(133)97 『Chelsy』39
「警察にはなんて説明したの?」
珍しくスーツ姿のジョニーの横で私は指紋を残さないために手袋をはめる
「そのままさ。正直に、我々でも現場をもう一度確認したい、と。あからさまにいやな顔をされたよ
まあ、向こうさんも手続きが増えるとかそんな理由より、プライドがあるためだろうけどね」
「ごめんなさいね、そんなプライドのためにあなたを連れ出して」
「そ、そんなことないよ、チェルシー。ほ、ほら、僕も外の空気を吸ういい機会になったんだよ」
警察から借りた鍵で事務所の扉を開ける
中には班長の指示で先に向かっていた機関の職員数人が室内の写真を撮っているところであった
「あ、ジョニーさん、チェルシー、お疲れ様です」
「写真を撮っているの?」
「はい、班長からもう一度隅々まで撮るようにいわれたので、壁の染みまで丁寧に撮っています
もし、我々で手伝えることがあればお声がけしてください」
ジョニーは室内をぼうっと見渡していた
「・・・警察が色々と証拠物の押収をしたから、ほとんど何も残っていないよ
それで、チェルシーは何を見たいんだい?壁紙でも剥がしてみるかい?」
確かに本棚やキャビネット、机の引き出しの中には何も残されていなかった
これは後々で警察にもお邪魔させてもらわないといけないかしら
それよりもするべきことは、この部屋の違和感を感じることだ
「ジョニー、装置はもってきてくれた?」
「電磁波探知装置のことだね。はい、また小型化に成功したよ。これがモニター
お~い、室内撮影は一旦休憩にして、こっちに来てくれよ」
ジョニーに依頼したこの装置で何らかの痕跡を辿れないか、と思ったのだ
電子機械でも生物でもなんでも微量の電磁波は発している
もしかしたら警察が見逃した何かを感知できる可能性を期待し、持ってきてもらった
当然、この部屋で発せられる大きな電磁波は私達の4人分。感知閾値を下げて、ごくごく微量な波形を探したい
「これがジョニーさんの新しい装置ですか!」
「そう。まだまだ改良の余地があるけれど、希望すれば予算さえあればみんなのところに届けられるよ」
談笑しているジョニー達のそばで私は装置と睨めっこを始めていた。 (Chelsy
投稿日時:2016/10/19(水) 01:22:30.49