
口々に話しかけるメンバーもディスプレイを見ると黙り込んでしまう
誰もが不吉な考えを抱いた
だがそれを口にすれば本当の不幸が訪れるのではとの思いが口を重くする
最初に言ったのはリンリンだった
「これは核ミサイルの自動報復装置だと思います
以前、私のいた組織でその存在を聞いたことあります
敵の先制攻撃や、テロで味方の兵士がいなくなっても、敵に報復するという…」
「そ、そんな馬鹿なことを」
「まさか」
「フハハハ、そのまさかなのだよリゾナンター諸君」
「お前はダークネス、さっき倒したはずなのに」
「確かに身体は滅ぼされた、だが人間の心の中に暗闇がある限り、私は復活できる
今はこの電脳空間に意識を委ねてるがね
そちらの中国のお嬢さんが言ったとおりだ
先ほど発射したミサイルは上空で強力な電子パルスを発射した
各国の戦略コンピュータが核攻撃を受けたと誤認し、自動報復装置を起動させるほどの
世界中の核保有国から仮想敵国に向けて発射された核兵器は人類の9割を即死させるだろう
残りの1割は核という悪魔の兵器をなぜ廃絶しなかったという悔恨と、閉ざされた未来への絶望 で、明けることの無い暗闇を彷徨う事になる
これがナイト・オブ・ダークネス
れいなは拳でディスプレイを割り砕いた
吹き出る血を気に止めず「何とかせんと」と声を振り絞る
「無理や、ダークネスに放った必殺技、ミサイルを落とす時使ったエネルギー
もうどうすることもできん、終わったんや」
「愛ちゃん」
「すいません、うちがもっと早くこのことを予知できていたら」
「愛佳は悪くないよ、悪いのはダークネス
それと核の自動報復装置なんて悪魔の兵器を開発した人間の心」
小春が吐き捨てる
そんな誰もが絶望にとらわれ、下を向いている中ただ一人天空に向かい念を送っている者がいた
「カメ、何してるの」
「ガキさん、私の風でミサイルの方向を人のいない場所へ」
予想外の回答に一瞬口元を緩めた新垣だったが、次の瞬間声を荒げる
「いい加減にしなさい、あんたの吹かせる風程度ではどうにもならないよ」
「だって、ガキさん
こんなことで終わりになるなんて悔しすぎます
あたしは最後の最後まであきらめたくありません」
メンバーの中で一番頼りないと内心思っていた絵里の反撃に言葉を失う新垣
ジュンジュンが近づいてきた
「そう、私らの念動力もあわせれば一発ぐらいは何とかなるかもです」
リンリンが続いた
「しょうがないね、もうちょっとだけ頑張ってみる☆カナ」
久住小春が眼差しを上げた
「私もやります」
光井が涙を拭い立ち上がった
「いやいやっ、私もなの」
道重さゆみが覚悟を決めた
「まさか絵里がそういうこと言うとは思わんかった」
田中れいなが腕を撫した
「…みんな」
新垣里沙が皆を抱きしめた
自然と円陣を組んだ八人は高橋愛を見つめた
皆のリーダー
人生に光を与えてくれた人
「み、みんな こんな頼りないリーダーですまんかった」
高橋愛は嗚咽が止められなかった
「何を言うてるっちゃ」
「私達がここまで来れたのは愛ちゃんがいたからだよ
皆そう思ってる」
「おーっ」
全員が手を繋いでできた円陣から九色の光彩が立ち昇る
それはやがて一つに解け合って上空に昇っていく
世界にとって最後の希望の光
それは美しかったが、何百発の核ミサイルの前にはあまりにも無力に思えた
「だめか、やっぱり力が足りんのか」
「もっとたくさんの人と共鳴しなければ、誰かいないの、ねえねえ誰か」
黒田麗奈は友人と待ち合わせていた
あの時、あの人と出会わなければこんな日々は来なかっただろう
楽しい時や哀しい時、生きることの喜びに心が震える時、麗奈は思い出す
自分を忌まわしい因習の残る村から救い出してくれた人、高橋愛のことを
「誰か、ねえね誰か」
傍で誰かに囁かれたような気がして周囲を見回す
やがて何かに突き動かされるように空を見上げる
穂村厚志はご先祖様代々のお墓を掃除していた
ミュージカルを見に上京する為に、盆供養の際には不在なので父親から仰せつかったのだ
夏の日差しに焼かれ、草むしりをしながらふと最近会っていない同級生のことが頭に浮かんだ
「あの時は酷い目にあったよなあ
あいつの吐いたゲロを俺が吐いたことにしてくれって言われて
お陰でそれ以来あだ名はゲロ男だからなあ
そんなあいつも今じゃ月島きらりというアイドルなんだから」
芸能界のスターと片田舎に住む自分との一瞬の邂逅
人の縁の不思議に思いを寄せていると、それは聞こえた
場所が場所だけに一瞬驚いた厚志だったがやがて空を見上げその日差しの眩しさに掌で光を遮る
やがて恐る恐る指を広げていく
斉藤舞子は南海の無人島で大爆発があったという臨時ニュースを読む為にスタジオ入りした
ニュース原稿を頭の中に入れるために、ある少女のことを思考から遮断しようとしたが、無理だった
田中れいな―生き別れた、いや自分が捨てたも同然なのに、そのことを許してくれた妹のことを
常に一緒にいられるわけではないが、自分と同じ血の通っている人間がこの世界のどこかにいて、真っ直ぐ育っているという事実は舞子にとって何物にも換えがたい宝物となった
「しばらくあの店にも行っていないから、今度の休みの時にでも行ってみようかな」
「誰か、ねえねえ誰か」
スタジオ特有のざわめきの中、頭の中でクリアに響いたその声は、れいなの声にそっくりだった
急に胸騒ぎがしてきた舞子は、見えるはずも無いのに空を見上げた
スタジオの天井に遮られた空を
「あちゃー、今日も休業か」
行きつけの喫茶リゾナントの前であなたは落胆する
ボーイッシュで、ロリで、お姫様な店主と、ヤンキーの入ったウエイトレス
空気を和ませるアルバイト、疲れを癒してくれるリゾットに本格派のコーヒー
ある日偶然入ったその日から行きつけとなったその店に休業のボードが掲げられて
早くも5日
「まさか、もうあの娘たちに会えないなんて無いよな」と思いながら、踵を返して家に帰ろうとした時、その声を感じた
「誰か、ねえねえ誰か」
リゾナンターと関った人達からそうでない人たちへその声は伝わっていった
最初は不審に思った人たちも、空を見上げた時、そのことを感じた
9人の少女達の物語を
能力ゆえに受けた迫害の日々を
少女達が果敢にも運命から逃げなかったことを
世界の為に人知れず苦闘の日々を送っていた事を
そして現在も南海の無人島で、傷だらけになりながら戦っていることを
頭で考えたら到底受け入れられない真実を、人々は心で感じ、涙した
やがて世界中の人々は右手を高々と上げた
そうすれば少女達に感謝と共感が伝わるかと信じているかのように
もしその瞬間、宇宙空間から地球を観察している人がいたなら目撃しただろう
無数の核兵器が生み出す破滅の閃光を
その直前に地表を蒼い光が覆ったことを
殺戮から命を守るかのように
世界中は孤独な魂で満ちている
孤独な魂は暗闇に魅せられていく
でもたとえ暗闇に囚われても、誰かの声に耳を傾ければ
誰かの為に声を上げれば、心に一筋の光は生まれるだろう
絶望と悲しみから立ち上がった彼女達、リゾナンターのように
何このドラゴンボールオチ(爆
「共鳴者」の作者さんの話、普通の人間がヒーローを助けるっていうのを
自分なりにやってみようとしたら、こんな風に暴走してしまった
ああ、あとないやいさんの最新の話、リゾナンターが共鳴して多数の人の
心を読むという話にも影響を受けたのかなあ
あれとは逆向きですね
何にせよすまんでしたホゼナント
人の認識の原風景。
意思や感情、思想、論理の集合体。
始まりも終わりもない、混沌の世界。
変容し続けることで認識し、人の意識でそれは形成される。
理解するものではなく、感じるものだった其れ。
やがて其れは、狂暴な存在となって人間に固定化されて理解する。
理解しながらも変容し、イメージは次々と書き換えられていく。
「心」に刻まれたイメージは二重、三重へと膨張し、合成され、徐々に形を求めるようになった。
―――それが、人々が抱く『人間』の本質なのかもしれない。
念写能力(ソートグラフィー)
心の中に思い浮かべている観念を印画紙などに画像として焼き付けるチカラ。
それは超心理学において透視能力とも酷似する。
現前していない感覚の経験をしていない現象や物体が対象となるが、決して予知ではない。
心的イメージは、様々な意識的コントロールの度合いを持つ存在。
やがてそれは一つの"世界"となり、精神的空間の中で生まれ、"具現"した。
幻術(ハルシネーション)
広範囲に存在する対象者の精神を支配するチカラ。
人間の精神面における隙を突いた暗示であり、相手の行動を精神面から抑制してしまう。
精妙な幻術は、見る者にあたかも本物のような感覚を植えつける。
鍛錬を積めばその幻を本物にする事も可能。
だが里沙の精神干渉とは違い、あくまで"後押し"をするモノだ。
それが、小春が初めて発現した異能力であり、"世界"と向き合った瞬間だった。
「…ではこれから取材に入りますので、準備お願いしまーす」
「はーい!」
楽屋のドアが開き、スタッフの姿を確認すると、小春は満面の笑顔で受けた。
ふと、スタッフと入れ違いで入ってきたマネージャーが小春の前にある写真に目を留めた。
その視線に気付いたのか、小春は素早く机の裏へと隠す。
「何だかたくさんあるわね。どこか行ったの?」
「あ、はい。この前のお休みに遊びに行ったんです♪
でも恥ずかしいから見ないで下さいよぉっ」
「へぇ、良かったらその話も記事に載せてもらわない?
今回は日常的な話も入れ込んでもらおうと思ってたところだから」
「ホントですか?じゃあどれか貼り付けてもらっちゃおうかなぁ♪」
「じゃああっちで待ってるから、なるべく早くね」
「はーい☆」
ドアが閉まる音が鳴った途端、小春は満面の笑顔を文字通り"消した"。
再び写真へと視線を落とし、溜息を吐く。
"此れ"をあんな子供向けの雑誌になんかに載せたら刺激が強いだろうな。
他人事のように思い、一枚を手に取る。それは、"世界"に存在する有り触れた情景。
ダークネスという『闇』が生み出すイメージ。久住小春の"具現化した"空間。
―――それは、まさに地獄絵図のよう。
鉛色の雲に覆われ、果てしない砂埃に閉ざされた戦場。
誰も彼もが死んで、死んで、ただ死んでいった。
血に染まる世界に吹き荒れていた激しい風はいつしか止み、静寂に包まれている。
異能力によってすり鉢状に陥没する幾つもの地面。
建ち並ぶコンクリートの残骸はガラス状に融解したまま尚も赤熱し
この地に叩きつけられた攻撃の凄まじさを物語っていた。
戦場跡を歩くと、爆発に巻き込まれて炭化した亡骸があちらの構成員によって運ばれていく。
銃殺や刺殺、撲殺に絞殺という何十もの「殺し合い」。
闇に取り込まれたような黒い服を血に染め、苦悶に見開かれた目を空に向け
小さな手を必死に伸ばして事切れた、まだ幼い『敵』
だが、これは戦闘なんかではない。異能力自体の『虐殺』だ。
自分と全く変わらない、子供たちの亡骸が其処には映し出されていた。
これが、―――小春が感じているイメージ。いつか来るかもしれない、『闇』のイメージ。
「力を貸してほしい。私たちには仲間が必要なの」
そういった"リーダー"は、この映像を見たらどう思うだろう。
またあの時の、"逆念写"と偽ったあの時のように。
何も言わずに、この先の"未来"を信じようとするだろうか。
正直言えば、小春はまだあの時を忘れては居ない。
『闇』を消すためのリゾナンターの中に居ると思われる『裏切り者』。
あの時は大半が小春に対して良くは思って居なかった。
それでも、それを分かっていながらあの提案をしたのだ。
"仲間"の居る中で抱き続ける孤独が、そう叫んでいたから。
「…私は、皆とは違うんだから…」
写真を無造作に鞄へと押し入れると、小春は部屋を出た。
今は仕事だけを考えよう。今は、今だけは『久住小春』ではないのだ。
―――不穏な気配は、そのスタジオ全体を覆い尽くしていた。
これが、ダークネスが科学的に開発したという『結界』だろうか。
「…久住小春ちゃんだね」
「貴方がダークネスの人?」
「別にそんなに警戒しなくても良いよ。私は何もしないから」
作られたセットの椅子に、笑みを浮かべる白衣を着た女性が座っている。
照明や家具もそのままな上に、女性の趣味なのだろうか。
テーブルには二人分の紅茶とケーキが置かれてあった。
「何だか喫茶店チックで良いね。こういうところで食べるのなんていつ振りだろ」
「…用件を早く言ってください」
「毒物なんて入れてないよ。糖分は脳にとって重要な栄養源。
無粋な真似をするなんて愚かだと思わない?」
そう言い、女性はフォークで切り取り、口に入れる。
それでも小春は一切の油断を見せないように椅子へと座り、ただ見据えた。
「しょうがない」とでも言いたそうに溜息を吐くと、紅茶を一口含む。
「何かアレだね。肝が据わってるって言うか、私が居たことの疑問とか、動揺が全く無いね」
「…そっちがリゾナンターに対して何かあるとしたら、一つしかないじゃない」
「あーうん、普通に考えればそうなんだろうけど。あのさゆが"教育係"とは思えないなって」
―――ピクリと、小春の顔が曇る。
あさ美は何事も無かったかのようにケーキへとフォークを刺す。
気を緩むな。警戒しろ。そう自身に言い聞かせながら、小春は苛立つのを堪える。
相手は科学者。人間という一つの実験体を知り尽くしている存在。
呑まれれば、負ける。
「…道重さんを、知ってるんですね」
「うん。知ってるよ、あの子のクセとか性格とか、能力とか全部」
「自慢みたいに聞こえるんですけど」
「悔しい?」
「そんな訳ないじゃないですか、ただの教育係ですよ?」
「そっか。あとれいなも知ってるよ。あの子は人見知りだから、貴方の扱い
もそうとう不器用なんじゃない?」
「…そうですね。もう完全に嫌われたほうがスッキリするんですけど」
「でもあの子は優しいから、戦いでも前線で戦ってるんだろうね。
貴方達を守ろうって躍起になる姿が簡単に浮かぶよ」
動揺を誘うための心理的言動。この場作りもその為。
嫌な性格、小春はそう思い、わざと溜息を大きく吐いた。
「…まさかそんな話をするためにこんな事をしたんですか?」
「怒ってる?」
「理解が出来ないだけです」
「じゃあここからは別に独り言だって思っても良いよ。強制はしないから」
「……」
「小春ちゃんはさ、トッペルゲンガーって知ってる?」
ドッペルケンガー。二重の歩く者。
生きている人間の霊的な生き写しであり、自身と瓜二つの身なりを持つ存在。
そして、邪悪なモノだとされている。
自分の姿を第三者が違うところで見たり、自分で違う自分を見る現象が此れの成り立ち。
「「寿命が尽きる寸前の証」っていう伝承があったから、人間は
『闇』だって恐れていたんだろうね、まるで自分が自分を殺しに来るって」
だがこの現象にはある科学者の研究によって解明された結果が在る。
それは脳のある領域に脳腫瘍ができた患者が見るというもの。
この脳の領域は身体的心像を司ると考えられ、機能が損なわれると認識上の感覚を消失する。
そしてあたかも「もう一人の自分」が存在するかのように錯覚するというモノだ。
他にも脳腫瘍に限らず、血流の変動による脳の機能の低下によっても起こる事が判明されている。
「このように脳がなんらかの機能障害を患い、死期が近い人がドッペルゲンガーを見る
っていう事からその伝承が生まれた、で終われば良いんだけど、第三者の目撃が
認められているうちは、まだオカルト的見解が残ってるってワケ」
「…それが、何なんですか?」
「うん、まぁこれからが本番なんだけど、そもそもこの研究の大本って何だと思う?」
「おおもと…?」
「このトッペルゲンガーっていう存在が出来た理由…みたいなものかな」
「それは、その脳の病気が…」
「それは結果だよ。トッペルゲンガーっていうものが『闇』だって思われたそもそもの理由」
自身と同じ存在を第三者が見たり、自分自身で見る現象の成り立ち。
人の中で歪んだ混沌の世界という心理的空間から生まれた感情。―――それは、恐怖。
「先入観、いえば固定観念だよ。人は『闇』が恐ろしいものだっていうのが当たり前になってるんだ。
それが通常ありえないものへと変えて、人へ人へと巡っていく。小春ちゃんに近いものだと、イメージかな」
「イメージ…」
「人は自分で認識しないと納得しない。認識できないものが怖いから。
そしてイメージは人の形をしていく、それがトッペルゲンガーが出来た理由だと私は思ってる」
「…でもそれはあなたの仮説ですよね?」
「多重人格っていうのがあるほどだから、間違っては無いんじゃない?
それに、小春ちゃんも分からないことは無いでしょ?」
「……」
「心の中に思い浮かべている観念を映し出す念写能力の保持者であり
他者のイメージの中で生まれた『月島きらり』という人間が居る貴方なら」
「……っ」
『月島きらり』
それは、この"世界"の『久住小春』の名前だ。
デビューからわずかな時間で芸能界におけるトップアイドルの座に上り詰めたという経歴によって
普通の田舎者の女の子がトップアイドルへというその道に誰もが憧れ、希望を抱く。
―――それが、小春に"世界"が示したイメージそのものだった。
「常識?非常識?そんなのは自分の中にある心が決めるんだよ。
全ての科学も解明者によって結果付けられたものに過ぎない。
だから貴方にも興味はあるんだよね、心像世界と現実世界を行き来して尚も『光』を求め続けてるその心が」
「…小春は…」
「『闇』が怖いっていうのは貴方の固定観念だよ。
トッペルゲンガーという自身ではない自分に怖がるように、『光』という常識に
捉われてる内は、ただただ怯え続けるだけ。
まぁ違いがあるとすれば、貴方の異能力は病的なものじゃないって事かな」
「……」
「同時に、『光』がまた希望だっていうのも、人の固定観念だと思わない?」
「ぇ…?」
「光に頼ったままだと、頼りすぎて自分ひとりじゃ『闇』の中も歩けない。
だからだよね、貴方がまだ、あそこに慣れてないのは」
―――言葉が、出てこなかった。
小春は愛のように精神感応は持っていない。
だがこの職業についてから、人間の中にある意識、思想なモノは手に取るように分かった。
だから信じられない、信じるのが怖い。
自分にとって『光』だと思っていた道が、結果的には『闇』だった事に気付かされた。
だから、"仲間"なんてものに執着心を感じたのかもしれない。
自分を裏切らない、信じられるかもしれない、分かり合えるかもしれない。
そこに形となって出来た『光』ならまだ、救いがあるかもしれない。
―――そして出てきたのは、『裏切り者』という『闇』
「…じゃ、そろそろ予定時刻だから帰るね」
気付くと、女性の前にあったケーキは全て無くなり、お皿さえも消えていた。
立ち上がり、耳に手をかざして何かを呟くのを見て小春は慌てて立ち上がると、女性に叫んだ。
「だからって、闇が希望だなんて思わない!」
「それも先入観だよ。『光』の中でただただ見てるだけだからそう言えるの。
『闇』だけに全部押し付けてる間は、チカラを完全に使いこなせる事は絶対に無いんだよ」
「…っ、私、貴方が嫌いです」
「……私は紺野あさ美って言うの、久住小春ちゃん。それと、その気の強さがアダにならない様にね。」
笑みを浮かべて、あさ美は消えた。
瞬間、異様な空気は無くなり、何事も無かったかのように人が集まってきた。
マネージャーがスタッフと話をしていた後、小春に気付く。
「ごめんなさい。ちょっと手違いがあって時間が遅く……?どうしたの?」
「…なんでも、ない」
「…?あら、何でケーキがここに……」
―――それはあなた自身が向き合わなければいけない問題だから
あの時の感情に似たモノが、身体の中で沸き立つ。
「小春だって、分かってるよ…そんなこと…」
下唇を噛み、小春が呟いた言葉は誰にも知られること無く闇に消えた。
一瞬パチリと、手に煌く一筋の光さえも。
以上です。
何だかいろんな作品とリゾナントさせて頂きながら迷走しているのがバレb(ry
しかもいろいろと消化しにくい駄文で申し訳ないですorz
>>576
お疲れ様です。
普通の人間がヒーローを助けるというのはなかなか魅力的ですよね(笑)
自分も共鳴者の作者さんの作品にはかなり影響を受けているような…。
ではもう一眠り…は出来ませんね(苦笑)仕事の準備します。
たくさん来てる!!嬉しい!
通勤の電車の中で読ませてもらいます!
このところ作品投下の勢いすごすぎやしませんか?w
>>576
最終回っぽくていいですね
過去にリゾナンターと関わった人たちが出てきたところでテンション上がりました
共鳴の力はリゾナンターだけでなく、全ての人に降り注ぐ
お約束かもしれませんが、胸が熱くなりました
>>587
相変わらずレベルたっけーですねw
念写と幻術って別個の能力だと思ってたけど関連し合ってたんですね
そこからもうひとりの自分とドッペルゲンガーの話に繋げたり
さらに光と闇の話に繋げたり…ほんと発想がすごいです
>>576
共鳴者さんの話は本当人に影響を与えてくれましたね
ドラゴンボール的な話とのことですがこういう話大好きです
アレンジリゾナント?ありがとうございました
>>587
相変わらず丁寧に練り込まれた能力設定に人物達の魅力が
詰まってますねいやはやどこからその発想がわくのか教えて欲しいものですw
今日も1日頑張っていきまっしょい!
既存の設定を上手く使いながら独自の発想で流麗な文章・・・
人物描写も魅力的でまさに完璧です!な作品具合に嘆息します
嫉ましいくらいの才能ですねえw
色んな作品にリゾナントして・・・という部分は特にこのスレにおける理想形と言えるかもしれませんね
これより現場の保全を開始します
引き続き保全します
カッコぃぃ?
リゾナンターの受け入れ準備完了、待機中
>>596
職務意識にちょっとした変化が起きただけさ
周辺エリアの保全をダブルチェックで確認・・
リゾナンターを新宿へ転送開始
E班の連中がダークネスの奇襲を受けて大変な事に…!
至急応答願う! ダークネスの小隊に奇襲攻撃を受けた!
銃火器にて応戦中だが、持ちこたえられそうにない!
本隊の応援を要請する!
被害状況は、負傷者5名、死者3名!
至急応援ねがう!至急応援ねが・・・・・・・・
>>587です。
ご感想有難う御座います(平伏)
能力に関してはほぼ自分の推測の中の産物なのですが
>>9にまとめてくださっているのを拝見すると
どこか複数能力保持には共通点があるような気がしまして。
こうして能力の見解をさせて頂けるのは、作者さんや作品のおかげ
だと思ってます、改めてお礼を申し上げます。
…作品のタイトルなのですが、さてどうしよう(滝汗)
後方支援本部の司令を担当する准尉はその頭脳を巡らせ知識と経験から
部隊に出すべき指示を検討していた。
「准尉! ご決断を!」
逸る下士官を制し、准尉は忙しく動き回る人員を睥睨し、口を開いた。
「諸君に尋ねる。報告によれば敵は一個小隊、場合によっては中隊以上を
投入している懸念もある。対して我々から出せる戦闘要員は分隊がせいぜいだ。
圧倒的な火力の不利もあるだろう」
「では准尉は、部下を見捨てるおつもりですか?!」
「そう急くな。その前に、我々後方支援部の任務はなんだ。そこの士長、答えろ」
「はっ! 現場の保全、及び"異常"収束までの前線戦闘員への支援であります!」
「その通りだ。では諸君、敵の小隊はその任務を担った我々にとって何だ?」
「保全の妨げになる危険度の著しく高い、排除すべき要因と考えます!」
「よろしい。ではやることは決まっている。通信、衛生、その他非戦闘員も今すぐ
予備の火器を装備しろ。私も含め全員で出る。敵は保全区域から一人残らず排除だ。
生死は問わん! 以上だ!」
『了解しましたッ!』
下痢に侵されながら到着
准尉に惚れた!
「ドクターマルシェそれは違うわ、思想は感情に宿るのよ」
・・・
一人のホゼナンターは言う。
「新しい波が生まれたよ、共鳴によって。闇の波動は打ち消される」
ダークネスホゼナンターは空虚な心を隠そうともせずに吐き捨てる。
「無意味だね、ヌーヴェルヴァーグも過去の遺物になる」
保全
E班の生存者は一体何を見たのか・・・!?気になるぜぇ
■ 良スレじゃ
oノハヽo
从*・゚。゚・) /ヽ
(゚。ヽy/。゚jつX) ●.)
<,,ノ∞ヽ,,> \ノ バッ
.( # # # # # # )
リ…ゾナントイ…エローです……こちらの情勢は現在不…利な状況です…
…生存者が居るのなら……援軍を…援軍という名のリクを…お願…いしま…す…
「保全 SIDE Darkness」にリゾナントと言うか、対抗した作品が読んでみたいです
闇に魅了されて取り込まれてゆく人を救うような話が読んでみたいです
自分で書いてみようとしたけど上手く書けなかったので放り出してしまいましたもので・・・
ないやいさんならどう書くのかなぁなんて思ったりして・・・
>>577-586
この作品の闇に対する問答も最高に面白かったもので
なんかそれぞれの作者さんの闇に対する回答が読んでみたくなったりしました
了解です…あえて自作の中で明確な正義・悪を書いていない自分ですが
この話を書くことは自分自身へのステップアップとなるだろうと思うので
今までの中で最高難度のリクエストでありますが受けさせてもらいます
まったりとお待ち下さい(そしてまだまだリクは受付中ですと言っておくw
ありがとうございます!
楽しみに待ってます!
ちくしょうめ。・゚・(ノД`)・゚・
お前がいなきゃ前線も安心して戦えない
全員で戦ってるんだよ
解除後初ホゼナント
それはあまりに弱いチカラ
しかしそのチカラがあればこそ世界は保たれる
そしてそれは・・・全ての者がが持つチカラ
彼女達が駆けつけてくれるその瞬間まで持ちこたえろ!!!
共鳴しあったとき それは強く・・・蒼い光を放つ
まとめサイトにあるみつジュンの話とリンリンカテゴリーの
最新作(みつジュン話とリンクされています)に続く話となります
注意事項は下記の通り
・7レス分(最新レスから10分以上経っても何もない場合はしたらばのアク禁スレを見てあげてください
・こんなのなちガキじゃないやい
・切ない系
以上となりますそれでは18時までもう少々お待ち下さい
まだまだ、教えてもらった通りに動けているとは思えないけど、
努力すればした分だけ、思った自分に近づけている気がして。
また夜にでも訓練をしようと思いながらタオル片手に歩く里沙の耳に届く、優しい歌声。
(誰だろう、すごく綺麗で優しい声だなぁ)
その歌声はそっと、里沙の心を包み込むような温かさを持って辺りに響いている。
まるで歌手のような、聴く者の胸を打つ歌声に引き寄せられるように、里沙は声のする方へと歩みを進めた。
一歩一歩歩みを進めるごとに大きくなる歌声。
その歌声に酔いしれながら、里沙は基地の中にある中庭へと足を踏み入れた。
里沙の目に飛び込んできたのは、よく見慣れた後ろ姿。
短い栗色の髪の毛が風に揺れていた。
そして、風に乗って辺りに響く優しい歌声。
その歌を邪魔することは憚られて。
気配を殺しながら、里沙はその場に座り込む。
目を伏せて、その歌声に耳を傾ける里沙。
心地よいメロディは、疲れた里沙の心を静かに、確かに癒していく。
心の中の澱を拭い去るような歌声に、いつしか里沙の頬に光を反射しながら筋を描く涙。
悲しい時にだけ涙は流れるものではないのだと、その歌声は教えてくれているようだった。
やがて、途切れる歌声。
そう言って、里沙の方に歩いてくる彼女。
ともすれば、自分よりも年下に見える彼女。
出会った時の神々しさを感じさせないくらい幼い微笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩み寄ってきて。
その微笑みに、自然と自分の口元に笑みが浮かぶのを感じながら、里沙は答えを返す。
「こんにちわ、安倍さん。
実はさっきからそこで、歌を聴かせてもらってました」
里沙の言葉に、もー、と言いながら里沙の肩をペシペシと叩く仕草。
その仕草は、同性であっても思わず可愛いと思ってしまうくらい、幼くて微笑ましい。
とてもじゃないが、あの日里沙を絶望から掬い上げた人とは思えなかった。
安倍さんと里沙が声をかけた彼女…安倍なつみは、微笑みを崩すことなく里沙の目を覗き込む。
綺麗な瞳だなと、自分で感じていることなのに他人事のように思いながら、その瞳を見つめ返す里沙。
里沙の肩に触れていた手が、そっと里沙の頭へと伸びる。
二度、三度、軽く頭をポンポンと叩かれる感触。
「んー、ガキさん、疲れてるんじゃない?
訓練はもちろん大事なことだけど、無理しすぎると自分のためにはならないよ」
「でも、早く、皆のためにも役に立ちたいですし」
あの日、里沙を絶望から掬い上げてくれたなつみが居る組織である、『M』。
そこに集う人達の優しさに、期待に応えたいと想う。
一日でも早く、皆の助けになりたい。
なつみは微笑みを崩すことなく、頭に置いていた手をそっと里沙の頬へと滑らせる。
そして、もう片方の手も里沙の頬へと沿えて。
「ちょっとぉ、あへさん、はなしてくらはいー」
「あのね、役に立ちたいとかそういう考えを持つことは確かに大事なんだけど。
でも、少しでも早くとか、そうやって自分を追いつめていこうとしなくてもいいんだよ。
自分のペースでいいの、今は緊迫した場面じゃないから」
「そうなのかもしれませんけろ、っていうか、はなしてくらはいよー」
なかなか自分の頬から手を離そうとしないなつみに、頬をつねられたまま声を出すものだから。
間抜けな返事になってしまうのは仕方がない。
仕方がないのに、里沙に対して遠慮することなくお腹を抱えて笑い出すなつみ。
心の底から楽しそうに笑うなつみの姿に。
頬をつねられて間抜けな姿を晒してしまうことになったことすら、何だか許せてしまう。
不思議な人だなと、改めて想った。
初めて出会った時、銀色の光をたなびかせて目の前に降り立った背中。
その時とはまるで違う、無邪気で幼い姿。
だけど、同じ人なのだと普通に思えるのは。
その背中に羽が生えているように見えるからかもしれないと、漠然と思った。
お返ししてやろうと、手を伸ばせば。
笑いながら里沙の手を取って、ちょっと散歩に付き合ってもらおうかなと言うなつみ。
散歩って何処へと聞き返すよりも先に、なつみの体から放たれる銀色の光。
「ちょ、浮いてる浮いてる!何で!」
「地面を歩くのも好きなんだけどねー、あたし、空の散歩も好きなんだよねー。
と、いうわけで、ガキさんあたしの散歩に付き合って」
そう言って、なつみは里沙を抱えて上空目指して浮上する。
いつの間に、言霊能力を発動したというのだろうか。
言霊を発した様子はどこにもないのに、何故空を飛ぶことが出来るのだろう。
考え込む里沙を見て、なつみは微笑みながら口を開く。
「ふふ、言霊を発する時の力、それを応用させてもらったんだべ。
あたしの、事象を具現化する力、それを上昇する力に変換してるんだ」
「そんなこと出来るんですね…すごいなぁ…」
「といっても、さすがに本来の力の使い方を無理矢理変えてるから
浮いたり、ちょこっと動き回るくらいしか出来ないんだよねー。
マンガみたいにビューンって速度で飛び回るのはさすがに無理だなぁ」
なつみはそう言いながら、里沙が怖がらない程度の速度でゆっくりと上昇を続ける。
300メートルくらい上昇しただろうか、この辺でいいかなと言って。
里沙の体を支えてくれていた腕がスッと離れて、口をパクパク開いて焦る里沙。
だが、里沙が思ったような事態にはならなかった。
「んー、自分だけじゃなくて他の人にも上昇する力を付与できるのかなって試してみたんだけど。
案外出来るもんだねぇ」
笑いながらサラッとすごいことを言ってのけるなつみ。
血の臭いなんて感じさせない、ともすればこの人は本当に能力者なのだろうかと思うくらいなのに。
あの字は本当なのだと、改めて思い知らされる。
「銀翼の天使」と、他の組織から恐怖と畏敬の念を込めてそう呼ばれるなつみ。
戦うことなくとも、そのすごさをこうして見せつけられて。
また、なつみだけではない、『M』に集う能力者達は少数精鋭と呼ぶに相応しい強い能力を持った者達の集まりなのだ。
ただの洗脳しか使えない自分が、本当にこの集まりの中にいていいのだろうかと心底想う。
圧倒的と呼べるような力を持たぬ自分は、ここにいる意味があるのだろうか、と。
落ち込む里沙の耳に届く、なつみの声。
「ガキさん、ほら、見て見て。
こんだけ高いところにいると、色んなものが見えるよね。
ほら、あそこの人洗濯物干してる。
あ、あっちの人は今から何処か出かけるのかな、楽しそうだよね」
なつみの声に、里沙は視線を右に左にとずらして。
自分も目がいい方だとは思っていたけど、よくそんなに見えるものだなと感心する。
その人達に視線を向けながら、なつみは再び口を開いた。
今はまだ難しいけれど、いつかはそういう風になったらいいなって想う。
ねぇ、ガキさん。
ガキさんは今、ここにいていいのかなとかそういう風に悩んでるみたいだけど。
力の強さだけが全てじゃない、ガキさんの気持ちがあたしや皆と同じならそれだけで充分ここにいる理由になるんだよ。
強いことは大事なことかも知れない、でもそれを全てにしたら大切なことを見失っちゃう。
今のガキさんに必要なのは力の強さじゃない、色んなことを経験して学んでいくことだよ」
なつみの言葉に、里沙の目元にこみ上げてくる熱い滴。
声を出すまいと唇を噛みしめる里沙の横で、なつみは再び歌い始める。
温もりに溢れる歌声に込められる想い。
あの日と同じように抱きしめられながら、あの日とは違った涙を流す里沙。
一緒に訓練をしているわけでもないのに、何で彼女はここまで自分が抱えていた悩みに気付くことが出来るのだろう。
そして、ここまで里沙の心に響く言葉を与えることが出来るのは何故なのだろうか。
なつみが精神感応の能力を持っているなんて話は聞いていない。
それなのに、まるで里沙の心を読めるかのように里沙の心に降り注ぐ、温かな想い。
この人の想いに応えられるだけの人間になりたい、改めてそう想う。
強くなることばかりに気を取られて、見失っていそうになっていた道。
口癖のようになつみの言う言葉の意味が、ようやく分かってきたような気がした。
強い力だけでは叶えられない大きな願いが、確かにある。
力はその願いを叶えるのに必要な要素かもしれないが、その力を使いこなすに充分なだけの心、
それを育てることの方が大事なのだ。
強い力はいとも簡単に人を狂わせる、だからこそ、その力を正しく使うために心を育てなければならない。
―――今はまだ、強い力を求めて自分を追い詰める時期ではないのだ。
落ち着いてきた里沙の耳に届く、もうちょっと一緒に散歩しようかという柔らかい声。
帰ったらきっと、2人揃って何処に行っていたんだと怒られるんだろうなと思いながら。
その声に、とびきりの笑顔で里沙ははい、と返事を返した。
* * *
報告書を書く手を止め、懐かしい記憶に目を細めていた里沙。
あの頃から随分時は流れて、今となってはあれは本当のことだったのだろうかと思うような日々が続いている。
『M』の崩壊、囚われたなつみ、何一つ変わることのない世界。
それでも時は流れ、今という時間を生きていかなければならない。
温かな声が離れていても聞こえてくる。
あの温かな日々によく似た、温かさ。
その温もりに心の全てを委ねて生きていけたらいいのに。
里沙の脳裏に蘇る、拘束具をつけられた痛ましいなつみの姿。
かつて「銀翼の天使」と恐れられた彼女は、その美しい羽根をもがれて飛ぶことはもう叶わなくなった。
自分に力があったのなら、そんな真似をさせたりはしなかったのに。
今も一人孤独に居住室で過ごしているであろうなつみ。
例え、なつみとは共鳴することは出来なくても、同じように孤独な環境に身を置くことが。
それが正しいことなのかはともかく、これが囚われているなつみに自分がしてあげられる唯一のことだから。
聞こえてくる温かな八つの声が奏でる旋律。
―――その旋律に耳を塞ぐように、里沙は音楽のボリュームを上げて再び報告書を書き始めた。
更新は以上となります
空を散歩する二人が目に浮かびました
ええ話や
ほのぼのしました…あれ、目から水が…(ごしごし
本編の次の更新にてダークネスサイドや安倍さんに触れていく予定があったので
急遽こういう話を書いてみました
過去を思い返してリゾナンター達の温かさに流されまいときつく心を閉ざすガキさんの苦悩はいかばかりか
想像していただけたら幸いです(ほのぼのしているのは過去の記憶だけというよく分からない話で申し訳ない
この話のキーワードは「歌」なのですが…次回更新はこの「歌」というキーワードを入れた別の組み合わせをと考えています
バトル成分のない淡々とした展開の話が後2回続く予定ですがよろしくお願いします
今回、[Niigaki](05)116 『孤独の死闘』の続きを勝手にリゾナントし、書かせて頂きました。
(作者様ありがとうございました。)
その他にも色々な作品から設定・名言等お借りしております。全ての方に感謝。
注意:某OGが出ます。
タイトルは全体として『Wingspan』
その中で全3章構成くらいで更新していこうかなと(予定は未定)
それでは、しばしお付き合いください。
「ううっ……」
真冬の海中へ引きずりこまれるような痛覚で目が覚めた時
まだこの体には鼓動が鳴り、かろうじて血が通っているのだと知った。
末端まで石のように冷えた身体。
己の腕できつく抱きしめ、それでもこの確かな痛みで現実なのだと、認識する。
痛みは襲ってくるものの思考回路がうまく回らない。
大切な事があった気がするのに、深いもやがかかったような……
ぼんやり辺りを見回すと、灰色を基調とした、殺風景でがらんとした部屋。
無機質な印象しか与えない机。パイプ椅子。
剥き出しのコンクリートに無造作に投げ出された身体をゆっくりと起こす。
肋骨がきしみ悲鳴を上げ、嫌な汗が背中を伝う感触は里沙の不快感を助長するしかない物であった。
この場所は里沙には見覚えがあった。
間違いなくここはダークネスの……
「……お目覚めかしら?」
「―――ひっ!!」
ぎしりとパイプ椅子が軋む音と共に、背後から急に声を掛けられ、里沙の体は驚きで跳ね上がる。
と、同時に全身に迸る、差し込むような激痛で再びうずくまった。
「そんな吃驚しないでよ、私、ずっとここに居たんだし」
いつか顔を合わせる日が来るだろうとは思っていたけど、こんな形とはね。
そう告げる、里沙にとっても聞き覚えのある低い声。
パイプ椅子に悠然と腰掛けたスーツ姿の女はただ、淡々と事務処理でも行うかの如く里沙に話しかける。
今まさに覚醒したばかり、自身の置かれている状況すら理解し得ない里沙を見やる
女の表情からは何らかの感情すら窺い知ることは出来ない。
「覚えているかしら?何故ここに居るか。どうやってここに来たか」
どうやって―――?
……素直に女の言葉どおりの行動を取るのは癪だが致し方ない、そう判断した。
記憶の最後には、ひと気のない夜道。
対峙する女。そして―――……
搾り出した声は、発生させた本人ですら驚くほど、悲痛な響きを含んでいた。
可能性は低い。だが―――もしもあの時。
己の心の声が誰かと共鳴していたならその人物は間違いなく動くだろう。
……そういう子たちだ。
そして探査中、粛清人と見合っていたとしたら―――
「さぁ、Rはあの通り、血の気が多くてね。
手加減なんて出来ないの知ってるでしょ?
……それより目覚めてみれば、まっ先に自身の心配よりあの子達を心配をするのね、あなた」
これは可笑しな物を見た、といった風に薄く女は笑む。
実際は里沙の『生きたままでの回収』が目的だった。
任務を強制的にではあるが終了させた粛清人は帰還しリゾナンター達と相まみえる事はないのだが、
そういうことで里沙の心情を逆撫でできることを知っている。
女は嘘は言っていないけれど、真実も言っていない。
(仲間の心配をして何が悪いんだ―――……っ!!)
大切なものを貶された不快感。否定された嫌悪感。
ありったけの力を振り絞って睨みつける。無言の抵抗。
記憶の最後を覆い隠すような、薄ぼんやりとした霧が晴れていく。
あの時、粛清人が現れて、それから―――――負けた。
意識の触手を潜り込ませ、女の精神に孤独を思い出させ。
だが、決定的なとどめをさすことは出来なかった。
(お願い、どうか無事で居て……)
己が巻き込んでしまったかもしれない彼女たちを想うとなおさら今、ここでいいようにされるわけにはいかない。
必死で状況打破に繋がる糸口を探す。
女に対する最大限の警戒は解かぬまま。
「Rを止めるのが遅くなったけれど、随分洗脳の能力を使いこなせるようになっているようね。結構なこと。
……実は」
女が語りだす。里沙のその剥き出しの敵意には大して興味もない様子だ。
「新垣里沙、お前が改心し組織に戻るというなら
先だっての無礼を赦す、という話が浮上している」
再び忠誠を尽し、駒と成れ。
頭を垂れ、主の前に傅け。
傍らに携えていた文庫本――里沙が目覚めるまでの退屈凌ぎだったのだろう――を机に伏せ置き、
女が持ちかけてきたのは唐突とも言える取引。
指先まで冷え付いているはずなのに、きつく握られた手は発汗し。
色んな想いがめまぐるしく里沙の中で暴風雨の如き凶暴さとなって暴れている。
赦す。……赦されて何になる?裏切る。……一体何を?
そもそも、自分はどちら側に帰属しているのだろう―――
「…………」
「だんまりか。まぁいいでしょう」
その一言が切欠となる。
先に仕掛けたのは里沙。
女に向け意識の触手を伸ばす。そこに込めるのは、紛れもない敵意。
だが女にもそれは気付かれているようで、心の入り口はロックされている。
無理矢理その先をこじあけようと懸命にもがく、里沙の思惟。
「ふぅん、成程。答えは聞かなくてもよさそうね」
組織に牙を剥いたものの末路を知らないわけでもないでしょうに。
それはまるで、手のかかる子供を窘めるかのような。
【 能力はね、イマジネーションなんだよ 】
(安倍、さん―――)
ギリギリの状況で思い浮かべたのはあの人。
あの日の言葉が里沙の心にフラッシュバックしたかのように舞い戻る。
イマジネーション。
想像することで全ては創造される、と手を取り指導してくれた。
心を鍛えることは、そのまま精神の基礎体力となり柔軟性になると。
想像。そして創造。形は違えども、精神系の能力者が辿り着く到達点。
ゆらゆらと里沙から立ち上るオーラ。
光を宿す眼光は、切り開くべき未来を見据える。
(負けない、負けたくない!死ぬわけにはいかない!こんな所で!)
里沙がイメージしたモノ。それは―――
太さで例えるならば、常々能力の行使に使用する、相手の精神を雁字搦めにし
支配権を握る為の拘束具がロープとすると、対してこちらは蜘蛛の糸。
細い、細い、銅線より、ピアノ線よりも細い、圧倒的不利な状況である里沙の活路にも似たそれ。
大きな標的に意識を裂かせ、伏兵の存在を隠蔽する。
ピンと張られたそれを、隙さえあれば弾丸のように撃ち込む!
気配を押し殺し、契機を待つ。
女の精神のロックが一瞬でも緩む、その瞬間を。
「そうそう……本来ならありえる筈もないと思わない?この話。
実は裏があるのよ。
上に持ちかけて強引に通した人物が居る―――新垣里沙、あなたもよく知っている筈」
裏ならばそんなに簡単に露見させていいのかという思いの外に
それに該当する人物を想像してしまう。
彼女なら言い出しかねない、と。
ただの狂言であってほしいと。
がり、と爪がコンクリートを引っかく音が微かに響く。
「…………ま、さか」
「物わかりが早くて助かるわ。
―――安倍なつみを裏切る事ができるの?信奉者のあなたに」
安倍なつみ。
その名前を出されたとき、ピンと緊張に張り巡らされた里沙の心は揺らぐ。
ぐらりと地面が歪む感覚は錯覚だと理解はしているのに
反して足が崩れていきそうな感覚は正しく動揺から来ているのだろう。
彼女が、戻ってくることを望んでいると女は告げる。
憧れ、恋にも似た焦燥を抱く里沙にとっての恩人であり、唯一絶対神が。
「……嘘、だ!」
「残念ながら、事実。彼女はそれを望んでいる。
全く、随分目を掛けてもらって、更に便宜を図ってもらって……」
そう、発した瞬間。
女の心の隙間がほんの少し、揺らいだ。
(……今っ!)
女の意識の入り口へ潜る弾を撃つ!
そして、マインドコントロールを開始。
以上、第一章の前編でした。
ないやいさんが偶然にもなちガキを書かれているのにこの差はなんだとorz
さて、ここまで読まれてお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが
真にリゾナントしているのは
テンプレの>>2
>でも悩んでるんだリゾナンダーたちの優しさに触れて
>そして最終回で彼女は決断を迫られることになる・・・
この部分です。
次回、第一章後編はまた近いうちに。
そして遅くなりましたが>>510の作者です。感想有難うございました。予想以上の反響に驚いております。
だからこの作者、英語は苦手だと何度言ったら(ry
ご指摘のあった部分の修正版を鋭意作成中です…まとめさんにこっそり差し替え掲載お願いするつもりです…
いつも本当にすいません…
偶然って重なるものですねまさか自分も自作の後になちガキがくるとは
思っていなかったのでびっくりさせてもらいました
そして>>510の作者さんでもあったということにさらにびっくりです
どんだけ色々出来るんだと本気でびっくりさせてもらいました
話の方もまた読者をじらしまくるところで終わっているのが心憎いw
続きを心待ちにしています
続きが気になる
発想力と作風の広さに驚いている一人です
>そして最終回で彼女は決断を迫られることになる・・・
ということはこれ、最終回ですか・・・
続きに期待します
よろしくお願いします
・短い
・こんなの愛れなリンじゃないやい
・ようやく本編を補足するような番外編らしい番外編
・かなしみさんの作品の影響を受けているないやいが描くいつか到達するかもしれない未来への可能性(の一つ)
・読後感はきっとさわやか
以上となりますそれでは少しの間お付き合い下さい
その名の通り、能力を使った戦闘や肉弾戦の訓練をするようにと作られた部屋だが。
大抵は外界に影響を与えないような能力の行使と、肉弾戦の訓練にしか使われてはいない部屋。
喫茶リゾナントの営業が終わり、れいなはいつものようにトレーニングルームへと向かう。
早朝は数㎞のランニングをしてからリゾナントの手伝いをして、リゾナントの営業が終わればこうして自らの技を磨くれいな。
いずれ、愛もそのトレーニングに付き合うために部屋に降りてくるだろう。
それまでにウォーミングアップを済ませようとトレーニングルームのドアを開けようとして、れいなはその手を止めた。
僅かな隙間から漏れてくる、伸びやかで力強い歌声。
聞き慣れない歌声に、一体誰が歌っているのだろうという興味が沸いてきた。
だけど、今部屋に足を踏み入れたらその歌声の持ち主の邪魔になる。
歌が終わるまで少し待つか、とれいなは壁に寄りかかって目を伏せた。
楽しそうに響く歌声だが、さすがに部屋の外では何と歌っているのかまでは分からない。
ただ、本当に歌うことが好きなんだろうなというのが聴いていて伝わってくる。
自然と、聴こえてくる歌声に合わせて鼻歌を歌ってしまうれいな。
「…れいな、何してるの?」
「シー、静かにすると、愛ちゃん。
歌の邪魔になる」
後から現れた、ジャージ姿の愛はれいなの言葉にとりあえず口を閉じた。
愛の耳にも届く、優しくも力強い歌声。
ここに居るということは、間違いなくメンバーの誰かである。
メンバーの中にここまで歌が上手い子がいたんだと、愛はれいなと同じように聞き耳を立てながら想う。
何も聞こえなくなったのを確認して、れいながトレーニングルームのドアを開け。
れいな、愛の順に部屋に足を踏み入れる。
「歌ってたの、リンリンやったんか…」
「リンリン、歌めっちゃ上手いとー。
れーな、すごくびっくりした」
2人の驚いた声に、リンリンは振り返って照れくさそうに微笑む。
愛もれいなも、その微笑みに応えながら。
いつもとは違うリンリンの一面が見れたことに、自然と笑顔になる。
リンリンはというと。
2人がジャージ姿なのを見て、今が何時なのか知ったようだ。
2人がジャージ姿、イコール、リゾナントの営業はとっくに終わり。
「あー、高橋サン、田中サン、ごメんなさイ。
歌うノに夢中になっテいましタ…」
そう言って、耳を垂れた犬のように。
申し訳なさそうにその場に佇むリンリンに、愛は笑って声をかける。
「別に気にしなくていいんやよ。
何だったら、もっと歌っていけばいいがし。
ね、れいな」
歌のトレーニングをしたって別にいいとれいなは思うっちゃ。
っていうか、歌ってた歌、あれってどういう曲なのか教えてほしいと」
愛とれいなの言葉に、リンリンの表情は申し訳なさそうなそれから穏やかな笑顔に変わる。
リンリンの笑顔に、愛もれいなも笑顔になって。
心と心が繋がって、温かな想いが溢れていく。
独特の感覚は、言葉に表すことが出来ない複雑な想いまでも繋ぐ「絆」。
リンリンは微笑みながら、曲のタイトルを言う。
そのタイトルを聞いて、聞いたことないという顔になる愛とれいなに。
中国の歌ですからと言って、小さく笑うリンリン。
「この曲、中国にイた時からズっと歌っテきた歌でス。
この歌にハ、未来への希望が込めラれていまス。
この歌を歌うト、心に力が沸いてクるんでス」
希望を噛みしめるように言葉を紡ぐリンリンの姿は。
いつか本当に、幸せな未来が訪れると信じて祈りを捧げる信仰者のようでもあり。
その希望を心の拠り所としながら日々を生きる、普通の一般人のようでもあった。
生まれ持った特異な力のために、リンリンもまた自分達と同じように苦しんできたのだろう。
あまり、中国に居た頃のことを話さないリンリン。
話さないのは、言いたくない何かがあるからかもしれない。
空気が少し変わったことに気付いたリンリンは、慌てて言葉を紡ぐ。
そしタら、歌手になりたイって思っテるんでス。
ダークネスを倒スくらイ難しいこトかもシれませんけド、きっト、ダークネスを倒すコとが出来タら。
その夢モきっト、叶う気がスるんデす」
リンリンの言葉に、愛とれいなにそれぞれ生まれる想い。
生まれ持ってきた能力に気付かずに居た頃、今のリンリンと同じように未来の自分を夢見ていた。
愛は舞台で歌い踊りながら熱演する女優。
れいなはテレビ番組で皆を笑わせるバラエティタレント。
いつしか、そんな夢は見なくなった。
人と違うものを持って生まれてきたことに気付き、自分はけして他の人間と同じような人生は歩めないと気付いたその時。
その時に描いていた未来は跡形もなく消え去り、今はダークネスとの戦いに身を投じている。
人の夢と書いて儚という字になる。
人の夢は儚いのか。
叶うことなく消えてしまうから、儚いのか。
戦いに身を投じ、いつしか忘れていった想い描く理想の未来。
2人の胸に蘇ってくる、あの頃の純粋な想い。
ダークネスを倒すということは、とても困難なことかもしれない。
だけど、それをすることが出来たらきっと。
あの頃想い描いていた未来に向かって、新しい日々を始めることが出来るかも知れなかった。
れいなは微笑みながら、口を開く。
ていうか、皆でアイドルグループ結成して歌うってのも面白いと思わん?
ほら、アイドルって舞台も歌もバラエティも何でも出来るし」
「アイドルって…あ、身近にいたやよ、アイドルの仕事をしてる子が。
小春に色々聞いてみるのもいいかもしれないねー」
「てイうか、久住サンに言えバ今すぐデビューも出来ルかもしレないでス、バッチリデース!」
リンリンの無茶苦茶な物言いに、さすがにそれはないってと2人揃って答えを返して。
しょげかえるリンリンに苦笑いしながら、愛は声をかける。
「ねぇ、リンリン、さっきの歌もう一度歌ってよ。
で、今度はあーしとれいなにも、教えて欲しいな」
「れーなも、歌ってみたいと。
中国語の歌やけん、上手には歌えんかもしれんけど…歌ってみたい」
2人の言葉に、リンリンは微笑みながら頷く。
大きく息を吸い込んで。
トレーニングルームに響く、力強い歌声。
その声に耳を傾けながら、愛とれいなはそのメロディに交互に即興で言葉をのせて。
2つの異なる言語が織りなす、不思議な歌声が響くトレーニングルーム。
未だ見ぬ未来と自分への希望を描きながら、その歌声は何処までも続く。
この胸に宿る希望がある限り、闇と対峙することに躊躇いはなかった。
―――その歌声は終わらない。
更新は以上になります
リンリンがいい子すぎる(´;ω;`)
ハロ紺の合唱曲…それのリンリンソロパートが頭の中に浮かんできました。
ありがとうないやいさん
‐・)/ο<そう、でも親友が一人死ぬ
(ホゼ)<俺に親友なんて、、、
‐・)<必ず死ぬわ、それでも彼女達を助ける?
リンリン!。゜゜(´□`。)°゜。
川*’ー’)<誰かを犠牲にして得るものに価値などない!
かなしみの者っす ないやい様お疲れさまです
リンリンの純粋で曇りのない歌声心に響きましたよ
上の方が書いた感想の様に自分もあのコンサの合唱が思い浮かび上がってきました
あのリンリンの歌声のチカラ ダークネスの心をも・・・
ダクネス)<ぎゃゃゃゃーーーーぁ!
注意書きにも書いたのですがかなしみさんが以前連載していた次回予告シリーズ
かなしみ戦隊リゾナンターR最終話「Never Forget」
この予告を含めかなしみさんの作品にはものすごい影響受けているないやいが描く
いつか到達するかも知れない未来への可能性というか布石の一つのような話をと思い立って書いてみました
ハロ紺でのリンリンの歌のうまさに感動したからこそ生まれた話です
それとかなしみさんの作品の設定と自作の設定とが複雑に混じり合って不思議なことになっていますがw
次の更新予定の話のキーワードは「名前」です
その話を書いた後存在自体を自分で忘れていた「スパイの憂鬱シリーズ」の続きを書いて
本編の世界を進めていく話を書いていきたいと思いますよろしくお願いします
( ・e・)<ちょっとー、リンリン、燃やしすぎなんだけどー
見上げれば、空はいつもそこにあって、太陽がいつも笑っているからかもしれない。
何がそんなに楽しいのだろうって、思ってた。
ひとりぼっちは、そんなに楽しくないし、哀しくも無いんだから。
あれ?でも、なんか、入ってた。いつの間にか拾ってたもの。
たいせつなものなのかも分からない。
でも、どうしてか捨てられない。何でだろう?何で、懐かしくなるんだろう?
―――あ。いい匂い。
太陽が茂った緑の葉を柔らかに抜けて地面を緩める。
緩やかな日差しでも、見上げていると眩暈がしそうになっても
空は涼しそうに、透き通るような蒼い色だ。
ふと、青々とした草花の絨毯が現れて、遠くからやってきた赤目のうさぎに挨拶する。
森を抜けて尚も森だなんて変なのと思いながら。
淡い光と薄い影が描いたこの場所は、まるで八ミリフィルムで撮った映画のよう。
音楽にはポップで楽しげなやつ。
エレクトリックなメランコリィ、ディストーションギターはとりあえずいらないかな。
誰かのハミングが聴こえてきたなら唄えば良いや。
口とメロディで、愛しい誰かの為に唄を贈ろう。
ここは、いつも誰かの忘れてしまった想い出が、色彩溢れる華となって咲いているから。
当然名前は無いけれど、それでも、美しい花達がある。
ミツバチがせっせと甘い蜜を巣へ運び、光が待ち伏せしながら、風を待っていた。
ここは、ある赤い瞳のうさぎが作った想い出の森。
テーブルの上には紅茶が二人分、淡い白いティーポットに注がれている。
"彼女"は、そこで佇んでいた。
「…こんにちわ」
「こんにちわ」
珍しくやってきた客人に、長い黒髪の"彼女"は微笑んだ。
微笑んだ先に居るのは、茶髪のショートと透き通るような肌を持つ可愛らしい女性。
女性は、"彼女"に笑顔を浮かべて言った。
「とてもいい天気ですね」
「そうですね、ここは、いつも心地が良いから」
「本当に、何か、安心します」
「…ありがとう」
そして"彼女"は、どうぞというように片手で促して椅子へと招いた。
「高橋さん…ですよね」
「ああ、はい。えーと…別に愛って呼んでもらっても良いですよ」
「そういえば、"あの子"は下の名前だったっけ」
「あ、そんなつもりで言ったんじゃ…っ、それにあの子とは雰囲気から違うし…」
弁解しようとして慌てた愛を"彼女"は微笑んで見つめた。
少し恥ずかしそうにして視線を逸らし、頬を掻く愛。
「…ここ、ホントに気持ちのいいところですね」
「ええ」
"彼女"は頷く。
ふと、愛はその膝に乗っている小さなウサギを見つけた。
優しく撫でられている姿を見ていると"彼女"の腕の中はとても居心地が良さそうで
根拠は無いけれど、少しだけ、羨ましく思ってしまう。
充ち満ちているこの場所は、どこか愛に懐かしさを感じさせた。
それでも、いつも太陽が沈む事になるとそれを忘れてしまう。
多分、ずっと独りで居たからだ。
そして"彼女"と愛は、それすらも時々忘れてしまいそうになる。
酷く穏やかな気持ちにになり、寂しさが和らぐと、人は忘れていく。
優しいこと、穏やかなこと、愛しいこと、寂しいことや悲しいこと。
空しいことも迷うことも揺れることも流れることも。
花の色や、空の青ささえも。
それが、『闇』なのではないかと、思っていた。
でも、"彼女"を見ていると、それが本当なのか、分からなくなる。
「ここで、ずっと、何をしてたんですか?」
「何もしてないわ。ただ、この席に座って、この空を眺めてた」
そうしたら、貴方が来てくれた。
「もしかしたら、そのおかげで高橋さんが来てくれたのかも」
「…そうだったら、なんか光栄ですね」
"彼女"が笑うと、愛も素直に笑った。
そよぐ風が傍の樹から、ひとひら青葉がゆたって落ちてくる。
重力に引かれ、緑土に落ちたその姿を見て、時間が流れている事を思い出す。
木漏れ陽の下で大好きな紅茶を入れたら、新しい味がするだろうか。
懐かしい味がするだろうか。
どちらにしても優しい香りがするはずなのは分かってるのに。
それはどこか季節の花が吹くと思い出すように。
新しく感じる色や匂いは、季節の風邪が吹いて想い出が巡ったからこそ感じられる。
それでも、"彼女"に透き通りながら染み込んで来るのは、ツギハギだらけの記憶だけ。
「ここで、ずっと待っててくれたんですか?」
愛が言い、"彼女"の瞳の奥を覗き込む。
そっと、そのツギハギだらけの欠片に触れて。
繰り返してきた"彼女"は、昨日の事でも遠い昔に感じることがある。
過去も未来も、全ては"あの子"と共にあった。
「…あの子は本を読むのが好きで、小さい頃はいつも本を読んでたみたい。
とても難しそうで、私は全く読めなかったけれど」
カップの縁を指でなぞると、振動で紅茶に波紋が生まれる。
「何となく分かるんですよ。あの子が文字を追いかける視線とか、頁の捲る音。
時々居眠りをしていた静かな呼吸とか、私が傍らで感じた全てが幸せのように思えて」
「今でも、そういう姿を見かけます」
「いつも、毛布を掛けてくれる誰かが居て、あの子は凄く嬉しがってますよ」
照れ臭そうに笑う愛はそれでも、"彼女"から視線を逸らすようなことはしない。
表立って行動することは叶わないが、"彼女"も列記とした仲間である。
たとえ悲しみしか生まない戦いへと身を投じる"妹"が想像した"世界"であっても。
それでも、大切な人達が居るから、愛も、行かなければいけない。
今日は、その為にここへ来たのかもしれない。
「…だから、高橋さんにお願いしたいんです。あの子の事を」
「……はい」
"彼女"はそれしか願うことが出来ない。
他の願い事など、この世界によって既に満ちたりているから。
だから、願い続ける。
この蒼い空の下で、"世界"の中で、ただ独り、願い続ける。
カップの中の紅茶は波紋を浮かべ続けている。
それは誰かの涙で。それは誰かのハミングで。
満たされた『光』は惹かれながら消えた。木漏れ陽の中へと消えた。
それでも此処に在ると告げている。ずっと。ずっと赤目のウサギと共に―――。
緩やかな日差しが差し込み、見上げていると眩暈がしそうになる。
空は涼しそうに、透き通るような蒼い色だ。
まだ夢の中?そう思いながら、愛はベットから身体を起こそうとした。
ふと、腕が何かに潰されていることを悟り、愛は気付いて起きるのを辞めた。
さゆみは静かに寝息を立てながら、身体を小さく丸めて眠っている。
自分よりも身長が高いことで、こんなにも真近くで見ることはあまり無かった。
「…この寝顔はいつまでも変わらんやろね」
急に泊めてくださいなんて、理由も言わずに勝手に眠りこけて。
そんなになるまで考えるのは、彼女らしいと言えばそれまでだけれど。
思えば、彼女の涙なんて見た事が無かった。
人前で泣かないというのは愛自身も分かるような気がする上に、ここに集う彼女達は
全員感情を押し殺す事に慣れてしまっている。
心配させない為に、戦っていける為に、下を向かない為に、『闇』に染まらないために。
それに誰かが気付いてあげなければいけないと、"彼女"はそう言いたかったのだろう。
―――昔、遠い昔に、祖母が気付いてくれたように。
「今度、ガキさんと話してどこか遊びに行こうかな…」
紅茶を飲んで一休みも悪くない。
コーヒーでも良し。
ちょっと寄り道して、ちょっと休息して、ちょっとだけここで居眠りすれば。
ほら、また歩き出せるよね。
その為の居場所は、今日も蒼き空の下で開店を迎える。
以上です。
最近能力話ばかり書いていたもので、多少違和感が生じてます(滝汗)
愛ちゃんとシゲさんの姉は食事をする仲というのが某ラジオで発覚。
とりあえず愛さゆ…本当はガキカメを先に投下しようと思ったのですが
どうも少し長くなる感があったので(苦笑)有難う御座いました(平伏)
>>686
リンリンの歌声は残念ながら聞いていないのですが
どうもかなりの上達振りがあったそうですね。
お疲れ様でした、次回も楽しみにしてます。
全編リリカルな美しさと不思議な優しい空気に満ちていて・・・さすがという他ないです
それでいてどこか胸を締め付けるような切なさも漂っていてため息ため息で読ませていただきました
“姉”の存在がさゆみにとってプラスに描かれる話が多くてそれが嬉しいです
自分の中の言葉にならない漠然とした思いをすべて具現化していただいているような
今夜は素敵な夢が見られそうです
素敵なものを読ませてもらいました。
>「何もしてないわ。ただ、この席に座って、この空を眺めてた」
>そうしたら、貴方が来てくれた。 ←ココだけ括弧外すところが素敵・・・
>「もしかしたら、そのおかげで高橋さんが来てくれたのかも」
しっとりした文章に酔わせてもらいました。
このお話のトーンとは真逆の「闇」というキーワードをちりばめたのも
作品に陰影というか深みが与えられていて感動しました。
更新乙です
本当に文章から芳しい香りが漂ってくるような、微笑ましい情景が浮かんでくるような
そんな話ですね
一読者、一ホゼナンダーとしては素敵なお話ありがとうの言葉しか出ませんが
へっぽこ作家としてはハードル上げてくれるなよという恨み言がw
更新乙
詩のような文体が斬新で美しいですね
それだけに校正ミスがもったいない…
今後に期待しています
なんだか不思議と懐かしい気分になりました
子供のころに素敵なおとぎ話と出会ったときの感覚に似てるのかも
でもただのおとぎ話じゃないんですよね。悲しみとか現実とかが見え隠れしてて
すごく切ないんだけど、読んでて心地良かったです
改めて読ませていただきましたが・・・これは本当に色々な意味で凄い作品ですねえ
『光』と『闇』の織り込まれ方にも首を捻って感心します
ここは絶対に保全しろ!!!
やわらかい情景の描写の中で『闇』を語ってるのが新感覚!
乙です
バタバタしていて最近の作品全く読めていませんが
今日帰宅するので明日にはまとめちょっとやろっかなと思います
と、保全代わりに顔を出してみるテスト
車の中でPC?
旅行中?
酔いまっせ
とりあえずシゲさんの脳内イメージを意識しながら文体は
妙に緩さを出してみました(苦笑)
校正ミスは目を瞑ってやって下さいorz
昨日と一昨日は珍しく作品が少なかったような…。
ただ、そういう日もありますよね。
サボリンさん乙です。
>昨日と一昨日は珍しく作品が少なかったような…。
こんだけ頻繁に作品投下が有るスレも珍しいと思いますよww
そうだよなー
他の狼の小説系スレとかと比べるとここは本当に投下が多い
先日がすごい多かったからここ2、3日の投下量が物足りない気になるのかもね…贅沢な悩みだ
なるほど。
軽い発言失礼致しました(平伏)
保全完了S地点を最近ホゼナンター化している
かなしみの者が使わせていただきます!
>>695さんⅡとはいきませんが一応シリーズです
繋がってます・・でも2つだけで終わりです・・でわ
母は知っていた自分が誕生した46億年前から 母は感じていた46億年後に起こる悲劇を
母は考えていた何とかしなければと だから生命を創造した 私を護る存在を・・・
より優れた盾にするために競争させ 時には戦争を誘発させた
やがてチカラを持つ者を生み出す事に成功するのだった・・・だが
チカラを持つ者達は魔女・妖怪・怪物と恐れ言われ チカラを持たぬ役立たずによって
数を減らしていく -予想外だった 母は焦っていた もう時間が無いのだ-
迷いそして心の迷路の先に見出した答え 母は自分のほとんどのチカラを使いあの子を創造した
再びチカラが支配し未来ある世界へレールを戻す為に・・・
-気づいてはいなかったのだ この子こそが母を脅かそうとする存在 予知した悲劇だったことを-
深い日本の海溝から鈍い光 ・・海岸からユックリと歩みだした赤子 腰を抜かした漁師の
口の動きですぐに言葉を学習し 「母よ あどは私にずべて任せで 眠りなざい」
波の音に混じって声が聞こえる『母を護りなさいそしてチカラを持つ者を増やすのです・・
ああ 眠い・・後は任せます・・・』子は何処に繋がっていたか分からぬ臍の緒を引き千切り
「がならずこの世界は護りまずとも・・・でも 母よ私はあなたの理想の子かも知れない
しかし 母よあなだは私の理想する世界ではナカッタ・・ならば あなたも変えてやろう」
次回かなしみ戦隊リゾナンターS 前編「記憶の迷路」
そうその子の口から放たれた言葉は 波の音にかき消され
母の耳には届かなかった・・・
-病院の一室-
札に【愛】と書かれたベットの上で眠る赤ん坊の指に 何者かが
ガラスの指輪をはめる・・・透明なガラスの宝石の色が
イエローに変わりやがてブルーになる
『素質はあるようだが・・・チカラは持っていない・・次だ・・』
-数年後 またあの同じ一室-
札に【里沙】と書かれたベットの上で眠る赤ん坊の指に指輪をはめる
色は強くライトグリーンに輝くとやがてブルーへと
『能力者発見・・この子と家族を監視下に置くように伝えろ』
『分かりました・・しかし 最後に指輪の色がブルーに変わったのは
どうゆう意味なのでしょうか?たしか数年前も1度ありましたが・・・』
『その様なことどうでもよいのだ 今は我らの組織にチカラを持った者を
取り込むことだけ考えろ』『行くぞ 次の任務はワザと泳がしている組織の
能力者の拉致だ 我々との戦いによって使える位までチカラを上げて来たらしい』
2人は目的を果たすと部屋を後にする
何も知らない赤ん坊はいつの間にか起きていたのか 指輪のはめられていた
指を見つめると無邪気に「キャッ! キャッ!」としゃぶると再び眠った・・・
あの者達が落としたのか指輪についてのマニュアルが風に靡いて開く
そこには〔ブルー/救世の光・共鳴・母なる色〕とあった
次回かなしみ戦隊リゾナンターS 後編「C/C(シンデレラ/コンプレックス)」
ttp://toromoni.mine.nu/up/files/data/15/toro15441.jpg
そう指輪だけが知っていた 闇を払うは青い光 浮かび上がる青い星を
またこうしてかなしみさんの作品が見れるなんて思ってなかったから本気で嬉しいです
また何か思いついた時にでもポンっと投下してくださいいつでもいつまでも待ってますから!
相変わらずカッコイイ!
ものすごいドラマチックやないの!!
涙出るねホント
いろんな世界観に展開できそうな所が素晴らしいです。
投下お疲れ様です。
かなしみの者ですが書いてみました久しぶりに
>>695さんやないやいさんの言葉に書きたくなって!・・たった2話だけですがw
以前スケールが大き過ぎ言って封印した話に曲名に合わせてイジリました
そしたら外伝みたいなものになっちゃったw
この曲を使ったのはシンデレラを見に行って共鳴したからに他ありません!
あ~次のシングルタイトルが気になる木になる リゾナンターFとかが
浮かぶようなタイトルだったらイイナーと思いつつ過ごす日々・・
でわでわ~
乙です!
シンデレラうらやましい・・・
次の作品も待ってます!
「隊長、もう保全のネタが尽きました!」
「キツい…こんなにキツい戦いは経験したことがない…」
「まだだ、まだ俺達は戦える…!」
彼らが戦う理由。
守らなければならない場所。
「ぐあああああああああ!」
「ちぃ!もう少し、もう少しなんだ…ここで終わってたまるか!」
次々と傷ついていく彼ら。
このまま力尽きるしかないのか。
『待たせてごめん』
その声と共に彼らの前に降り立ったのは。
蒼い光をたなびかせた9人の少女達。
―――全ての者に告ぐ。蒼き正義に共鳴せよ。
反省はしていない
いやいや反省しなくてもwww
最後にホゼナンター達の満面の笑顔が思わず心に浮かんだ・・
川*^A^)/□<差し入れのバチリミルクでース
保全
睡魔が・・・落ちます闇に・・・
今回は誰かの作品をリゾナントしたわけではなく普通にリゾナンター描いてみました
描き分けはそれぞれのイメージカラーをヒントにお願いします
http://eshiyousei.s4.x-beat.com/upload/data/up0803.png
保全代わりの落書きということで
・・・パンダ?w
カッコイイ!
何のこのポップなセンス!超カッコイイじゃん!
色塗ってポスターにしたい!
カッケェー
アメコミっぽい感じがイイネ
絵は描けないから尊敬するわー
色使いといい構図といいすごいの一言です
構図がかっこいいですね!
今度はジュンジュンが中心になったのもお願いします!
さえみぃぃぃ!!!
え?!
この中にさえみも居るの?
うわー!めちゃくちゃテンション上がった!!
早く仕事を終わらせなければ。
色んな職人さんが居て
ファイルシーク通してみれたよ
http://getimg.fileseek.jp/getimg.cgi?u=eshiyousei%2es4%2ex%2dbeat%2ecom%2fupload%2fdata%2fup0803%2epng
おぉ、こんな方法があったんですね。
今度からはこれで拝見します、有難う御座います(平伏)
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i ヾ:;_川*’ー’)|
l  ̄ ̄...:;:彡|
} . . ...::::;:;;;;;彡{ リゾナン茶に入ったよー
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ヽ、.. .......::::;;;ジ.::::::::::::::::::::::
janeでどうやって見ればいいのか教えてくれ
9スレ以降はジェーンでも見れるぞwww
何故か8スレ以前は見れないけどw
とりあえずまとめサイトに行く
そこにあるdatファイルをlogフォルダへ保存
janeで見るならそんな感じではないでしょうか
まとめサイトにあるhttp://resonant.pockydiary.net/index.cgi?no=113及びその後編を読むと分かりやすいです
注意事項は下記の通り
・標準的な長さ
・こんなのこはみつじゃないやい
・キャラの気持ちにシンクロすると泣ける系
以上になります1時までしばしお待ち下さい
もう一つhttp://resonant.pockydiary.net/index.cgi?no=235 『スカート穿いた王子様』も見ておいて貰えると助かります
logフォルダへ保存ってどうやるの?
datファイルを右クリック保存→保存先を「Janeをインストールしたフォルダ\Logs\2ch\雑談系2\モ娘(狼)」
時刻は午後11時過ぎ、ようやく撮影の仕事を終えた小春は帰途につく。
労働基準法?何それ食べれるのと言いたくなるくらい、朝からみっちりと撮影づくしだった小春。
今日はまだ楽な方だったとは言え、高校生活に加えて不定期にダークネスとの戦闘もある状態。
疲労が溜まってきているのは自覚してるものの、そう簡単に休みが貰えるなら苦労はなかった。
幸い、今日で撮影の方は一段落ついた。
明日からは一週間、普通の女子高校生としての生活。
少しは睡眠時間が増やせそうだなと、スケジュール帳を片手に小春は苦笑いする。
リゾナントへ数日ぶりに顔を出すこともこれなら可能だ。
小春の脳裏に過ぎる、皆の笑顔。
前だったら、こうして疲れた時に誰かの笑顔を思い出すなんてことはなかった。
睡眠時間が増えることだけが嬉しくて、誰かのことを考える余裕なんてなかった日々。
あの時、拾ってきた子猫…ミーの存在がなかったら、今頃は皆とやはり上手くやれていなかったんだろうか。
たらればの仮定に意味はないと分かっていても、ふとそんなことを考えてしまう。
少しは変わってきたつもりだけど、一人で居るとネガティブな面が出てくるのは。
やはり、皆に会えないと寂しいと思うようになったからだと自嘲する。
それはけして悪いことでも何でもないと分かっていても、何だか自分が弱くなったような気がして。
「待たせてごめん、助けにきたよ、お姫様…か」
先日、愛佳が戦いに巻き込まれた時のことを思い出し、ため息をつく小春。
王子様気取りで格好つけたこと言っても、自分は結局王子様でも何でもない。
強くて格好いい自分でいたいと思うから、格好つけたことを言って強がってみても。
結局、こうして一人になると弱い自分が顔を出す。
日頃の疲れが解消しきれていないせいか、アクションシーンでミスを連発し。
何とかアクションシーンを切り抜けても、台詞が抜けてしまって結局NGを連発で出してしまった。
必死に気持ちを立て直して、ようやく最後のカットを撮り終えた時。
監督や他のスタッフのお疲れ様という言葉が、やっと終わりかよいい加減にしろよって言っているように思えて。
泣き出したいのを堪えて、必死にお疲れ様ですと言い返した。
仕事場で泣くのだけは嫌だった。
ましてや、それは誰かのせいじゃなくて不甲斐ない自分が悪いのだから絶対にここでは涙を見せたくない。
そんなことこれっぽっちも思っていないのに、泣けば許して貰えると思ってると思われるのが嫌だから。
マネージャーの話なんて殆ど聞こえていなかった。
話しかけてくる声に、スケジュール通りでいいんですよねと言葉を返して。
送っていくという声を無視して、タクシーに身を滑り込ませた。
(あー、メール送っておこう)
携帯を取り出して、素早くマネージャーに謝りのメールを入れる。
さすがに、今電話で直接話は出来そうもなかったから。
明日にでも、改めて電話で謝ろう。
そうやって、無理矢理にでも気分を切り替えていないと崩れ落ちていきそうだった。
やがて、タクシーは小春のマンションに程近い路地に差し掛かり。
ここでいいですと言って、タクシーのクーポン券を渡して小春はお釣りを受け取ることなく降りた。
時刻はもう午前0時を過ぎた、明日から高校へ行くとなるとグズグズはしていられない。
エントランスを抜け、住民専用の出入り口を解錠し。
小春はエレベーターで最上階を目指す。
そこの最上階の角部屋、そこがまだ15歳という年齢の小春には不相応のお城だった。
1人で住むには広すぎて、使っていない部屋もある。
部屋に入り、電気を点けて。
その場に倒れ込んでしまいたい衝動を堪え、小春は明日の準備に取りかかる。
友達と呼べるかは分からないが、級友の1人に明日の時間割を問うメールを送り。
その間にお風呂のお湯を貯めにお風呂場に行ったり、まだ両手の数程しか着ていない制服を準備し。
そうこうしているうちに返ってきたメールを見て、教科書やノートを鞄に詰め。
高校へ行く準備が出来たのと同時に、小春は着替えを持ってお風呂場へと向かう。
シャワーを浴び、体を洗い。
湯船に身を浸してようやく小春の口から漏れたのは、安堵のため息ではなく、嗚咽。
疲れが溜まっていたとか、言い訳にはならない。
今日の自分は明らかに最低だった。
思うように動かせない体。
完璧に覚えたはずの台詞が思い出せない。
自分1人で番組を作っているわけではない、だからこそ、迷惑をかけないように頑張らなければならなかったのに。
頑張ろうとすればするほど空回って、余計にミスを連発した。
芸能人としての活動と、ダークネスと戦うリゾナンターの一員であることの両立を許してくれた愛。
前こそ戦闘系能力が使えなかったが、今の小春は戦闘系能力も使えるようになり、立派な戦力の一つである。
全員が戦闘能力を持つわけではないリゾナンター。
いつ戦いが起きるか分からない現状で、戦える人間がこうして自分勝手には動き回れない仕事に就いていていいはずがないのに。
自分の我が儘を聞いてもらっているのに、肝心の仕事で人に迷惑をかけてばかりと知れたら。
内心複雑な想いを抱えながらもいいよと言ってくれた愛や、他の皆にも面目が立たない。
しっかりしないとと想う心とは裏腹に、涙が止まる気配はなかった。
幾ら仕事が入っていないとは言え、泣きはらした目を人に見られるのは辛い。
余計な詮索をされてイライラしたくもないし、ただでさえ芸能人ということで嫌でも人より目立つのだ。
たちまち何で泣きはらした目をして登校したのかと噂になるだろうし、そのことで変な噂が一人歩きでもしたら困る。
お風呂からあがり、腫れてきたまぶたを冷やそうとした小春の耳に届く着信音。
聞いただけで、誰から電話がかかってきたのかが分かって、小春は携帯を取ろうか迷う。
その着信音が途切れて、一瞬ホッとしたものの…また携帯は軽やかに着信音を部屋に響かせる。
―――自分の一番好きな歌を着信音に設定した相手。
ため息をつきながら、小春は携帯を手に取って通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『久住さん、こんばんわ…ごめんなさい、夜分遅くに』
「ん、起きてたから別にいいよ」
嘘だった。
本当は、心が乱れている時にこそ一番声を聴きたくない相手。
彼女の前では、強くて格好いい王子様のように振る舞っていたかった。
そうすることを彼女に望まれたわけじゃなくとも。
今日、何か嫌なことありましたやろ』
「直球だね、みっつぃーは。
なかったとは言わないけど、それはみっつぃーには直接関係のないことだよ」
『関係ないことなんてない…久住さんだって分かるやろ?
共鳴という絆に結ばれた愛佳達は、嫌でも何を考えてるのか分かる。
特に、愛佳と久住さんは共鳴の相性がええもん同士。
どんなに久住さんが隠したって、愛佳には伝わってくる』
「…ごめん、でも、話したってみっつぃーには分かんないことだし」
早くこの電話を切りたかった。
明日から高校に行かないといけないし、早く眠りたい。
そう言っている心の声が聞こえているはずなのに。
愛佳が折れる気配はなかった。
黙り込んだ不意をつくように、愛佳の声が携帯ごしに聞こえる。
『久住さん、愛佳には久住さんの抱えてるもんがどんだけのものかなんて全然分からん。
でも、これだけは言える。
久住さん、泣かない子供はけして大人なんかじゃないんです。
辛い時には泣いたってええ、だって愛佳達はまだまだ大人になる途中なんやから』
「みっ…つぃー…」
愛佳の言葉は、強がる自分をいとも簡単に撃ち抜いて素の自分の心までも撃ち抜いた。
芸能界という特殊な世界で、嫌でも大人のように振る舞わなければと想ううちに忘れていたこと。
大人ばかりの世界で必死に大人ぶっても、結局自分はまだまだ子供なのだ。
必死に強がって大人のように振る舞ってた小春の心に、素直にその言葉は響いた。
涙なんか見せずにクールに振る舞う必要なんかない。
少なくとも撮影現場を離れた今は、子供らしく涙を流したっていいのだ。
明日人に見られたら面倒だなとか、そんなことを考えて無理矢理自分の中の衝動に蓋をして。
いつの間にか、気の済むまで大声を上げて泣くなんてことは忘れていた。
『そうそう、人間素直が一番。
大人になったら、どんなに泣きたくても我慢せんとあかん場面だって一杯あるんやし。
今のうちだけやで、泣いても誰も何も文句言わんと許してくれるのは』
「…ありがと、みっつぃー」
『ていうか、こっちが敵いませんもん。
ずっと暗い気持ちに蓋をして無理矢理笑われても、愛佳はちっとも嬉しくない。
むしろ気持ちが共鳴して、こっちも辛くなるし。
泣く時は思い切り泣いて…それで気持ちが切り替わるなら安いもんですって。
だから、今日は…明日学校があるとかそんなこと考えんで、泣けばええ。
目が腫れてても、ウサギみたいに真っ赤な目でも久住さんは可愛いんやから』
「うっさい、もう切る!
おやすみ…愛佳」
『え、ちょ、くす』
泣かされてばかりじゃ、癪だから。
しかし、言ったはいいけれど。
こみ上げてくる恥ずかしさに、涙は何処かへ引っ込んでしまった。
それと同時に、暗い気持ちも。
名前を呼んだのはこれが初めてだった。
もう、親友と言ってもいいくらい仲がよくなったと思うのに。
何故か名前を呼ぶことは躊躇われて、いつも呼べずじまいだったから。
多分、まだまだ、先輩達のように信頼関係を築き上げたとは言い難い関係だからかもしれない。
彼女達は当たり前のようにお互いのことを名前で呼び合う。
いつかは、自分もそれが当然であるかのように愛佳のことを名前で呼ぶのだろうか。
それがいつになるかは分からないけれど、その時はきっと。
こんな言い逃げみたいな形じゃなくて、心を込めてその名を呼びたい。
小さく微笑む小春の携帯に届くメール。
『久住さんが元気になってくれてよかった。おやすみなさい。
あ、いつかは愛佳も久住さんのこと小春って言うつもりやから。
その時はちゃんと、返事してや…小春。』
中途半端に敬語の抜けた、関西弁混じりのメール。
そして、メールの語尾に付け足すように書かれた自分の名前に。
まだまだ自分達に名前で呼び合うという行為は早いなと照れ笑いしながら。
「…愛佳のバーカ」
そう呟いて、小春は携帯を畳んでベッドへと向かう。
暗い気分は跡形もなく消え、心に残ったのは温かな気持ち。
心の中で小さく、ありがとうと呟いて。
―――今夜はよく眠れそうだなと思いながら、小春の意識はゆっくりと微睡みへと沈んでいった。
更新は以上になります
いずれはhttp://resonant.pockydiary.net/index.cgi?no=281 の作品に繋がるような繋がらないような
いつかは現実でも名前を呼び合って欲しいなと思いつつ
またもこはみつかよというツッコミは華麗にスルーする上反省はしない
実際にはどう処分しても良かった。
重要な部分だけ物理的に破壊されてさえいれば良かったのだから、だからわざわざここに来る必要はなかった。
このパソコンの捨て場所にここを選んだのにも特に理由は無い。
強いて理由を挙げるなら何年か前にれいなと一緒にここにロケに訪れて少し土地勘があったという程度だ。
本当に理由はその程度のことだった。
続きがあるのかな
それともどこかの誤爆?
月明かりに照らされたダムの周囲は独特な濃い翠色の薄暗さがあった。まるで深い河の底にいるような。
あたりは恐ろしいほどに静まり返っているのに、投げ入れたパソコンが湖面に大きな波紋を作った音もひどく静かな響きだった。
まるで何里も先から聞こえたきたようなその静かな波音はまわりの山々に染み込み消えていった。
「結局何もかわらなっかた。」
わかりきっていたことだったが、波紋の立った湖面を見つめ私はそう小さく呟いた。
この濁った湖の底にいままでの事は全部沈めたのだ。今度は口に出さずにそう頭の中で何度も繰り返し自分に言い聞かせた。
事件が明るみになろうがならまいが私はもうここで全てを捨てたのだ。
どんな罰を受けようとも構わない、ただもうこの事を他人に話すことはない。
すべてこの湖の底に捨ててしまったのだから。
最後にもう一度自分自身に言い聞かせた。
メールでダメ押しをする光井がウザ可愛いw
目の付け所が変だとは思うけど携帯というツールを使ってマネージャーや
級友に連絡を取るシーンが妙にリズミカルだった
彼らとは単に意志の疎通を図ってただけだけど、光井とのそれは心をやりとり
してるんだろうな
小春の心情がまたPVや曲の歌詞とクロスオーバーして、読んでる側にせまってきた
投下しづらい空気を打破するために、明日の出勤前に保全作品を投下するかも
しないかも
まあ一応言っとくけど、ベタであざといから
そして、今回のこはみつもよかったですよないやいさん、ありがとうございました。
上の方でdatの話になってたけど
Janeなら狼をタブで開いて、スレタイがいっぱい並んでるとこにdatファイルをD&Dすれば
そのdatを狼フォルダに勝手に入れてくれるはずだよ
いい話だけどいい話だけに光井さんのおかしな関西弁が気になってしまいますw
方言は難しいですよね
まあたいした問題じゃないですしねどっちにしろ
心は通じ合ってるのに名前で呼ぶのはためらっちゃう関係って初々しくてなんかいいですね
近い将来、ふたりが名前で呼び合えるくらい信頼関係を築いてくれたらいいな…
リゾナンターの世界においても、現実の世界においても
読んでるとそういや小春はまだ高校生なんだよな…と
そして光井のこと名前で呼んだのはいいけど恥ずかしくなって顔を赤らめる小春を想像してしまいましたw
光井もいいキャラしてますね
今回の作品のキーワードは「名前」ということでこういう展開になりました
方言キャラを書くのが苦手なんですよね…愛さんとれいなはまだ福井弁や博多弁と
いうよりは愛さん弁れいな弁て感じですけどみっつぃーのはどこまでなまらせていいのかいつも悩みます
なので気になる人はとことん気になることでしょうないやいのみっつぃー台詞はorz
最後の締めレスでちょこっと触れましたがあのくらい先の未来の話ではきっと
小春も愛佳も互いを名前で呼んで信頼関係もそれこそ今より遙かに
しっかりしたものを築けてるんじゃないかなと漠然と思ったのが一つ
もう一つは>>179さんのレスを見て小春にみっつぃーのこと愛佳って
呼ばせる話を書いたら憂鬱な気持ちが晴れるかなーと思ったので(本編で悲しい展開を書いていた最中に思いついた
お二方に感謝しつつバトル成分皆無なこういう日常話を受け入れてくれるリゾスレ住人に感謝します
共鳴者さんのようにいつかは全ての人に感謝の気持ちを込めた作品をと思いつつ今後もよろしくお願いします
現実ではシンデレラのおかげですっかりイケメン2号と化している小春
ないやいも小春をそういう系のキャラとして書いてきましたが…小春も女の子なんだよな
辛い時には泣いたりするだろうし落ち込んだりもするだろうなと思ったので
あえて彼女の弱い部分を想像させてもらいました
イケメン属性ありの女の子な小春を好きと言ってもらえたら幸いです
datファイルってまとめサイトからどうやってダウンロードするの?
↓これじゃないの?
http://resonant.pockydiary.net/file/dat/1208090669.dat
datのダウンロードはまとめサイトのdat一覧で該当するもの選んで右クリック→ダウンロード(名前を付けて保存 とか
そこまでアドレスがわかっているのであれば行けるんじゃないかなと思うんですが
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.´,.::::;;:... . . _ `.
i ヾ:;_从*´ ヮ`) |
l  ̄ ̄...:;:彡|
} . . ...::::;:;;;;;彡{ リゾナン茶に入ったけん
i . . ...:::;;;;;彡|
} . .....:::;::;:;;;;彡{
!, . .:.::;:;;;彡j:::::::::::::::.......
ト , . ....,:;:;:=:彳:::::::::::::::::::::::::::..
ヽ、.. .......::::;;;ジ.::::::::::::::::::::::
殿!このお茶は飲んではなりませぬ!!
涙も 悲しみも
でも ときに忘れてはいけない過去も
カコイイし
これってリゾナンターのポーズ!と思ったらDAIGOのポーズだったようですOTL
規制中につきこちらに上げさせて頂きます。
どなたかお気付きになりましたら、本スレに上げてやって下さい。
リゾナンター予告編・i914Ver.というのを作りました。
お時間に余裕があれば見てやって下さい。
****注意事項*****
決してホラーチックではないのですが
血液等の映像が含まれますので
苦手な方はスルーして下さい。
*************
リゾナンター予告編・i914Ver.
http://jp.youtube.com/watch?v=TEsl4BjQ8sA
重くて見づらい場合は低画質の“軽量版”でどうぞ。
http://jp.youtube.com/watch?v=okjGQ60Ysfc
自分もこれから見させていただきます
101 :名無し募集中。。。:2008/08/16(土) 19:48:33
規制中につきこちらに上げさせて頂きます。
どなたかお気付きになりましたら、本スレに上げてやって下さい。
リゾナンター予告編・i914Ver.というのを作りました。
お時間に余裕があれば見てやって下さい。
****注意事項*****
決してホラーチックではないのですが
血液等の映像が含まれますので
苦手な方はスルーして下さい。
*************
リゾナンター予告編・i914Ver.
http://jp.youtube.com/watch?v=TEsl4BjQ8sA
重くて見づらい場合は低画質の“軽量版”でどうぞ。
http://jp.youtube.com/watch?v=okjGQ60Ysfc
超かっけー
超おもしれえwww
瞬間移動が見れるとはwwwww
ああいう使い方すると全然印象が違いますねえ
相変わらずのセンスにクラクラきました
愛ちゃんの笑顔ってこういう風に作ると色々な受け取り方が出来るんですねえ
興奮して発汗しました…暑い…
ほんと此処は色んなことが出来る人がいるな
すげーw
超怖くてゾクゾクしたwww
俺もこんなのしてみたいわ
>>834>>836の予告凄すぎてドキドキしました、ありがとうございます。
アナウンスはうp主の声かな どっからか持ってきたんかな?
とにかく良作ありがとー!!
良質な小説だけじゃなくイラストや動画まで見れるとか楽しすぎ
それ以前に画像のチョイスや編集のセンスが見事ですねえ
前半の不気味さ 後半のカッコよさ そして全体を通じてみると何か物悲しさが漂っていて・・・
是非とも全員分見たいですね
・・・作るのにどれくらいかかるものなのか分かりませんがw
夢の中で、あーしはシンデレラ
性悪の継母と意地悪な二人の義姉に虐められて、灰色の青春を送っとった
でもある日運命が変わったんよ
王子様のお妃候補を見つけるために、お城で舞踏会が開かれたんよ
継母と義姉は着飾って出かけていった
でもあーしは着ていくドレスも、身につける宝石も、履いてく靴も無くて行けんのが
悲しくて、しくしく泣いとった
したら、魔法使いのばっちゃんが現われて、あーしに色んなものを出してくれよった
あーしは喜び勇んで城に出かけて、その後色々あってめでたく王子様のお妃になること
が決まった
え、はしょりすぎやって、しょうがないもん
あーし、話すのは苦手やし
で、継母と義姉は当然縛り首の刑、じゃなく一緒に城で暮らす事になった
まあなんだかんだ言っても家族やしのう
それに死なれてはこれまでの仕返しが出来んからのう、ふふふ
でまあついに婚礼の日を迎えることになったんよ
教会からは偉い司祭様が来てくれて、二人の門出を祝ってくれる事になった
こんなに幸せでええのかのう、と思っとったら案の定不幸がやってきた
「恐れながら、この婚礼の儀に異議があります」
黒い服を着た素敵な男の人がそう言った、ってお前はダークネスの吉澤ひとみやないか
一体こんなとこで何しとんのん
「無礼であろう、折角の二人の門出にケチをつけるとは
たとえ大臣でも許さんぞ」
いやあ、やっぱりあーしの王子様はカッコいいのう
シンデレラと名乗る女性に、看過できぬ証言があり
あえて異を唱えさせていただきました
ことの詮議が終わった後で、私はいかなる処分も受ける覚悟
まずはこちらの女性の言葉に耳を傾けてください」
「大臣たるお主がそこまで申すとは
そちらの女、なんという名だ」
今度は黒いベールを被ったきれいなおねーさんが出てきよった、げ、あんたはミティ
「ご無礼の段は平にご容赦を
私は北の辺境で占いを生業としているヘケートと申します
このたびは王子様の結婚を祝い、お二人の前途を占わせて頂いたところ、 恐ろしい事 が判ったのです
そのシンデレラと申す女は、世にも恐ろしい化け物、その手はこれまでに殺めた人の
血で血塗られております」
「馬鹿な、何を証拠にそんなことを」
「私は真実の鏡という魔法の道具をさる方より預かっております
その鏡に姿を映せば、どんなに偽ろうともその者の真実の姿が判るという
その鏡にその女を映せばたちどころに真実が判明するはず」
「司祭様、どう思われます」
「そのようなマジックアイテムが存在する事は教会の記録にもあります
ただ、そのヘケートと申す女性が持っているのが、本当に真実の鏡なのかは
わかりませんが」
その鏡にあなたのの姿を映してみよう
そうすれば大臣の言ってることが間違いである事がわかるだろう
お前ほど美しくて、優しい女性はこの世にいないこともな」
あーしはなんか嫌やった
嫌で嫌で仕方なくて、断ったけど王子様に無理やり鏡の前に立たされた
鏡を見たあーしは悲鳴を上げて、気を失ってしまった
なんでって、そこには化け物が映っとったからや
あーしは化け物
あーしは人の心も読めるし、何千哩の道のりも一瞬で跳べる
それに何よりあーしは光を飛ばすと、人が消えるんや
悲鳴を上げるまもなく、逝ってしまうんや
せやからか、あーしはある研究施設に入れられとった
そこで何十人、何百人もの人を消さされた
最初はちっちゃな動物
そのうちにあーしと同じように研究所に預けられとる子供
最後は催眠術をかけられた兵隊さん達
あーしがその力を使うんが上手くいくたびに研究所の人たちは喜んでた
でもあーしを見る目は冷たかった
まるで化け物を見るような目やった
あーしは悲しかった
しゃーけど悪い事ばかりでもなかったこんなあーしにも友達みたいなもんが
できたんや
眉毛の凛々しいガキさんと、ほっぺがぷにゅぷにゅしとるあさ美ちゃん
でも何といっても一番最初にあーしに声をかけてくれたあの子、そう…
あーしはドレスも、ティアラも、ガラスの靴もみんなひっぺがされて
肌着一枚にされとった
いや、別にモノは要らんのよ、モノは
ただ王子様の私を見る目が冷たくて、凍えそうで
「シンデレラ、お前は私を騙し、この国を乗っ取ろうとした
その罪は万死に値する
よって、明朝領民の前で処刑にする
大臣、後は任せたぞ」
と言って出て行った
待ってや、王子様、これで終わりなんか
「心得ました
さて、シンデレラ
お前のような化け物の魔力をそのまま放置して処刑しては、死後もこの国に
災いなす事は必定
よってお前の魔力を封印する儀式を執り行う事となった、おいへケート」
何言うとんや、この吉澤ひとみが
あーしから全てを奪っておいて、その上何をする気や
美貴ちゃん、お願いやから助けてーや、後生やから
「名前をつけるということは、その者を支配するということ
だから、あんたからシンデレラという名前を奪って、新しい名前をつけてあげる
入っておいで」
処刑人の手にはジュージューと焼け焦げた焼きごてがあった
処刑人はそれをあーしの顔に押し当てた、何のためらいもなく
熱い筈やのに、熱くてたまらん筈やのに、涙が出なかったのは、もー
あーしの心が死んでたからやろね
「アハハハ、ご覧これがお前の新しい名前
一夜限りの名前
i914っていうのは化け物には勿体ない名前だねえ」
あーしは火傷の手当てもされずに、手足を縛られたまま牢獄にほっておかれた
あー、あーしは死ぬんやなあ
でもしょうがないわ、あーしは化け物やから
そー思っとったら足音が近づいて来たんよ
あー誰かがあーしのことを痛ぶりにきたんや、そー思ってたら牢獄の扉が開いたんや
「大丈夫ですか、シンデレラ
貴女を助けに来ました」
何か逞しそうな男の人が入って来よった
誰やのん
あーしは化け物やで
近づいたらあんたを消してしまうで
「そんなことは無い
貴女ほど心の優しい女性はいない
私はそのことを知っています」
あーしの目から涙がこぼれたんは、この人があーしの心を生き返らせてくれたからやね
貴女を貶めた大臣に仕える身です」
あーしの身体が固まったのを感じたのか、そのナイロンっていう人はこう言った
「怖がらないで、貴女を助けようという気持ちは真実です」
あんたの気持ちはありがたいけど、あーしは何もかも失くしてしまった
その上顔にはこんな醜い烙印まで
もうこのまま死なせて
ナイロンさんは柔らかい物腰の人やったけど、このときばかりは怒ったで
「何を言ってるんですか、シンデレラ
貴女にはたくさんの仲間と、帰るべき場所があるじゃないですか」
仲間って、そんな人たち、あーしにおったかのう
考え込むあーしをナイロンさんは抱きかかえるようにしてて、牢獄から連れ出した
道々、少し話をした
「大臣の事、許してくださいとは言いません
ただあの方も、本当は心の優しい人なのです」
あーしはかーっとなった
優しい人がこんなひどい事をするの
ナイロンさんは本当に済まなそうに俯いた
「あの方は優しさゆえに、部下を戦争で死なせたくなくて
それゆえに、もっと力が欲しいと思い、その心の隙を闇に魅入られてしまったのです」
ただんナイロンさんがここまで言うなら大臣も最初から悪い人では
無かったのかもしれん
でも、許せんよ
やがてうっすらと光が見えてきた
「あれが出口です
あそこを抜け出れば、貴女は自由の身」
したら城の中が騒がしくなった
あーしが逃げ出したんがバレたんや
がたがた震えだしたあーしの手をナイロンさんは強く引っ張って、出口の近くまで
連れて行ってくれた
ん、この手は前にも握った事があったような気がするで
「さあ早く、シンデレラ
私はここでお別れです、貴女は貴女のいるべき場所へ」
待ってナイロンさん、一緒に行こう
残ったりしたら、何されるかわからんで
一緒に行こう
「それは覚悟の上です
たとえ闇に魅入られたとしても、あの方が私の主人であることは揺るぎなき真実
最後まで従うつもりです」
お願いやから一緒に来てぇや
泣きながらナイロンさんにすがりついたら、ナイロンさんが目深にかぶってた帽子が脱げてもうた
その時はいめてナイロンさんの顔が見えたんや
あーしははっとした
麻琴、麻琴やないの
どうしたん、あんたなんでそんな格好してんの
一緒に帰ろうよ
久しぶりにあんたの顔マネも見てみたいし、なあなあ麻琴
「愛ちゃん、それは出来ないよ
私はもう愛ちゃんとは住む世界が違うんだ」
そんなことないし、麻琴
「聞いてよ、愛ちゃん
愛ちゃんは一人ぼっちじゃないよ
あんなに愛ちゃんのことを心配してくれる仲間がいるし
それに愛ちゃんは、化け物でもない
私が知ってる人間の中で、愛ちゃんが一番心が綺麗だよ
だから、さあ、みんなのところへ戻ってあげてよ、愛ちゃん」
知らん間に麻琴の姿は消えてしもうていた
あーしは悲しかった
悲しかったけど、でも光の方へ進んだんや
そーせんかったら、麻琴が悲しむような気がしたからや
闇を抜け、光の中へ出た時、そこには
あーしはガキさんの腕に抱えられとった
何やあーしの顔が濡れとるけど、ガキさんまさかよだれでも垂らしたんか
あーし達はダークネスの軍団と戦って、見事に追い払ったけど、敵のボスが最後っ屁で
しかけてきた強烈な催眠術に、あーしがまんまとかかってしもうたらしい
「最後っ屁なんて言わないの」
「リーダーたるものが恥ずかしいのう」
「しょうがないよ、皆を助けようとあんだけ頑張ってたんだから、本当に凄かったから」
ガキさんの目元が光っているのは、涙なんかのう
「高橋さん、すんません
あたしがもっと正確に予知していれば」
「愛佳は頑張ったよ、 敵の出現ポイントを予測してくれたし
あれがあったから、勝てたんや」
「小春は、小春はどうっだった」
「小春も頑張ったんやないかな、多分」
「ひどいーっ」
頬をふくらませた小春を笑いながら見てると、ガキさんが言った
「ところで目が覚めたんなら、手を離してくれないかな、愛ちゃん」
あーしは少し恥ずかしかったけど、それでも手は放さんかった
「こうしてると、ガキさん王子さまみたいやのう」
「王子様にしてはちょっと背が低いけどね」
「うへへへガキさん顔が赤くなってますよ」
「コラー、カメッ、そういうこと言わない」
「二人とも不純だっちゃ」
「なんだかエロスなの、ジェラシーなの」
「新垣照れてルのか」
「二人ともバッチリです」
みんなの声があーしの中で心地良く響くのを感じながら、あーしは麻琴の最後の言葉を
噛み締めていた
そーやのー、麻琴
あーしは一人じゃなかった
こんなに大事な仲間がおったんやな、麻琴
けどな、麻琴
あーしは自分のこと化け物で良い
そー思っとるよ
こんなに大切なみんなを守る為なら、あーしは化け物にだってなるよ
そやから麻琴
あーしの心が挫けそうになった時は、また会いに来てや
夢の中へ
お粗末さまでした 最後に言っておくと、私は「シンデレラ」を観に行ってません、観に行けません
そんな私の妄想を書き連ねてみました
作品の中で高橋さんに対して化け物という表現を多用しましたが、決して彼女の事を 貶める意図は
無い事を断っておきます でももし不快に思われた方がいたら、それは私の筆力不足です すまんかった
_________________________________________
i914の予告の後というのも相俟って 愛ちゃんの悲しい宿命に涙が出そうです
それと同時に支えてくれる仲間の存在にも
あと 牢獄の中肌着一枚で緊縛される愛ちゃんに萌(ry
誰よりも深い闇を抱えているのは愛ちゃんなんだと改めて感じさせられました
それでも踏み止まることができるのは……
色々想像(妄想)の予知があって楽しませてもらいました
1人称で語られるからこそその悲しみがより深く届く気がします
彼女の背負う闇はいかばかりか想像することさえおこがましいですね
>>654-661 の続き
『Wingspan』第一章・後編をうpさせてください。
今にも切れてしまいそうな触手1本で女の意識を司り操るべく深層心理へ潜り、情報を引き出す。
(早く)
女の深層心理。
四角く薄暗い部屋の中。
辺りに舞い散る白い羽。
但しそれは、空中で浮かび上がったまま。……刻が止まったまま。
(どこ)
女がいた。
どこか虚ろな視線を彼方へ投げかけ―――
瞬時に蜘蛛の糸に更なる意思を込め、女を拘束するべく巻きつける。
(支配、する!)
素早く、女の全身に絡みつく糸。
女の表情は――― 笑っている!?
(やった、の?)
―――トンッ
「小細工も上達したようね」
首筋に起こる打撃による衝撃。
里沙には見えなかった―――女の太刀筋。
同時に里沙の身体は気絶前と同じ様に地に伏せられ、腕を捻り上げられる痛みに泣いた。
「発想は良かった。だけどあんな細っそい術じゃ、破ってくれといっているような物」
視界がぶれる。脳がぐらんぐらん揺れ、後頭部から発する女の声色が凍て付くような響きを持つ事が
再び抗い洗脳を試みようとする心を萎えさせる。
里沙が女を拘束するその数瞬前。
女は侵入された他者の意識にとっさに時間停止を行使した。
強制的に停止される里沙の全て。
そして首筋―――延髄への手刀。
延髄は脳に直結している。洗脳とも呼ばれるマインドコントローラーは当然、脳を介し行使する能力。
そこを攻撃されると―――
もちろん普段通りの操りなれた意識の触手で女の本体を拘束できていたならば結果は真逆になっていたことだろう。
「……殺すのですか、私を」
つい口にしてしまったがそれは愚問にすぎない。
一度ならず、二度までも抗命した者だ。
此処は反逆者を始末するには適性がありすぎる。
「あら、死にたいの?」
「はっ。この状況、選択肢はあってないようなものでは?」
「可愛くない娘ね。……出された選択肢を勘違いされては困る。
再度問おう。……いや、上層部としての命令だ。
戻って来なさい。こちらへ」
一瞬、保身――― も考えた。
今、組織に戻ると言えばこの場では命が繋がるかもしれない。
だが、このやり場のない程苦しい、胸の内から発する悲しみが鳴りやむ事はない。
里沙は思い出す。
未だ幼かった己を拾い、庇護し、指導してくれたあの人。
たった今、やはり己の中には彼女の教えが脈々と流れているのを実感させられた事。
舞うように戦う、美しい姿は瞼を閉じれば思い出せる。
彼女を想い、涙が止まらない夜もあった。
ある時まで、安倍なつみの存在は確かに里沙の全てだった。
だが―――それもセピアに色褪せた、古いキネマのフィルムの様で。
リゾナンターとして過ごした日々。
皆と語り合った未来。
同じ目線で語り合える存在。
なつみとはまた違う優しさと温かさ。
その全てがきらきらと煌き、ただただ眩しく、里沙の闇を照らす。
そう、全て前から知っていた。
ただ、認めたくなかった。
認めると全てが壊れてしまうのなんて判りきっていたから。
いつからか……ですら定かではないが決めていたのだ。
共に生きるべき仲間たちの事を。
例え、ここで命が燃え尽きようとも。
嘘はつきたくなかった。
それは、女に対してでもあり、自分自身に対しても。
絶対にもう間違えない!
ドクン。
心臓が、一際大きく震える。
「私は ダークネスには戻らない!」
ぴくり、女の眉が里沙の宣言を受けて反応を示した。だがそれも一瞬。
「私は、リゾナンター!仲間を信じ、共に生きる者だ!」
そんな里沙の啖呵をただ冷ややかな視線を崩すことなく眺める女。
ぎり、と里沙の細腕をさらにきつく捩り上げる。
「……くだらない。信じる、なんてまやかしに過ぎない。真理を知りなさい」
「そんな事はない!信じることで理解しあってきたんだ!」
「……人は決して解り合うことなんてできないわ」
「やってみないとわからない!私たちなら出来る!
リゾナンターは悲しみを乗り越える!」
絶望の暗闇の中を恐怖に打ち勝ち、前に踏み出すための決意。
―――――――誰だって何かを変える時は怖い
仲間を守りたいという意思。
―――――――今だってほら、竦みそうになる心を必死に堪えているんだ
災厄の元凶となってしまったことへの責任。
―――――――でも、この手で決着をつけなければならない
存在意義を全うするための意地。
―――――――私が、私であるために
今、支えてくれているのは……『安倍さん』じゃない。
生きているのは『過去』じゃない。
全て、『現在』なんだ。
「随分言うようになったじゃない」
「あなたは、信じていないのですか?―――仲間を」
「……さぁ。どうだったかしらね……」
ここに来て始めて、女の弱々しい声色を耳にした気がする。
同時に、腕を放され背から女の重さが失せる感覚。
「残念ね。あなたはもう少し利口だと思っていたけれど……見込み違いだったかしら」
何故、そんな行動を取るのか。
自由になった腕を擦りながら分析する女への印象は相変わらず意図の読めない女だ。
その台詞を最後にドアノブに手が掛けられ退出しようとする女。
ノブに触れた手はなかなか動こうとはしなかったが、覚悟を決めたようにがちゃりと金属の擦れる音だけが世界の全てとなる。
けれどそうして扉を開くよりも前に、不意にぽつりと声が届いた。
それは哀しいくらい小さな吐息で。
ただ、一度振り向き。
「さよなら、新垣里沙。次に会う時はその考えも改まっているでしょう」
ふぅー と大きな溜息。
腕や足を拘束されてはいない。
それどころか、長袖で隠されている「武器」もこの手にある。
落ち着け。
戻らなきゃ。
皆の処へ。
そして、笑って、迷惑掛けてごめん、って――――
そう決心したのと、里沙の身体に異変が起き始めたのはほぼ同時だった。
「あ・あ、あああっっ……!!」
(いた、痛……目が、肺が、皮膚が……全身が……痛い……!)
吐く息が、ひゅうひゅうと空気音を立てる。
気道がひりつく痛みを訴え、一秒単位でその痛みは全身を駆け抜け増殖していく。
「あ・あ―――」
僅かな空気音が室内に反響するが、里沙の耳には届かない。
それは覚悟、と言ってしまうか、諦め、と言ってしまうか迷うが。
先ほどまではあんなに強気だった心が一気に折れる。
最後の記憶を手繰り寄せると己が置かれた状況を察するのは容易い。
……逃がすつもりは無いのだろう。
記憶の最後に残る、仲間たちの顔。
裏切り者を受け入れてくれた、必要だと言ってくれた、最高の仲間。
(今度こそ、さようならかもね)
じわり、痛みからではない涙が滲む。
(みんな 大好きだったよ……)
もう既に過去形になってしまっていることに胸が痛む。
だが今までと、これから。
彼女たちが負うであろう傷が少しでも減るのなら、この身に受ける傷はどれだけでも引き受けよう。
「馬鹿」も「最悪」も何度だって言ってきたのに
たった一回の「大好き」が言えなかった。
に。
今回はしっかりとその手には鎌を携えているようだ。
一度犯した過ち、それは消えることなどない。
過去もまた、覆ることはない。
例え時間を止めても、何も問題が解決したりするわけではない
。
愛の笑顔が脳裏を横切る。
あなたに出会わなければ、こんな悲しみは知らなかった。
でも、あなたに出会わなければ……こんな愛しさは知らなかっ
た。
溢れる涙は床に零れ、声にならない叫びの痕跡となった。
* * *
屋外の闇が侵食したかのように静まりかえる店内。
一階同様、二階・地下にも人の気配はない。
―――カタン
所有者のお気に入りであったカフェモカを最後に淹れたのはいつであったろうか。
かつて、愛が里沙の為に用意したマグが音もなく割れ、
破片が重力に身を委ねる事で発生した音はことさら静寂に響く
。
これから起こる何かを予兆するかのように。
* * *
『Wingspan 第一章
箱庭の鳥は翼をもがれ』
第二章はまた近いうちにとだけ……
(正直、一章の中で書きたいことはあらかた書いたのであとは突っ走るだけという)
最後2レスが変なのはさるさんをくらい、携帯から投稿したからで…目をつむってやってください。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
いつかあとがきもしたいです。
>まとめさんへ
前半>>654-661 とくっつけて『Wingspan 第一章 箱庭の鳥は翼をもがれ』というタイトルにしていただけますでしょうか
もうどうなるんだーと身もだえしております
どういう結末になるかは予想も付きませんが楽しみにしております
この先どうなるんだとしか言えないのが歯痒いです
>「私は ダークネスには戻らない!」
ここでキタ━━(゚∀゚)━━ !!となりました!
ノノ*^-^)絵里のおかげですよ?
(# ・e・)こらーカメ!むやみやたらに能力使わないの!
読むの大変だけど楽しみにして見るよw
いわゆる愛ちゃん語が独特のリズムを生んで、話に悲しみを
与えていると思った
岩井志麻子の「ぼっけえきょうてえ」ぽいかな
もっと妄想して、更新してください
>>880
時間停止能力を持つ女とガキさんの心理戦は読み応えがあったし、
今後の波乱を予期させるラストもカッコいいと思った
続きが早く読みたいな
とりあえず明日も早いからおやすみリゾナンター
衰えないなあ
http://eshiyousei.s4.x-beat.com/upload/data/up0804.jpg(LL練習落書き)
誰かLLとさゆの似せ方教えてくださいorz
>>755
凄いなあ…構図とか配色とかセンスありすぎだろ常考
うらやましい!ぱんだかわいい!←
すんげーかっけー
从*` ロ´)<敗けられない戦いが、そこに有る
>>296 テンション上がるーwww
名前で呼んであげて
名無し募集中。。。さんの作品を待ってるホゼ
これくらい余裕もっておかないといつも中途半端になるしw
・・・とはいえ投下予定があればもちろん そんな話はあとあと!ですが
とりあえずタウン誌に加えて予告編/i914Ver.もテンプレ追加は決定ですね
有言不実行ぶりがひどすぎる
テンプレさんいつもありがとうです
初めからヘルプをするというのも良いのでしょうか(滝汗)
うわーこれは本スレに載せる価値ねー
・・・って思われない限り大丈夫じゃないですかねw
いや冗談は置きまして ある程度の時間指定と代わりの方の立候補さえ得られれば大丈夫なのでは
あまりに長いと複数の協力者が必要になるでしょうけど
だが未来とは人間に内包されている認識でしかない。
過去でさえもその経験や記憶を想起しているに過ぎない。
未来も過去も現在の中にある可能性として残留しているだけ。
では時間とは何か。
それは現在にある過去と現在と未来を整理するための"意味"として紡がれ。
それは自身の"可能性"として"具現化"する。
―――時間は"視る"事で認識し、始まりと終わりを告げる"意味"と成す。
予知能力(プリコグニション)
一般的に未来を見透すチカラとされてはいるが、その主な機能は「眼」にある。
眼とは光学的に認識できる範囲の波形情報を感知し、視神経がその情報を脳に伝え、情報を処理する。
必要な情報のみを残す為の取捨選択機能ともいえる劣化を幾度と無く繰り返す事もまた重要だか
これはほぼ自動的な機能のため、全く無意識に整理をしている事になる。
ではもし、劣化しない情報を処理できるだけの「脳」をもっついて
しかも劣化させずに情報を伝達できたらどうなるだろう。
人間でいえば「洞察力の優れた人」として、処理能力を含めて言えば「凄い人」と呼ばれるだけの話だか
つまりはバランスさえ取れているなら問題が無いという事になる。
「眼」で情報を得るというのは、そういう事だ。
「眼で視る」という時点でそれは決定された制約であり
これは「眼」以外の感覚器を複合使用したところで変わりなどない。
ところが、このバランスが崩れている場合には様々な問題点が浮き上がる。
例えば「眼」だけ高性能な場合。
伝達する視神経は情報の劣化に裂く労力が増大し、あっという間に焼き付いてしまう。
例えば「視神経」だけ高性能な場合。
情報の劣化パターンが堅固に確定してしまい、得られる情報自体がパターン化する。
そして「脳」だけが高性能だった場合。
得られた情報の劣化部分を補完する「想像力」が暴走する。
今現在、愛佳の脳は並列に処理された情報が平行した世界となって存在させてしまっている。
その為、「眼」が収集した光学的な現実世界と「脳」が暴走した結果
極大化した「想像力」が補完の域を遥かに超え、もう一つの世界を作り出す。
これにより、『未来視』という現象が成り立ったとも言える。
未来を"知る"というのはそのまま環境として、条件として、ディテールとして一致する事を指す。
即ちそれは未来予知であり、100%のシュミレーションであり、時空の把握であり、世界の掌握でもある。
そして"解る"とすれば、経緯でも時間でも空間でもディテールでもなく
ただ結果としての結論を算出し、結末としての帰結を予測する。
より優れた未来予知であれば"誰が""いつ""どのように"というのを限定しない。
"どうなるか"という結末のみを予測するチカラとして発現する。
保持者はそれまでに自身の意思で制御するまでに至らなければならない。
未来をその身に宿すという事は、どんな"未来"でも変えられるという事。
それは究極の選択であり、運命への抵抗だ。
だが、それが本当に"希望"になるかは分からない。
もしかしたらそれは、誰かの"絶望"にも成りえるのだから。
「…あかん、完全に寝過ごしや…」
電車は揺り籠に似ていると聞いた事があるが、あながち間違っていないのかもしれない。
窓から映る夕焼けの街を見つめて、愛佳は呟く。
時間を見ると既に目的地から二駅は過ぎている事になる。
切符の料金もバカに出来んのになぁ…とか、お店開いとるかなぁ…等と言うことを思いつつ、小さくため息を吐いた。
そして過る、"予知夢"の残像。
最近では否応なしにユメを見る事が多くなった。
他愛の無いユメであったり、どこかリアルな世界観を持つものだったり。
同時に現れるのは、今までのよりも遥かに強い違和感。
そのユメはあまりにも異質で、あまりにも現実味が無い。
―――7人の影は、何かを見下ろしている。
―――蝕まれた『光』はやがて世界を包み、徐々にその顔を浮かばせた。
―――『闇』の中で佇む7人の表情は歪み、そして悲しみに覆われていた。
―――里沙の胸に抱かれた"何か"を見下ろして。
―――"何か"はピクリとも動かない。
―――眼を閉じ、"何か"は、"高橋愛"は動かない。
―――"高橋愛"の姿をした"何か"は、―――既に息絶えている。
―――死んでいた。
―――ただただ世界の結末の中で、無面で死んでいた。
―――『闇』と『光』は、ただただ静かに"その時"を待っている。
それはあまりにもリアルで、あまりにも異様な光景。
何故そんなモノばかりが視えるのかも。
否、何故それを"夢"だと思えないのかも、分からなかった。
"予知夢"を見すぎて境界線が分からなくなっているのか。
それとも愛佳自身がそれを"未来"だと確信しているからなのか。
その"未来"を変える自信があるからだろうか。
…そもそも"未来"とは本当に変えても良いものだろうか。
それによって自分自身が『光』へと進めているうちはまだ良いだろう。
だがそれは、同時に他者の"未来"を奪っている事にはならないだろうか。
光井愛佳の自己犠牲は、他者の犠牲を招いているのでは無いだろうか。
『次は○○~○○です。お乗り換えの方は○乗り場へ…』
電車内のアナウンスで愛佳は入り口の隅へ移動する。
徐々に沈み行く夕日を見つめながら、世界の脆さを痛快した。
―――"あの人"が亡くなったという話は、誰にも聞かされていない。
だか、何となくだか、愛佳には分かった。
あの日、お店に来た時から。
その姿はあまりにも以前会った時よりも脆さを感じた。
決意の中にある、誰かの助言を必要とするあの迷い。
本当の神であれば、決意したことを曲げる事はしないだろう。
"絶対"だと信じている者であれば尚更。
だからあの人は、人間である自身を"神"としてその心を保っていた。
だが、何かのきっかけで、"あの人"は自身が人間なのだと認識してしまった。
"神"は"悪魔"と似ている。
人々を助け、争いの無い世界を望むのが"神"であれば
天変地異を引き起こし、災いを呼ぶものは"悪魔"という。
それのどこが違うのだろう?
人々を助ける事も尊い命の犠牲があり、災いを詠んでも犠牲がある。
なら其を信じる者達にとって、都合の良い、人智を超えた存在こそが"神"なのだろうか?
大切な同胞逹を無条件で守護してくれる存在こそが"神"なのだろうか?
違う。
"神"とは、何事にも関心を持たない存在だ。
自らが信仰の対象になろうが、国が一つ滅びようが、一切感情を動かさない。
例え、この世界が滅んでも、"神"は気づかないだろう。
"神"とはそんな善悪すら超越した存在なのだ。
だから、人間は"神"にはなれない。
全てに関心を持たず、全てに対して等しく冷静な裁きを下す"神"には。
何も与さない。誰にも従わない。誰も仲間とは思わない。
全てを肯定し、全てを否定する。
それは最早、神ですらない、"無"だ。
未来も過去も無い者が、"未来予知"などというチカラを持っている筈がない。
そんな偽りの存在を"具現化"させたのは、紛れもなく"未来"を持つ人間だった。
「…なんでこんな時間に人がおらんのやろ…」
愛佳が降りた駅には人一人存在しない。
帰宅する人々でざわめく筈のホームは完全に日が沈み、闇夜に包まれ。
まるで何か、寄せ付けない空気を漂わせて静寂を保つ世界が其処にはあった。
瞬間、脳に伝達された情報が感知した"何か"が、『眼』によって映像化される。
―――その時ほど、"神"という存在を信じた事は無いだろう。
背後に感じるそのオーラは、紛れもなく"あの人"のモノ。
だか、振り向けない。
振り向けば、その脆い"世界"が跡形もなく崩壊しそうで。
「……貴方の視た未来は、もう大丈夫ですか?」
「えぇ、一応はね」
「一応?」
「未来の結末はたった一つ、それで、もその結末までにはまだ沢山の未来があるわ」
「…"可能性"…ですか」
「私はその一つの"可能性"を取り払っただけ。でもまだ結末までの道は遠い。
もしかしたらまた…また誰かがその未来への道を歩むかもしれないわね」
未来の結末は凝縮された一つの道へと進んでいく。
だがその前にあるのは"可能性"という幾重にも紡がれた存在が残されていた。
「私が行った選択は結果的に正しいのかは分からない。
だけどその"可能性"があっちにもあるのなら、こっちにもそれは残されている」
「相対する存在…まるで天使と悪魔ですね」
「それを創ったのが神なんて、よく出来た宗教概念よね。まぁ…そのせいで何もかも無くしちゃったけど」
私のように、ね。
圭織は嘲笑うかのように言い、愛佳へと背中を預けた。
なんて、細く、華奢な身体だろう。
姿だけでは分からない、触れ合った時に初めて分かる人間の本質。
愛佳と同じ"予知能力"を保持する者。
そんな人が何故こうも"神"にこだわったのか、何となく分かった気がした。
「それでも貴方は私じゃないし、私と同じチカラを持っていてもそれを過信しなかった。
自己犠牲で"未来"に立ち向かおうとするのも、"芯"に挑む理由に成るかもね」
「"芯"…?」
「時間は元には戻らない。それでもそれを見定め、"意味"にするのは貴方次第よ。
選択は"可能性"に過ぎない。それだけは、忘れないでね」
「…?…っ、圭織さ…!」
背後に伝わる感触が薄れていくのに気付き、愛佳は咄嗟に振り向いた。
そこには、誰も居ない。
触れていた筈なのに、背中にはそれさえも無かった。
だか、確かにあの人は其処に居た。
愛佳だけが、その事実を知っている。
圭織は、どんな"未来"を見て、ここに来たのだろう。
愛佳にそれを知る術はない。
ただ分かるのは、以前から見続けているあのユメ。
"未来"の選択は"可能性"に過ぎない。
だかそれは、確かに"起こる事"を予兆していた。
時が経てばホームには人が集まり、電車が到着する。
それまでの間、愛佳はただそこに佇むことしか出来なかった。
…orz
まさかここまで携帯からの投下が厳しいとは…(滝汗)
しかもその間にホゼナンターの皆さんや作者さん、他にも投下したい作品があった皆さんには深くお詫び申し上げます(土下座)
そして駄文申し訳ないですorz
今、0:44です。投下開始が22:14です。
2時間半もの間、スレを占有していることになります。
作品が続き物(複数レスもの)ということがわかるので誰も間に挟めませんが、
もしかしたらこの日のこの時間、何かを投下しようとしていた人がいたかもしれません。
作品投下時間としては比較的多い時間帯です。
携帯で直打ち(その場で文章作成)されているのか、
投下間隔が数分どころではなく数十分以上も空いていますが、
これはちょっと、他の作者様に迷惑になっている可能性もあります。
携帯からの投稿を否定するつもりはありません。
直打ちを否定するつもりもありません。
ただ、これだけの複数レスものを「数十分間隔で」「計何レスかも宣言せず」投下することで
他の読者・作者ともに待ちぼうけを食らっているということを考えていただきたいです。
以上、したらばアク禁スレから代理投稿です。
“未来” “予知” “神”
これらの意味に迫る形で語られる愛佳の懊悩
圭織との“対話” そして別れ
この先に待っている“未来”がどんなものなのか不安にさせられる冒頭と文末
感嘆し 感心し 感動しました
上手く感想の言葉が紡げなくてもどかしいです
ただ・・・ご本人も重々ご承知でしょうけれど少し長くスレを独占しすぎですね
したらばのアク禁スレを利用するか 少なくとも何か一言最初にあってしかるべきだったかもしれません
とてもいい作品だけにもったいないです
むしろ上げるのを手伝わせてほしかったです
次作を心から期待しています
以下本編の続きを投下いたします。
状況開始は01:30より。
防衛省本省の所在するその敷地内。
庁舎A棟の屋上に、彼女達四人は対峙していた。
高橋愛と、新垣里沙。
そして、本省勤務の共鳴者の少女が二名。
彼女達の常となっている職務内容は、
「確か、寺田の護衛にいつも付いてる二人やったね」
「寺田」と、伏せられている筈の"つんく♂"の本名を出したことで、
二人の少女はわずかにだが狼狽を見せた。まだ青い。高橋は胸中、そんな評価を下す。
名前は確か、梅田えりかと、矢島舞美。
両者とも体格こそ高橋より上だが、
顔にはまだその年代特有の幼さが浮かんで見える。
「つんく♂さんの所へは、行かせません」
少女のものとは思えない、毅然とした口調。
その毅然さは、確固とした個人の信念から来るものではなく、
上からの押し付けにより植えつけられた職務意識の結果だと推測できた。
だが、中央指揮所等の内在する庁舎A棟の内部へは跳躍できなかった。
おそらく内部に高橋のような空間制御能力者がいる結果であろうことは想像に易い。
ならば実力行使、強行突入するのみだ。
確固とした作戦目標を持ちこの場に侵入を果した高橋と新垣の両名は、
言葉を交わすこともなく無言で庁舎の屋上へと跳躍した。
そしてそこで待ち受けていたのが、彼女たちだ。
肌にまとわりつく夏の熱気を、屋上に吹いた一陣の風がさらっていく。
切欠はそれで十分だった。
そこに言葉は介在せず、両陣営は引き寄せられるように、屋上の中央で衝突した。
高橋の頭蓋めがけて、その爪先が弧を描き疾駆する。
それを軽く上体を反らすことでかわし、反動を利用して梅田の懐へ肉薄した。
突き出した拳は梅田のガードを貫くことなく、
中空に出現した歪みを介し新垣と肉弾戦を行っていた矢島の後頭部を屠る。
突然脳を揺すられ視界のブレた矢島の間隙へ、新垣は躊躇なく踏み込んだ。
新垣の振るった肘に顎先を打ち抜かれ、矢島はたたらを踏んで後退をよぎなくされる。
そこへ駄目押し。新垣の靴底が矢島の鳩尾を抉り、吹き飛ばす。
「舞美!?」
数瞬の駆け引きについてくることすら敵わなかったのか。
高橋の対峙する梅田は眼前の脅威を一瞬忘れ、倒された仲間へと振り返る愚を犯す。
その隙を見逃す高橋ではない。
腰元から特殊警棒を抜き出し、フルスイングの一撃を梅田の側頭部へと見舞った。
吐き捨てた高橋に、倒れ伏した少女達は尚も攻撃的な視線を向けてくる。
まだ戦意がある。
つまり未だ見ぬ自らの能力に勝算を見出しているということか。
「立ちな。こっちも時間ないから」
新垣の声に応えたわけでもないだろうが、少女達は立ち上がる。
本来なら、ここで勝負が決していてもおかしくはない。
高橋と新垣の二人は"五番目(フィフス)"の被験者だ。
並の能力者相手に能力戦なら、歴然とした差を見せ付けることができる。
加えて今の肉弾戦。
高橋の能力が実際には介在したが、それも微細なものだ。
彼女達も相応の訓練は受けているのだろうが、
"闇"殲滅の最前線で磨き抜かれた高橋達の体術には遠く及ばない。
その事実を前にしてもまだ、少女達には薄気味悪い余裕があった。
皮肉を籠めた調子で呟いたのは梅田だ。
「これが"五番目"の真価というわけではないでしょうけど」
同様の調子での発言は矢島。
彼女達は"五番目(フィフス)"という極秘計画について知っている。
その意味するところは何だ。
あるとすればそれは。
「小川麻琴さんの死亡事故。紺野あさ美の離反。
"たかがそれだけの"ことで、政府の動きが止まったと思いますか?」
寺田光男の側近らしい。
随分と他人の神経を逆撫でするのが得意のようだ。
「貴女方の後も、共鳴者の人工的な強化計画案は続々と出されていました」
その話なら以前に紺野からも聞いている。
長々と彼女達の講釈に付き合ってやる義理も時間もなかったので、
話の行き着く先へ早々に見当をつけた。
「あら、ご存知でしたか」
残念、といった口調と共に梅田が肩をすくめてみせる。
"子供達(キッズ)"計画。
"五番目(フィフス)"計画のもたらしたある種の"失敗"を省みて、
まだ幼い十歳前後の共鳴者を対象に行われた計画だ。
なぜ被験者を未熟な子供に限定したのか。
その答えは明瞭。
上からの"教育"がしやすく、紺野のような異分子を再び野に放つ危険を避けるための措置だ。
目の前の少女達は、そんな上の思惑の具現とでも評しうるだろう。哀れなものだ。
「"子供達"は"五番目"以後に、改良された計画。
その計画の被験者である私やえりかが――」
「あーしらに負ける訳がない。そう言いたいんか?」
「その通りです。どうも、その辺りを理解していただけていないようですが」
「試せばわかる」
「それもそうですね」
では、と前置いて、――梅田えりかの姿が掻き消えた。
本日は以上です。
前回はホゼナンターの皆様、温かい反応をありがとうございました。
今回は試しに℃メンを出してみました。
ぶっちゃけキャラ掴めてないので手探り状態ですが…。
次回でこの戦いには何らかの決着がつく予定です。
それでは本日はこれにて。お目汚し失礼致しました。
代理投下終了します。
>>930
本当にその通りで言い訳するつもりも御座いませんorz
投下する事しか頭に無く、一言申し出る事を省いてしまった事は事実であり、また代理投稿案を蔑ろにした事でこのような事態をもたらした事は深く反省しております。
共鳴者の作者さんと代理投稿の方も申し訳ありませんでした(土下座)
共鳴者さん、そして代理投下の方乙です。
まさか護衛に℃の二人を登場させるとは…予想できませんでした。
果たしてどちらが勝つのか…次回の更新も楽しみに待ってます。
スレの占拠問題についてはもう言わない
っていうか自分も日曜日に投下したシンデレラ話の最後の最後で
やらかしてるし
まあ仲間を信じろということで
作品自体は示唆に富んでいた魅力的でした
ラストで立ち尽くす愛佳の姿が、不吉なビジョンを予測させ、こちらの
想像力を刺激します
>>939
きたか、キッズ
世代というものを表現するには、彼女達の登場も作者さんの中では必然
だったんでしょうね
自分は微妙な違和感を覚えてはいますが、作者さんの過去の作品への
信頼から生まれる期待感の方が遥かに上回っています
それにしても、バトルシーンは相変わらず迫力あるわ
バトルの場面だけ代理執筆して欲しい(違い
朝のホゼナント
決定なの?
加えるなら注意書きを含めてにしたほうがいいと思う
相変わらず迫力があって引き込まれる描写ですねえ
“キッズ”を登場させたことについては(それを表明するしないに関わらず)賛否あるでしょうけど・・・
自分も過去作品への信頼感と期待感の方が上です
設定的にも無理がないですし
個人的には“キッズ”は顔と名前が一致している程度の知識ですので 本人のキャラありきの描写でさえなければ
そこまで違和感は覚えないなと今回読んでみて思いました
だからといって彼女らに比重が置かれすぎた話が乱立するのはいただけないですが・・・
注意書きが必要というのはその通りですね
あと…あと少しでこのスレの…ゴールだ…ぜ…
ホゼナント
俺これ好きw
新曲が出たらリゾナントブルーとうまく融合できればいいのにね
物語っぽいPVが出てくれれば
注釈入りとしてこれでいかがでしょう
あと980か24:00早いほうで次スレ立てますので
テンプレに変更点ありましたらお願いします
リゾナンターEDイメージ(字あり)
http://jp.youtube.com/watch?v=pbHlnMj9r1E
リゾナンターEDイメージ(字なし)
http://jp.youtube.com/watch?v=6veKqzAYQI0
リゾナンターEDイメージ(字あり提供入)
http://jp.youtube.com/watch?v=ijT95qkTqfA&NR=1
リゾナンター予告イメージ
http://jp.youtube.com/watch?v=wSVKqpCYrQs
リゾナンター予告編・i914Ver. ※血液等の映像が含まれますので苦手な方は見ないほうがいいです
http://jp.youtube.com/watch?v=TEsl4BjQ8sA
乙です
いいんじゃないでしょうか
キッズはよくわからないので人物描写さえしっかりされていればいいんじゃないんでしょうか
ただその場合実在の人物を使用するメリットが(作者・読者共に)あるのかどうかわかりませんが
>>948さんも書かれてますが本人のキャラありきは一読者としては避けて欲しい
第14話行く前にやることはキッチリ!
>>475-486 ないやいさん後編2の2回目を「MM。」
>>493-496 テーマ『ガキさんとピアノ線』を「新垣里沙」
>>507 保全作品を「ミニレス」 MM。の方がいい?
>>510 リゾナント雑誌掲載記事w を「美術館」 ←修正版未着ですw
>>511-513 リゾナントが雑誌に!を「番外編」 記事も入れてます
>>547-555 共鳴者番外編を「共鳴者」 タイトル勝手につけました
>>568-575 市民×リゾナンター?を「MM。」
>>577-586 小春能力話を「久住小春」
>>637-643 ないやいさんなちガキを「新垣里沙」
>>654-651 >>865-879 『Wingspan~』を「新垣里沙」
>>670-674 ないやいさん愛れなリンを「愛れなリン」(新分類)
>>703-710 愛さゆ(厳密には「愛さえ」…?)を「愛さゆ」
>>737 かなしみさん久々の作品『記憶の迷路』を「かなしみ戦隊S」(新分類)
>>738 同『C\C』を「かなしみ戦隊S」 表記長さの都合でカタカナ曲名省略
>>747 ないやいさん保全作を「ミニレス」
>>755 リゾナンターイラストを「美術館」
>>792-799 ないやいさんこはみつを「こはみつ」
>>834 リゾナンター予告編・i914Ver.を「美術館」 …以前みたいなFlashでのカコイイ開き方わかんなくなったorz
>>852-861 シンデレラ×リゾナンターを「高橋愛」
>>896 リンリンイラストを「美術館」
>>919-927 能力話光井編を「光井愛佳」
>>932-938 『共鳴者9』を「共鳴者」
充実度がすごいな
いつも乙です
自分は分類に困るような作品を書いてるなあと思う今日この頃
光井が喫茶リゾナントで小川が帰ってくるのを予知する話を探してるんですが
何スレ目と言うのでもいいですから教えて下さい
これだね
http://resonant.pockydiary.net/index.cgi?no=262
これです!ありがとうございます!
短いけど温かい感じがすごく伝わってくる
そしてホゼナント
从*・ 。.・) <もうすぐ次スレなの
从*´ ヮ`) <ゴメンちゃさゆ ガソリンないとよ・・
新番組で始まったらいいなリゾ・・・いやなんでもねえ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第14話
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1219158105/
乙でした!
狼スレ一覧更新したら立てた直後に遭遇してビックリw
スレ立て乙です!
matomeさんいつも乙です!
大変な作業を買って出てるあなたは尊敬に値します。ありがとう。
>>978
スレ立て乙です
もちろんスレ立て人様にも感謝です。
ハロモニはリニューアルじゃないのかなあ
そうであって欲しい
>>979
今日はきっといいことあるよw
今スレもそろそろフィナーレということで印象に残った作品の話をしようかな
>>755
見た瞬間かっけー!と一目惚れ状態になりました上手すぎる
>>547-555
この作品の後ホゼナンターがかっこよくなって大爆笑しました
凄いとしか言いようがないです
自衛隊員目線で語られるリゾナンターたちがかっこよかった
娘。も凄いけどこのスレにいる人も凄いよね
こんな能力欲しいなーって本当思わされる
あの作品が「闇」に傾く者の心理を事細かに書くものだから
「闇」に引き込まれるのも仕方ないかも・・・なんて納得させられそうになった。
それで、何か反論したくなってしまって一作品書いてしまった。
_, ,_
川*’ー’)<<胸がキュンってする方へ
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
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