リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第17話(ミラー)
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ノノ*^ー^) < ほえ? なんで?
『リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第2話 745』より
前スレ
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第16話
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1222199415/
まとめサイト
PC:http://resonant.pockydiary.net/index.html
携帯:http://resonant.pockydiary.net/index.cgi
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ@wiki
http://www39.atwiki.jp/resonant/
キャラ設定・作品ジャンル別検索ページ
http://resonantwolves.blog33.fc2.com/
掲示板 (感想スレ、作品題名申請スレ、あとがきスレ他)
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/
テンプレ>>2-14ぐらいまで
黒服を来てダンス踊ってるのはモーニング戦隊リゾナンターなんだよ
悪と戦う正義のヒーロー女集団なのさ
でも彼女達は普段は普通の社会で人間として暮らしてる
隊長の高橋は普段はジムで筋トレするOL、小春はアイドル、光井は女子高生、田中は孤独な不良
などみんなそれぞれ人間界で普通の生活を送ってんだよ
だけど悪の化身ダークネス邪鬼が街で暴れた時に
みんな集合して黒服を着て踊ってリゾナンター変身するわけよ
それを表現したのがあのPV
210 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2008/04/13(日) 20:08:59.27 0
ガキさん実は敵のスパイっていうのはどうだ?
でも悩んでるんだリゾナンダーたちの優しさに触れて
そして最終回で彼女は決断を迫られることになる・・・
259 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2008/04/13(日) 21:05:08.45 0
リゾナントイエロー(高橋)
リゾナントライトグリーン(新垣)
リゾナントオレンジ(亀井)
リゾナントピンク(道重)
リゾナントブルー(田中)
リゾナントレッド(久住)
リゾナントパープル(光井)
リゾナントインディゴ(ジュンジュン)
リゾナントグリーン(リンリン)
…
9人揃ってモーニング戦隊リゾナンダー
↑このPVから妄想するスレ
高橋:リーダー兼スカウトマン
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新垣: 実は敵のスパイ
しかしリゾナンダーたちと共に過ごすうちその優しさに触れて悩み始めている
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光井:成績優秀の普通の女子高生だがいじめられっこ
エリートの両親は夜遅くまで帰ってこず家でも孤独
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久住:超人気売れっ子モデル
プライドが高く世の中は全てお金が解決すると言い放つ彼女はワガママな面もあり周囲を騒がせることもしばしば
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田中:幼い頃に事故で両親を亡くして孤児院で育つ
学校にも行かず不良仲間と遊ぶ荒れた毎日を送っていた
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亀井:道重とはとても仲の良い大親友
2人で将来一緒にケーキ屋を経営するという夢がある
しかし生まれつき重度の心臓病を患っていた為病室に閉じこもる日が多かった
道重: 亀井とはとても仲の良い大親友
2人で将来一緒にケーキ屋を経営するという夢がある
大学生
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ジュンジュン・リンリン: ビザが切れたけど日本に滞在したい謎の中国人
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強く・・・なりたいんだろ?
大切な人を守るために・・・
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あいぼん・・・れいなはもう昔とは違うと
守るべきものが見つかったけん
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・・・定期連絡です
特に変わった動きはありません
はい 何か動きがあればすぐ知らせます・・・
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ビザが無いのか
一つだけ日本で仕事を続ける方法がある
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そのハナシ・・・
ノッタアル!
さゆも・・・
絵里も・・・
一緒に戦う・・・!
2人の夢を守るため
同じような夢を持った人たちを守るため・・・
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こんな私でも誰かを救えますか?
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はあ?
何で小春が見ず知らずの人助けなきゃいけないわけ?
そんなの誰かに任せておけばいいじゃん
必殺!
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リゾナンカー
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リゾナントロボ…
発……
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高橋愛:精神感応(リーディング) /瞬間移動(テレポーテーション)/光使い(フォトン・マニピュレート)
新垣里沙:精神干渉(マインドコントロール)
亀井絵里:傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ) /風使い(ウィンド・マニピュレート)
道重さゆみ:治癒能力(ヒーリング)
さえみ(姉人格):物質崩壊(イクサシブ・ヒーリング)
田中れいな:共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)
久住小春:念写能力(ソートグラフィー) /幻術(ハルシネーション)/発電(エレクトロキネシス)
光井愛佳:予知能力(プリコグニション)/心の浄化(ハート・プリフィケイション) /水守
リンリン:念動力(サイコキネシス)/発火能力(パイロキネシス) ※手で掴める物限定
ジュンジュン:念動力(サイコキネシス)/獣化(メタモルフォシス(トゥ・ビーストorパンダ))
ジュンジュン獣化参考画像
http://resonant.pockydiary.net/file/panda.jpg
リゾナントブルーRPG
ttp://www4.uploader.jp/dl/reinachan/reinachan_uljp00256.zip.html
上とは別物
ttp://www4.uploader.jp/dl/reinachan/reinachan_uljp00277.exe.html
リゾナントブルーRPG Ver:0.2
※「RGSS200J.dllが見つかりません」が出たらここからランタイムインストールね
ttp://www.famitsu.com/freegame/rtp/vx_rtp.html
間取り
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/142-1.gif
本日のランチ
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/155-1.jpg
http://resonant.pockydiary.net/data/upfile/156-1.jpg
タウン誌紹介文
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/28/toro28378.jpg
【TV・映画イメージ】
リゾナンターEDイメージ(字あり)
http://jp.youtube.com/watch?v=pbHlnMj9r1E
リゾナンターEDイメージ(字なし)
http://jp.youtube.com/watch?v=6veKqzAYQI0
リゾナンターEDイメージ(字あり提供入)
http://jp.youtube.com/watch?v=ijT95qkTqfA&NR=1
リゾナンター予告イメージ
http://jp.youtube.com/watch?v=wSVKqpCYrQs
リゾナンター予告編・i914Ver. ※血液等の映像が含まれますので苦手な方は見ないほうがいいです
http://jp.youtube.com/watch?v=TEsl4BjQ8sA
リゾナンターの予告編パート2/映画風
http://jp.youtube.com/watch?v=9Rvh02cQQoI&fmt=6
リゾナンター予告編/刃千史Ver
http://jp.youtube.com/watch?v=baXFvPKZQyI&fmt=6
娘。C/Wソート http://resonant.pockydiary.net/cwsort.html
結果は掲示板の曲ソートスレに書いちゃってくださいね
http://jbbs.livedoor.jp/music/22534/
まとめサイトの[検索]で「(1)」とか指定すると、第1話(1スレ目)の作品が投稿日順に並びます(降順)
(投稿日=まとめサイト掲載日時であり、スレ投下日時ではありません)
ただし、次回予告についてはシングルの順序と合わせるために
順番に並ぶように投稿日をいじってあるのでこの限りではありません
このスレに初めて来たから様子がわかんないよ、って人にはイイかも
※時々検索結果に違うスレの作品が混じりますが、本文中に張ったリンク(例:(1)123)を拾ってしまうためです
※※現在タグでスレごとの作品が読めるように絶賛改良中
【代理投稿を依頼するときのお願い】
したらば掲示板のアク禁スレに作品を上げるときは対処方法の指示も書いてください
例えば
・規制食らったので転載して欲しい
・レス数多いから掲載を手伝って欲しい
など
ノ|c| ・e・) < 登場人物の能力やストーリーの背景・設定は作者さんの自由なのだ
ノノ*^ー^) < シリアル路線でもコメディ路線でもお好きなものどうぞ
从*・ 。.・) < AAを使ったものや1レス完結ものでもOKなの
从*´ ヮ`) < 他の作者さんの設定を流用するのもありっちゃ
ノリo´ゥ`リ < 気に入った話の続きや繋ぎの話を書いてみるのもありカナ☆
川=´┴`) < プロットを書いて他の作者さんにストーリーを書いてっておねだりしてもええで
川*^A^) < アーでも書いてくれるかは作者さん次第ヨ
川´・_o・) < ソッカー
君の作品を待ってる
新スレ乙オメ!
明日には新スレ化作業しておきます
幹部)<そうか・・ではリサ 何か考えてみろ
ノ|c| ・e・) <え・・私ですか ・・・では
-あと少し 光に向かい けんけんぱ 夕陽よ奪え 心のしこり-
幹部)<・・・・次は私の番だな
-迷い子よ 夕陽は沈む もう遅い お前にだけは 向かえは来ない-
ノ|c| ・e・) <・・・・ッ
>>17
何気にイイ短歌だね
>>17
一見コミカルに見せかけて心の微妙な部分をえぐるような短歌ですね
ガキさんの心境は如何に
あなたと私は永遠に交わることなく
あなたは光を掲げ
私は闇にその身を委ね
間に誰も立ち入れることのないまま
永遠無限に平行線
あなたが光を掲げて闇を照らすならば
私はその光がより鮮やかに輝くようにこの闇を深くしよう
永遠無限に平行線
交わることのない光と闇
あなたは光
私は闇
永遠無限に平行線
―――今宵も終わることのない戦いを
短歌の浸透度が凄いな
おのれダークネスめ!w
新スレおめです!
短歌でむかついたの人生で初めてだよ!www
んも~愛ちゃん メッ
※注意
・単発の読み切りです(全6レス分)
・能力等の設定は踏襲していますが今までの作品にはない異質な世界での話です
・やや残酷な描写を含みます
・まとめサイト収録は不可と判断されればもちろんそれで結構です
・むしろこれは収録不可だなと思いながら書きました
・そういったわけで不快に思われる方はスルーをお願い致します
「あら。お早いお着きですね、i914」
白衣に包まれた腕を持ち上げて眼鏡の位置を直しながら、“Dr”は口の端を微かに動かして皮肉に微笑んだ。
その視線の先には、今しがた“出現”したi914・・・高橋愛の姿が、そして白衣の裾が触れそうなその足元には、小刻みに痙攣する新垣里沙の姿がある。
「・・・毒・・・神経ガス系・・・?」
里沙の様子と辺りに漂う微かな臭気、そして白衣の女の手中にある噴霧器から類推し、愛はそう呟いた。
「ご名答。さすがはわが組織の“最高傑作”だけあるね、i914。優秀優秀」
噴霧器を投げ捨て、パチパチと手を叩きながら白衣の女は微笑む。
「・・・ただし、既製のものじゃなくて私のオリジナルの毒だけどね。遅効性にして長生きできるようにしてあるから安心して。解毒剤はそう簡単に作れないけど。つまり・・・」
そう言いながら、白衣の女は胸元辺りを押さえる。
「この解毒剤がなければ里沙も・・・もうすでに吸い込んじゃってるあなたも死ぬしかないってわけ。あ、それから」
白衣の女は勝ち誇ったように言うと、自分の耳元を指差す。
そこには小さなピアスが光っていた。
「見える?“Especial Anti-Resource System”――略称“EARS”。私が開発した“抗能力装置”。この意味が分かるi914?」
「・・・あーしらの能力は通じんって言いたいんやろ?」
「ふふっ・・・その通り。さあ、毒に侵された体で能力を封じられてどう戦う?マインドコントローラーさんはこの通りだったけど」
足元に転がる里沙をつま先で軽く蹴りながら、白衣の女は嘲るように笑った。
「“抗能力装置”か。なるほどガキさんがやられるわけや。でも・・・・・・“EARS”とやらについてわざわざ自分から教えてくれるのは解せんな」
そう言いながら、愛は白衣の女に探るような視線を向けた。
微かに狼狽の気配が伝わり、愛はその理由を知った。
「なるほど。抑え込めるんは精神系の能力に限られるいうわけか。あわよくば瞬間移動の能力も使えんと思わせたかったいうとこやな」
「あら、なかなか優秀ね。でもどうする?どちらにしろあなたの能力は対象者を連れて“飛ぶ”際にはその対象者の同意が必要となるはず。喩えできたとしても・・・」
「自分を“飛ば”したら解毒剤は手に入らん・・・そう言いたいんやろ?」
「へえ~大したものね。正直そこまで頭が回るとは思ってなかった。でも・・・その賢い頭でこの危機を乗り越えられるかしら?」
小馬鹿にしたように白衣の女は愛を嘲笑う。
幼い頃よりどこでも常にトップの成績を収め、現在も組織の“筆頭Dr”を自認する女には、他者の思考など蔑視の対象でしかなかった。
「是非ともあなたも研究材料になっていただきたいな。とっても興味深いし。特別に麻酔無しで脳切開してあげる。
手術台に載せたとき、i914サマがどんな表情をするか想像すると今からゾクゾクするなぁ。興奮しちゃう。
あなたをバラバラに解剖したら瞬間移動能力の秘密もこの手にすることになるし。あー楽しみ。科学って素晴らしいと思わない?」
余裕の笑みを浮かべてまくし立てる白衣の女に、愛はしばらく黙って視線を注いでいた。
やがてその肩が小刻みに震えだす。
「ふふっ・・・ふふふ・・・あはははは!」
突然笑い出した愛に、白衣の女は意表を突かれ、同時に何故か言いようのない恐怖を覚えた。
「何がおかしいの?怖さのあまり頭やられちゃった?それとも毒が頭に回っちゃった?」
先ほどまでの余裕を失くしつつも、それを無意識に隠そうと虚勢を張る白衣の女に、笑いを止めた愛は一転真顔で唐突に問い返した。
「“瞬間移動”って言うけどあんた“瞬間”の意味は知ってる?」
「・・・・・・は?いきなり何言ってるの?」
「“瞬間”いうんはあくまで“一瞬”とか“刹那”いう意味で、決して“0(ゼロ)”やないんよ」
「それが何だっていうの?」
「例えば今あーしがあんたのとこまで“飛んだ”として・・・そやね、およそ0.00000002秒かかる。それの意味するところが分かる?」
「・・・・・・光速かしら?」
「お、さすがやね。秒速30万km、それがあーしの“瞬間移動”に許される限界。やから正確にはあーしのは“光速移動”なんよね」
「で?結局それがどうしたっていうの?」
「つまり“瞬間移動”言うても“消え”て“現れ”るわけやないんよ。あーしはその刹那の時間もちゃんと存在してる。“移動”の間もずっと」
「だからそれが・・・」
「ほやから物質を構成する素粒子をすり抜けるくらい小さい粒子になって“移動”するんよ、いつもは。“ぶつか”らんように」
「・・・・・・!?」
「ほやけど素粒子にわざと“ぶつかりながら”移動することもやろうと思えばできるんよね・・・・・・こんな風に」
「っっ!!待・・・」
白衣の女は、目の前の愛の姿が一瞬光に包まれ、その光の粒子が一斉に自分に向かってくるような錯覚を覚えた。
だが、それはもちろん言葉の通り錯覚であり、実際には目視することなど適わぬ速度で光の粒子に貫かれた白衣の女は、次の瞬間には全身に目に見えぬ無数の孔を穿たれて倒れ伏していた。
「がッ・・・・・・ごほっ・・・がほっ・・・」
形容しがたい異常を体が叫び、白衣の女は血を吐いて噎せ返った。
「致命傷にはならんようにしたつもりやったけど・・・ちゃんと生きてるみたいやね。おめでと」
表情を変えずに自分を覗き込む愛に、白衣の女はかつてないほどに恐怖した。
そしてそれは同時に自尊心をこの上なく傷つけ、耐え難いほどの憤怒と羞恥を与えた。
「じゃ、解毒剤もらえる?嫌や言うなら残念やけど今度は手加減せんよ?」
だから、そう言いながら差し出された愛の手に、白衣の女は恐怖と怒りに震える手で胸元から取り出したものを躊躇なく突き刺した。
即効性の毒を仕込んだ注射針を。
「油断したね!あはははははは!死になさい!このあたしをバカにした報いを受けなさ・・・???」
白衣の女は首を傾げた。
愛の方に差し出したはずの自分の右手が見えなかったから。
・・・いや、“見えない”んじゃない。
“存在しない”のだ。
右手が・・・・・・無い。
「あぁぁあぁぁぁぁあああっぁ!!!!」
白衣の女が自分に起こった出来事を理解するのと、“無くなった”右手が元あった場所から鮮血が噴出すのは同時だった。
「何を!?何何何をっっ!!??」
血走った目で白衣の女が睨んだ先には、里沙を伴い吹き出る鮮血がかからない位置まで退避した愛の姿があった。
「『何をした?』って訊きたいんか?あーしは正当防衛や思ってるけど。あ、そういう意味やなくて?・・・・・・“部分移動”させたんよ。あんたの肘から先を」
「そ、そんなごどがっ!!」
「できるなんて知らなかった?それ以前に対象者の同意が必要なはずだった?・・・あんたが知らんことは世の中にまだまだたくさんあるみたいやね」
「・・・・・・・・・ッッッ!」
「よかったのー。今日は色々勉強できて」
皮肉な笑みを浮かべる愛に対し、それでも白衣の女はギリギリのところで最後の理性を保っていた。
自分がまだ優位にあることを確信していたから。
「あは、あはははは!勝ったつもりでいるんでしょうけどね!お前の負けよi914!お前や里沙が吸い込んだ毒の・・・」
「解毒剤なんて持ってきてない。そう言いたいんやろ?」
「・・・・・・ッ!?」
「なあ、あんたいまだにその“EARS”とかいうのが効いてるとでも思っとるん?」
「な・・・・・・」
「言うとくけど最初からあんたの心の声なんて丸聞こえやよ。欠陥品やねソレ」
「けっかんひん・・・?・・・な・・・そんな・・・ありえない!」
「そんな玩具であーしの能力が抑えられると本気で思ってたん?ピエロやねあんた」
「貴・・・様・・・・・・貴様ぁっっ!!」
「あさ美やったらきっともっと完璧なもん作るよ」
「・・・・・・!!」
「あんたあさ美にライバル心持ってるんやろ?あっひゃー!!笑えるのー。ありえん。勝負にもならんわ」
「殺す!殺す殺す殺す!“造られた人間”の分際でこの私を・・・」
「死ぬのはあんたの方や」
白衣の女の表情は、背後から聞こえたその無機質な声に凍りついた。
自分の首から下が“消え”たことにも気付かないまま・・・・・・
* * *
「里沙ちゃん。だいじょぶか?」
愛は、苦しげに横たわる里沙の耳元で囁き、それからゆっくりとその唇を青ざめた里沙の唇に重ねた。
里沙の頭を優しく抱えるようにして、里沙の中に自らのそれを送り込んでゆく。
「んっ・・・んんっ・・・・・・」
里沙の眉が苦しそうに動き、しばらく後に穏やかな表情となる。
荒かった呼吸も治まり、激しく脈打っていた心臓の鼓動も落ち着きを取り戻した。
「あーしは“造られた”ときに大抵の毒やらウィルスの抗体を持たされてるんよ。最後の最後までピエロやったのー」
里沙との“キス”を終えた愛は、首から上だけの“Dr”に向かい、静かに微笑む。
「あんたがただのピエロやったらあーしも笑って済ませたけど・・・・・・里沙ちゃんを巻きこんだんは笑えんよ」
愛は表情を消して、名も知らぬ“Dr”の元に歩み寄る。
次の瞬間、そこにはもう何も存在しなかった。
「じゃあ帰ろっか里沙ちゃん」
優しく微笑むと、愛は里沙を抱き上げ、次の瞬間光の粒子となり掻き消えた。
後には、最初から何もなかったかのような静寂と闇だけが残っていた―――
以上です
同系統の単発ネタの構想(他メンバー)はあったりもしますが
不快に思われる方が多そうなら当然ここで書くことはしませんので
ここまでダークな戦い方をするヒーローはかつていなかったはず・・・
正直・・・・おもしれええええええ~~~!!!!
全メンバー読んでみたい!!!
どんな戦い方するんやろか?楽しみ!!
乙です!
カッコイイよ!短い中にも緻密に組み込まれた設定がスゴい!
これはもっと読みたいと思わされました…
ダークヒーローどんと来い!
投下前に注意書きすれば問題ないんじゃない?
瞬間移動(光速移動)を使った攻撃方法があったとは、考えもしませんでした
今回の話でどういったものかはわかりますし、次からも注意書きをすれば大丈夫ではないでしょうか
個人的には他のものも読んでみたいですしw
新スレもしょっぱなからイイヨイイヨー
新機軸乙!
スプラッターヒーローとまで言うと言い過ぎか・・・
でもこういったテイストのカッコ良さはこのスレ始まって以来初かも
残酷美少女降臨!(訛り有り)
ぐっすり寝たけどまだだりぃ
で、新スレ化作業
・dat収録 … 前スレに書いたとおり「スレdat」-「保存ページ」にあります
・過去ログ収録(暫定)
・現行スレ更新
くどいようですが左メニューのタグ一覧はしばらくカオスです
前スレ>>999
その略称はヤダってばw
でも何か考えてみよーっと
待ってるよ!!!
バッチシの予告編動画を作った者です
今更ですが前スレでいただいた質問へのレスを書かせて下さい
>>945
> 使ってるのは有料の動画作成ソフトですか?
はい、Adobe Premiere Elements 4という動画編集ソフトです
>>970
> (14)968の与太話を書いたものですが、ようやく件の動画を見れました
> …で、次は刃千”史”(バッチシ)の話を書けばいいんですね。
恐縮です・・・・・・お恥ずかしい限りです・・・・・・
前スレであたたかいレスをくださった方々、(14)968様、
『刃千吏護衛官 銭琳(字幕版)』の作者様 、本当にありがとうございました。
凄く面白かったです。
>里沙を伴い吹き出る鮮血がかからない位置まで退避した愛の姿があった。
この描写!恐カッコイイ!何、この冷静さ!痺れました。
次作も期待しております!
>>39
楽しみにお待ちしてます!
前スレでソフトの質問した者ですレスありがとうございます
やっぱり有料でしたか……
ムービーメーカーで出来ない効果(カットインとか)が羨ましい
俺らこそあんな素晴らしいものを作ってくれてありがとうだよ
次も楽しみにしてますww
マスクdeサボティさん乙です
>その略称はヤダってばw
>でも何か考えてみよーっと
やったー!!待ってるよ!
投下待ちの夜
リンリン!?ありがとwではお言葉に甘えて行きます!
共鳴修学旅行~リゾナンター京都湯煙探訪~
の前に…
【良い子のみんなに注意とお願い】
以下の項目に当てはまる方は読み飛ばして下さい
・とにかく“18禁”の単語が気になるタイプの方
・ドラマ『水戸黄門』にかげろうお銀の入浴シーンはいらんだろ!けしからん!なタイプの方
また、例外的に
・エロに飢えている方
ご満足頂けない事間違いナシwなのでいっぱい期待しないでくだされ
れいな発案“大浴場競走一発芸バトルロワイヤル”の結果にまだ不満顔のさゆみ
脱衣場でブツクサ言いながら、自分の着替えを空いているロッカーに投げ込んだ
「こんな所に来てまで一発芸とか…憂鬱なの…」
「ニシシ…楽しみにしとるっちゃよ」
れいなはゴソゴソと服を脱ぎながらさゆみをからかう
「ってかれーな、なにしてんの?」
れいなの不思議な姿に絵里がつっこむ
「何って…服、脱いどるだけっちゃん」
れいなは端にゴムが通されてワンピースの様になるバスタオルを身に纏っていた
柄はもちろん人気アニメ“きらりちゃん☆エボリューション”だ
※参考画像:http://www4.uploader.jp/user/reinachan/images/reinachan_uljp00322.jpg
「その脱ぎ方もおかしいし、そのバスタオルの柄もさぁ…ウヘヘ」
絵里はバスタオルの裾をつまみ上げる
「ちょ、めくらんとってって。しかもこのバスタオル、かわいかろうが」
「かわいいけどさぁ…ウヘ」
明日に見送ってもよろしいでしょうか
明日ならPCに触れると思うので…
待っていて下さった方、すみません
今晩は>>50さんにお願いしたいと思います
声を上げながら浴場へと走って行く
「イエイ!小春が一番乗りー!」
「アイヤー!久住サン!待ッテくだサイ!」
「オ風呂デカイナ!オォ!声スゴく響ク!ア゙ァーーー」
「ジュンジュンうるさいって!」
「アンタ達!湯船に入る前に体洗いなさいよっ!」
はしゃぐ年少組+ジュンジュンに里沙がすかさず釘を刺す
「里沙ちゃんはおかーさんみたいやのぉ」
こちらも準備が整った愛がニコニコしながら里沙の隣に立つ
「愛ちゃん…前、隠して…」
「ええやろ別に…どーせお風呂入ったら見えるもんやし」
「そうだけどさ、ここは…」
「みんなー!早く来てくださいよぉ!」
さらに続く里沙の小言は小春の呼びかけにかき消され、
愛は小言を最後まで聞く事なく走り出した
「おぉ!さっき見た写真より立派やよ!」
「もぅ…リーダーまでこれなんだから…」
里沙はため息をつきながら脱衣場を後にした
「リンリン!アッチマデ競争スル!」
「小春も!小春負けないもんね!」
「あぁ~もう…めっちゃ水しぶき上がってますやん…」
湯船で泳ぎ出した3人のバタ足のせいで頭からお湯をかぶった愛佳は
ぷっかりと浮かんだまま遠ざかる3人のおケツを呆れ顔で、でも少し笑いながら見つめた
湯船の隅っこの方ではれいなと絵里が並んでまったりしていた
「はぁ~…良いお湯~…」
「絵里、おばさん臭いっちゃね」
「そう言うれーなは子供っぽいよぅ」
「どこが?胸とか腰のくびれの事とか言っとるんやったら、れな怒るっちゃよ?」
「違うよぉ…ウヘ」
絵里は脱衣場でのれいなの姿を思い返した
小学校の時とか必ずクラスに一人はいたよなぁ…ああやって着替える子…ウヘ
「なん?一人で笑っとーし…キモ…」
「キモとか言わないでよぉ!あ!さゆが来たよ!」
入口でバスタオルを体にまいたまま立ちつくすさゆみ
「一発芸!」
れいなと絵里が囃したてる声に浴槽で競泳していた3人も動きを止める
「イヨイヨ道重サンの一発芸デスカ!」
「楽しみっす!」
「ミチシゲの一発芸はオモシロイのカ?」
「みんな…そんなにハードルを上げるような発言は…酷やと思いますけど…」
一応フォローする愛佳だったがその顔は笑いを堪えきれず頬はゆるんでいた
皆の注目が集まる中、さゆみは意を決して側に転がっていた風呂桶を二つ拾い上げた
ゴクリ…
誰かの息を飲む音が静かな浴場に響く
さゆみは一旦体を反転させて背を向けた
そしてゆっくり深呼吸
さゆみはデキる子…さゆみはやればデキる子…
自分に言い聞かせる様に口の中で自己暗示の言葉を繰り返す
「さゆみ、行きます!」
そう叫んださゆみは両手に持った風呂桶を自分の両胸に当てがい、勢いよく振り返った
「巨乳!!!」
………。
「うん!行こ行こ!」
「ワ…ワタシも行くダ!」
「愛佳も行きます~」
「絵里ちゃんも行きますよ」
「れなも!れなも行くったい!」
「…ミンナ…ヒドイノ…。」
「さゆみん…頑張ったよ…うん、頑張った…」
里沙はそっとさゆみの肩に手を置いた
「アヒャヒャヒャ!巨乳やて!」
「ほら…愛ちゃんにはバカウケだしさ…」
「愛ちゃんにウケてもあんまり嬉しくないんですけど…」
「アヒャヒャ!その巨乳、硬そうやな!」
「…確かに…愛ちゃんの笑いのツボは浅いもんね…」
「あーオモロかったぁ~。ほれ!笑った後は露天風呂で汗を流すやよ!」
ひとしきり笑いきった愛はスタスタと露天風呂に向かって歩いて行った
「愛ちゃん…だから、前…」
「リーダーって…豪快ですね…
さゆみ、ギャグがウケなかった事で落ち込んでるのが小さく思えてきました…」
「そう!そんな事気にする必要ないって!」
「ですよねっ」
思いがけず立ち直ったさゆみの手を取って、里沙は愛の後を追った
「どーしたのよ?」
露天風呂へ続く扉を開けた愛がちょっとマヌケな驚きの声を上げる
その愛の肩越しに里沙が外の様子を伺う
そこには風情たっぷりの露天風呂にはまったく似つかわしくない猛獣・パンダの姿
「ちょぉーっと!ジュンジュン!なにしてんのよ!」「バウッ」
「バウッ、じゃないわよ!こんな所で獣化しなーい!」
怒りに任せて腕を振り上げた拍子に、里沙は体を隠していたタオルをハラリと落とす
「アッヒャー!里沙ちゃんダイタンやのぉ~」
「新垣さん!前!前!」
愛のスケベな視線もさゆみの慌てた指摘も耳に入らない里沙はさらに怒りを沸騰させる
「なんで獣化してんのよっ!?」
http://www4.uploader.jp/user/reinachan/images/reinachan_uljp00323.jpg
「バウッ!」
「だからってこんな事して良いワケないでしょーーーっ!!!」
こうして楽しいバスタイムは和やかに過ぎて行った…
「里沙ちゃん…さっき脱衣場の外に卓球台があったがし…」
「しないよ!絶対しないからね!」
「リゾナンターのマジ卓球…ちょっと見てみたい気もするんやけど…」
と呟いた後、収拾がつかなくなるであろう死闘が頭をよぎり
大きく頭を振ってその考えを打ち消した愛佳であった…
>>53>>55->>60
共鳴修学旅行~リゾナンター京都湯煙探訪~
いつも感想レスありがとうございます
本当に嬉しく思っております
今回は全編お風呂場シーンでしたので18禁って予告してみただけだったのですが…
まぁそれでも不快に思う方は当然いらっしゃると思いますので一応…w
気にならないと言う方はあっちの意味でもニヤニヤしていただければ幸いですw
それではまたノシ
>>54さん wktk!!
割り込んでしまって申し訳ないです_| ̄|○
明日こそは投下出来るように努力します
ジュンジュンが声が響くからといって叫ぶシーンが好きですw
あとさゆの一発芸も良かったw
あ。お気になさらず!
携帯からはなかなか上手くいかない事多いですからね…
自分も毎回何かしら失敗してますもんw今回もやっぱりやらかしてるしw
あと感想ありがとうございます!
投下の方はマターリお待ちしてまーす
安心したwちょwジュンジュンワロタ
楽しみにしてるリンリンがかわいい
心地よいドタバタ感がいいですねえ毎回
愛佳もすっかりこの状況に慣れちゃいましたねw
さすがに出勤前で時間ないので…
15話 928-931 の続きです。
「あれ! ニィーガキさん!? 二人ニィーガキさんがいますよ!? あれ!?」
コハルの素っ頓狂な声が沈黙を破る。落ち着き払ったアイとは違い、「peper」の他
のメンバー達は、やはり里沙とリサのあまりの相似に驚きを隠せない様子だった。
里沙は彼等の方へもっと近づこうと、ロボット達の瓦礫の山を乗り越えて歩み寄ろうと
した。が、その時だった。里沙がさっきまで隠れていた高架の上で、既にスクラップと
なっていた3体のAK-B40が、轟音と共に里沙の頭上に落下してきたのだ。
瓦礫の山に脚を取られ、すばやく動く事もままならず、思わず凍りつく里沙。
しかしそれを見たリサは、表情一つ変えずに一飛びで里沙の横に降り立つと、里沙の
肩に左手を置き、右手でまるで虫でも避けるように、落ちてくる装甲ロボを払いのける。
轟音と土埃を巻き上げ、3体のロボットが地面にめり込むと、その土埃に遮られた中で
リサがささやく。「あなたが新垣里沙さんね? …でも、会えるとは思わなかった…。」
…あたしの事も知ってるんだ。…と、言う事はやはり彼女達は私達に似せたロボット?
でも、それならばこの彼女達に感じる「人間の心」は一体何なの…!?
混乱した里沙は、問いかけに答える事も出来ずに立ちつくしていた。
叫んでいる。「後ろ!そいつが!」 …ついさっき落下したAK-B40の1機が、落下の
ショックで息を吹き返したのか、横たわったまま腕の電子砲をジリジリと動かし、既に
里沙に狙いを定めていた。
ブゥ…ンと電子砲の先端が光り、一筋の光線が発射されようとした瞬間、リサがそれを
自らの体で遮った。バシュ!!という嫌な音が響き、リサの背中から白煙が上がる。
「くっ!!」リサは低く声を上げながらも、すばやく振り返ると、装甲ロボの方に倒れこむ
ようにジャンプ、前転し、浴びせ蹴りの形で右の踵を装甲ロボの頭部に叩き込む。
バチバチッ…と火花を散らし、今度こそロボットは完全に沈黙した。
しかし、リサは…。仰向けに倒れこんだまま起き上がってはこなかった。
「ガキさんッ!!」「ニィーガキさん!!」口々に叫びながら集まるメンバー達。
「アイちゃん、しくじっちゃった…。 これじゃコハルを叱れないね・・・。」
「ガキさん…。」
「コハル! …ちょっともうアンタの面倒見るのやめるわ… あとは自分でしっかりやり
なさいよ…。」
「ニィーガキさん! いやですよぉ! もっとコハルの面倒見てください! ニィーガキさん
がいないと、コハルだめですよぉ!」
「何言ってるの、コハルは無敵でしょ…? アンタがしっかりしないと、皆が大変よ…?」
「アタシのせいだ…。アタシのせいで…。」
「違うよ、あなたのせいじゃない…。アタシがちょっとしくじっただけ…。 ねえ…?その服
かわいいよね? ふふ… アタシもそんな服着たら似合ったのかな…?」
リサはそう言うと静かに目を閉じた。かすかに微笑みさえ浮かべて。
「どうしよう…? アタシのせいだ… アタシのせいだよ…。」動揺する里沙の肩に手を置き、
アイが静かに言う。
「違うよ。リサは私達の誓いを守る為に命を掛けたの。"誰も傷つけない”と言う誓いをね。」
「それに、私達もう覚悟は出来ているの。たとえ誰かが命を落としたとしても…私達は目的
を必ず達成すると。」
ふと気が付くと、さっきまで激しく波打っていた「pepper」のメンバー達の心は、水面の
たくさんの波紋が一つにまとまるように共鳴し、完全な同調を見せていた。そして今、その
心の水面は月を映す湖面のように静まり返り、リサを悼む心だけが全員の心に満ちている。
喪服のようなモノトーンの衣装に身を包み、死者を囲んで身じろぎもせずにたたずむ彼等の
姿は、月の光に照らされて、それ自体が立ち並ぶ墓標のように見えていた。
「リサが静かに眠れる場所を探して…、そしてまた父を探し続けるわ。」
「お父さんは、何処にいるか分っているの?」
「分らない…。ただ、感じるの…。父の「心」を。それに歳の若いコハルとアイカ、
そして加入の新しいLLとJJには、かすかながら父の記憶がある…。」
「ねえ、あたしにも手伝わせて! とりあえずこんな、追われる状況はおかしいよ!
みんな人間なのに、こんな怖いロボット達に追われて襲われるなんて!」
「そうね、私達は人間だし、人間として生きる。…でも、研究所や文部科学省の人達
はそうは思ってくれてないみたいね…。」
「アタシが話をするよ! アタシは…人の心がわかるの…。あなた達には心がある!
話をすればきっと分ってもらえるよ!」
里沙には自信があった。一度は「pepper」達の捜索を依頼された立場でもある自分
が話をすれば、ある程度は皆耳を傾けてくれるはず。そして、最悪の場合は…。
里沙は自分の忌まわしい「能力」さえも最大限に使って、彼女等を助けよう…。そう
心に誓っていた。
彼女等の捜索を依頼された時に教えられていた、緊急連絡用の番号を使い、警察庁
科学技術局へと連絡をとる。交換に事情を話すと、なんと対応してくれたのは局長と
名のる秋元という男だった。
「話はわかりました。ただ、この話だけで捜索をストップすると言う訳にはいきません。
一度直接話をさせてくれませんか?お話は私一人だけで聞きます。あなたと、誰か
『pepper』のメンバーも一人だけでいい、同席させて下さい。」
話のわかりそうな男だった。意外とこれは上手く行くかもしれない…。里沙はアイ達に
事情を話し、アイに同行を頼んだ。
「でも、リーダーが行っちゃうと心配なの…。」とサユミがつぶやく。
「レイナとコハルがおるけん、大丈夫! 心配無いっちゃ!」レイナが言うが、アイは
考え込んだ。…確かに順当に考えればリーダーである私が動く…。だがそれは確実に
「pepper」達の戦力低下につながる…。もしそれを狙っているのだとしたら…?
その時、意外な人物が手を上げた。最年少のアイカである。
「はい!アタシが行きます!」 一同を包む沈黙…。
里沙は昨晩の出来事が嘘のように、普通に電車に乗って指定の場所へと向かっていた。
切符の買い方も知らないアイカと、姉妹の様に連れ添いながら…。
結局アイカの熱意と、実際特殊な戦闘能力を全く備えておらず、常人とほとんど変らない
アイカであれば、逆に当局もむやみに攻撃したりする事はないだろう、という判断による
決断であった。
「…正直言うと、里沙さんと話がしたかったんです…。 あたしら、自分らはずっと人間だと
思ってたんです…。 でも、突然、お前らはコテコテのロボットや言われて…。」
「もう訳がわからんようになって…。 でも、リーダーがうちらは人間として生きよう、って
言ってくれて…。 」
「でも、新垣さんはうちらの事人間だって言ってくれますよね? ホントですか? うち、
本当に信じても良いんですか?」
里沙が答える。
「大丈夫だよ! あたしには人の『心』がわかるんだ。 ミッツィー達には『心』がある。
これはあんなロボット達には絶対無いものだよ!」
「でも…、リーダーや、タナカさん、クスミさん達のあのものごっつい力って…。人間でも、
努力とかであんな力が身につくものなんですか…?」
「うーん…。でも、あたしのこのチカラだって、普通の人には無いものなんだよ…。 だから
人に恐れられ、忌み嫌われる事もある…。でも、ミッツィーはそんなあたしを人間じゃない、
と思う?」
「いいえぇ!!そんな!新垣さんメッチャ普通の女の子っぽいじゃないですか!? 服も
メッチャ可愛いし!」
・・・判断基準はそこか?と里沙はアイカの発想にちょっと笑った。しかし、アイカの言葉は
止まらない。
「あたし、リサさんが亡くなって、すごく怖くなったんです。いいえ、死ぬ事やないんです。
ホントに死ぬんやろうか?壊れるだけやないのか? …リサさんが亡くなった時も…。
血は流れてませんでしたよね…? 普通あんな大怪我したら、血が出るもんやないん
ですか…? あたしのこの体には、血が流れてるんやろか? 前に言われたんです、
お前らの体には血じゃない、別のもんが流れてる、って…。」
「昨夜も、手を切ってみようかと思ったんです…。血が出るか見たくて…。でも痛いのも
怖いし、血じゃないものが出たらもっと怖いし…。」
「馬鹿だねーミッツィー、大丈夫だよ!あたしが保証する!仮にミッツィーの血が青かった
としたって、ミッツィーが人間なのは間違いないよ!」
内心に疑問と不安を抱きながらも、里沙は断言する。
確かに科学技術局からは彼女等はガイノイドと聞いている…。それにあの凄まじいチカラ…。
だが、里沙は今この時も隣にいるアイカから伝わる「心」の声を信じた。
次は卓球大会なのか!?わくわく
以上です。 また続きます。 宜しくお願いします。 (作者談)
転載完了です。
作者様乙です!ますます面白くなってきました!今後の展開に期待!
乙です
ガイノイドたちが可愛くなってきた
アンカーつけときますね
切ないですねえ・・・
アイカの話がものすごく胸に響きます
そしてこの先に彼女らを待ち受ける運命を色々想像して一人胸を痛めています
リサーーー!!
リサの脳内チップはまだ生きていると信じてる!
博士彼女を頼むよ と勝手に想像w
いい話しになってきたね
とか言って・・・続き楽しみにしてます!!!
ガキさん乙
リゾナントの扉に「CLOSED」と書かれた板をぶら下げていると、中から出てきた
カメに声を掛けられた。
「別にいいけど…」
いつもならこんな思い付きのようなカメの言葉には、手厳しいツッコミを入れて
いる。
でも、今日は私も夜風に吹かれながら散歩でもしたい気分だった。
それは今日が満月の夜だからかもしれない。
私の返事を聞くと、カメは意外そうに目を見開いてから、いつものようにふにゃ
りと笑った。
「じゃあ、行きますよー」
カメは私の手を握ると、どこかに向かって歩き出した。
どこに行くのと聞いても、カメは内緒だと言って笑うだけだ。
だから私もそれ以上は何も聞かなかった。
「着きました!」
そこは町を一望できる丘だった。
私も一度だけ来たことがある。
スパイとして、この町に来た時だ。
愛ちゃんを探す為に、一人でここから町を見下ろした。
「え?」
「もー!ちゃんと聞いて下さいよー!」
「ごめんごめん」
少しだけ過去のことを思い出して、少しだけ胸が痛んだ。
だけどもう、過去のことだ。
「じゃあ特別にもう一回だけ話しますから、聞いて下さいよ?」
「はいはい」
現在(いま)は、過去とは違う。
こうして馬鹿みたいな話をして、笑い合える仲間がいる。
「絵里、ここかられいなとさゆと協力して、幸せを飛ばしたことがあるんです」
「あぁ…」
それなられいなから聞いたことがある。
絵里の思いつきだと聞いた時は、びっくりしつつも、どこか納得している自分が
いた。
みんなが幸せになることを、きっと誰よりも願っているカメだから。
「ガキさんにも届きました?」
「…届いたよ」
「本当に?」
直接感じたわけではない。
でも、きっと届いてる。
自分がリゾナンターの一員だと、胸を張って言える。
ずっと望んでいた未来が現実となったのだ。
今でも夢じゃないかと思う時がある。
「ガキさんは絵里達の仲間ですよね」
「そうだよ」
「夢じゃ、ないんですよね?」
カメが月を見上げながらそっと呟いた。
月明かりに照らされたカメの横顔はなんだか幻想的で、
遠くに行ってしまうような感覚に襲われた。
今、月に帰らなきゃと言われたら、素直に頷いてしまうだろう。
「聞いてます?」
すぐに返事をしない私に不安になったのか、また話を聞いてないと思ったのか、
カメは眉を八の字にしながらこちらを向いた。
…きっと、前者なんだろうな。
「それはこっちのセリフ」
なんでカメがそんな顔するのさ。
私が笑うと、カメは恥ずかしそうに「だってガキさんが!」と声をあげて、
その場にしゃがみ込んだ。
「…夢じゃ、ないです…よね?」
「私が聞いてるんだけど」
「最初に聞いたのは絵里なんですけどぉー」
カメは口をとがらせながら、手元の草をブチブチと抜き始めた。
「そうだけど、それはどっちかと言うと私のセリフでしょ?」
「まぁーそうですね」
「毎日夢みたいだよ、本当に」
またみんなと笑い合えるだなんて思わなかった。
またみんなに会えるだなんて、考えもしなかった。
「ガキさん」
「ん?」
「ちょっと月まで行ってみませんか?」
「はぁ?」
私を散歩に誘った時と同じように、カメはそう言ってのけた。
「だって、あんなにまーるくて綺麗なんですよ」
「…どこからツッコんだらいいのかわからないんたけど」
いくらカメがpppだからって、月まで行こうだなんて。
なんか目もキラキラしてるし。
そんな顔で見られても行けないってば。
「そりゃ行ってみたいけどさ、行けるわけないでしょーが」
「絵里は行けますよ」
「え」
「見てて下さいよー?」
カメはそう言うと、月に向かって走り出した。
「え、ちょ…」
「とぅっ」
月に向かって思いきりジャンプしたカメは、
まるで月に帰ろうとするウサギのようだった。
やっぱり、月に帰るの?…なんて、少し心がざわつく。
「…カメ?」
アンタはウサギじゃなくてカメでしょ?
そんな軽口も飲み込んでしまった。
着地すると思ったカメの姿は、そこには無かった。
「カメー?」
過去にここに来た時は、一人でも平気だった。
一人が当たり前だったからだ。
だけど今は…。
「ガキさーん?」
「っ…絵里!」
慌ててカメが走って行った方へ向かうと、
そこにはいつも通りの笑顔を浮かべるカメがいた。
「も…、バカカメ!!」
下の窪みに落ちただけだったのだ。
フニャフニャした笑顔で、八重歯を見せながら私を見上げている。
「あははは。行けるわけないじゃないですか」
「はぁぁぁぁ?」
「だって、夢じゃないんですよ?」
「…!」
「現在(いま)ここにいるガキさんは、夢じゃないんです」
ね?って言いながら、私に向かって差し出された手を握った。
「絵里は、家に帰ってベッドに入ってから、ゆーっくり月へ行ってみようと思い
ます」
私の力を借りながら立ち上がったカメは、手やお尻についた草を掃いながら、そ
う呟いた。
夢じゃない。
私がここにいることも。
カメがいなくなって、寂しく思った気持ちも。
今在ることは、全て夢じゃないんだ。
まさか、カメに気付かされるとはね。
私はカメに気付かれないように、口元を緩めた。
「一緒に行きましょうよ」
「そうだね。カメ一人じゃ心配だし」
「絵里だって、ガキさんを現実の世界に戻らせるギムがありますから」
「心配しなくても戻ってくるから」
「現実に?」
「現実に」
「リゾナンターに?」
「リゾナンターに」
「…じゃあ、リゾナントで待っててあげます」
「わかった」
なんで上から目線なのよ。
まぁ、言わないけど。
「そろそろ帰りましょーか」
「うん」
「早く帰って、愛ちゃんお手製のカフェオレでも飲みましょうよ」
「寒くなってきたし、きっといつも以上においしいよ」
「おー!そうですね!じゃあ急ぎましょー!」
「え!ちょっと…カメ待てー!」
亀の癖に足の速いカメを追い掛けて、私は丘を駆け降りた。
「本当にまんまるだ…」
「ガーキさーん!早く来ないと置いていきますよー!」
「わーかってるけど!私はそんなに足速くないのー!」
そう叫んでから、手を振って笑うカメに向かって走り出した。
月を見上げて、今夜行くから待っててねと呟いたのは、
カメには内緒にしておこう。
「追ーいついたー♪」
「ちょ、痛いですよ!」
追いついたカメの背中を、感謝の気持ちを込めて思い切り叩いてやった。
「ありがとう」は、満月の上で―
投下完了です
最後の最後で規制されたので携帯から失礼します
昨日から待っていて下さった方がいましたらお待たせしました
初めてこの二人をメインに書いたんですけど難しかったです
感動しました!
いいよ!すごくいいよ!
上手いなー!
台詞の間に入るガキさんの心の声とかすごく上手いなー!
ラストも好き!
飛べない亀
でも、ガキさんの心を月兎したんだね
素敵な夜をありがとう
乙!
なんかカメらしいなぁ~ でもカメをまた好きになったよw
この二人の声がまた聞きたくなった
最後の一行
すごく、素敵
こりゃ読むの大変だ
今スレも盛り上がりそうな予感です
しかしまたどうしていきなり
こんなに沢山の作品が?
こうしてみるといかに序盤に光井作品が多かったかわかります
しかも一様に暗い!!!w
ちょっとずつタグの数が減っていくことに密かな喜びを感じながらぼちぼち進めます
乙です
マスクdeサボティ!!
自分のは小説と言えるようなものでは無いですが、
これから投下させて頂きます。
もうすぐ空が高くなる季節
夕暮れの秋空が切なさを運んでくる
どこかで独りぼっちだった自分達はもういない
一緒にいる仲間が一人じゃないと言ってくれるから
□■
東京という場所は人が多いけど
どこか冷たくて 悲しくて
心の隙間に風が吹く
決して見知らぬ土地ではないのに
この荒廃した風景が現実なことに 胸が締め付けられる
生まれ育った街が闇に壊されていくことを目の辺りにして
何かしたくてもこの病魔のせいで
何もできない自分に憤りを感じていた
でも 一緒に戦おうと言ってくれた仲間ができてから
私は願いを込めて病魔を克服し 懸命に戦っていくことを決めた
ただ待つだけの人生を送ってきた過去の自分とはさよなら
未来の為 仲間の為 自分の為に
私は強くなろう
△▲
東京という場所は人が多いけど
どこか冷たくて 悲しくて 心の隙間に風が吹く
街中のネオンはとても派手なのに
帽子を深く被って寄ってくる男も無視して 一人で歩く東京は寂しい
けれどこの寂しさも今では感じない
この道をゆっくり歩いて
扉を開けば温かく迎えてくれるあの場所が
今の自分の拠り所
初めて大切だと思えた場所
初めて守りたいと思った仲間
日常を独りで過ごしてきた過去の自分とはさよなら
未来の為 仲間の為 自分の為に
ただ強くなれ
○●
東京という場所は人が多いけど
どこか冷たくて 悲しくて 心の隙間に風が吹く
薄暗い部屋の中で膝を抱いてうずくまっていた
友達はいない
家族はほとんど家にいない
寂しいとも口に出して言える相手などいない日々が続いた
そんな時に光が届いたのはいつだったか
眩しい笑顔を向けてくれた人は
これからを共に歩む仲間だと言ってくれた
出会った時の衝撃を今でも忘れない
涙したあの時をいつまでも大切にして
いつか訪れる平和の為に
大切だと思える仲間の為に
独りでうずくまっていた過去の自分とはさよなら
未来の為 仲間の為 自分の為に
強くなりたい
□△○
独りだった時に出会った人たち
今では大切な仲間
もう何も失いたくない
もう一人になんてなりたくない
孤独を知っているから
一人になんてさせない
まだまだ拙い文章ですが想いが伝われば幸いです。
今回は例の3人組です。
一応リゾナントしている所もありますが、自分の中ではこんなイメージです。
この人達は他の人達以上に強くなりたいという想いがあると思ってます。
だからそれぞれの最後に強くなりたいという決意を込めて書きました。
他の人たちも書いている段階ですが、
全員分書くつもりなのでよろしくお願いします。
文章全体にリズム感があって心に染み込む感じがします
上手だなあ
乙です
素敵な物語ですね
何だか、東京で暮らしてみたくなりました
強い自分に出会えるかしら?
尊敬します
最後の一言にそれぞれの「らしさ」が現れていて好きです
作品を投下してくれるのは喜ばしい
いいね!こういうの!
全てを語らずとも伝わる何かがある!
◇◆の人乙です!
作者さんはいつからスレにいてどのように捉えているのだろう
それが垣間見えそう
ダークテイスト保全話第2弾です
美しい作品の直後にそれもあまり間をおかず投下するのは気が引けますが・・・あまりに人がいないようなので
※注意
・単発の読み切りです(全8レス分) *万一規制の際には間を空けて後ほど続きを
・能力等の設定は踏襲していますが今までの作品にはない異質な世界での話です
・やや残酷な描写を含みます
・前作同様まとめサイト収録は不可だと思われます
・「共鳴者」シリーズの設定を一部、改変してお借りしています(世界は全く別物です)
・娘。現メンやOGではないハロプロメンバーを思わせる人物が登場します
・そういったわけで不快に思われる方はスルーをお願い致します
久住小春が2人組の少女に行く手を遮られたのは、宵闇の迫る黄昏時だった。
1人は小春の進行方向に、もう1人は小春の退路を断つ形で悠然と立っている。
「あんたたちってもしかして噂の“子供達(キッズ)”――かな?で?小春に何か用?」
小春はその小さな少女たちにのんびりと問いかけた。
相手への敵意や警戒の気配はまったくない。
それとは対照的に、2人の少女からは殺意とも呼べるほどのピリピリとした空気が発散されていた。
「あなたは“国家”に楯突いたという事実の重さを認識してないみたいですね」
「っていうか自分の置かれた立場もわきまえずに一人歩きするなんて頭悪すぎ」
そんな小春の様子に、1人は不機嫌な表情を、もう1人はあからさまな侮蔑の表情を投げかけた。
“子供達(キッズ)”――政府に属する異能力者の集団――
幼い頃よりそのチカラを国家に見出され、政府の専門機関で“教育”を施された十数名の未成年から成る“特殊部隊”。
かなり無茶な投薬行為なども行われているという噂もある。
小春よりも年下に見える目の前の2人は、その中でも最年少近辺に位置するのではないかと思われた。
「あー・・・やっぱ偉い人たち怒ってるんだ。大人って心が狭いよね。そう思わない?」
軽く肩を竦め、小春は2人の少女に同意を求めるように微笑みかける。
だが、返ってきたのは燃えるような怒りの視線と、冷笑だけだった。
「あなたとこれ以上話すのは不愉快です。よって早急に任務を遂行させていただきます」
「・・・だってさ。悪いけどお話の続きはあの世で閻魔様とでもしてくれる?」
その言葉が終わらぬうちに、2人の周りの空気が不気味に歪み始める。
数瞬の後、2人の周囲には鋭い箭状の物体が幾本も浮かんでいた。
「これは・・・生体エネルギーの物質化・・・?」
さすがに驚いて目を瞠った小春を、1本の“矢”が瞬時に貫く。
「・・・・・・つっっ!」
僅かに顔をしかめ、左肩を抑える小春の右手の間からは赤いものが流れ出していた。
「ちょっと!またわざと急所はずして!さっさと終わらせてってば!」
「いいじゃん。ちょっと遊ぼうよ。どうせ相手は非戦闘系の念写能力しか持ってないんだからどってことないよ」
「そういう問題じゃないの!迅速に任務を遂行して帰らなきゃ」
「もー。いっつも頭固いなー。いいじゃんちょっとくらい。“子供達”の偉大さを思い知らせてから死んでもらおうよ」
自分を挟んで言い争いを始めた2人の少女たちに、小春は再び笑顔で話しかけた。
「なるほど、そっちの色黒の子がエネルギーを物質化して・・・で、それをそっちの子が操作してるわけか。2人で1つなんだ。おもしろいね」
自らの貫かれた傷と、未だ無数に浮かぶ“矢”を半ば感心したような表情で見比べるようにしている小春に、さすがに2人の少女もやや表情を変えた。
これまでの任務の中で、これほど明らかな生命の危機に晒されながらまったく態度を変えない“対象”には出遭ったことがなかったから。
―何か未知のチカラを隠し持つが故の余裕なのか・・・それとも極端に現状把握能力に欠けるだけなのか。
雑念が生じた2人の内心を知ってか知らずか、小春はにこやかな表情のまま話題を変えた。
「ところでさ。あんたたちってやっぱり人を殺したことあるの?」
少女たちは質問の真意を量りかね、一瞬沈黙が場を支配する。
暫時の静寂の後、小春の背後の少女が馬鹿にしたように答えを返した。
「はっ、そりゃそうに決まってんじゃん」
「へぇ~やっぱそうなんだ。小春はまだないんだよね。ねえ、人殺すのってどんな気分なの?」
「最高の気分だよ。今からまたそれが味わえるかと思うとワクワクしちゃう」
「ふ~ん、そうなんだ。・・・ところでさ、小春の能力の話なんだけど」
また唐突に話題が変わり、2人の少女に身構えるような気配がよぎる。
「念写能力って思われてるけどさ、正確には違うんだよね。何て言うの?霊能力ってヤツ?小春霊が呼べるんだよ」
少女たちがやや脱力する気配が伝わり、小春はさも心外だと言わんばかりの表情で2人の顔を交互に見た。
「なになになに?嘘だと思ってんの?霊とかバカバカしいと思ってるんでしょ?わかった。じゃあ実際に呼んであげる。霊たちカモ~ン!」
能天気なその声は少女たちをさらに弛緩させたが、それも一瞬のことだった。
「ひっっ・・・」
「そん・・・な・・・嘘だっっ!!」
少女たちの表情が瞬時に凍りつく。
彼女らの目に映るのは、紛れもなく“死者”たちであった。
他でもない自分たちの手で“誅殺”した者たちが、死を迎えたときの姿そのままで眼前に連なっている。
或いは虚ろな目で、或いは恨みがましげな目で、或いは憎悪のこもった目で・・・血塗れの“死者”が自分たちを見つめている。
さながらそれは悪夢だった。
だが、それは紛うことなき“現実”であった。
「どう?もう一回訊くけど、人を、殺すのって、どんな、気分・・・なの?」
先ほどまでの能天気な笑顔はすっかり消え去り、不気味な無表情となった小春は再び先ほどの問いを2人の少女に発した。
低い声で、ゆっくりと一言一言を区切りながら。
「うぁぁぁぁぁっっっ!!!消えろ!消えろぉ!消えろぉぉっっ!!」
恐慌をきたした少女が、“死者”に向かって“矢”を無茶苦茶に放ち始めた。
“矢”を受けた“死者”は苦しげに蠢き、消滅していく。
「は・・・ははっ!どうだ!死んでろ!死んだヤツはおとなしく死んでろ!」
数え切れない数の“矢”が超高速で黄昏の空を縦横無尽に飛び交う。
やがて無数の“死者”の姿は全て消え失せ、少女は勝ち誇った顔で小春の方を振り返った。
「あはは!これがどうしたの?うらめしやーさえ言えない役立たず呼ぶのがあんたの能力?」
だが、振り返った先にあったのは、屈辱や恐怖といった色は欠片もない、どこか憐れみすら浮かんだ表情だった。
ふっとため息を吐くと、小春はその表情のまま静かに言った。
「消えちゃったね全部」
「はっ!消したんだよ!お前なんかの能力が“子供達”であるあたしたちに敵うと思ったの?ざ~んねんでした」
見下しきったその言葉に対し、小春はゆっくりと首を横に振る。
「そうじゃないよ。あんたたちの“矢”の話」
「えっ!?」
言われて少女は慌てて辺りを見回す。
ない。1本たりとも。
「なんで・・・!?」
通常であれば、対象物を貫通した程度で“矢”は消えたりしない。
それが消えることがあるとすれば・・・
愕然たる事実に思い至った少女は、慌てて自分の“連携者(パートナー)”の方を見遣った。
そこにあったのは、半ば予想し、同時に半ば信じたくなかった光景だった。
「ち・・・さ・・・?あ・・・あ・・・いやぁぁぁぁっっっ!!!」
全身に無数の孔を穿たれ、朱に染まり倒れ臥す“連携者”を目の当たりにして、少女はかつてない種類の恐怖を感じていた。
(まさか)(そんな!)(でも・・・)
(うそだ!)(これはまさか)
(違う!)(これはあたしが・・・)(違う!)
(そんなバカな!)(そんなはずは!)(違う!違う違う!)(だけど・・・)
「そう、あんたがやったんだよ。あんたがこの子を・・・・・・殺した。錯乱のあまり“死者”と混同して」
「そ・・・な・・・ひぃ・・・」
必死に目の前の“現実”を否定しようとしていた少女に、冷たい“事実”が突きつけられる。
「可哀想に・・・めった刺しだよ?痛かったろうなあ・・・苦しかったろうなあ・・・」
「あ・・・あ・・・・・・」
憫笑を浮かべながら、小春は言葉をなくした少女に優しく問いかけた。
「ねえ、何度も訊いて悪いんだけどさ。人を殺すって・・・・・・」
「「どんな気分?」」
「わあぁぁぁあぁあぁっっっ!!ひぁぁ・・・は・・・ぁぁ・・・」
小春の隣に“死者”となって現れた自分の“連携者”に、孔だらけの体から血を流しながら問いかけられて、少女の精神は破滅的な悲鳴を上げた。
「ま・・・い・・・騙され・・・ない・・・で!“それ”・・・は偽者・・・私・・・じゃない!」
そのとき、崩壊寸前だった少女の心に弱々しくも力強い声が届いた。
同時に、輝く1本の“矢”が“偽者”の居る場所に具現化され、その胸の真ん中を貫く。
“偽者”は掻き消え、あとには驚いたように目を見開く小春だけが残った。
声の先には、いつも自分を支えてくれた“連携者”の姿があった。
致命的な傷を負いながら、最後の力を振り絞って自分を助けてくれた“連携者(パートナー)”・・・いや、大切な“親友(パートナー)”の姿が。
最後まで自らの使命を全うせんとする“親友”の視線に、少女の心は冷静さを取り戻した。
同時に、煮えたぎるような憎悪が燃え上がる。
“親友”の命はもう長くない。ならばせめてその命があるうちに仇を・・・
「死ねっっ!」
「!!!」
躊躇いの余地などなかった。
“親友”の最後の力で生み出された“矢”は、瞬時に憎むべき相手の眉間を貫いた――
小春が崩れ落ちるのを見届ける間もなく、少女は“親友”の下へと駆け寄る。
その命の灯は消える寸前だった。
「任・・・務・・・完了・・・だね」
「ごめんね!ごめんね!あたしのせいで・・・」
「泣か・・・ないで・・・まいの・・・せいじゃ・・・」
「でも、あたしがパニックになったせい・・・がっ?ごほっ・・・が・・・ぼっ!」
「・・・!?ま・・・い・・・?」
少女は、自分の心臓辺りから“矢”が突き出ているのを見た。
背中から突き抜けてきたと思われるその“矢”と、自分の背後を見つめる驚愕したような“親友”の表情。
涙で滲む視界に映る、静止画のような世界・・・それが、少女の見た最後の光景だった。
「別に驚くことじゃないじゃん。物質化してるんだから、掴んで突き刺すくらいできるよそりゃ」
驚愕の表情を浮かべる瀕死の少女に、小春はごく当たり前のようにそう言いながら静かに笑った。
「何故・・・生き・・・て・・・?どう・・・して・・・?」
パートナーの死を悼む気持ちはもちろん痛いほどにあったが、それ以上に目の前で起こっている不可思議に、少女は問わずにいられなかった。
「頭を貫かれたはずなのにね。不思議だよね。・・・じゃ、ヒントあげようか?小春の能力は何だったでしょうか?」
「念・・・写・・・!あれ・・・は・・・そうか・・・く・・・そっっ・・・」
「大正解~!霊能力とかもちろん全部ウソだから。あの霊たちはあんたたちの網膜に直接貼り付けた虚像」
「網・・・膜・・・?」
「そうだよ。『人を殺したことはあるのか』って質問で浮かび上がったあんたらの深層の意識をね」
「!!あの・・・質問は・・・その・・・ために・・・」
「で、その子の目にはあんたも“死者”に見えてた。っていうかそう見せてた。その結果は・・・この通り」
「・・・・・・いつ・・・から・・・私・・・たちは・・・虚像を・・・」
「いつから?そんなの最初からだよ。尾行の途中からあんたらの目に映ってたのは偽の小春。小春はずっと離れたところで見学してたよ」
「さ・・・いしょ?・・・・・・そんな・・・」
「つまりあんたたちは最初から最後まで一人相撲だったわけ・・・あ、二人相撲か。任務ご苦労様。あとはゆっくり休んで?」
「こ・・・の・・・・・・」
「もうしゃべらない方がいいよ。どうせ助からないだろうけど」
「・・・ぅ・・・・・・・・・」
少女の目から涙が溢れ、同時に急速に命の光が失われてゆく。
やがて、少女の意識は二度と浮かび上がることのない永遠の闇の奥へと吸い込まれて消滅した。
小春は、横たわる2人の少女の目をそっと閉じさせると、跪いて静かに手を合わせる。
「今日初めて知ったよ。人を殺すって・・・・・・・・・最低最悪の気分だね」
そして、哀しげにそう呟くとゆっくりと立ち上がった。
同時に、それがこれからも避けて通ることのできない道であることを小春は悟っていた。
自分の思いを貫こうとする限り、目を背けられない命題であることを。
だが、すでに覚悟はできていた。
心を凍てつかせ、譬え 一瞬でも“敵”に対する躊躇や憐憫の情を抱いたりしない覚悟が。
「あっちでも・・・仲良くね」
小さく呟き、小春は静かに歩き出した。
振り返ることなく、真っ直ぐに前を見つめて。
小春が立ち去った後には、哀しき2人の少女と、いつの間にか夜の闇に侵食された寂寞たる空だけが残されていた――
以上です
前回は肯定的な意見や過ぎたお言葉をいただきましてありがとうございました
積極的な否定のご意見はなかったのでまた書かせていただきましたが・・・
不愉快であれば言ってくださいね
後ほど読ませていただきます!
更新乙
ダークで残酷な描写を含むからまとめサイト収録不可と注意書きに書いてるけど
普通に収録されると思う、
それこそ>>125さんが載せないでと言わない限りはねー
また次の話も楽しみにしてる
あと…人がいないわけじゃないよ、このスレ社会人多いから
平日(とくに昼間)は、作品投下されることが少ないってだけで
>>125
更新乙です、後でゆっくり読ませて貰いますね
自分も後でゆっくりと読ませていただきます
人が少ないのでは無いと思うよ、仕事だよね
自分は今トイレ休憩で書き込んでまーす
これから年末にかけて忙しくなる人増えるだろうから
スレ落ちしたりする可能性も今後はあるだろうね…
なるべく何か話題を見つけて書き込みしたいところ
ものっすごいしょぼくさいので、ドキドキしながら投下します。
息抜きにでもなれば。
愛ちゃんはねぇ、すっごい優しいんだよ。それに絵里のこと、いっぱい褒めてくれる。
泣き虫だけど強くて、なによりもメンバーを大切に思ってくれる。
くしゃってなる笑顔が可愛くてね、愛ちゃんのこと頑張って笑わせるんだ。愛ちゃんが作ってくれるカフェオレは世界一、おいしいんだよ。
ガキさんは、厳しい人。絵里よく怒られちゃう。けど、それ以上に自分に厳しい。妥協しない。
誰よりも真面目で、常に上を目指してる。でもね実はおっちょこちょいだったり、不器用だったり。そんなトコが好き。
だって絵里たちが助けてあげられるでしょ?いつも頼りすぎてるかな。…ありがとう
さゆはねぇ、絵里にとってかけがえのない人。さゆがいなかったら絵里はきっと…ううん。言わない約束
人の痛みを自分の痛みのように感じられる、すごく繊細な心をもってる。絵里のことを一番に心配してくれる。
ずっと一緒だよ。クレープ食べに行こうね。おいしいお店、見つけたんだから
れいなはねぶきっちょで、シャイで、恥ずかしがりやで。かわいいトコいっぱい持ってんだよ
戦うと強くてかっこいいくせにさぁ、本当のれいなの姿、絵里きゅんってしちゃうもん。…だから守ってあげたくなる。
本当は守ってあげたいくらい弱い所あるんだよ。今の絵里なんかに、守れないけどさぁ、いつかゼッタイ守れるようになるからね
小春ちゃんはね、見てるだけで元気になれる。みんなの太陽みたいな人。
不器用で周りに勘違いされること、すっごい多いけど。寂しがりやさんなんだよ。でもね、それを見せない
そういうところ、強いって思う。絵里の隣でずっと笑っててよ。寂しくなったら、絵里ちゃんの胸、貸してあげるからさ。
みっつぃーは頑張り屋さん。なんにしても頑張る子。無理してない?って思うときもあるけど
いつもにこにこ笑顔でね。かわいいの。思わずなでなでしたくなっちゃう。
よく笑うようになったよね。絵里、安心してんだよ?みっつぃーの帰る場所は、ちゃんとあるんだからね。
ジュンジュンはねぇーおっきくてあったかい。パンダのとき限定じゃないよ?人間的にも、だからね。
さりげない優しさで包み込んでくれてる、そんな気がするんだ。伝える手段は言葉だけじゃないんだって教えてもらった。
でもね自分のバナナ食べられたときのジュンジュンはすっごい怖いよぉー!誰も近づけないんだから。ちょっとくらい許してよ
リンリンは祖国も歴史も仲間も自分に関わる全てを大切にしてる。そんけーしちゃうよ
人の感情にも敏感で、みんなのことすごくよく見てる。そして一番に声をかけてくれる。
それなのにたまに空気読めてないとか、そんなちぐはぐなところが好き。リンリンのさむぅいギャグは、いひひ。元気がでるよ
◇
「はやくみんなに会いたいなぁ」
絵里は手のひらに言葉を乗せてふぅっと吹いた。濃紺の空に丸い月がきらきらと輝いている。
「お月様と一緒にみんなに届けぇー!」
もうすぐ満月だ。
「亀井さーん!消灯の時間ですよー」
「はぁい。わかってまぁす」
窓を閉めて白いカーテンを引いた。
明日、目が覚めたら一番に彼女達を想おう。
それから、外泊許可時間になったら病院を飛び出そう。真っ先にリゾナントへ向かって、ただいまぁって大声で言って
さゆにぎゅぅってしてもらって、みっつぃーの頭をぐしゃぐしゃなでて、愛ちゃんに甘えて、それからにそれから…
――――――――― ……
◇
「ぜぇんぶ聞えとるがし」
愛はリゾナントの厨房を掃除する手を止めて、締め切っていたカーテンを開けた。
里沙もさゆみも、れいなも。小春も愛佳も、ジュンジュンもそれからリンリンだって。
それぞれの場所でそれぞれ想い、空を見上げた。
まん丸の、月と届いた、ラブレター
絵里の会いたい気持ちがみんなを呼んだ。全部ぜんぶみなの心に共鳴した。
「あたしたちも早くカメに会いたいんだからね」
みながそれぞれに返事を返すころ、絵里はぐっすりと明日に向かって時を刻む。
穏やかな、月が綺麗な夜だった。
以上、「月夜に書いたラブレター」でした。
ありがとうございました。
どうしても絵里で書きたかったという思いでこうなりましたw
いつも投下のあとはアク禁になってしまうので、書き込めなくなりそうですが
息抜きにでも呼んでいただければうれしいです。
冬に近づくにつれ空気が澄んで月がきれいに見えますね。無駄にうれしくなっちゃいます
月はいいですよねえ
特にこの時期の冴やかな月は心を捉えます
御作も同様です
ひんやりとした夜気を感じながら温かい心地になれる素敵な作品でした
彼女らの気持ちの繋がりとそれを見守る月に心捉われました
乙!
超可愛いんだけどwww
職場で読みながらニヤけてしまったw
絵里りん視点で語られるみんなの魅力・・・
たっぷりと堪能させてもらいました
病室のベットで物思いに耽る絵里と窓から見える月・・・絵になりそう
>>125
ここまでバトルシーンに特化して書いて
飽きさせずに読ませるのが凄い!
細かいどんでん返しのアイデアが面白かった!
>「あっちでも・・・仲良くね」
これには痺れました!so Cool!
このシリーズめっちゃ楽しみになってきた!
でも…亀とかはどう書くんだろう?
ポケポケプーの亀さんがどんな風にクールにバトルのか楽しみ!!
小春を応援しながら読んでいたが最後には“子供達(キッズ)”がかわいそうになってきた
さすがはダークヒーロー読者さえ敵に回す残酷さ!手に汗握って面白かったよ!
今からじっくり読ませてもらいます
>>140
アク禁や規制の巻き添えを食らったときは、まとめサイトの掲示板をご利用ください
話を書けないダメ作家が、代理投稿させていただきます
今から投下させて頂きますのでよろしくお願いします
秋の夜長に訪れた冷たい風が
この身も 心も凍えさせる
けれど
傍にいてくれる仲間の優しさが温かくて
いつも笑顔でいられる
*
ずっと一人だった自分は
どこでもずっと一人だと思って
誰にでも笑顔を振りまく自分は
人形のようだと思った
その笑顔に温かさは無く
卑しい望みだけが詰まっている
そんな世界で生きてきた自分は
もう本当の笑顔が出せないと思っていた
**
ずっと一人だった自分は
どこでもずっと一人だと思って
教室の隅っこで教科書片手の自分は
地味な一匹狼だと思った
その目は常に教科書を向いて
感情の無い人形のようにひたすら勉強をしていた
人の優しさに包まれたいと望むのに
すでに距離は開いて手は届かなかった
*
雲に隠れた暗い月の夜に
偶然出会った女性は綺麗な瞳でこちらを見てきた
無意識に悲鳴を上げていた心の声を
貴女は感じ取って来てくれた
最初こそ奇妙だと思ったことも
今ではすごく自然なことのように感じる
この仲間でしか感じることのできない共鳴は
本当の笑顔を取り戻してくれた
**
雲一つない満月の夜に
偶然出会った女性は綺麗な瞳でこちらを見てきた
その瞳の奥から聞こえてくる声が
心に響いて無意識に涙を誘う
不思議に思ったこの共鳴というものが
今ではすごく温かく感じる
ずっと欲しかった温もりと仲間
それを貴女は与えてくれた
***
共鳴で知りえた仲間は
今ではものすごく大切な人達
共に戦い 悲しみ 喜び 笑い合って
未来を切り開くべく集った仲間
守りたいと思う仲間
そこで出会った彼女もまた
共鳴で集まった内の一人
年の近い彼女が自分の友達になるのは
まだ少し先のお話...
すごいかっこいいお話の後にまたまたこんな拙い物をすみません
毎回短くて、しかも小説とは言えない程度の物だし…
ただ自分なりのイメージで描いたリゾナンターが伝わればいいなーと思っております
えーと、19日までにはすべて載せれたらいいなーって感じです
お暇な時に読んでいただければ幸いです
特に話が動くとか、目新しい展開があるとかじゃない
御馴染みの設定の話なんだけど、違った人が書くことで新しい魅力が見えてくるというか
まあそんな感じですな
簡潔な言葉で組まれた韻を踏んだような文章が魅力的です
面白いですね!
>教室の隅っこで教科書片手の自分は
>地味な一匹狼だと思った
ここ好きでした。この短文で色んな事が伝わってきて・・・
今日(昨日)は何もしていません
明日(今日)は青い球団の応援に行ってきます
マスクは取れてもサボりは取れない それがサボリン=インフィニティ
投下ラッシュでヒーヒー言いそうw
声が聞こえた。
笑いを含んだそれは、どこからともなく響いてくる。
世界は一面の闇だというのに。
星明りが消えた夜空の色に似ている其処で、名前を呼ばれた少女は、目を開けた。
―――やっと起きた、もー皆待ってるよ
―――待ちくたびれたーっ
―――こんな時間まで寝てるなんて有り得ないの
―――ジュンジュンモハラヘタ!
―――リンリンモデース!
傍らに視線を巡らせ、会話をする面々の顔を見る。
どれもこれもが知っていて、あまりにも嬉しそうに笑う仲間達。
―――ほら、主賓がこんな所で寝てどうすんのさ。
突然、眼前には大きなテーブルが置かれていた。
綺麗に飾られたケーキの上には、数本のろうそくが赤々と燃えている。
真ん中にあるチョコレートの板には白く『誕生日おめでとう』の文字。
口々に「誕生日おめでとう!」と祝いの言葉を述べ、闇色の天井に向かってクラッカーの音。
―――何固まっとんの、皆に答えてあげなきゃあかんよ、ほら
ソッと背中を押され、仕方がなくそのケーキに在るろうそくを一息に吹き消した。
どっと沸きあがる歓声。
何も知らされず、メンバーそれぞれが飾りつけ、ケーキ作りと励んでくれた。
いつまでも目の裏にこびり付いて離れない、生誕の時間。
それは目にした事がある自分の―――誕生日パーティだった。
得意満面に、背後へと振り仰ぎ、周りの笑顔をもう一度見ようとし。
―――涙の様な黒い雫が、周りの視線から零れ落ちた。
瞬きをする暇もなく顔全体が黒に塗りつぶされる。
まるで融け落ちるかのような其れは、水音と共に衣服だけを残して身体さえも消していく。
跳ね飛ぶ黒い滴がれいなの顔を濡らし始め、背中からゾクリと恐怖が張り付いた。
不意に、口の中に血の味が広がり始め、熱を帯びる肺がギリギリと痛み出す。
伸ばしかけた手は、"人の枠"から外れていた。
肘から融け落ちる黒い触手。まるで泥のようになって行く自分の腕を見て目を見開く。
闇に向かって踏み出そうとした足も同様に。
その結果、体重を支えるものを失い、バランスを崩した身体が闇の中へ倒れこむ。
水風船が割れるように、地面に叩きつけられた身体は―――爆ぜた。
薄皮一枚の皮膚を突き破り、溢れた『黒血』が、闇へと染み込んで行く。
胸から上だけになった身体からチカラをかき集め、必死に顔を上げる。
一面の闇を、星明りが消えた夜空の色が見えた。
叫びの形に開いた口からは、声と共に水が溢れてくる。
黒黒黒黒黒黒黒。
目から、耳から、鼻から、口から、あらゆる所から噴出した漆黒の水が、意識を塗りつぶす。
其れは崩壊、喪失に近いものへの邂逅。
自分が自分で無くなっていく。何も感じられない、何も得られない、何も、何も。
得体の知れないものによって引き摺り込まれる無限回廊。
"死"の畏怖。それが、叫びとなって吐き出される。
―――誰か、ねぇねぇ誰か
「誰か―――!!」
そう言えば来てくれた、助けてくれた、あの人の面影を、強く、強く。
願い、そして―――目が覚めた。
弾かれるように身を起こし、途端に鈍い痛みが肺の奥を走った。
れいなは胸元を強く押さえ、何度も細い呼吸を繰り返す。
身体中に伝う冷や汗があの『血』が粘着しているようで気持ちが悪い。
汗を拭おうと手を伸ばしかけ、そこでまた恐怖が走る。
両手を大きく広げ、指を動かしながら全てを確認した。
だが其処にはちゃんとした人間の手と、十本の指が存在している。
安堵の息を吐き、もう一度ベットの中に身体を沈ませた。
喫茶「リゾナント」の二階にあるリビングの隣に増設された其処は、リゾナンター内では
通称「れいな城」と呼ばれる田中れいなのプライベートルームだ。
元々荷物置きだった場所を無理やり改築した事で、小柄なれいなであるからこそ成り立つ部屋。
その上、ほぼ其処は寝床としての機能しかしておらず、布団の隣には大きなMDコンポが在るだけ。
壁に取り付けられている大きな姿見は、れいなの姿をしっかりと捉えている。
―――『黒血』は原型細胞の集合体。
元々任意に進化と退化を繰り返すこの細胞は、宿主である人間の体内で独自の構造を
形成し、最終的には拒絶反応を起こして『暴走』の現象を引き起こす欠陥品とされた。
だがそれは、『黒血』と人体の齟齬修正をする事で正常に機能させる事に成功している。
正常に機能しているそれは、『主』と『従者』の関係を持って共存していた。
脳の思考演算による『黒血』の維持、脳素や栄養を供給すると同時に、脳に対する外的の攻撃防御。
特殊な回路を備えた細胞は、独自に呼吸をすることも出来れば食物から栄養を取り込める。
細胞同士を繋ぎ合わせばどんな形状でも思いのままに進化する。
回路によって保護された『黒血』はあらゆる物理的損傷を瞬時に修復し、あらゆる攻撃を遮断した。
―――だが、ここで疑問が浮かぶ。
その原型細胞がまるで"生命体"としての活動をする為に
『人間』という形態をとり続ける事にどんな意味があるというのか。
例えば目が見えずとも物が見える生物は目を必要としない。
肺がなくても呼吸できる生物は肺を必要としない。
胃や腸がなくても食物から栄養を取り込める生物は消火器を必要としない。
手や足も、生物の肉体という者はごく一部の例外を除いて無駄なく、ただ『生存』の為に存在している。
『黒血』で構成されている被験者の身体は、もはや『人間』という形態を必要としていない。
筋肉、骨格、内臓、皮膚―――それらの『不要物』を構成し続けるということは、その活動を
している細胞にとって単なる負担でしかない。
細胞の進化はいずれ効率な利用法を学習し、肉体の状態にも適した形へと変貌する。
―――結果、『黒血』は"人間の枠"から外れ、『宿主』の身体を崩壊させる。
それを取り除く方法は無い。
その状態がいつ発作として起こりうるのかも分からない。
被験者である後藤真希は、ダークネスでの薬物投与によってその速度を遅らせているようだが
れいなの身近にはそのような人間は居ない。
だから紺野あさ美は現れ、真実を教えた。
自身の命と引き換えに、そのチカラを預けろと。
だが、れいなの異能力である共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)がその補佐的役割を
持って生まれたのだとすれば、それがあちらへと渡るのは危険すぎる。
紺野あさ美の誘いに揺れているのは、ほぼ仲間の存在だった。
確かにこのチカラを分析し、異能力の消去と共に延命治療の為に提供すれば
自分の寿命は少なからず長引くかもしれない。
だがそれは、ダークネスの力を強める事となる上にメンバーの裏切り行為だ。
死にたくも無い、だがそれ以上に、独りにもなりたくない。
どちらを選べる訳が無い、特にれいなにとっては、どちらもが大切な事だった。
ただの"野良猫"だったら、もしかしたら自分の命を優先していたかもしれない。
だが自分一人のわがままでもう―――大切な人達が死ぬのは嫌だった。
「もー、れーな、行かんもん!!」
それが全ての始まり。
電話が鳴り響く音、警察官の冷静な声、事故、喪失感、罪悪感。
自分があんな事を言わなければ、自分が、自分が、自分が…―――!!
「…どこまでも親不孝やね、れいなって」
くしゃりと前髪をかき上げながら額に滲む汗を拭う。
ダークネスで研究員をしていたという両親に憎悪を抱いた事等たくさんある。
だが、家族としての"パパ"と"ママ"に、そんな感情を抱いた事は無かった。
どんな事があったにせよ、あの二人が自身と血の繋がりがあり、『家族』としての
枠から外れていなかったのは事実。
「――――――」
声が、した。
それは、元々あの人が自室として使用していた部屋。
れいなの提案としてリゾナンターは一人での行動を自粛し、最低でも二人で居ることとなった。
絵里はさゆみと、小春は愛佳と、ジュンジュンはリンリンと。
そしてれいなは―――里沙と。
一瞬の自失から立ち直り、青ざめた顔で立ち上がった。
被っていた毛布を乱暴に払い捨て、ロフトの梯子を降り、その部屋へと駆け寄る。
鋭い痛みが肺の中でいつまでも回り続け、心臓の鼓動がけたたましく鳴る。
震える手でドアのノブを掴み、回す。
その動作だけでも、まるで1分は掛かっているかのように、遅い。
開く。開いて、目を見開いた。
「―――あ、起きちゃった?」
それは、あまりにも、のんびりした声で。
「少し話に夢中になってたかな、ごめんね、うるさかった?」
「紺野……あさ美………っ!」
「…今はDr.マルシェだよ。リゾナント・ブルー」
吐き捨てるかのように言ったその名前の人物が、椅子に座って平然と佇んでいる。
にこりと音が出そうなほどの笑顔を浮かべて。
以上です。
れいなの設定は物語を進んで行く内に重要なものになってきたので
オリジナルなのはご了承の程。
「私の魅力に気付かない鈍感な人」で前スレにあったアイディアを
ヒントに書いていたら最後の最後で挫折した能力話の人でしたorz
お目汚し失礼致しました。
>>156
サボリンさんおめでとうございます。
治りかけが一番大事だと聞くので油断をせずに
応援に駆けつけて行って下さい。
乙です!
体が蝕まれていく描写が恐かった
>ただの"野良猫"だったら、もしかしたら自分の命を優先していたかもしれない。
このフレーズ気に入っちゃった!
続き気になります!楽しみに待ってます!!
最高のクライマックスになると良いですね!
>>163
より一層、闇が深さを増してまいりましたね
続きが楽しみです
チャットで語っていた未来がようやく現実のものとなってよかった
本日夜11時に1本投下します
よろしくお願いします
いやぁ読んでてゾクゾクしました!
そういえば…愛ちゃんは誰と組んだのですか?
楽しみにまってるヨ!
チャット参加したかった!
それにしてもこのスレ作品投下ペースが速いなあ
過去一番じゃないかと思うくらい
チャット・・・またやってもおもしろそうかもですね
まとめさん蒼の球団が優勝の後にでも考えてみてくださいw
盲点だった!蒼の九弾って上手いね!
そこはやっぱり青なのだ
それにしてもさすが混んでるぜ
ちなみにチャットについては今は全然考えてませぬ
実のところ「蒼の球団」も単なる変換ミスだった件w
優先順位が常に上に来ちゃってるので
――闇を切り裂け
蒼き、九つの弾丸――
私も笑っているから
ねぇ…笑おう?
―創られた命と力
―裏切りの事実
―病気な身体
―己の不甲斐なさ
―孤独な過去
―偽りの自分
―イジメの過去
―バナナがない今
―厳しかった訓練
そんなツラさ今は忘れて笑っていよう
みんなが笑っていれば
きっと平和になるから
コーヒーの香ばしい匂いが漂う心安らぐ場所で今すぐ笑おう!!
きっと強さや優しさ…バナナだってあるからさ
とびっきりの笑顔
見せてよね
リゾナンター
いつもありがとう
>―バナナがない今・・・って良いね!
涼やかな風とオレンジ色の夕日に胸を締め付けられます。
チャットはやるとなると期間の問題や、まとめちゃんに負担がかかるから難しいでしょうね。
テーマを決めてそのテーマを含んだ作品祭りのほうが現実的かな?
>>175
変換ミスをこんな風に・・・うまいなあ!
めっちゃ感心しました
負け神orz
打撃コーチの大久保さんが「ダルビッシュからなんて打てねーよ」って言ってたから
まだアドバンテージあるし負け神さえ応援行かなきゃ大丈夫ですよきっと
・・・冗談ですので
あの色男にやられましたね。残念!
でも勝負はこれから・・・ですよね
青きナインがこのまま黙って引き下がる訳は無い!
ということは
チームカラーに黒とキショピンクが入ってる我が軍は敵役でしょうか?w
・・・ないな、弱すぎる
だいーぶ前のスレで、青対黒の試合を見に行ったサボティが
「あ、リゾナンター対ダークネスだ」
ってつぶやいたのを思い出した
オオマチュ怖いよオオマチュ
群馬じゃ黄緑祭りになってるのかな?
先日は転載いただいた方、ありがとうございました。あんなに早く転載いただけると
思わず、中途半端なところで終わっていてすみません。
感想戴いた方もありがとうございました。
かなしみさんと、前スレで1話目を書いてくれた方の力で、私の中の彼女等が
命を持って、自分達の生を生きはじめてしまいました。長くなりそうですが、
良ければ読んでみて下さい。 混み具合を見て、今夜か明日の夜続きを投下します。
まあ一部しか興味のない話であまりにも盛り上がりすぎるのは控えたがいいかもですねえ
保全との兼ね合いが難しいところですが…
お詫びにタグ打ちしてくる
>>69-74 の続きですね
楽しみに待ってます
里沙(リゾナンター)とアイカ(pepper)が当局に向かったところまででしたよね
とても楽しみです!
前にも忠告したが明日のイベントでペッパー警部達に
「早くお父さんに逢えるといいね」とか言うんじゃないぞw
絶対だぞ!ww
注意事項は下記の通り
・こんなのさゆみじゃないやい(色んな意味で)
・蒼の共鳴特別編第4夜
以上ですそれではまた後ほど
数多の大学が存在し、勉学に青春にと励む若者達が毎日のように公共機関に揺られてやってくる。
少女もその幾多の大学生の一人である。
高卒よりは大卒の方が将来有利だろう、その程度の感覚で何となく進学しただけであったが。
幼い頃からああなりたい、というビジョンがあったわけではない。
このまま何となく卒業して、何となく就職してそのうち結婚するのだろう。
大きな幸せではないかもしれない。
だが、大きな幸せを得る可能性がある代わりに深い悲しみも訪れる可能性もある人生よりは、
今のぬるま湯のような人生でもいい、常々少女はそう思っていた。
―――もう、あんな想いはしたくない。
少女の脳裏を過ぎる悲しみの記憶、それが心を締め付けるよりも早く、少女は思考を切り替えることになる。
家に帰宅しようとする少女の目の前に立つのは、首から幾重にもネックレスを着けたひょろひょろとした男。
脱色して大分経つと思われる金髪はくすみ、根本は黒々としている。
大して筋肉が付いていない、薄い胸板を見せつけるようなシャツの着こなし。
反射的に、この男気持ち悪い、少女はそう思う。
早足で、男の横をすり抜けるように歩道を歩く少女。
何事もなく無事に通り過ぎることは許されず、腕を掴まれた。
ぞわぞわと鳥肌が立つ感覚を覚えながら、少女は男の方を振り返る。
飯おごるよ」
言葉自体は柔らかいのに、有無を言わせないだけの圧力を感じさせる声に体が震える。
小・中・高と女子校に通っていた少女は男性に対する“免疫”が殆どなく、ただただどうしていいのか戸惑うばかりだった。
今までの人生で関わってきた男性はというと、幼い頃に別れ別れになった父親と学校の教師程度である。
彼らはこんな風に少女に言い寄ってきたことはただの一度もない。
怖い。
遊びに行こう、そう言っているが―――それだけでは済まないのではないか。
優しげに微笑んでこそいるものの、瞳の奥に輝く光はどこか怪しさを孕んでいる。
(助けて、誰か!)
男は何も言おうとしない少女を半ば無理矢理引っ張るように歩き出す。
少し頭の回転が遅そうだが見た目はかなりの上物、このまま逃すには惜しかった。
抵抗する様子もない、ならこのまま押し切ってしまえばどうとでも出来るだろう。
自然と口元に浮かんでくる笑み。
男の頭の中は既に少女をどう“料理”するかしかなかった。
「…離しなさい」
「は?」
声が聞こえた方を振り返り、男は絶句した。
その微笑みの妖しさはとても先程の少女と同一人物には思えない程である。
少女の“急変”に半ば呆気に取られた男の耳を揺らすのは、凛とした“女性”の声だった。
「聞こえなかったかしら?
離しなさい、そう言ったんだけど」
「さっきとはえらい違いじゃねぇか。
そっちが本性ってか……!!!」
それ以上男は言葉を紡ぐことを許されなかった。
一瞬で男の腕を振り解き、少女は男の胸ぐらを両腕で掴む。
少女を振り払おうと男が動くよりも早く、少女は男の急所を躊躇うことなく蹴り上げた。
痛みに男がその場にしゃがみ込んだのを見つめる少女は、追い打ちをかけるように地面に手を突く男の手を容赦なく踏みつけた。
思わず情けない声を上げる男に、少女は“宣告”する。
「今すぐ立ち去りなさい。
今度目の前に現れたら―――このくらいじゃ済ませないわ」
低く、殺気すら感じさせる声に、男は慌てて立ち上がってよたよたと走り去っていく。
その情けない後ろ姿を見届けた少女は、軽く息を吐いた。
さゆみ、どうしたんだろう…」
気がつけば、男は既にいない。
さっき、確かに男に腕を掴まれた、そこまでははっきりと覚えている。
だが、その後の一連の出来事を少女―――道重さゆみは一切覚えていなかった。
いつまで経っても慣れることのない、時折さゆみに訪れる一時的な“記憶喪失”。
何をしていたか思い出せない気持ち悪さにイライラしながら、さゆみは足早にその場を後にした。
* * *
さゆみが生まれたのは、とある県にある病院を経営する家であった。
祖父は地元でも有名な病院の院長であり、一族の殆どが医療機関に従事している。
さゆみも、いずれはそういった職業に就くはずだった。
その運命の歯車が狂いだしたのは、一体どこからであっただろうか。
それはさゆみが生まれてから6年目、後2ヶ月で7歳になろうかという、緑の眩しい季節のことであった。
『お母様、大変なの、この子怪我してるの!』
『あら…これでは死んでしまうわ、獣医さんに見せにいかないと…』
母親の声に、さゆみはわぁわぁと泣き出した。
死というものがどのようなことかは理解できなくとも、何か恐ろしいものであることを感覚的に掴んだのか。
壊れたように泣き出したさゆみの肩を抱きしめながら、母親は消えゆく命を静かに見守っていた。
油断している時に猫にでも傷つけられたのか。
ボロ布のような雀の姿は、素人目にはとても助かるようには見えなかった。
『すずめさん、死んじゃやだ…』
聞く者の心を震わせるような涙声。
その刹那だった。
さゆみの体からゆらゆらと淡いピンク色の光が立ち上り、雀を包み込む。
突然の不可解な現象に母親は言葉を失い、ただただ光に包まれた雀を見つめるしかなかった。
数秒、いや数十秒経っていたかもしれない。
先程までピクリとも動かなかった雀は、突然―――さゆみの手の中から飛んでいった。
瀕死だったとは思えぬくらい、力強く空へと飛んでいく姿をさゆみは無邪気な微笑みを浮かべて見つめる。
この子は“神の子”なのだ。
一連の“奇跡”を見ていた母親はそう確信する。
何とかして、この力を役立たせることは出来ないだろうか。
無邪気に笑うさゆみを横目に、母親の中で何かが徐々に崩壊していった。
* * *
幼いさゆみには過酷な日々が始まった。
傷つく雀を助けるべくさゆみが解き放った力―――治癒能力-ヒーリング-。
自己又は他者の怪我や病気などを癒やすことができる超能力であり、その力の効力は能力者自身によって変わる。
さゆみは他者救済型であり、自身の傷を癒すことは出来なかった。
そして、外傷以外の治癒…病気を治癒することも出来ない、そのことは幼いさゆみには理解出来ないことだったが。
一般人はけして入院することのない特別病棟へと急遽設けられた、治癒室。
その部屋で何が行われているかは、当事者以外誰も知ることのないことである。
特別病棟へと、連日連夜運び込まれるのは特殊な事情で外傷を受けた者達ばかりだった。
そして、患者達は必ずその部屋へと運び込まれる。
その頃から、病院内で奇妙な噂が出回ることとなった。
特別病棟へと運び込まれた重症患者が次の日にはもう退院しているという、ホラーのような噂。
一体、治癒室で何が行われているのか。
―――それは、さゆみの治癒能力を利用した闇治療であった。
治癒能力を行使する対象は、裏社会に生きる者達。
法外とも言える報酬の代わりに瞬く間に傷を治してくれるという、彼らからすれば奇跡のような話だった。
その評判を聞きつけた者達は連日連夜、さゆみの都合などお構いなしに訪れる。
例え眠りに就いていても、報酬に目のくらんだ両親に叩き起こされ治癒を強制させられた。
それでも両親が望むならばと力を使い続けたさゆみの体に―――ある日、異変が起きた。
その能力は精神力を消耗するものであり、精神力の消耗はそのまま能力者の体力を奪う。
力を使えば使うほど精神状態は千々に乱れ、幼いさゆみの体力…否、生命力を削り取っていった。
それでも、さゆみは望まれるがままに力を使う。
己の命を削り取られる感覚を覚えながらも、目の前で苦しむ者を救うがために。
だが、さゆみの体はもう限界であった。
最後の一人を治療し終えたさゆみは、食事を取ることすらなく這うように自室へと戻る。
これ以上能力を行使し続ければ、死ぬかもしれない。
苦しかった。
しばらく何もしたくない、そう思ってしまう程にさゆみは疲弊していた。
それでも、彼らは―――両親は自分のことなど構いもせずに、患者が来ればさゆみを治療へと赴かせるに違いない。
助けてあげたい。
苦しい。
二つの相反する感情に翻弄されながら、さゆみはゆっくりと微睡みの世界へと足を踏み入れようとしていた、その時だった。
『さゆみ、お母さん怪我しちゃったの、治してちょうだい』
連日の治癒行為でさゆみが疲弊していることに、母親が気付いていないわけがない。
淡いピンクの、桜色とも言ってもいい美しい奇跡の力。
その力に魅入られた母親は気付かない。
さゆみの体を思いやることのない、自分勝手な言葉―――それが、この日々の終焉を告げる引き金となった。
『さゆみ、何言ってるの、早くこの傷を治してちょうだい。
お母さんの言うこと聞かないと、お母さん怒るわよ……さゆ、み?』
指の腹から伝う、一滴の血。
その、些細すぎる傷を見せつけるようにさゆみに詰め寄った母親は、さゆみの様子がおかしいことにようやく気がついた。
見た目は、いつものさゆみと何も変わらない。
だが、さゆみから放たれる空気の質が明らかにさゆみのものではなかった。
ゆらゆらとさゆみの体から立ち上る桜色の光は、いつもの温かさを感じさせない。
夜空の下に咲き誇る桜の如く、幻想的でありながら畏怖の念を抱かせるような得体の知れない美しさ。
その光に見入っていた母親は、いつの間にかさゆみが手を伸ばせば触れられる距離に近づいていることに気がつかない。
『これ以上さゆみの力を利用しようというのなら―――』
数瞬の間を置いて、さゆみはゆっくりと勿体ぶるように傷ついた母親の指に手を伸ばす。
何だかんだ言って傷を治してくれるのか、そう母親が安心した刹那。
『きゃあああああああああああ!!!』
一瞬で、さゆみの小さな手の中に包まれた指が―――消失した。
痛みはない、だが精神的ショックは余りにも大き過ぎた。
へなへなとその場に座り込む母親に、さゆみは妖艶に微笑みかける。
さゆみと縁を切り、今後一切近づかない、そう誓ってくれるのであれば命を奪うことはしません。
でも―――そうしないと言うのであれば、私はあなたを…あなたの存在を“消去”することになりますよ』
その声音はとても今年で7歳になる幼子のものとは思えぬほど低く、鋭い。
“神”の逆鱗に触れた。
その事実に母親の体は震えるしかなかった。
ここでさゆみの…否、神の言うとおりにしなければ間違いなく自分は殺される。
驕れるものも久しからず。
栄華を極め贅を尽くすような人間はその勢いも長くない。
ましてや、今の富は自身の力ではなくさゆみを利用して得たのだ。
これ以上の富を望み、さゆみを利用し続けることを神は許さない。
そうしようとするのであれば、今目の前に立つ神は自分をこの世から消し去る、そう言っているのだ。
恐怖に震える母親に微笑みかけながら、死んでしまってはその富も何の意味もないでしょうと呟く。
その言葉が引き金となり、母親は指の消された手を隠しながら立ち上がった。
『分かりました、すぐにそのように致します―――神よ』
そう言って母親はバタバタとさゆみの寝室を出て行く。
滑稽な後ろ姿を嘲笑いながら、さゆみは布団に吸い込まれるように倒れ込んだ。
過度の治癒能力により、生物・無生物を問わず、全ての物質を崩壊させる超能力である。
さゆみは、治癒能力を行使する必要など微塵もない母親の傷、それに対して過剰なまでに傷を癒す力を注ぎ込むことにより、
細胞を破壊し分子結合を無理矢理寸断させたのであった。
その結果、母親の指はまるで消しゴムで擦ったかのように綺麗さっぱりと消え去ったのである。
さゆみの本来持つ治癒能力とは真逆の力。
ギリギリまで追い詰められていた状態のさゆみに、母親が止めを刺さなければ目覚めることはなかったであろう破壊の力だった。
『さゆみ、“お姉ちゃん”が守ってあげるからね…もう、大丈夫だからね…』
さゆみの口から飛び出した不可解な言葉は、誰の耳にも届くことなく虚空へと消え去った。
道重家から解き放たれたさゆみは、東京に住む道重家とは縁もゆかりもない一般女性に引き取られた。
有名百貨店に入っているとあるテナントの従業員であった女性は、訳の分からないまま東京に来ることになったさゆみを、
優しく包み込むように育て上げた。
さゆみの持つ治癒能力を知っても、母親のようにその力を利用することなく、寧ろその力を誰にも使ってはいけないと諭し。
放任するわけではないが過保護にならない程度の距離を保ちながら、女性はさゆみに接し続けた。
小・中・高と、さゆみは特に優秀な成績を修めることもない代わりに落第するような成績をとることもなく、
いたって平凡な少女としてさゆみは育っていく。
そんな平凡な生活は、さゆみが大学受験する年になって壊れることとなった。
幸い、女性が働けなくなっても問題ない程度の貯蓄はあり、生命保険にも入っていたため、
金銭的な問題にさゆみが悩まされることはない。
だが、日に日にやせ細り衰えていく女性の姿はさゆみの心を大きく揺さぶるには十分すぎた。
学校に行くのを止めたら許さない、その言いつけを幾度となく破ろうかと思った。
それを実行出来なかったのは、女性に見捨てられたくなかったからである。
道重家、否、両親に捨てられた自分。
その上、女性から見捨てられるようなことがあっては、それこそ生きていける気がしない。
傍に居て支えたいのに支えることの出来ない辛さに心を乱しながらも、
さゆみは毎日学校に通いきっちり授業を受けてから女性の元へと現れる。
女性が倒れてから数ヶ月の時が過ぎた。
さゆみは大学受験し、何とか浪人することなく現役合格を果たした。
結果を報告しに病室を訪れたさゆみが見たものは、今までにないくらい苦しそうに呻く女性の姿。
慌ててナースコールしながら、さゆみはけして使ってはいけないと言われていた能力を解き放つ。
だが、さゆみは自分の能力がどのようなものであるか把握していなかった。
さゆみの治癒能力では外傷以外の治癒…病気を治癒することは出来ない。
それでも必死に女性に癒しの力を注ぎ込むさゆみを押しのけるように、医者が飛び込んできた。
緊急手術することになり、女性は病室から手術室へと運び込まれる。
去り際に、医者はさゆみに向かってこう言った。
何故、自分の力は病気を治すことが出来ないのだろう。
幼い頃に傷を治療しに来ていた大多数の人間を助けることは出来た。
さゆみにとっては、何の関わりもない人間達。
その人達を救うことが出来て、何故、一番救いたい人間を助けることが出来ないのか。
手術室前の簡素なベンチに座り、さゆみは歯を食いしばる。
何も出来ずに、ここで待つしかない自分。
ダンッ!
後ろ手で壁を殴りつけ、さゆみはそのまま頭を抱え込む。
何が神様だ。
一番大切で救いたい人間を救うことも出来ない、こんな自分が神様なわけない。
さゆみの心は圧倒的な無力感に支配されるしかなかった。
その後、手術は無事終了し、女性は病室へと戻された。
だが、医者の言う通り、女性は3ヶ月も経たないうちにこの世を去った。
奇しくも、その日はさゆみの高校の卒業式―――桜の花弁が舞い散る穏やかな春の日であった。
* * *
帰り道を急ぐさゆみは、ふと、周りの空気がいつもと違うものであることに気がつく。
この世界には自分以外の人間はいないのではないだろうか。
そう思ってしまうほど、辺りは不気味な静寂に包まれていた。
怖い。
周りを見渡しても、誰もいない商店街の通り。
時刻は午後4時25分、主婦達がこぞって買い物をする時間である。
どう考えても、この時間に人一人見かけないのはおかしい。
ふと、近くの八百屋の方に目を向ける。
誰もいない。
八百屋とは反対にある魚屋を見ても―――誰もいない。
一体全体、何がどうなっているというのか。
刹那、さゆみの心に届く―――誰かを呼ぶ叫び声。
無視することなど出来ないくらい、鋭く響き渡る声に導かれるようにさゆみは走り出す。
誰か、ねぇねぇ、誰か。
誰かというのが自分のことであるのかは分からない。
だが、耳に聞こえるのではなく脳に直接届くような声は、さゆみと同じ―――能力者に違いない。
けして早いとは言えない速度で、さゆみは商店街を必死に駆け抜けた。
* * *
商店街を抜けた先にあったのは、いつもなら大勢の人が集う駅前広場。
さゆみも普段利用している、大学への最寄り駅。
だが、さゆみの目の前に広がっていた光景は普段の光景とは余りにもかけ離れていた。
目の前では二人の少女が血を流しながら、黒いボンテージスーツに身を包んだ女性と“戦っていた”。
女性から放たれる深い闇色とも言うべき、禍々しい光。
女性が少女達に手を翳す度に、闇色の光は鋭い刃状に変化して少女達を襲う。
直撃したら、まず行動不能になるであろう。
その威力の強さは、少女達が避けた後に深く抉れる壁や、真っ二つに割れてしまう柱を見れば十分すぎる程伝わってきた。
体が震える。
今までこういった事態には遭遇したことはない。
能力者、というものが自分以外にもいるとは思ってはいたが、こうして直に見るのは初めてのことであった。
形勢は女性の方が有利であるのはさゆみにも見て取れた。
二人の少女が反撃することを許さない速度で、その手から放たれる闇色の刃。
自分にもあの女性のような力があれば、助けることが出来るのに。
脳裏を過ぎる、あの寒い冬の日。
無力さに打ち拉がれ、何も為す術のないままただ黙って手術が終わるのを待っているしかなかった自分。
あの時と同じように、自分はこのまま何も出来ないままこの戦いを見届けるしかないのか。
いいなぁ、その白い肌…綺麗ね、羨ましくって―――殺したくなるわ」
「毎度毎度、人質取るとか…本当、汚いな、あんたらダークネスってのは」
「名前からしてやり口汚いことくらい分かるでしょうが、愛ちゃん…」
何処かコミカルな会話の内容を咀嚼する余裕はなかった。
女性のものとは思えぬほどの力で身動きを封じられ、挙げ句殺したくなると言われて余裕を持てるような神経は持ち合わせていない。
その腕から逃れようと必死に四肢に力を込めても、びくともしない。
元々、さゆみは運動は出来ない部類な上に、その非力さを級友に笑われることもあった程である。
女性から放たれる殺気に、さゆみの心は震え上がった。
「さてー、早く終わらせないと、デートに遅刻しちゃう。
分かってるわよね、攻撃を加えようとしたり防御の構えを取ろうとするなら…この子の首を落とすわよ」
その言葉に、二人の少女は構えを解いた。
女性は満足げに微笑むと、無数の闇色の刃をその場に生み出し、少女達目がけて解き放つ。
少女達の肩に、脇腹に、けして浅いとは言い難い傷が生まれていく。
わざと、クリーンヒットさせていない。
じわじわと嬲るように、少女達の体を傷つけていくような攻撃にさゆみは憤りを覚えずにはいられなかった。
人質がいることをいいことに、自身の愉悦のままにあえて直撃させないでいる。
モノトーンの服を着た長い茶髪の少女がその場に崩れ落ちた。
そして、アースカラーのトレンチコートに身を包んだ少女は、大きく肩を切り裂かれて膝を付く。
見ず知らずの他人の命のために自分の命を危機にさらすなんて、本当理解に苦しむわ。
弱い上に甘ちゃんだなんて、本当―――存在価値のない、つまらない子達」
言葉と共に、女性の体から放たれる闇色の光がより強く、濃いものとなる。
止めを刺そうとしているのだ。
さゆみは震えながら、心の中で強い叫び声を上げる。
神様、お願いだから彼女達を助ける力を私に下さい、と。
女性の体から、大きな闇色の刃が放たれようとしたその時だった。
「―――離しなさい」
その声が人質に取ったさゆみのものであると気がついた女性は、攻撃を止める。
辺りの空気が震えた。
リィリィと音を立て、さゆみの体から淡い桜色のオーラが解き放たれる。
夜の闇に浮かぶような、儚くも美しき幻想的な桜を思わせる光に、女性は戦いの最中であるというのに意識を逸らした。
「離さないなら―――消せばいいだけの話ね。
圧倒的な力を持ちながら人質を盾に敵を嬲る、卑しいにも程があるわ」
声と共に、さゆみは女性の腕を掴みその力を解き放つ。
物質崩壊-イクサシブ・ヒーリング-。
過度の治癒能力により、生物・無生物を問わず、全ての物質を崩壊させる超能力を。
何が起こったのか分からないまま、女性の体はさゆみの力によって消え去った。
「物質崩壊-イクサシブ・ヒーリング-使い…すごい…」
アースカラーのトレンチコートに身を包んだ少女の呟きに、さゆみは妖艶な微笑みを浮かべた。
先程まで恐怖に震えていたとは思えぬ程の妖艶な微笑みに、少女は心を奪われずにはいられなかった。
さゆみはゆっくりとした足取りで少女達の元へ近づき、その場に座り込む。
訝るような視線を感じながら、さゆみは口を開いた。
「…傷深そうね。
待ってて、今さゆみに替わるから」
「へ、何、どういうこと…?」
「私はさえみ…今あなたの前に立っている少女の裏の人格。
さゆみが危機に陥った時のみに現れる人格よ。
このこと―――さゆみには内緒にしていてね」
その声と共に、さゆみ、否さゆみの裏の人格である“さえみ”は消えた。
途端、表情が幼くなり、纏う空気も柔らかなものとなる。
呆気に取られた少女―――里沙は、おそるおそるさゆみへと声をかける。
「へ、どうしてさゆみの名前知ってるんですか?
…あー、またさゆみ記憶ないよって、大丈夫ですか!」
声音すら先程のものとは違い、どこか甘ったるい声になっていることに里沙は苦笑いした。
圧倒的な力で敵を消し去ってしまった時とは、まるで別人―――“さえみ”の言っていたとおり、さゆみと彼女は別の人格なのだろう。
さゆみにそう言われたことで忘れていたはずの痛みが蘇り、里沙は顔を顰めた。
闇色の刃で切り裂かれた肩に滲む血の量はかなりのもので、さゆみが顔面蒼白になるのも無理はなかった。
この傷では、傷が塞がるのに二週間、完全に元通りに動かせるようになるにはそれからさらに時間がかかるに違いない。
その間、また戦いに巻き込まれたら―――リゾナンター、最大の危機であった。
傷ついた里沙、そして地面に横たわる少女―――愛はまともに戦えない状態である。
そして、残された仲間はというと、一人は攻撃能力が使えず、もう一人はある意味最強の攻撃が出来る反面、
その攻撃には大きなリスクを伴う。
まずいな、と里沙が呟いたその時だった。
「―――待ってて、今すぐにさゆみが治しますから」
その声に、里沙は耳を疑わずにはいられない。
先程敵を消し去った力、物質崩壊-イクサシブ・ヒーリング-。
“さえみ”とさゆみは人格が違えど、肉体は同一である。
さゆみも“さえみ”と同じように物質崩壊-イクサシブ・ヒーリング-しか使えないのではないのか。
里沙の考えを吹き飛ばすように、さゆみの体からゆらゆらと柔らかな光が立ち上る。
その温かな光に、里沙は思わず目を伏せた。
流れ込んでくる、傷を癒してあげたいという優しい想い。
数十秒で里沙の体に生まれていた肩の傷、そして細かな傷は一切消えて無くなっていた。
さゆみはそのまま、今度は里沙よりも少し離れたところに倒れている愛の元へと駆け寄り、
里沙にしたのと同じように光を翳す。
「…物質崩壊-イクサシブ・ヒーリング-、その逆はヒーリング、か。
なるほど、治癒が出来ればその逆も然り、というわけね。
―――でも、何故、さゆみちゃんの中にもう一つ人格が出来たんだろう…」
里沙の呟きはさゆみに届くことなく夕闇へと溶け消えた。
* * *
授業を終えたさゆみは、けして早いとは言えない駆け足で大学を後にする。
早く、彼女達に会いたい。
さゆみを助けるために命を賭けてくれた人達。
自分のこの力は、きっと、彼女達を助けるために神様が授けてくれた力なのだ。
自分は神様なんかじゃない、治せないものもある。
だが、そのことはもうさゆみの胸を締め付けるようなことではなかった。
その人達の為に力を使うことを、きっと、天国にいる女性も望んでいてくれているはずだ。
涼やかな秋の風を感じながら、さゆみは今確かに、失ったものを埋めてくれるような充足感を感じていた。
リゾナンター五人目の仲間となった道重さゆみ。
その身に宿す力は、癒しか破壊か。
―――その答えを知る者はない。
第5夜に続く
乙です
さゆみとさえみの力の違いを、日中の桜と妖しげな夜桜に例えるあたりが
何というか流石というか
何気にダークネスのメンバーが総出演しそうな予感がするのも、個人的には好みです
さゆの過去、さえみの誕生、リゾナンターたちとの出会い!面白かった~!!
>リゾナンター五人目の仲間となった道重さゆみ。
>その身に宿す力は、癒しか破壊か。
かっこいいですね!最強の槍と盾がリゾナンターに加わった!超頼もしい!!
母親との関係の描写が・・・何と言いますかすごく重いですねえ・・・
これを描き切れるのはさすがと言うしかないです
現在→過去→現在という物語の構成も非常に巧みで嘆息しました
今までの特別編の中でも個人的に一番好きです
一話ごとに読む限りにおいては、その完成度の高さに溜息が出るばかりです
ただ特別編を通して読むと、メンバーの知り合う過程が戦闘に巻き込まれた為という
パターンが続いているのが気になりますね
彼女達の中の共鳴因子が惹きあうからなのか、それとも神の掌の上で踊らされているのか
何にせよ完結が待ち遠しいです
ないやいさんの後で恐縮ですが投下していきます
なのでよろしくお願いします
昼夜ともにアンコールはガキコールになりました
昼も緑多かったですが夜は緑サイ持っていないヲタ達が
他の色のサイを下げてくれたので結構緑で埋まった感じ
一応緑サイ持っていってたので参加できてよかったです
最後にサブリーダーから久しぶりの「楽しかった人~?」をいただきました
秋の空はとても高く
明け方の空は遠すぎて届かない
それでも手を伸ばして掴んだのは
大切な仲間と共に歩む道標
☆
母国から日本へと渡ってきた
それまでの生活をすべて日本に移して
母国にいる家族や仲間を置いてきた
勝手が分からない異国で
これからの自分はどう暮らしていけばいいのか
ただ上官に従い 仕事をこなしていくだけ
戸惑うことなど見せる時間もなく
嫌でも適応していかなければいけないことに
どこかで疲れたと泣く自分がいた
一人の自分が
とても孤独に感じた
★
母国から日本へと渡ってきた
それまでの生活をすべて日本に移して
母国にいる家族や友達を置いてきた
見知らぬ土地でどうすればいいのか
少しの期待と多くの不安で街を歩いた
祖母はいつも自分を応援してくれた
そしてどんな時でも 傍にいてくれた
けれど今は傍にいなくて 涙が流れそうになる
心を許せる人がいない
一人ぼっちの自分が
とても孤独に感じた
☆
上官に従い仕事をこなす毎日
光と闇があれば それは光が当たることのない仕事
いつも笑顔でありたい自分も
光が当たらないと知れば
この手は光に届きそうにもない
この手で作り出される炎でも
人を暖めることはなく
殺すことでしか意味を持たない
どんな明かりでも
自分には光ではないと知ると
笑顔は消えていった
★
異国の地 日本で生活を始めても
言葉に戸惑い 異文化で苦しんだ
誰か傍にいてくれないか
そう問いかけても誰も答えてはくれない
どこにも届かない心の声
この地では自分の能力が異能であり
また周りにも理解してくれる人がいないということが
自分を追い込み苦しめていった
どんな力でさえも
皆にとって異能ということが
不安を募らせた
☆
炎を灯して敵を葬り仕事の評価がつく
しかし 人を殺すという事実に心は苦しみ
代償として笑顔が消えていった
笑顔の無い日々
無表情な自分はまるで人形のようで
そんな時に現れた女性は光を運んできた
今の自分には眩しいものでしかないのに
無償に欲しくなるその光は何故だか温かくて
心をほぐしてくれた
★
行き場の無い悲しみも寂しさも
一人で抱え込むしかなくて不安は募るばかり
この先もずっと一人かもしれないということが
自分を底へと追い込んでいく
影が降り注ぐ毎日
涙を流す自分はまるで悲劇のヒロインのようだ
そんな時に現れた女性は温もりを運んできた
今の自分がもっとも必要で 欲しくて
すぐにでも掴みたくなるその温もりが温かくて
不安を取り除いてくれた
☆★
貴女は私を見つけてくれた
心に影が映し出された時
手を差し伸べて温かい光へと誘ってくれた
自身に宿る力を知っても
貴女はすべてを受け入れてくれた
その手は私を温かい光の方向へと誘ってくれた
自分が望む力の使い方を教えてくれた
貴女と仲間の為に
私は共に戦うと決めた
それが私の未来
それが私の望むこと
異国の地で独りだった自分は
貴女に出会い すべてが変わった
仲間を光へと誘い
これからの未来を共に歩んでいく
この世界の平和を望むには
皆の手を血に染めることになるだろう
誘う道が茨の道であると分かっても
涙を流してしまう時があるかもしれない
でも 寂しくならないで
独りじゃないから
ここにいるから
全てを懸けて私は戦う
それで傷を付けられようとも
命を賭して戦い 先頭に立ち拳を掲げよう
茨の道でも
命を懸ける戦いでも
共鳴で集った仲間たち
胸の高鳴る方へ
私は戦い 仲間を守り 平和を願う
更新は以上になります
作者さんがさるさん食らったようなので後半3レス分代理投下しました
あーし、今は舌がダコダコなんやで、気になってもーて
治ったら読みますやざ
作者さん代理投下された方乙です!
今回はカッコよくってなんか読んでいて奮い立ちました
☆が中国国旗っぽくっていいね!
冒頭の、秋の空~の件が叙情があって素敵でしたね
でももし全メンバーの話を書くとなると、◇☆が多すぎて目移りしそうでw
相変わらず素敵やわぁ・・・
既存の設定を散文詩的に詠うのが新鮮です
そしてその感性や表現力がまた洗練されていて鳥肌立ちます
特に炎を「温もり」と表現されているのには目からウロコの気分でした
うやらましすぎるセンスです
さゆみとさえみの雰囲気の違いや力の違いを表現するのに桜を使ったのは
単純に桜の花が好きだからってやつです(日中の桜も夜桜もどっちもいいですよね
後パターン化している現状ですが…いいツッコミでしたw
自分でも気にしていたことなので次回から若干ひねっていこうかなと
基本的には第8夜まではそれぞれの過去と加入経緯ですので大幅な動きは第9夜以降になります
早く完結させて本編も書きたいし単発も幾つか書きたいし…もっと時間が欲しいなと言いつつ
今後もよろしくお願いします
代理投稿してくれた方ありがとうございます
こんなに分けて投稿したらそりゃあ規制くらうよなって感じですw
自分はこんな感じでしか書けないので小説が書ける方は羨ましいです
特にないやいさんとか…
一応これで全員分書いたかなーという感じです
実は最後の◇◇はあの人なんですが、たぶん分かってくれるでしょうw
あれをどうやって分けて書こうかと思って…でも結局一緒にしちゃいました
今後もリゾナントできれば書こうかなーと思ってますので
その時はよろしくお願いします
あとはシリーズ系・番外編以下をちょいちょいやっていきます
間違ってるのあったら教えてね
昨日確認したらいきなり第1話の中に(2)あったし
ないやいさん乙です!第六夜楽しみにしてます!次は誰やろか?wktk
乙です
[Blue-R](08)304 『蒼の共鳴番外編-祈りの風-』 と [Illusts](08)317は表記こそ(08)ですが
実際に投下されたのは、9スレ目のようです。 整理作業の時にご確認を
ダイヤさんの世界観は大好きです
一スレ物でもいいから、もっと読みたい
>>237
サボリン∞さん乙です!
きれいになりましたね!
ズラァッ~と並んだ作品は壮観ですね!
一番下までスクロールして行ったられいなが手を上げてましたwwキャワ
壮大な作品が出来る予感
乙です
作品もお待ちしてますよ!
アウアウアウ
ご指摘どうもです
そういうのいっぱいある気がする
>>242
がんばってみる
ダークネスサイドの出来事にちょっと動揺
でも天使見に横浜行ってくる
MCでなっちからこの件について報告があったりするのかな・・・
作者さん次第だけど
FCの更新停止とかで予想も出来てたしきたかって感じ
何が今までと変わっていくんでしょうね
FCからコンサート・イベントのチケットが入手できない
バラエティに出てハロプロを名乗れない
それぞれどうなるかというと
アップフロント公式が情報源になる
それぞれのFCが出来るので兼ヲタ、DDはちょっと大変
元ハロプロ、元モーニング娘。を名乗るが元美勇伝はちょっと微妙かも
でも本人達にとってはプラスになる事だって多いはず
新しい門出を祝ってあげたいとグスン思います
友人の娘。枠借りれなくなるから自分でFC入会しないといけない
娘。単独FCつくってくれ
楽園を
追われて出てく 訳じゃない
胸の高鳴る 方へ行くだけ
by Darkness
進む未来は 闇か光か
近くの某店に入ったらBGMがペッパー警部(もちろん娘。Ver.)になって吹いた
リゾナンターに嫉妬されたのかなwww
天使のような 悪魔の笑顔
電話して 求めるものは キミの声
闇から逃げて キミに会いたい
涙する 声を聞いたら 会いたいよ
気付いてほしい この共鳴で
キミの声を聞きたいだけだった
この電話ボックスでダイアルして
キミのいる店へと繋いだ
裏切りの行為が私とキミを突き放しても
私はキミを忘れない
だから気付かないで
それが私の 精一杯の最後だから
上のは◇◆が書きました
たった1スレですがなんとなくリゾナントしてみました
レス!レス!!
咄嗟に詩やら短歌やら
しかもメッチャ上手いやん!感動した!
電話でリゾ短歌してみました
「帰らんと!」携帯切って 頬緩む
帰れる場所が
ある嬉しさよ
詠み人 田中れいな
スレ違いなのは解ってるんだけど
DDの自分にとってはインパクトが…
だがしかし、ダークネスがタダで滅びるとは思えんw
これイイね!
こちらの話にも、今の状況にも通じるし
まとめサイトのタグ付けと合わせて過去作品を読み返したい衝動に駆られております
というか読み返してしまっております
これを読むのが毎回楽しみなんだよな!
ついに二十歳かぁ…時が経つのは早いものですな
某スレで3秒差で0時ぴったり逃した
申請手順間違ったかと思った
>>69-74の続きだそうです
映画「スキャナーズ」及び永井豪氏の「真夜中の戦士」への「オマージュ(=○クリ)」
が含まれますので、ご注意下さい。 自分なりに消化してはいるつもりですが…。
機会があればこの2作品も是非ご覧になって下さい。
そう、うん、でも大丈夫、たぶん今日には一応落ち着くと思うから…。詳しくはまた連絡するね。」
里沙は愛に連絡を入れ終えると、アイカに向き直って言った。
「さっ、行こうか?」
「新垣さん、今のはタカハシさんとは違いますの?」
「うん、同じ愛ちゃんで、やっぱりあたしたちのリーダーなんだよ。そうだ、今度会わせてあげる!」
「新垣さんたちも、何かのチームなんですの?」
「うーん…。ただの、喫茶店に集まる仲間同士ってとこかなぁ…。」
「いいですねぇ…、そういうの。うちも会ってみたいです!」
「よしっ!じゃあ、とりあえずお仕事済ませちゃおうか!」
「はいっ!」
秋元の指定した場所は意外にも、WestTokyoCityの、周囲を林で囲まれたかなり寂れた雰囲気
の場所だった。現在は使われていない、科学技術局の研究施設らしい。まあ、人目を避けるには
絶好の場所とは言えた。
大きなガラス張りのホールを入っていくと、ロビーのソファから、恰幅の良い眼鏡の男が立ち上がった。
「新垣さんですね?…秋元です。 …もう一人は…、№7ですか。…意外ですね。」
人の良さそうな笑顔を浮かべてはいるが、眼鏡の中の眼は決して笑っていない。そんな男だった。
「№7」という冷たい呼び方に、アイカが嫌悪感を感じているのが伝わってくる。この男、信用できる
のか? …マインドサーチを掛けるべきか・・・? 里沙は迷った。だが、一応はまだ敵と決まった訳
ではない…。人間としての、最低限の礼儀として、出来るならギリギリまで「能力」は使いたくない。
里沙は思いとどまった。
に聞いてくれ、疑問点については冷静に質問をはさんでくる。
「感情があると言うのは、人間らしい反応のシミュレーションプログラムによる誤解ではないのか?」
「里沙が感じる精神感応というのは、電子脳の稼動内容を読み取ってしまう事はないのか?」等々…
そして、それらの疑問を里沙が次々と否定していく。すると、
「実は私も、彼女等には普通のロボットとは違う部分がある事に気が付いていたんですよ。」と言い、
部屋の照明を落とし、スクリーンに映像を映し出した。
「№1です。」
映し出されたのは、昨夜の戦闘時のアイの姿であった。装甲ロボに銃口をむけられながらも、逆に
前方に突っ込み、紙一重で銃撃をかわしては敵を切り裂いていく。
「スゴイ…。」里沙がつぶやく。
「たとえば、この№1の回避動作の成功確率は、通常のCPUによる演算処理では30%以下です。
普通のロボットはこんなリスクの高い行動を取りません。しかも、戦いの後半に行くにつれて、類似の
動作が増えていく。まるで上達していくかのように…。」
「だから!」と里沙は秋元の方を振り返って言った。『それは彼女達が人間だからなんです!』と続け
ようとした里沙の目に入ったのは、いつのまにか、サイレンサーつきの拳銃を握った秋元の姿だった。
「だから」と笑みを浮かべながら秋元が言う。「『サンプル』が欲しかったんですよ、1体だけでもね。」
バスッ!!バスッ!!バスッ!!と低い発射音が続けて響き、アイカの胸が打ち抜かれていく。
突然の出来事に悲鳴をあげることも出来ず、唖然とした表情のまま、アイカがスローモーションのよう
に倒れていく。
「ミッツィー!!」叫びながらアイカに抱きつく里沙の左肩を、追い討ちをかける秋元の銃弾が貫く。
「あうっ!」とうめきながら膝を落とす里沙。
「バカな事を!」秋元の狼狽した声が響く。「ロボットを人間が庇うなどと!」
「こんなところで死なれでもしたら、私の計画が台無しだ!」うろたえながら秋元が携帯を探す。
「救護班を呼ばなくては…」
しかし、携帯を取り出そうとした秋元の手はぴたりと止まり…、見る見るうちに額やこめかみに静脈が
浮き出してくる。
「ぐっ!?ぐわああああああ!!」頭を抱え、うめき声をあげて昏倒する秋元。口から泡を吹き、体を
痙攣させている男の姿を、床に膝をつき、荒い息を吐きながら、怒りに目をギラギラと輝かせた里沙が
睨みつけている。
「ミッツィー!! しっかりして!! 目をあけて!!」
「ごめんね、ごめんね、あたしがもっとしっかりしていれば…。」
手のひらでアイカのふっくらとした頬を触ると、アイカはゆっくりと目をあけた。
「…ガキさん…」
「ミッツィー、頑張って… すぐにここを抜け出すから… 帰ろう、みんなの所へ…」
「うちの血ィ… 赤いですか…?」
「…え…?」
「もう、よう目ェが見えんのです…。」
「うちの血ィ、どんなんですか…?」
里沙は、撃ち抜かれた自分の左肩を思い切り握りしめると、あふれる血で染まった右手を、アイカの
目の前に差し出した。
「ほら!ミッツィー! 真っ赤だよ!見てよ!ミッツィー!」
「ほんとだ… 見えます… キレェな色ですねェ…」
滴る里沙の血が、アイカの頬を汚していく。
「あったかいですねェ… 血ィはあったかいって、うち、聞いたことあります…。」
「ミッツィー、お願い、生きて!あたし、何にもしてあげてない!」
「…ガキさんの手… あったかいです… おかあさんみたいですね…。」
静かに眠りに付いたアイカの白い頬は、里沙の血で汚れ、まるで赤い絵の具をいたずらした子供の様に
幼く見えた。
そして、彼女の身体から流れ出た濃いブルーの循環液が、里沙の哀しみを映すかのような、深く蒼い
血溜りをフロアに描いていた。
里沙は歯を食いしばり、痛む左肩を抑えながら立ち上がった。
倒れている秋元を見下ろし、睨みつける。「殺してやりたい…」とさえ思うが、「pepper」達の誓いを思い、
今後の状況を考えると、どう考えてもそれは実行すべきではなかった。
里沙は秋元の精神を乗っ取る為、ゆっくりと感応の触手を伸ばし、秋元の精神の中に入っていった。
先刻は里沙はとっさに秋元に「マインドスキャン」を仕掛けたのだった。例えて言えば、「精神」という部屋を
「覗き見」するだけの「マインドサーチ」に対し、「マインドスキャン」は精神の部屋に土足で入り込み、引出し
を開け、中を掻き分けて情報を取り出す。それは「スキャン」される側の精神に激しい苦痛をもたらし、場合
によっては対象者が死に至る場合もあった。
情報の書き換え、並べ替えまでも対象者に気づかれずに行う、高度な「マインドコントロール」さえ可能と
する「能力」を持った里沙が、怒りに任せて全力で「マインドスキャン」を行った為に、秋元の精神は崩壊
寸前まで乱れていた。
「ダメだわ…。」つぶやいて里沙が目をあける。ある程度の時間を置いてならまだしも、このままでさらに
マインドコントロールによる負荷を掛けることは、死に至らないまでも、廃人となる可能性すらあった。
里沙は秋元のマインドコントロールをあきらめ、秋元が施設内に潜伏させていた機動部隊員の精神を
乗っ取ると、アイカと共に自らを脱出させ、「pepper」達の元へと送り届けさせる様、導く事にした。
実際の局長は未だ阿久悠博士であった。
阿久悠博士は、日本が生んだ世界に誇る天才科学者と謳われ、ロボット工学の世界的な権威であった。
豪放な性格で知られ、「pepper」プロジェクトの生みの親であり、名付け親でもある。
当初、単身で警察組織に配属される予定であったガイノイド達が、異例の「警部」待遇で迎えられる事が
決まった時、その祝賀会の会場で、阿久博士が古いヒット曲から命名したと言うエピソードが残っている。
しかし、彼は現在「pepper」逃走事件の首謀者である可能性を疑われ、科学技術局の手で監禁状態に
あった。秋元の記憶の中の阿久博士は、「彼女等はロボットではない!生命体である!彼女等を追わない
でくれ、そして自由にしてやってくれ!」と熱弁を振るっていた。
しかし、秋元はかつて「AKーBシステム」と呼ばれる、中央制御によるロボットの集団戦闘システムを開発
し、科学技術庁のトップに登りつめようとしていた時、阿久博士の開発した、アンドロイド単体が高い判断
能力を持つとともに、それぞれが高度な連動を可能とする「リゾナントシステム」との採用競争に破れ、失脚
していたのだった。この閉鎖された研究所は、その時の秋元の屈辱の記憶の地だった。
そして今、彼は自身のAK-Bシステムで「pepper」達を全滅へと追いやる事で、AK-Bシステムの優位性を
証明し、同時に阿久博士の失脚と自身の復権を目論んでいたのだった。
「とんでもない事になってきたわ…。」
里沙はマインドコントロールした機動部隊員に車を運転させ、アイ達の元へと向かいながらつぶやく。
痛む肩を押さえながら、携帯を取り出し、愛へコールする。
「は~い。 ガキさん? どうだった?」いつもと変らない愛の声がした。
「愛ちゃん、お願い! 助けて! 阿久博士を助けだして! 彼女達のお父さんを連れてきて!」
愛の耳には、里沙の声はまるで泣き叫んでいるかのように聴こえた。
306 :(15)928-931:2008/10/20(月) 02:12:25
とりあえず以上ですが…。続きます。
なんか皆さんと傾向が違いすぎて、こんなんでいいのカー? と言う気はしています。
まあ、あまり混んでない時にでもチマチマ投下しますのでよろしこ。
細かな設定がすばらしいです、すごく続きが待ち遠しい!
里沙が自分の赤い血の色を愛佳に見せる場面に泣いた
作者さん代理投稿の方おつです
泣きました・・・アイカ
傾向が違う方が嬉しいです
新しい波を待ち望んでいます!
俺も狼開いたら一発目にResonanterの文字が目に飛び込んできて驚いたw
めっさかっこよくてワロタwww GJです!
よかったねアイカ!
疲れたろ・・・もう、お休み・・・
>>281
感動しました!!
朝からウルウルです!
続きを、続きを待ってます!!
って言いたいのに携帯だから見れない…orz
今晩PCから見ても間に合う?
看板議論スレの人達はresonanter?って感じだったんかなw
つhttp://omame.dnsalias.net/up/dat/omame2820.jpg
これだよね(勝手に転載スイマセン)
素敵だなぁ…れいな推しだから来月参加してみようかなぁw
レス㌧!
保存したいから今日は早く帰ってPCでもっかい見ます!
スレ住人はリゾナンター派とリゾナンダー派に分かれてるよね
そしてリゾナンター派もさらにresonanter派とresonantor派に分かれてるんだね
このスレの自由さを端的に物語ってるねえw
でもどうやって入れようかな?
そんなサボちゃんはResonanter派
で、気まぐれにResonanterでYahoo!で検索したら
作品群が中国語訳されてるとこ見つけた
でもリゾナンターは本当に国境を越えてるんだなぁ
以前に見ました
『過去と今、裏切りと絆』とか『共鳴者』の何故か2話だけとかが訳されてるとこですよね?
youtubeの動画もいろんな国の人がお気に入りに登録してるみたいですし
本気で リゾナンターは国境越えて何処までも進むよYES!Wonderland 的なことになってますね
中国語化作業のスピードに負けないようにしないと!
と、まとめのまとめページ管理人の呟きでしたw
あと宣伝で申し訳ないのですが例のページにマイナーチェンジ施したので興味ある方は是非お越しください
後、前スレで華麗にスルーされちゃいしたがwもしダークネスの人の悪そうな画像素材とか持ってる方
いらっしゃいましたらご提供くださいm(_ _)m
ってこう言うのはしたらばに書いた方が良いのでしょうか?
長文失礼いたしました
ダークネス画像かぁ・・・
悪そうな画像なかなか難しいですねえ
決してスルーしたわけではなかったのですが日頃から画像収集してるわけじゃないので
でもちょっと意識的に探してはみますね
注意事項は以下のとおりです
・[Darkness](08)323、[Darkness](08)929『 the revenger 』のその後
・登場人物は吉澤と名もなき男たちのみ
・リゾナンター不在
現メンが一切登場しないのでスレ違いぎみではありますが、保全文ということで
ご了承いただければ幸いです
それでは投下いたします
『 a long night 』
鬱蒼と生い茂る木々の下に、月の光は届かない。
ここは、森の深淵。
吉澤ひとみは、腕を組むように右手で左腕を押さえながら、木の幹に背を預けた。
周囲の音に耳を澄ませる。
其処此処から聞こえる虫の音。深く静かに響く梟の声。夜風が揺らす木々の葉擦れ。
すべての音が調和された、完全なる世界。
しかし、そこに近づいてくる不協和音を、吉澤は聞き逃さなかった。
よく訓練されてるじゃないか。
吉澤は唇の端を歪めて笑った。
森の中をかなりの速度で移動しながら、吉澤の足跡を正確にたどってくる集団のかすかな足音。
森林地帯でも極力音を立てずに行動するすべを知っている者たちに違いなかった。
だが、吉澤の研ぎ澄まされた聴覚は、彼らが立てるわずかな物音をはっきりと捉えていた。
人数は、五、六人というところか。
吉澤は左腕を押さえていた右手を離し、手のひらを見やった。
そこには血糊がべったりと付いていた。
しかし、確認したかったのはそんなことではない。
吉澤は光の粒子を呼び出そうと、その手に自らの能力を解き放った。
が、どんなに意識を集中しても、手のひらにはなんの変化も起こらない。
苦々しい表情で舌打ちをし、吉澤はつぶやいた。
「アンチサイ――能力の阻害か……。面倒なことしやがって」
どうやら“武器庫”は使えないらしい。
携行している武器と弾薬だけで対処するしかなかった。
吉澤の手元には、MP7が一挺。残弾数はおよそ二十発。
それから、両太腿のホルスターには二挺の拳銃――H&K USP Match。
こちらは両方とも全弾装填されているが、予備の弾薬はない。
あとは、腰に差したコンバットナイフのみ。
吉澤はMP7のマガジンを外すと、今一度残弾数を確認し、マガジンを元に戻した。
セレクターレバーは、今はまだ安全位置のままでいい。
「ご到着か」
その言葉を合図にしたかのように、吉澤のわきの草むらからひとりの男が飛び出してきた。
間髪を容れずに、吉澤は男の顔面にひじ打ちを叩き込む。
自らの勢いも相まって、男は派手にひっくり返った。
「いたぞ!」「殺せ!」
怒号を響かせ、草むらから男たちが続々と現れる。
殺してみろ。
男たちの言葉に、吉澤は薄笑いを浮かべた。
一斉射撃がはじまる。
吉澤は視界の隅で男たちの人数とおおよその位置を把握しながら、遮蔽物となりうる木の陰に
身を隠した。
夜の森に間断なく轟く銃声。その発射炎によって、周囲が昼間のように明るくなる。
吉澤は呼吸を数えながら、MP7のセレクターをフルオートに切り替えた。
ほんの一瞬、銃撃が途切れる。
その瞬刻の間隙が訪れたときには、吉澤はすでに男たちの前にその姿を現していた。
横に構えたMP7を掃射しながら、数メートル先の木に向かって悠然と歩く。
遮蔽物に逃げ遅れた憐れな男と、無謀にも反撃を試みた愚かな男が、吉澤の放った銃弾の前に倒れた。
あと三人。
吉澤がそう思ったとき、MP7が唐突に沈黙した。
MP7は吉澤が予想したとおりのところで弾切れを起こした。
男たちが一斉に反撃に転じる。
吉澤はMP7を捨てると、身体を回転させながら木の陰へとその身を滑り込ませた。
同時に二挺のUSPをホルスターから引き抜く。
木の幹を背に、吉澤は自らの呼吸を数えた。
男たちが放つ銃声は、数こそ減ったものの、先程と同じリズムを刻んでいる。
芸のない奴らだ。
心の中で吐き捨て、吉澤はUSPの安全装置を解除した。
呼吸にして三つ分、数えきったところで、吉澤はためらうことなく木の陰から飛び出した。
ほとんど間を置かずに、二発の銃声が響き渡る。
二挺のUSPから放たれた弾丸は、吉澤の左右にいた男たちの急所を正確に撃ち抜いた。
吉澤の正面にいる男が、とっさに吉澤に銃口を向ける。
が、男が引き金を引くよりも早く、吉澤が放った弾丸が男の額に穴を開けた。
二挺のUSPは動きを止めることなく、くるくると回転するとホルスターの中に収まった。
額を穿たれた男が地に沈んだのは、その一瞬あとだった。
夜の森に、調和された音の世界が還ってくる。
しかし、遠く響く新たな不協和音の存在に、吉澤は気づいていた。
今しがた葬った男たちより、今度はさらに多い。
十数人――いや、もっとだろうか。
今夜は、長い夜になりそうだ。
古い映画のような陳腐な台詞が胸をよぎり、吉澤は思わず苦笑した。
かぶりを振りつつ、物言わぬ屍と化した男のそばに歩み寄る。
男の手元に転がるショットガンを、吉澤は器用に蹴り上げた。
ショットガンはまるで意志を持っているかのように、吉澤の手に収まった。
フォアエンドを引き戻す。機械的な金属音とともに、空薬莢が勢いよく排出された。
刻々と近づく不協和音。
吉澤はまだ見ぬ彼らを見据え、不敵な笑みを浮かべた。
鬱蒼と生い茂る木々の下に、月の光は届かない。
ようこそ、闇の深淵へ。
以上です
wikiのスレ総括などで予想外にお褒めの言葉をいただいたり、>>297まとまとさんのページに載せていただいたりして
嬉しくなって書いてしまいました
前スレでテーマ「秋の夜長」を提案した張本人なのですが、秋の夜長になってないですね…はいorz
お目汚し失礼しました
カッコ良いです!独特の緊迫感がタマランです!
重火器とかも好きなんで貴殿の『 the revenger 』や今作品には身悶えさせられます!
秋の夜にはいろんな所でいろんな出来事が交錯してるんですな…シミジミ
>>298-299
レスありがとうございます
いや画像とかはあったらほしいなってだけだったんで…
もし嫌味っぽく受け取られたんでしたらホント、スイマセン
専用ろだとか覗いても良い具合に悪そうなのがなくて…
なんかあったらよろしくお願い致しますm(_ _)m
またもや長文スイマセンでした
乙です!
銃の知識が全く無いのでこういう作品が書けるのは尊敬します
よっすカッコイイなあ…
最後のセリフとか痺れました
AE使ったの?ちょっと技術的なこと聞きたい
こんな風に受け入れられるようになったことで本当に広がりましたよね
めっちゃカッコイイです!
武器を使っての戦闘の話はあまりないのでその意味でもドキドキ感があります
>>44で本人がAdobe Premiere Elements 4を使ったって書いてるよ
フォトショElements4持ってるけどまったく使いこなせないよ
画像の縮小がめちゃめちゃキレイにできるのと色合いの補正には役立ってるけど明らかに宝の持ち腐れ
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34249.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34251.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34252.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34253.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34255.jpg
適当に集めましたが・・・それらしいものはなかなかに難しいですね
弟がそれ持ってるけど結構使いこなしてるみたい
自分はちんぷんかんぷんだけど
いっぱいキテル━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
帰宅してからちょっとトライしてみます!
ありがとうございます!!
自分もいくつか
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34267.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34270.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34272.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34276.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34280.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34281.jpg
いいねぇ
特に一番下が[Darkness](08)668 『孤独者たちの信念』のイメージ写真みたいだ
それ思った
しかし若いなぁw
1枚目の矢口なんて正直わからなさすぎるw
ダークネス集合Vers(マルシェは居ないです)
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34287.jpg
ダークネスオリメンになりたい人と時間停止能力者
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34288.jpg
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34289.jpg
こんなのでもよければ。
2期ヲタなのでこの二人の画像しか持ってませんでした・・・
ムチャムチャカッコイイ!!
ラストの一行!痺れました!
不敵な笑みを浮かべたヨッシーが森の闇に消えてゆく映像がはっきりと見えました!
あの手この手で16レスかな? を投下します
さる対策済みなのでレス数をマネしないようにw
「愛ちゃん」
あたしが続けた言葉に呆気にとられた愛ちゃんの顔、
今思い出しても笑っちゃう。
「月を、見たいな」
「え?」
―――月を一緒に見上げたら。
―――どんなに素敵だろうって、時々考えるの。
あたしの突然の提案に愛ちゃんは驚いて空を見渡す。
それは街のネオンでぼんやりと淡く見える、黒。
つまり、今は夜。
あたしたちは今、突然わいて出てきた夜間の任務を終えたところ。
「つーか、月、出とらんやん」
愛ちゃんはぶっきらぼうに吐き捨てて、足元にあった小石を思いっきり蹴っ飛ばした。
今日の愛ちゃんは、不機嫌だ。
正確には、任務が入ってきてから、だけど。
今日はあたしの誕生日。
20歳を迎えた記念すべき日。
他のメンバーのその日もそうであったように、夕方からの喫茶リゾナントは特別休業。
そして、盛大に開いてくれていた誕生日パーティ。
それがこの任務のせいで中断されたから、愛ちゃんはご立腹。
愛ちゃんためのパーティじゃない。あたしためのパーティなのに。
本人よりも機嫌損ねてるのはどういうことだろう。
ほのかに夜の色が淡くて星が見えないのとは理由が違う。
月が見える時間ではないから。
まだ、月が昇っていないのだから。
わかってて、あたしは愛ちゃんにそんなことを言ってみた。
もちろん、ムチャクチャ言ってるわかってる。何も、今日、と言いたいワケじゃない。
人のことなのになぜか不機嫌になってくれる、マジメで真っ直ぐで仲間想いの、
そんなリーダーである愛ちゃんを、ちょっと困らせたくて言ってみただけだった。
それは、あたしの特別な日、誕生日だからこそ言ってみたワガママ。
愛ちゃんはポケットに手を突っ込んだまま、無言で空を眺めている。
ときどき眉間にしわを寄せて、目を閉じて、また空を睨んで。
そんな愛ちゃんの姿を見ることができただけでも十分だった。
ううん、それ以前に、パーティだって開いてもらってたんだから。
あたしは愛ちゃんの手を取って、もう戻ろう、そう告げようとした。
「なぁ、ガキさん」
その手を逆につかみ返され、まじまじと見つめられた。
「覚えとる?
いつか見せてあげるって言った、あーしの育った村のこと」
次の瞬間、あたしは愛ちゃんと一緒に光になっていた。
* * * * *
「うわ、うわっ」
真っ暗な闇の中に放り出されてあたしは思わず声を上げた。
その声が周りに反響するように響いていく。
「ほんま真っ暗やなぁ」
「わぁっ!」
きゅっ、と右手に力を感じて、ようやく愛ちゃんと手をつないでいたことを思い出す。
闇に目が慣れてきて、やっと状況を理解した。
見渡す限りの木、木、木。そして、崩れかかった壁の数々。
「ここって…、もしかして」
「そうやぁ。
ここが、あーしが育った…、今はもう誰もいなくなった、村や」
村。
愛ちゃんから話は聞いていたけど、想像をはるかに超えて荒れた土地。
よく見れば、そこに道があって、家だったと思われるボロボロの建物があって、
数年前には確かに人が住んでいたのだろうという気配が微かに感じられた。
「暗いから、足もと気ぃつけてな?」
そう言って愛ちゃんはあたしの手を軽く引っ張った。
勝手知ったる足取りで荒れた道をどんどん進んでいく。
数分歩いたところで足を止めて、愛ちゃんは崩れかかった一件の家の壁に手を当てた。
泥をその手で払うと、壁に貼られていたボロボロの紙を剥がしてあたしに見せた。
暗闇でよく見えなかったけど、愛ちゃんが指先に小さな光を作り出して明かりにしてくれた。
時間も経ってかなり色あせているけど、そこにはうっすらと『死ね』と書かれていて…
驚いて愛ちゃんの顔を見ると、それでも微笑んでいるように見えた。
「こんな仕打ちに遭っても、それでもここってあーしの育ったとこなんや」
あたしから紙を奪い取ってクシャッと丸めて投げ捨てると、
愛ちゃんはまたあたしの手を引いて歩き始めた。
あたしと愛ちゃんの足音しか聞こえない、静まりかえった夜。
聞こえてくる虫の音も、このときばかりは不気味だと思う。
こんな場所であたし一人になったら、心細すぎてたぶん死んじゃう。
つないだ手から感じるのはぬくもりと安心と、やさしさと、その中にほんの少しだけある寂しさと。
愛ちゃんは、逃げるようにしてこの村を離れたと言っていた。
度重なる嫌がらせに、おばあちゃんが愛ちゃんだけを逃がしたと。
忌まわしき能力の中にある、希望の光を絶やさぬように。
その、割とすぐ後に、おばあちゃんは亡くなったんだと聞いた。
そして村からも人がいなくなって、あっという間に荒廃していったと。
悲しい思い出ばかりのはずこの村に、愛ちゃんは「それでも」と言った。
「それでも」この村に、いったい何が残っているんだろう?
「え?」
考え事をしていたあたしはその声にふと前を見ると、目の前には大きな壁。
…いや、よく見れば違った。
それは、本当に大きな大きな木の幹。
見上げればその枝はとても強そうにたくましくて、広げた葉は空を覆うようで、
まるで、そう、あの公園の大木のようで…
「これが、あーしのお気に入りの木でなぁ」
よくこうやって登って遊んだんや、そう言って愛ちゃんは両手を木に付ける。
軽々と木を登って行く愛ちゃんを下からぼけっと見上げていると、
「はよ登ってや~」
と声を掛けられる。
そうは言っても、あたし木登りなんてあんまりしたことないんですけどー。
能力があるとはいっても、基本的にあたしたちは生身の人間。
超人的な身体能力が身についているわけではないから、
あたしだってこうして木登りはできないし、さゆはいつまで経っても足が遅いままだし。
それを補うために田中っちは過酷な鍛錬を自分に義務づけていて、
他に右に出るメンバーがいないくらい、格闘に秀でている。
それは、努力を重ねて身につけた能力。
ただ一人、この、目の前の彼女だけは…
木の上から降ってきた声に慌てて見上げると、
愛ちゃんは驚くほどに穏やかな笑みを浮かべながら、あたしに向けて手を差し出していた。
「…ずるいよ」
どうしてこういう時だけ、心を読むの?
「違うよ、ガキさんの声が流れ込んできただけや」
必死で幹にしがみついていたあたしの手を取って、
愛ちゃんは簡単にあたしの身体を引っ張り上げてくれた。
「わ、おっと」
勢いがつきすぎてよろけそうになった身体を、愛ちゃんはしっかりと抱き止めてくれた。
あたしはそのまま、愛ちゃんの方に自分の顔を埋めていた。
「何でガキさんが泣くん?」
「だって…」
愛ちゃんは、やっぱずるい。
その心の声は、彼女に届いたのかどうか。
愛ちゃんの身体が揺れる。ちょっと笑ったようだった。
背中をぽんぽんと叩かれ、そのままゆっくり枝に座るように促されて従う。
座った枝は幹から分かれた形になっていてかなり太いけど、それでも慣れてないからちょっと怖い。
それに気づいてくれたのか、愛ちゃんは手を背中に回して支えてくれた。
自分が持ってしまった能力のこととか、
そのせいでいじめられたりすることとか、
学校のことや、友達のことや、
それから、自分の運命のことまで。
運命。
それは、物心ついた愛ちゃんがおばあちゃんから聞かされた、自分のこと。
愛ちゃんは自分を、「造られた兵器」だと言った。
光の力を暴走させて、何もかもを消滅させる兵器なのだと。
でも、愛ちゃんはこんなにもあったかい。
触れた手から感じる体温も。
寄せ合う身体から伝わる鼓動も。
お互いを、そしてメンバーを支え合っている、響き合う心も。
何もかも、何もかもが「人間」のそれなのに。
愛ちゃんの手が、あたしの手に重なる。
伝わるぬくもりが愛しくて、胸が震えて、視界が歪む。
「…心配せんでも、あーしは人間やよ?」
そう言いながら笑って、手のひらに小さな光の玉を創り出した。
愛ちゃんは、その光を頭上へ放り投げた。
その先を追うと、光は木の葉をやさしく照らして、そして、消えていった。
「それを、破滅の道へは絶対に使わん。自分で自分を、止めてみせる」
愛ちゃんの持つ光は、破滅の光なんかじゃない。
希望の光。あたしたちを正しき道へと導いてくれる光。
「だから、泣かんで?
今日は、せっかくのガキさんの誕生日なんやし」
目元を、頬を、そっと手のひらで撫でられた。
そのやさしさをもう何年も感じていたのに、あたしは何を不安になっていたんだろう。
愛ちゃんは、愛ちゃんであって、他の誰でも、何物でもない。
「…あーしがこんな話するから不安にさせちゃったんやな」
でも、ガキさんの新しい出発の日に、あーしのことをもっと知ってほしかった。
ガキさんとずーっと一緒にいたい。だから、ちゃんとあーしの「昔」、知ってほしかった。
「それに、な?」
得意げに笑って、愛ちゃんはあたしの顔をのぞいた。
「ちゃんと、それ以外の理由だってあるんやけど」
え?
愛ちゃんの言葉の意味するところがわからず、首をひねる。
いつか、村へ案内したいって言ったけど、
それを今日にする必要があるのかどうなのか、って考えてた。
「過去を話すことはちょっと重たくなるし、
別に誕生日にすることでもないんかなーって思ってたけど、
でも、それでも今日にしたんは、今日だからこそ見せたいモンがあったからで」
愛ちゃんは、自分の腰掛けている枝を静かに撫でた。
「こんな寂れた村の、こんな奥にある木だから、他の誰もこんな木があることは知らん」
いっつもこの木が、あーしの話し相手。
誰にも邪魔されずに話せたし、どんな話だって、この木は優しく聞いてくれた。
「この木が、ごく普通の“木”であることは間違いないんやけど、
でもなんか、あーしにとってはすっごいあったかいって感じがしてた」
その言葉に、あたしも手を枝に当ててみた。
ざらっとした表面。でも、気のせいじゃなければ、そっと手に吸い付くような感覚もある。
「…あ、なんか、わかるかも」
「ほんと?」
それはきっと、愛ちゃんの言う“あったかさ”なのかもしれない。
「じゃあ、この木もガキさんのこと気に入ってくれたんやなぁ」
愛ちゃんは満足そうにそう言うと、枝の上に立ち上がった。
楽しいことも、でも悲しいことの方が多かったかもしれないけど、
けど、この村、それだけやないんやよ?」
手を引かれて、あたしも立ち上がる。
さっきまではどこか神妙だった愛ちゃんの口ぶりが、心なしか弾んできているように思えた。
愛ちゃん?
いったい、どんなことを考えているの?
「ガキさん、目ぇつぶって」
「え?」
「いいよ、って言うまで開けたらアカンよ?」
こんな不安定な場所で?
そう思っていると、身体全体にぬくもりを感じて、抱きしめられたんだと気づいた。
あたしは愛ちゃんに身を預けるように、言われたとおりに目を閉じる。
そして。
「まだ目ぇつぶったまま、顔だけ上向いて」
また、言われたとおりに。
「3、2、1で目ぇ開けてな、…さん、…にぃ、…いち」
ゆっくりとまぶたを開いて、あたしは声を失った。
真っ黒な空の中を光り輝く、数え切れないほどの星の数々。
どんなに小さな星だって、都会で見えるような星よりもキレイ。
思わず、あたしは空に向かって手を伸ばした。
手を差し出せばつかめそうなくらい、近くに星があった。
「…これもな、あーしだけの秘密の場所やったけど」
耳元で愛ちゃんがささやく。
そういえば、まだ後ろから抱きしめられたままだった。
「ガキさんにもこの場所教えてあげよって思って」
言われて足元を見ると、そこはさっきまでの木の枝ではなくて。
愛ちゃんの村を見渡すことのできる、崖の上だった。
愛ちゃんはあたしが目を閉じている間に、あたしの身体ごと瞬間移動させたんだ。
「他のみんなにはナイショやで?」
「うん…」
「あひゃ、ガキさんまた泣かんでもええやん」
そんなこと言われたって、無理だよ。
愛ちゃんが、ただ一人あたしのためだけに見せてくれた大切なものたち。
そのどれもこれもが、こんなにも美しいんだから。
続けて、何かを思い出したように「あ」と短くつぶやいて、
「まだ、時間間に合うんかな。
…改めて、誕生日、ハタチ、おめでと」
今日、何度目かのお祝いの言葉。
「ありがと」
嬉しくて、でも照れくさくて、もう一度星空を眺めた。
「こんなに素敵なもの見せてもらえたんだもん、あたし、幸せだよ」
本当は、月を見ることなんてどうでもよかった。
ただ、いつか見た、満月を背に戦うあなたの姿を、ふと思い出しただけだったから。
その姿は、まるで神話の世界の戦士ようで。
月の光を操り、夜空を照らす女神のようで。
本人には絶対に言えないけど、めっちゃくちゃ格好良かった。
あたしはなぜか、今日の愛ちゃんにその記憶を重ねていた。
その顔を見ようと振り返って、あたしは驚いた。
「…愛ちゃん、ほら、出てきた」
「え?」
それはあたしの記憶にあった満月ではなく、半分が欠けた下弦の月だけど。
「…愛ちゃんってば、すごいなぁ」
「え?」
「あの素敵なプレゼントだけじゃなくって、
あたしの些細なワガママまで、叶えてくれた」
愛ちゃんはまたポカンとした顔をしてる。
この人は、こんな奇跡は起こしてくれるくせに、そういう機転は利かない。
不器用すぎる、真っ直ぐな人。
あたしは愛ちゃんに向かって「バカ」と小さく文句を言って、
「もう、わかってよ」
そう言いながら抱きついた。
二人並んで座り、数え切れない星を数える。
指でなぞって星座を見つけて、時々はデタラメな星座を創り出して。
どれだけ眺めていても飽きない空に、少しずつ月が昇ってくる。
この星空の中でも強く輝く半分の月。
記憶の中の愛ちゃんも、どんな光にも負けずに輝いていた。
そんな女神は、まだ贈り物をくれると言う。
「ここから見る日の出、すげぇキレイなんやで?」
たぶん、あと何時間かやろ?
愛ちゃんは適当にそれだけ言って、また空を見上げた。
よく見ると、少しだけ東の空が白くなってきた。
時間も忘れてずーっとここにいたけど、そういえば、誰にも連絡していない。
みんな、心配してるかな。
あたしたち二人だけ戻ってないとしたら、探しちゃうのかな?
戻ったら謝らないとね。二人して、きっと何度も頭を下げて。
やがて、オレンジ色の強い光が星空を消し去っていく。
それもまた、言葉には表せない幻想的な光景。
広がる朝焼けが今日もまた、すがすがしい青空を届けてくれる。
「愛ちゃん、キレイだね…、…?」
愛ちゃんからの返事はない。
隣を見ると、いつの間にかあたしの肩にもたれて微睡んでいた。
当たり前だった。
深夜の突然の出動。
そう手のかかる相手じゃなかったけど、少なくとも何度かは能力を使ったし…
その上で、愛ちゃんの通常能力を超えた「同時瞬間移動」を、二度も。
極限まで精神を集中させればできる、上位能力。
それでもなお、あたしを喜ばせてくれようとして、こんなに。
あたしが何気なく口にしただけのわがままを、
あなたはこうして全力で叶えてくれようとする。
自分のことなんて顧みずに、ただ、人のために。
「…でも、ありがとう」
日が昇る。
誕生日は、もう、昨日のこと。
だけど愛ちゃんが聞かせてくれた愛ちゃんのこと、
見せてくれた大切な場所、大切なやさしい木のこと、
一緒に見上げた、今にも降り出しそうな星の数々と、半分の月、そして、この朝陽。
一生忘れない、記念すべき二十歳の日。
日の光を浴びながら、愛ちゃんが起きるまで、あたしも少し眠ろう。
夢で、振り返りながら。
『女神からのプレゼント』でした
いやー迷走した迷走した。
ちなみに、現実にこれから見えるだろう月は厳密には半月ではなくちょっとふくらんでます
明日がちょうど半月みたいっすね
月齢カレンダーとにらめっこしまくっちゃったっすよ
21日なりたての深夜に投下したのは時間をリアルタイムに近づけたかったからで
決して10/20に間に合わず遅れたからではアリマセン(ホントに
朝方投下できれば最高だったけどたぶんそんな余裕もないので…w
改めてガキさんオタオメ!!!
リアルタイムで読ませていただきました・・・感動です
凄くあたたかい気持ちになりました
真っ暗闇の廃村、瞬く星、二人きりの時間・・・なんて素敵な夜でしょう!
愛ちゃん頼んだよ
今日も素敵な物語が読めた
ご協力ありがとうございます!
いただいた素材も使ってトップ画像を2種類追加させていただきました!
どれも使いたい画像ばかりで嬉しい悲鳴を上げながらの作成は楽しかったです!
今回使用していないものはゆくゆく登場人物ページに流用させていただければと考えております!
また何か良いのがあればよろしくお願い致します
ってここまで書いて、実はあの人がすっかり抜けていた事は内緒ですw
ゴメン…粛清モノの大チョンボですorz
気付いた貴方は相当リゾナント病でしょうw
長文失礼いたしました…
今見てきたよ モノトーンな所がカックイイ!
ダークネス側に哀愁がただよっててイイ感じ
めちゃくちゃ嬉しいw
愛ちゃんとの誕生日話がとても綺麗で暖くて好きです
でもだからこそ>>340さんの話が心に来ますねえ
気持ちが分散されなかったのはむしろよかったかも
超カッコイイ!!
ダークネスってカッコイイね!
こんなにたくさんの感想ありがとうございました!
描いたシーンを詰め込んだらかなり混沌としてどうなるやらと思ってたのですが
ここまで皆さんに受け入れてもらえてホント嬉しいです
いつも通りにあとがきスレとかwiki化とかしたいと思いまっす
さ、これでようやく本業に戻れるかなヽ( ゚∀。)ノ
優しい光は 今も昔も
歴史を見てきた月か・・・いいねぇ(しみじみ)
>>347
今見に行ったらダークネス画像からリゾナンター画像にチェンジしていた
リゾナンターも2バージョンあるんですね
シルエットのバージョンが特にカッコイイ!!
ダークネスバージョンが見れなくなってるのが残念でした・・・
日の出てる時間に書き込んだの延べ5人ですもん
少しサボって書き込みってのができ難くなるんですよ
9月までは凄く暇なんですけどね・・って個人的な話ですいません
>>348>>358>>356
ありがとうございます!
これも素材提供していただいた方のおかげです…
現在トップ画像はリゾナンター×2とダークネス×2の4種類ございまして
ランダム表示設定になっております(不具合なければw)
画像の上でクリックしてリロードしていただきますと5、6回で全種類出てくるはずです
それでもおかしな事になってたらまた教えて下さい!
>>348ありがとうございます!
>>358お勤めお疲れ様です!お互い頑張りましょうっっっっ
守るから そうして決めた 過去のこと
今では闇に 足をすくわれ
明日の夜 見上げる月は 満月か
思い出すのは あの笑顔
お守りを 握り締めては 涙する
キミも今頃 泣いているかな
あの日のことは今でも忘れない
感謝と誓いを込めて交換したお守り
キミが傍にいると思ってずっと持っていた
もう今では 持つ資格なんて無いよね
それでも大切にしているのは
やっぱり忘れられないからかな
この空がずっと繋がっていると思うと
苦しいほどのこの想いが届きそうで怖いよ
闇に染まってるのに こんなこと願うのはダメだよね
いきなりの投下で、しかも内容暗いです…
あまりにも誕生日とはかけ離れてる短歌とお話ですが、
以前載せた続きとして書いてみましたー
これからまだまだ続いたりしてなんちゃって
切なくて好き・・・
続き期待してます!
◇◆さんは短歌ンターさんの一人でもあるのね
短歌と話が相乗効果でいい感じです
続き期待したりしてw
いいや「短歌ンター」は半ば固有名詞
その他の人は「リゾ短歌ー」
以前そのようにリゾスレ首脳会談で決定されましたよ
いやそれは嘘です
扉画像かっこいい!!
やっぱりダークネスサイドですとミティと首領(ドン)が迫力ありますな!
正直今のは味気ないし面白くもなんともない
いきなり変わってて驚いたは
それができるんなら苦労しないよ
あのクオリティで書ける人がいないから困ってるんだよ
ボタン一つで元に戻せるけどウィキナンターさんの意向もあるからなぁ
みんながみんな全部を見てるわけじゃないんだね
考えてみれば当たり前だけど
書いていたご本人があの結論出したんだ
勝手に戻しちゃまずいだろ・・・
って戻せるもんなの?
しかしこんな風な流れになるとwikiへのモチベーション下がりますね…
結果、自由度が削減されるのは個人的には不本意ですが…
したらばの方に解決案としてひとつ提案させていただいた事を書き込ませていただいたので
編集されていた方、いらっしゃいましたらご一読いただければ幸いです
113 :サボリン∞ヽ( ゚∀。)ノ:2008/10/22(水) 11:52:48
誰か見たら転載してね
wikiは編集点を全部バックアップしてるから簡単に元に戻すことはできる
ページ上の『表示』の『このページの編集履歴』で「復元」押せばその時点に戻せます
wikiは誰が編集しても良いという観点ならこれを復元することも自由だと思うけど
でも、あの総括を書いたウィキナンターさんの意向は無視できないような気もしてる
本来は事実を客観的に述べるだけのwikiというものが、
リゾスレ的な自由な雰囲気を持って「息づいてる」って感じがすると思ってるわけです
本当にこのwikiをwikiとして運用するのであれば「リゾスレ病」なんて項目は多分削除対象w
でも、wikiってみんなで書いてナンボだから一つの項目に意見は出て当然だと思うんです
それに対して「モチベ下がる」と言われてしまうと、
じゃあwikiなんて作らなきゃよかったねって、作った自分としては思ってしまいます
だけどそんなとこまで戻ることが解決策になるとも思わない
どうかそんなネガティブにならず、積極的にどんどん使ってほしいと思っています
いろんな人が書き加えていけることがwikiの利点なんですから
そんな風に取られてしまうんですねえ…
改めて難しさを感じます
個人的にはもうこの話への意見はやめます
川=´┴`)<もちつけw
仕事をしろってことですねきっとw
我々はそう仕向けられたのか!?
…ダークネス怖ぇw
流れが変わればいいなと思って空気を読まずに投下します
ダークテイスト保全話第3弾です
今回のは前2作より少しだけ長い(10レス分)ので2回に分けて上げたいと思います
(後半は夜の閑散としてるときにでも)
※注意
・単発の読み切りです
・能力等の設定は踏襲していますが今までの作品にはない異質な世界での話です
・やや残酷な描写を含みます
・そういったわけで不快に思われる方はスルーをお願い致します
・とはいえ今回の前半部分には(過激な言葉こそあれ)目を覆うような描写はありません
―日が落ちるのが随分早くなったなぁ
ぼんやりとそんなことを考えながらゆっくり歩いていた亀井絵里は、自分を呼ぶ声に何度目かでようやく気付いた。
「もう・・・絵里!またボーっとしよる!はよ帰らんと!」
「ああ、れいな。ごめんごめん」
数メートル先で立ち止まってこちらを振り返る田中れいなの表情は逆光でよく見えない。
だが、おそらく不機嫌な表情であろうことはさすがの絵里にも分かった。
「でもさあ、ほら。夕焼けがきれいだよ」
立ち止まって自分を待ってくれているれいなの隣に歩み寄りながら、絵里はれいなの背後の空を指差す。
凄絶なまでに赤く彩られた空は、一種の不気味さすら内包した妖艶な色を生じていた。
* * *
その光に照らされて緋に染まる絵里の表情もまた、夕景同様ある種凄艶な美しさを放っていて、れいなは思わず息を呑んだ。
―誰よりも死と隣り合わせの世界に住む絵里だからこそ、沈み行く夕日の衰滅的な光に映えるのかもしれない
―もしかしたら、絵里の目には自分とは違った夕日の景色(いろ)が映っているのかもしれない
そんな物憂い思考に囚われて。
「もー。そんなに怒んないでよー。帰りますってば」
そんな心の内を知る由もなく、ようやく追いついてきた絵里は無邪気にれいなの肩を叩いた。
「残念だけどまだ帰れないし。っていうか『もう帰れない』って言った方がいっか」
そのとき、背後から酷薄そうな声が聞こえ、絵里とれいなはゆっくりと振り返った。
長く伸びた自分たちの影の先に、一人の女が立っている。
年の頃はおそらく絵里やれいなと同じくらいと思われたが、若さゆえの生彩をまるで感じさせない。
だがその割に口調や仕草は必要以上に幼く、そのアンバランスさは、相対する2人に理由のない不快感を与えた。
声同様の、感情を逆撫でするような笑みもその原因の一つと言えるかもしれない。
「亀井絵里ちゃんと田中れいなちゃんだよね?」
髪をいじりながら、女は続けてそう訊いた。
「んー?そうだけど?誰?絵里たちに何か用?」
「『もう帰れん』とか何とか言っとったっけ?まさか思うけどれいなたちと闘り合う気ぃか?」
「ま、そーゆーことだね。悪いけどぉ2人とも死んでもらうから」
いかにも「面倒なんだけど」的な態度を装った女は、どこかわざとらしさのある口調でそう言った。
「あー・・・またそういう系の人かあ。そっとしといてほしいよもう。せっかくいい気分だったのに」
「そんなボケたこと言うとる場合やないっちゃよ絵里。まあたった1人で勝てる気ぃでおるヤツの方がずっとボケとーけど」
不機嫌に膨れる絵里と、バカにしたように鼻で笑うれいな。
その反応に、女は明らかに不愉快そうに眉を動かしたが、それを抑え込んで元の表情を作る。
そして、女は一歩だけ無造作に絵里とれいなの方に歩を進めた。
「絵里ちゃんとれいなちゃんの影さぁ・・・借りるよ?」
傾いた陽によって作られた自分たちの影。
その影の上に、女が重なっていることに気付いたとき、絵里とれいなの体の自由は奪われていた。
「あれ?ちょっと何これー」
「お前・・・何したと?」
体が突然固まったように動かなくなり、絵里とれいなは女の方を見やった。
「“人影支配(シャドウ・ディレクション)”ってやつ?つまり影を操るのがぁマヤの能力?」
相変わらず髪の毛をもてあそびながら、女は嘲るように半疑問系で答える。
「・・・ねえれいな、マヤって何?」
「あの女の名前っちゃろ多分」
「あ、そういうことかぁ」
「まんまに悠長やね、絵里は」
「絵里ちゃんとれいなちゃんさあ、今自分が置かれてる状況理解してるわけ?」
まるで焦りのない絵里とれいなの態度に対し、女は徐々にイラつきを隠せなくなってきていた。
「当たり前じゃん。そんなの誰でも分かるよ」
「絵里に分かるんやったら誰にでも分かるけんね」
「ちょっとれいな失礼なんだけど。アホにはアホの意地があるんだからー」
「自分でアホって言うとるやん」
「さしね!おめらかちゃくちゃねっきゃな!」
ついに感情を抑えきれず無意識に地元のものらしき言葉で怒鳴った女の表情に、自らの失態に対する悔恨の色が浮かぶ。
「・・・それどこん言葉?っていうか何言っとーか全然分からんけど」
「あ、れいな。それは多分触れたらダメなんじゃ・・・」
だが、絵里の制止は間に合わず、女は逆上した。
「ブッ殺す!お前ら絶対ブッ殺す!」
「な、なん急にキレとー・・・?」
「れいなは絵里のことアホだって言うけどさ、れいなは空気読めないよね・・・・・・って・・・あっっ!」
絵里が呆れたようにそう呟いた瞬間、れいなの手が絵里の頬を張り飛ばした。
「な・・・絵里!大丈夫か!?ち、ちがうけんね!手が勝手に・・・お、怒ったわけやないけん!」
叩かれた絵里よりも叩いたれいなの方が狼狽し、しどろもどろに絵里に呼びかけた。
思い切り平手打ちを受けた絵里の頬は徐々に赤みを増し、唇の端が切れて一筋の血が流れ出している。
相手の女に視線をやった絵里の目がすっと細められた。
舌を出し、切れた唇をゆっくりと舐める。その血は、絵里の舌を不吉に赤く染めた。
「・・・れいな、この女がさっき言ってた能力覚えてる?」
「へ?うん、“人影支配(シャドウ・ディレクション)”とか言っとったっけ?」
「思ったより手強いね」
「うん、想像しとったよりは」
「今さら気付いたぁ?まさか動けなくなるだけとでも思ったの?“支配”ってことはさぁ、マヤの思い通りってことなんだよ?」
再び余裕を取り戻した女は、何事もなかったように元のしゃべり口調に戻っていた。
「“影”を操ればその“影”の持ち主も同じように動く・・・みたいな?だからもう絵里ちゃんとれいなちゃんに勝ち目はないよ?」
そう言いながら勝ち誇った笑みを浮かべる女に対し、絵里は切れた唇の端を持ち上げてニヤリと笑い返す。
「・・・何笑ってんの?あ、未だに状況分かんないんだ?確かに絵里ちゃんの能力は怖いけどさ、れいなちゃんに攻撃させれば無問題じゃん?つまり絶体絶命なんだよ?」
得意げに話す女に対し、絵里はついに声を上げて笑い出した。
「な・・・にがおかしいの?頭おかしくなっちゃった?」
一瞬激しかけた女は、先ほどの失態を思い出してすぐに平静を装った。
「ねえ、れいな。ここまでのやりとりでさ、いくつか分かったことがあるよ」
笑いを止め、表情を消した絵里は、女の言葉を完全に無視して静かにそう言い切る。
「分かったこと?」
「まず1つ目。“人影支配(シャドウ・ディレクション)”の能力はその名の通り“影”の支配に過ぎない。つまり“影”に映らない部分の支配はできない」
「“影”に映らない部分?」
「例えば精神・・・つまり能力や思考は支配できない。それに、目や口もこうして動かせる」
「おー、なるほど言われてみればそうやね」
「2つ目。その能力は相手の影に自分の影が触れることで発動する」
「ああ、アイツに影踏まれてからやもんね、動けんようになったん」
「3つ目。あの人はこういう“仕事”においては完全に素人。能力も未熟」
「そうやね。ま、多分本人は気付いとらんやろうけど」
「4つ目。こっちの能力に対する認識が甘すぎ」
「これは致命的っちゃね」
「コレだけ揃えばもう結果は見えてるよね」
「・・・はっ・・・はは!それがどうしたっての?文字通り手も足も出ない状況で何ができるわけ?バカじゃない?」
「絵里、れいなが5つ目言ってもいい?」
「5つ目?何?」
「5つ目!お前めっちゃムカつく!特にれいなに絵里を叩かせたのは絶対に許せん!死んで償え!」
「あはは。れいな過激だねえ」
「はぁ?死んで償え?何言ってんの?バカじゃな・・・・・・???!!?」
れいなの言葉を嘲笑しようとした女は、その直後、自分の中に突然湧き上がった未曾有の奇妙な感覚に、わけの分からぬ恐怖を覚えた。
レスアンカはまとめて後ほど
>相手の女に視線をやった絵里の目がすっと細められた。
>舌を出し、切れた唇をゆっくりと舐める。その血は、絵里の舌を不吉に赤く染めた。
ここ脳内で完全に映像化されちゃいました・・・こわいよカメちゃん;;
前半のポケっぷりからの対比がすごいっすなぁ
続き楽しみ
れなえりのナイスコンビっぷりにさらに期待が高まりんぐっす!
キタコレ!メッチャ面白いね!!
ダークテイストシリーズの中でも一番好きかも!!
続きが待ち遠しい!!
ダークテイスト保全話第3弾の後半です
この時間の方が他の方の邪魔にならなそうな気がするので上げておきますね
再度注意書きを
※注意
・単発の読み切りです
・能力等の設定は踏襲していますが今までの作品にはない異質な世界での話です
・やや残酷な描写を含みます
・そういったわけで不快に思われる方はスルーをお願い致します
「うあっっ!?」
一瞬後、自分の中で何かが弾け飛んだかのような衝撃を受け、女はよろめいた。
2,3歩後退した女が自らの失策を悔やんだときには、すでに“支配”から解放された絵里とれいながゆっくりと肩や首を回していた。
「な・・・一体・・・なして・・・何でだ!」
叫びながら、女は再度2人の影を“支配”するべく片足を一歩前に出す。
「“増幅能力(アンプリファイア)”・・・それがれいなのチカラやけん」
だがそのとき、静かながらどこか凄みのあるれいなの声が響き、女は文字通り二の足を踏んだ。
「そ、それくらい知ってるし!仲間の能力を増幅させるんでしょ?」
「やけん認識が甘いって言っとー。別に仲間だけやないとよ?今あんたの能力を増幅したけんもうあんたは能力使えんよ?」
「何ワケのわかんないこと言ってんの?」
女は再び絵里とれいなの影に触れ、自身の能力を解き放とうとした。
その瞬間、頭が割れそうなほどの激痛と衝撃を感じ、女は弾かれるように後退する。
「そやけん言ったやん。能力は使えんって」
「どうして・・・」
「分からんと?例えば砂場で穴掘りしてる3歳の子に、スコップの代わりにショベルカー渡したら穴掘れると思う?」
「・・・・・・なっ・・・」
「所詮あんたはショベルカーを乗りこなせん3歳児やってことやね。そろそろねんねの時間やなかと?」
「おめ・・・・・・くそぉぉっっ!!」
「悔しいんはようわかったけん。で?どうすると?何か奥の手でもあると?」
「・・・・・・お、お前のその能力・・・時間に限りがあるはず!」
「お。それは知っとったんやね。確かにあんまり長持ちせんのが欠点やけど・・・別に関係ないけんね」
「どうしてだ」と訊こうとした女は、慄然として口を半開きにしたまま固まった。
「“傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ)”・・・知ってるよね?絵里の能力」
いつの間にか自分の首筋にナイフを当てた絵里が、冷たい表情を向けている。
「ま、待って・・・!じ、自分まで死ぬつもり!?」
まるで自分の首筋にナイフが突きつけられているかのような威圧感を覚え、女は恐怖に拘束された。
絵里は女の質問には答えず、静かに言葉を継ぐ。
「あなたは絵里とれいなを殺しに来たんだよね?・・・ねえ、人を殺すには“覚悟”がいるんだよ?」
「か、覚悟・・・?」
「そう。人の命を奪うという“覚悟”。そして・・・・・・逆に自分が死ぬかもしれないという“覚悟”」
「ひ・・・・・・」
「誰かを殺そうとするってことはそういうことだよ。あなた・・・自分が死ぬかもしれないなんてこと思いもしてないよね?」
「あ・・・あ・・・」
女は自分が絶望的な状況にあることをようやく知った。
「た・・・たすけ・・・」
顫えながら掠れた声で息を漏らす女に冷たい眼差しを向けていた絵里は、黙ったままナイフを首筋に沿って滑らせるように動かした。
「ひっ・・・」
思わず女は息を呑んだが、それ以上のことは何も起こらずナイフは静かにしまわれた。
緊張の糸が切れ、女は腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
「“傷の共有(インジュリー・シンクロナイズ)”。さっきも言ったけどあなたはこの能力への認識があまりにも甘い」
「“共鳴増幅能力(リゾナント・アンプリファイア)”。それがれいなの本当の能力。さっきあんたに使ったのはその一端にすぎんけん」
「・・・・・・?」
唐突に自身の能力の説明を始めた絵里とれいなの意図が分からず、女は首を傾げた。
「絵里の能力は自分の傷を1人の相手に共有させるだけじゃないよ。射程範囲内の対象者全員に同じ傷を共有させられる」
「・・・えっ?」
「それだけじゃないよ。傷を射程範囲内の対象者に移動することもできる」
「傷を・・・移動・・・?」
「不特定多数の傷を1人の人間に集めることも・・・ね」
「・・・・・・・・・っ」
「れいなの能力は、絵里のその射程範囲をめっちゃ広げることができると」
「・・・・・・・・・」
「はっきりとは分からんけど、多分半径2kmくらいにはなるんやないかな」
「2・・・きろ・・・?」
「さっきね、ナイフでほんの少しだけ皮膚を切ったんだけど。深さほんの0.1mmくらいかな?誰も気付いてないと思うんだけど、同じ傷が発生してる」
「一応言っとくけど半径2kmの円の中にいる人全員にってことやけんね。れいなもあんたも含めて」
「ひとりひとりの傷は気付かない程度のものだけど・・・全員分の同じ傷を1箇所に集めたら・・・どうなると思う?」
「10人分で1mm、100人分で1cm、1000人分で・・・10cm。半径2kmの円の中に何人いるやろね。あんたの首の太さ・・・何cmあると?」
何故、絵里とれいなが唐突に自分たちの能力について話し始めたのか。
話の途中から薄々感じていたその理由を否応なく知らされた女は、自らの目の前に横たわる死の恐怖に慄いていた。
今まで意識したこともなかった自らの死。
それがはっきりと眼前に存在しているという信じがたい現実。
女は、その絶対的な恐怖の中で初めて“死”を理解した。
そしてそれとほぼ同時に―――
「さよなら」
ほとんど沈みかけた夕日に染まる赤い景色を、深紅の霧と絶叫が彩った。
「あなたは・・・命を侮辱した」
鮮血のように凄絶な夕日の赤の中、大小2つの影を落とす女に向かって絵里は静かにそう呟いた。
* * *
「あーあ、夕焼けが終わっちゃったよ」
あっという間に闇に侵食され始めた帰り道を歩きながら、心底残念そうに絵里はため息を吐いた。
「まあ夕焼けはまたいつでも見られるけん」
なぐさめるようにそう言ったれいなは、絵里が足を止めたことに気付いて立ち止まり、振り返る。
「でも・・・次にれいなと一緒に夕焼けを見る前に・・・死んじゃうかもしれないじゃん?」
「絵里・・・・・・」
どこか淋しげに、そして切なげに唇を噛んで俯く絵里の姿にれいなは一瞬言葉を失う。
誰よりも死と隣り合わせに生きている絵里の、その心の内を垣間見て。
だが、れいなはすぐに絵里の下に歩み寄ると肩に手を回し、その顔を覗き込んでニッと笑った。
「絵里は死なん。れいなが守るけん。この世のあらゆるものから」
絵里はれいなの顔を驚いたように見て・・・そして少し意地悪く微笑んだ。
「さっき思い切り絵里の顔叩いたくせに」
「・・・!!あ、あれは・・・」
「うそうそ。ありがとれいな。・・・嬉しかったよ」
「あ、いや、そんなお礼言われるほどのことやないけん」
照れたように顔を見合わせて笑う2人を、夜の闇が静かに包み込んでいった―――
>>396-400
以上です
皆さんこんな話にいつもあたたかいコメントをありがとうございます
まとめサイトへの収録の可否は皆様の仰るようにまとめさんにお任せ致します
以前にも言われたように スレに上げた時点で手を離れるというのは尤もだと思いますので
そのこととは関わりなく一応タイトルを冠しておきますね
>>29-34『禍刻Ⅰ―Photon like a devil―』
>>117-124『禍刻Ⅱ―Phantom of phantoms―』
>>386-390 >>396-400『禍刻Ⅲ―Crimson symphony―』
二人が怖えー!
能力を増幅し過ぎると使い物にならなくなるのか・・・
思いついた!もしかしたらリゾナントさせてもらうかもしれません
この能力の使い方は凄い!
今練ってる話に能力過剰増幅は組み込まれてたけどここまでの使い方は考えてなかったわw
自分もリゾナントしたいw
んでもってタイトルもカッコエエ!
作者さん乙でした!次回作も楽しみ!
最後に…れなえりハーン
容赦無えええええっ!
今度のリゾナンターはかなり手強い
by Darkness
禍刻・・・面白いですね
れいなが恐かっこよかったです
>「そろそろねんねの時間やなかと?」
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/18/toro18631.jpg
>―もしかしたら、絵里の目には自分とは違った夕日の景色(いろ)が映っているのかもしれない
ここの描写が好きです
えりりんの真実(ほんとう)の姿が垣間見えます
あと少し 思い出すのは あの笑顔
どうして無理かな 名前が出ない
電話鳴る 傍で響くは 懐かしさ
無言の電話が 苦しくさせる
ただの無言電話だった
いつもなら気にしないのに
この時ばかりはどうしても気になった
なんで何も言わないのだろう
誰が電話をかけてきたのだろうか
心が温かくなりそうだった
何かを忘れている気がした
どうして思い出せないのか
駆け巡るのは 懐かしい笑顔な気がした
以上です、◇◆です
なんか毎回1レスになりますが、保全代わりにできたらと思いまーす
毎日を目指してるけど、投下するたびにすごく良い話の後だからけっこうびびってたりしますw
>>1-14 「テンプレ」
>>712 「短歌」
>>715 「短歌」
>>720 「短歌」
>>721 「短歌」
>>723 「短歌」
>>726 「短歌」
>>735 「短歌」
>>736-743 「短歌」
>>784 「短歌」
>>803 「短歌」
>>805 「短歌」
>>806 「短歌」
>>807 「短歌」
>>808 「短歌」
>>809 「短歌」
>>811 「短歌」
>>814 「短歌」
>>817 「短歌」
>>841 「短歌」
>>863 「短歌」
>>867 「短歌」
>>872 「短歌」 867とリンクさせる(未完)
>>881 「短歌」
>>885 「短歌」
>>911 「短歌」
>>916 「短歌」
>>922 リゾナンター予告編/刃千史Ver.を「動画館」
>>928-930 pepperの話を「MM。」 以下、同編はそのまま追記
>>958 「短歌」
>>1-14 「テンプレ」
>>20 「保全」
>>29-34 Dr. vs 高橋を「高橋愛」
>>52-60 修学旅行を「番外編」
>>69-74 pepper続きを前スレ>>928に追記
>>85-92 『満月の夜は』を「ガキカメ」
>>104-108 ○△□を「6期」
>>116-124 ダークテイスト話を「久住小春」
>>133-139 『月夜に書いたラブレター』を「亀井絵里」
>>148-151 ◇◆の人の話を「こはみつ」
>>157-162 「田中れいな」
>>176 「保全」 最近保全とミニレスの区別がつかなくなってきた
>>193-212 『蒼の共鳴特別編第4夜』を「蒼の共鳴」
>>220-228 ◇◆の人の話を「ジュンリン」
>>239の指摘訂正 Thanks
>>254 「短歌」
>>256 「短歌」
>>258 「短歌」
>>259 「短歌」
>>276-280 pepper続き
>>291 狼ガキさん誕生日看板を「イラスト館」
>>301-305 『a long night』を「ダークネス」
>>324-339 『女神からのプレゼント』を「愛ガキ」
>>354 「短歌」
>>361 「短歌」 にしたけどなんか違う気もする
>>386-400 ダークテイスト話を「れなえり」 それぞれ題名つけ
>>410 「短歌」 やっぱ短歌じゃないんじゃないかこれ
今スレは投下スピードがものすごい早いためにこうなりました
題名スレとか見てません、きっと次回やります
あと今回更新分でタグ抜けあったら教えてください
いやぁ~まとめ人さんお疲れ様です
こりゃ大変な作業だったでしょう
ダイヤさんの作品を悩みながら更新している過程がかわいい
>>410
素敵な短歌&詩ですね!
無言電話の向こうから伝わるぬくもり・・・
すごく素敵な事考え付きますねダイヤさんは・・
乙!!
なんていうか大変な労力すぎて申し訳なく思ってしまう
サボリン∞さん乙です
あんたやっぱスゲエや!
まとめさんほんとお疲れ様です
そしてありがとうございます
きっと嬉しいことがあったからに違いないw
シリーズ進出おめ!
切ない気持ちになりました
毎日・・・読めたら素敵だな・・・なんてプレッシャーかけたりして(笑い)
初期からいるものにとっては懐かしさもあります
そういや地味にテンプレ収録再開したのです
短歌はまるまる1スレくらいであれだけの量です
なんかうまいこと収録できないかなぁw
青球団勝ちました~
あとは日シリ! 観戦行かずに応援する!
サボリンちゃんまとめ乙!
自分は青い球団の敵役(?)のファンなので昨日一晩凹みましたよw
カタオカこわいよカタオカorz
“死”を理解せし 哀しき少女
短歌の収録方法は難しいですよねえ
作者ごと、関連作品ごと、登場人物ごと・・・などなど分類方法は様々あるでしょうけど
正直これらは現実的でない気がします
どれをとっても分類に困るものが確実に出てくるでしょうし 何よりまとめさんが大変ですし
いっそのこと「スレごと(第○話ごと)」に部屋を設けてズラリと一斉収録とか・・・
読む方もまとめて見られていいかもなんて思ったりもします
どもども
そだ、昨日ふと数百レス程度ずつで区切って収録してみようかなぁとか思ったんだった
ただ、短歌が一気に並ぶタイミングとそうでないタイミングと差があるから
現実的なのかな? なんて考えるうちにそのままにしてしまった
「流れ」として区切っちゃいけないところもあると思うし
様子見ながらそれでまとめようかなぁ
闇を遠ざけ 哀しみ宿す
深潭の 黄昏時に 染まりゆく
身に残るのは 赤き斑点
振り返り 蔑む瞳が 敵に飛ぶ
赤き飛沫が 空を染めゆく
頬に触れ その温もりに 安堵する
消えないように 傍にいようか
亀井さんと夕暮れは合いすぎですw
うまく伝わってるいいな~
夕焼け色のリゾナンター
ダークヒーローシリーズのリゾ短歌だね
病室で 届く共鳴 懐かしさ
けれども知らず けれども響き
寝付けない その原因が あの共鳴
どこかで知った 悲しむ笑顔
なかなか寝付けずにいた
それがいきなり届いた共鳴によって
届くだけなら良かった
しかし心に響いたのである
懐かしさを運んできた共鳴は
とても悲しいものであった
涙を誘うそれは
思い出さねばならないと伝えてくる
悲しき共鳴は 心にわだかまりを作った
たぶん毎回1レスなんで、いつ終わるかは先だと思いますが…
この方式で書いていけたらなーと思ってまーす
よいシリーズだから待ってるよ
このフレーズ、良いね・・・凄く好き
たぶん収録してないし
今短歌カテゴリ見てみたらTanakaが混じってた…
やっぱいい仕事!好きです
>今短歌カテゴリ見てみたらTanakaが混じってた…
ワロタw
第12話に
749 名前:名無し募集中。。。[] 投稿日:2008/07/28(月) 17:53:56.96 0
凄まじき 稲妻さえも いとおかし
小春が発せし 力と思えば(ホゼナント
ってのがありましたが・・・これより前もあったかなあ・・・
一言保全がアク禁になりだしたんで1レスを長めに書くようになってからのはず
その前から短歌っぽいのはあったよ
じゃあ訂正
現在収録されている[Tanka](15)814 以前のモノがあったら教えてください
レス区切りまとめはそれから考えよう
気ままにやるだけさぁ
http://noid.s43.xrea.com/apuroda/img/up16057.jpg
リーダーの行方を追って走るメンバーの前に立ちはだかった者の手には
明滅を繰り返しながら浮かぶ二つの魂が・・・
一同は”手遅れ”となったことを半ば悟りつつも
僅かな希望にかけ、構えを解くことはしなかった。
リーダーの愛が、珍しく里沙を除き全員集合したリゾナンター達を前にしていた。
「どうしても全員なんですかぁ~? 小春、これから仕事なんだけど~」
小春が不機嫌そうに言う。
「今回の任務はリゾナンターの総力、全員でいきます。」愛が答える。
「日本の誇るロボット工学の権威、阿久悠博士が、警察庁、科学技術局の手により拘束されています。」「その所在を突き止め、我々の手で奪還します!」
「えええええ~!!」
メンバー全員が一斉にどよめく。
「ほえ~?それって、警察庁の総本山を敵にまわすって事ですか~?」
「でも、そもそもそれって誘拐だと思うの…。」
「ミッションインポッシボーてやっちゃね!まともに考えたら無理ったい!」
「無理ですよ、無理無理!小春仕事もあるし!」
「リーダー、大丈夫なんですか?そんな事しても…。」
「阿久博士、知っテル! 中国にも来た事アルヨ!すごい警備だったデスよ!」
「スミマセン、バナナどこにイキマシタカ…?」
…みんな口々に騒ぎ出し、収拾がつかない。
ざわつくメンバー達を見ながら、ゆっくりと愛は窓に向かって歩いた。窓に向かい、小さな声でつぶやく。
「ガキさんの電話、最初の言葉は “お願い” やったなあ…。」
ピクッ…。 …メンバー達の耳がピクつくかのように、リーダーに注意が向けられるのがわかる。
「二言目には “助けて” って言うてた…。」
…メンバー達は完全に静まり返り、愛の次の言葉を待っている。
「ガキさん、泣いてたみたいやよ…。」
…さらに静まり返るメンバー達…
「あ、小春です~。お疲れ様です~。すみませんちょっと今日どうしても体調悪くて…。ええ、すみません、
気をつけます…。あ、日程ズラせます? ああ、ありがとうございます!それじゃあ、宜しくお願いします!」
…チョロイもんだ、とでも言いたげな顔で携帯をとじる小春。
「相手は強い方がわくわくしよる!腕がなるっちゃ!」
「ま、まあ、新垣さんの頼みですから、ねえ?」
「…やるしかないと思うの・・・。」
「阿久博士に会えるデスか? 楽しみデ~ス!」
「あ、バナナありました~! これで大丈夫デス!」
「よ~し、みんなやる気充分やね!? さっそく作戦会議に入るよっ!!」
愛がメンバーを見渡しながら言う。
「今回の作戦の絶対条件は、“誰も傷つけない事”。そして、できれば我々リゾナンターの仕業だと気付か
れないのが理想だけど…。」
「時間はありません。最速での奪還を目指します。最悪の場合、警察庁との全面対立も覚悟の上です。
奪還を最優先してください!!」
…作戦会議が続く「リゾナント」の外には、紫色の黄昏が迫ってきていた。
この都会のTokyoCityでは奇跡のような、森に囲まれた小高い丘の上で、粗末な墓標をしつらえ、残さ
れたメンバー達が祈りを捧げていた。
いたたまれない気持ちの里沙は、その輪にはいることが出来ず、ただ唇を噛み立ち尽くしていた。
自分の不甲斐なさを思うと、涙を止める事が出来ない…里沙は泣き崩れるのをこらえるのがやっとだった。
アイがそんな里沙にゆっくりと歩み寄り、肩を抱いて言う。
「泣かないで…。アイカの最後の心はみんなに伝わってきたの…。あの子は恨んでなんかいない。あなた
の手のぬくもりの中で、とても幸せな、やさしい気持ちを感じていたわ…。」
里沙は声をあげて泣いた。
「そして、あの子は最後に自分を人間だと信じて逝った… あなたのおかげで…。みんな、あなたに感謝
しているの。」
「アイちゃんは…」思わず愛を呼ぶ時のように里沙は言う。
「アイちゃんたちは…人間じゃないの? こんなに…、こんなに人間らしいのに…?」
「アイカは幼かったから…。すぐに知らせることは出来なかったけど…。私達はあなたがたリゾナンターを
模して作られたガイノイド…、らしいわね。」アイはこともなげに言う。
「私達の脱走にあたって、研究所には私達に好意的な人たちもいたの。その人達が教えてくれた…。でも、
その人たちも、やはり私達には"心がある”と言ってくれたわ…。」
「私達は心のある人間として生きてきた。…だから、これからも人間として生きる。…そう決めたの。」
「そして、もし今の私達に父と呼べる人がいるのなら…会いたい。一目でも。…それが今の私達の願い。」
「きっと会えるよ!今、リゾナンターの仲間達もお父さんを探してくれてる!みんなのお父さんは…、きっと
阿久悠博士だよ!博士も、みんなのこと、ロボットじゃないって言ってた…。すごい人なんだよ!」
「阿久博士…。そうなのかも知れないね…。でも、博士は今どこに拘束されているのか…。」
「うん、でもみんながきっと見つけてくれる!」
「…ありがとう。でも、私達には時間が無い…。私達も、今も感じるこの父の思念を頼りに、父の居所をさがしていくわ。」
「なにか具体的なあてがあるの?」
「私達の感じる方向を総合すると、TukubaCity方面じゃないかというの。これは、研究所の協力者にも
相談してみたんだけど…。」
博士を拘束する場所としてはふさわしいとも思えた。
しかし、「研究所の協力者」と言う言葉に里沙は引っかかった。
「研究所の協力者って? …大丈夫なの?みんなの居場所が知られたりはしないの?」
「LINLIN! 大丈夫よね!?」とアイが微笑みながら言う。
「ハイ!土居さんはステキな人デス!」とLINLINが真面目な顔で答える。
メンバー達の顔に、ひさしぶりの笑顔がひろがった。
「…え…? ステキ…って…? どういう意味…?」里沙が訝る。
「協力者の土居さんというのは、私達の戦闘技術の指導者だった人で…、LINLINの…恋人なの。」
「ええ~っ!!」と驚きながらも、里沙は驚いた自分を恥じた。
本当に普通の女の子達なんだ…。ガイノイドが恋をするなんて…と驚いた自分は、心底から彼女達を人間
だとは思っていなかったのかも知れない…。こんな「ロマンス」があったなんて…。
聞けば、事件の発端となった「支給品ではない携帯」も、「彼」との連絡用だったらしい。
「今も、連絡取り合ってるの?」
「ハイ!」
「そうか…。お父さんに会えたら、今度はお父さんにも紹介できたら良いね!」
「ハイ!」
LINLINは、顔を赤らめながら答えた。再び、メンバー達に暖かい微笑がひろがった。
同じ頃、周辺の森の中では、警察庁の誇る特殊科学急襲部隊(SSAT)が、「pepper」達の居場所を察知
し、襲撃の準備を整えようとしていた。
また、保全が必要そうな時間帯にでも上げていただければと思います。
宜しくお願い致します。
あと、題名の申請もしておきます。ちょっとサボリン∞ヽ( ゚∀。)ノさんが書きにくそう
でしたので。
以上です。
いい表情してるなぁ~
おおー続ききてたー!乙です!
嵐の前の静けさ・・・次回に激しい展開が待ち受けている予感!
楽しかったです次が待ち遠しいなぁ
超コワイw
いい感じですねえ
>>451
アイカのときもフラグを感じましたが・・・LINLIN・・・明るい未来を思い浮かべられないのは何故だろう
それにしてもここまで世界が膨らんでくるとは思ってもいませんでした
楽しみにしています
誰も傷つけず、リゾナンターだと気づかれずに任務を遂行する
しかも警察の機動隊やら特殊科学急襲部隊(SSAT)を敵に回して・・・
すっごく面白いですね!!!
ほんとーに次回が楽しみナンですけど!!期待して待ってま~す!!
返えして・・・・その魂、あんたなんかの手には負えない・・・さあ
(今なら、まだ蘇生できる・・・この命に代えても・・・ )
絵がうまい人ってほんと尊敬するわ
自分には出来ないからうらやましく思う
振り返ったらミティ様がいるかもしれないと思うと怖くて振り向けない
ねぇ、ちょっと…
おーい、もしもーし
おい!シカトすんなよ
お前だよ、お前
「んだよ…俺は急いでんだ…よ…」
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34280.jpg
ウワー
関西はかなり暑いよ
室内で裸でいれるくらい暑い・・・
サボリン∞乙です(青の球団おめです!)
短歌を拾ってゆく作業は大変でしたでしょう。ご苦労様です。感謝感謝です!
パンダになったジュンジュンに抱かれて暖まりたい
なんだったら獣化が解けたジュンジュンの方が
…すみませんでした寒いんですほんとに心まで凍りそう
川*^A^)つ【緑炎】
∥c|;・e・)|<延焼したら大変でしょうが!!
そういや共鳴修学旅行の話はどうなったのかな?
あとないやいさんのスパイの憂鬱シリーズも
続きが気になるのは同じくですが密やかに待ちましょう
でもこうして待ってる人がいると思うと意欲が沸くかもですね
\::::/ / __ __\\::::/
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| {{ { / ヽ } /
| 人 ヽ ___/::::::::::::ヽ_,ノ / ……
\ ((,...) `γ-‐""'''-、.ノ. /
\ `¨ :U /
バナナが品薄だからかっ!?
スパイの憂鬱シリーズは不定期更新です作者の気が向くまでまったりお待ち下さい
書きたいなと思う気持ちもあるし幾つかネタも思いついてはいるけれど現在の優先順位は
1.蒼の共鳴特別編
2.単発
3.(リゾスレとは関係ない)自ブログ用にカプもの
という感じです本当一日48時間くらいにならんかなと言いつつ
日曜の夜辺りに投下出来るようぼちぼち執筆開始しまーす
メッチャ楽しみです!!!
いつかまた 言われて知った 夢の中
誰か分からず 今も分からず
空の下 悲しき共鳴 懐かしさ
思い出せない 昔の誰か
家までの帰り道に響いてきた声は
どこか物悲しげで涙を誘っていた
しかし自分の知っている仲間以外だから
頭の中は混乱していた
この異様な懐かしさはなんだろう
なぜ誰でも無い誰かなの?
一向に思い出せない謎の共鳴は
今までずっと一緒にいたかのような人の声であった
心を揺らすこの共鳴が 誰の声かは分からぬまま
あえて言いますが、今回は一応さゆみん視点です
けど、この文章だけじゃ何も伝わらないですよね…
なんか上手く書けませんでしたけど、投下しちゃいました
ではまた明日…
作品こそがこのスレの主役だと思っております!
思い出せない過去・・・異様な懐かしさ・・・
誰でもない誰かが言った「いつかまた」
読んでいるとこっちまで胸騒ぎがしてきます
自分のはただの物忘れですが
自分に何か隠された過去でもあるんじゃないかと妄想して楽しむ事にします!
ミティって敵役にハマりすぎて萌える・・・
最後まで愛ちゃんかばってたよ
それはリアルの藤本高橋話?
もしくわリゾナンター内のミティとi914の話?
コンピューター並みだね
創作意欲が刺激されました
またこんなドラマ仕立てのPV撮ってほしいなあ
自分も今日改めてちゃんとリゾブル聞いて
初心に返って話を書いてみようかなと思ったところだよ
すばらしい!
それを共鳴と表現するあなたが素敵・・・
お三方の新作に期待!!
すいません!この話はまとめサイトのどの話か分かりますか?
茜空 見渡す限り 赤ばかり
それでも止めぬ 己の拳
瞬間の 知らない共鳴 懐かしき
名前は分からず されど響いて
自主練していた時だった
夕暮れ時のこの時間
仲間の雑念ばかりが渦巻くこの時間に
悲しい共鳴が届いた
仲間以外の誰かだった気がする
顔も名前も思い出せないのに
眩しい笑顔だけが頭にちらつく
この共鳴が自分に届いているということは
仲間にも届いているはずだ
店に帰って聞いてみよう
この悲しみに溢れた共鳴が誰のものなのか
今回も文章からでは分からないですが、れいなのつもりです
れいなが必死に腕を磨いているときです
ではではまた、◇◆の人でした
http://resonant.pockydiary.net/index.cgi?no=338
どうも、乙です
拳の文字でれいなはすぐ浮かんできました
見知らぬ共鳴の相手が誰なのか
自分はあの人だと思うのですがw
◇◆さんの話は、そこからまた色んなイメージが浮かんでくるところが面白いです
時間もたっぷりあるし今日はリゾナンター漬けだな
g923のことかな?
愛れなと後藤の対決話も決着がついてないな
「 れーなと手をつないでさ 」
「 さゆの癒しの力をさ 」
「 絵里が起こす、風に乗っけることができたらさ――― 」
『 ―――世界の人たちに、幸せ届けることってできないかなぁ 』
あの日の君を思い出すと、繋いだ手の温かさも一緒に感じるようで。
同期だからこその絆がある中、想う気持ちを一番に伝えてくれた。
それが嬉しくて。
何がなんでも仲間だけは、守ろうと誓った。
**
ある日の午後、もうすでに夕暮れの時間。
道重さゆみと田中れいなはカウンターでぼーっとしていた。
「さゆぅ…なんか暇やね~」
「れいなぁ…そうだね~」
いつもは仲間がたくさんいてうるさい店内も、今はさゆみとれいなの二人だけだった。
彼女たちのため息がやけに響き、いろいろとやらなければいけない事も今は少しだけ億劫で。
「何もやる気でん」
「ねー…あ、空が真っ赤だよー」
「うぉーほんとやー」
さゆみにそう言われて窓の方へ振り向いたれいなは、空の赤さに驚く。
見慣れているはずの夕暮れも、今日ばかりは店内に二人っきりで静かなせいか、やけに物悲しくさせる。
そして、夕暮れを見ると毎回思い出す人が一人…
「絵里は今何やってるとかいな」
「今頃寝てるんじゃないかな?」
今では三ケ月に一回と減った診療。
それでも亀井絵里は通院しなければならなくて、その度に入院させられる。
そして、その日が今日である。
「やっぱり寝てるとかいな」
「うん、絶対そうだよ」
絵里が通院時に一回お見舞いをしたことがさゆみとれいなはあった。
二人して一緒にお見舞いをしようと決め、わざわざ絵里の好きな梅干しも買っていった。
しかし、絵里が入院している部屋に行くと、彼女はすやすやと寝ていたのである。
時間は夕暮れ時、ちょうど今の時間帯であった気がした。
だから、夕暮れと言えば絵里なのである。
「すやすやと眠ってるんやろうねー」
「そうだねー」
「夢の中で楽しくしてるんやろうねー」
「そうだねー」
窓の外に広がる夕空を見ながら、さゆみとれいなは暇を持て余すように少しだけ喋った。
「三人で丘に行った帰り、覚えてる?」
いきなり聞いてきたのはさゆみだった。
「なん、いきなり?」
「今ふと思い出したんだけど」
「覚えとるよ、絵里が幸せ届けたいって言ったやつやろ?」
「うん」
「あの時も、帰り道は夕暮れやったね」
丘の上で幸せを届けたいと想った日。
帰る頃にはすでに夕方で、三人並んで歩いて帰ったのを覚えている。
店に着いた時には夜になりそうで、少し心配をかけてしまったことも覚えている。
けれど、それ以上に。
帰り道、隣を歩いていた絵里の横顔が赤く映えて綺麗だと思ったことを、今でもよく覚えている。
「絵里ってさ」
「ん?」
「いつもはあんなだけど、たまに心に響くこと言うよね」
「…そうやね」
「なんか、絵里って意外と考えてるんだよなーって思ってさ」
「うん」
「夕暮れ見たら、絵里のこと考えちゃったよ」
さゆみもれいなと同じことを考えていたのかと、れいなは共鳴したように感じた。
**
今でも思い出す、あの時の絵里の横顔。
その時に繋いでいた手の温もり。
一人じゃない、仲間がいるから。
絵里が寝ている間、さゆみとれいなは共鳴する。
けれど寝ている絵里でさえも、共鳴してくれているように感じた。
たまには短歌や詩じゃなくて、ちゃんとしたものを書こうと思って書いてみました
ないやいさんとかに比べたら全然ダメダメですが、伝わってくれたらいいなー、が前提です
この6期にほのぼのとした感じを出させたくて書きました
冒頭の文章はリゾナントさせていただきましたものです
このお話は読切ですので続きませんし、今まで書いてる短歌や詩とは一応無縁です
ではでは、これにて...
◇◆の人でした
乙!
素敵!
今夜はいい夢が見れそう・・・
◇◆の人はなんて綺麗なお話を書くのでしょう!次の作品も楽しみにしてます
素敵ですわぁ
リゾチストって!あーた!
その文を見るとドキッとするんだよねw
あれ?この文はもしや、みたいなw
サボちゃんは今日は後輩の結婚式で今帰り道です
誰かサボちゃんに明日やるべきこと・やってほしいことをご提示ください
作品がかなり増えてきて右側のストーリーのとこが縦長になってきたんでふと思ったんだけど
光井氏と水の組み合わせに胸の高鳴りを抑えることが出来ず・・・
ttp://eshiyousei.s4.x-beat.com/upload/data/up0866.jpg
あ、流れぶった切ってごめんorz
それをやろうとしてサイトをバグらせたことがあるわけで
何スレ目かで必死に頑張って挫折した形跡があるはずです
もっと知識があればできるんだろうけどね
そしてそれが簡単にできるところに乗り換える勇気があればできるんだけどね
どっちもサボちゃんにはないんだなぁ…
めっちゃかっけーです!クールです!水だけに!
しかしこのシャツは水をかぶると肌に張り付いて大変なことになりそうですね
エヘヘ…
絵師はズルイです
一瞬で見る者の心を掴んでしまうから
その一瞬の為、製作に費やす労力はどれほどのものなのか
藤本画伯級の腕前の私には想像もつきませんが
―――なんで忘れることができたんやろう…
新垣里沙という女性の行方について知っています―――
―――スパイは裏切り者でしかない
『 ……愛ちゃん…会いたいよぉ… 』
哀しき謎の共鳴…
その正体を知り、愛達はその共鳴を発振させた人の下へと急ぐ
急ぐ間も、心にわだかまりを残すその共鳴は愛達を哀しくさせる
しかし、愛達は助けようと強く決意する
また再び、仲間として共に歩んでいけるように
愛達は里沙を想い、里沙も愛達を想う
『海上の孤島』へ、いざ―――
流れぶった切ってすんません
こんなに良い物でもないのに、次回予告とか書いてしまいました
予定は完結したらなんで
たぶん、来週辺りには…
ではではすみませんでした、◇◆の人でした
ありゃ過去にも試されたことあったんですね
やっぱ技術的には難しいでしたか
自分もそういう方面の知識は全くなんですよね~
たぶん技術的に難しいんじゃないんですよ
もうちょい応用力があればできそうなんですがそれができなかったし
解説書いてあるサイトがどこだか忘れちゃったしw
予告良いですねぇ
お話楽しみです続き待ってます!
逆に画伯の絵が見たいですw
+ +
∋oノハヽ +
+ 从*・ 。.・) ギトギト テカテカ マダコナイノ
⊂ (0゚∪ ∪。⊃ +
⊂ ゚̄ と_u_)__)゚  ̄⊃ +
⊂_。+ ゚+_⊃
⊂__⊃.
>>509
髪の毛から滴り落ちる水滴や、水面に映る月影が幻想的で素敵です
どんどん上手くなっていくなあ
なんかストーリーのイメージが湧きますね
休日でも人が少ない気がする
何かここ最近土日は人が少ない気がするのはやっぱ今は紺の時季だからかな
今も短いの一本書くだけで四苦八苦中です
連日作品が続きすぎると今度は読み手からしたら嬉しいのと同時に
混乱するもとにもなりかねないからバランスって重要だと思うけどね
お互い頑張りましょう
さて今晩中に投下出来るか…微妙な空気
秋の夜長・・・
楽しみにお待ちしております
空を眺めて 夕焼けこやけ
保全代わりに、最近夕焼けに関するお話が多いなーと思ったのでリゾ短歌
秋の夕焼け空は綺麗っすよねぇ
つかもうぜ! リゾナンボール!
世界でいっとー スリルな娘~
さがそうぜ! リゾナンボール!
世界でいっとー ユカイな娘~
この世はでっかい宝島
そうさ今こそリゾナンダー!
あとでちまちまっと題名スレ申請分だけやっておこうっと
今晩11時に一本投下します注意事項は下記の通りです
・こんなの小春じゃないやい
・蒼の共鳴特別編第5夜
・独自設定が出てきます(今後何らかの形で具体的に書くことになると思います)
以上ですそれではまた後ほど
そこから先は未収録なので作業できなかったwww
おもわず歌ってしまった!
さすがリゾナンダー!何でも自由自在だね!
「そうですね、これからも色んな一面を見せていけたらと思いますので、
応援よろしくお願いします……こんな感じで」
「はーい、きらりちゃんは本当優等生アイドルだよねー。
たまには何か変わったこと言ってみたら?」
目の前でボイスレコーダーを操作しながら、女性記者は率直な感想を口にする。
その言葉に、少女は鮮やかに微笑みながら考えておきますとさらりと答えた。
もう何度も女性記者と少女―――アイドル“月島きらり”は取材という形で顔を合わせている。
月島きらり、14歳。
かつて日本中を虜にしたトップアイドル“AYA”の後継者、とマスコミには持ち上げられ、
その類い希な容姿と天性の演技力はとてもアイドルとは思えない等と評される、今売り出し中のアイドルだった。
最初の頃と比べると幾分か馴れ馴れしい口調で話しかけてくる女性記者に、そろそろ次の仕事がありますので、と。
柔らかい微笑みを浮かべながらきらりは席を立った。
マネージャーの方に視線を一つくれると、きらりはそのまま事務所内の別室へと姿を消す。
どこか冷たい雰囲気を纏ったその背中はとても、14歳の少女のものとは思えなかった。
別室へと戻ったきらりは取材用に着ていた衣装を脱ぎ、制服へと着替える。
脱いだ衣装を備え付けのハンガーへと掛け、アクセサリー類を外してケースへと放り込んだ後、赤い縁の眼鏡を装着した。
アイドル月島きらりが―――女子中学生“久住小春”へと戻る。
帰宅準備を進める小春の元へと現れたマネージャーは開口一番、適当なこと言って逃げないでよと不満を口にした。
何度か取材したってだけで、何であんな風な口の聞き方してくるのか意味分かんない」
「小春の気持ちも分からなくもないけど、分かってるでしょ?
ああいう人達と懇意にしておいた方が自分のためになるって」
「はいはい、分かりましたー。
じゃ、あたし帰ります、お疲れ様でしたー」
「あ、後30分待ってくれれば送るわよ」
「別にいいですよ、っていうか、30分で用事終わるとも限らないじゃないですか。
お腹減ったし、仕事が詰まってない時くらいゆっくりしたいんで。
それじゃ、また」
そう言って、小春は部屋の隅に置いておいた鞄を手にして別室を後にする。
端正な横顔を見つめながらマネージャーが溜息をついたことなど、小春にとっては些細なことであった。
事務所の入っているそこそこ大きなビルから出た小春は、携帯電話を取り出してタクシー会社へと電話をかける。
通りで待つ間、幾人もの人間が自分の方を見ながら何か言っていることに苦笑いしそうになりながら、
小春は携帯を仕舞ってタクシーがくるのを待った。
芸能人歴はまだ2年にもならない、駆け出しのアイドル。
だが、事務所の精力的な売り出しの甲斐あってか、こうして制服を着て眼鏡をかけていても一目で月島きらりであることが分かる。
声のする方に振り返って微笑みの一つでもくれてやろうか、などとは思わない。
制服に身を包み、眼鏡をかけた自分は他人からしたら月島きらりでも、久住小春なのだから。
話しかけられるのは好きではないし、タクシーの運転手に好感を持たれなくても一向に構わない。
見る者に夢を与え、己の“イメージ”を切り売りする時間は終わったのだから。
窓の外を見る小春の横顔は、どこまでも無表情だった。
* * *
家までの道中、手持ちぶさたになった小春は鞄から携帯を取り出す。
赤い二つ折りの携帯を開いた小春の視界には、PM6:45という表示だった。
(…たまにはコンビニ弁当以外のものも食べようかな)
運転手にここで降ろしてくださいと告げ、小春は財布の中身を確認する。
エナメル地の黒い財布には、数枚の紙幣とタクシークーポン券の束が入っていた。
一万円のタクシークーポン券を出して、お釣りを受け取って小春はタクシーを降車する。
この券のおかげで、必要以上の現金を持ち歩く必要がない。
見た目だけで衝動買いしてしまった、収納力の低い財布を使い続けられるのもこの券のおかげであった。
降車したのは、小春の住むマンションがある街の隣の街。
普段は学校が終わった後仕事、土日も基本的に仕事という生活を送っている小春にとって、
電車で二十分もかからない街は比較的近所でありながらよく知らない街だった。
帰宅が多少遅くなっても、それを咎める両親とは別々に暮らしている。
もっとも、寄り道を知ったところで何か言ってくるような両親ではなかったが。
むしろ、未成年である小春を―――事務所に管理させるとはいえ、たった一人だけで東京に送り出したのだ。
とりあえず、大通りと繋がっていた小さな通りに入って歩いてみた。
小春は昔から、直感が他人よりも優れている。
芸能界に身を置いた今でも、テストの点数がそこそこである理由もその優れた直感にあった。
テストにはこれが出るに違いない、この通りの近くに目的の店があるに違いない等々、些細なレベルでしか発揮されたことはないが。
一歩一歩進むうちに、小春の視界に飛び込んできたのは―――喫茶リゾナントと書かれた看板だった。
看板には営業時間は記載されていなかったが、扉には閉店の札がかかっていない。
焦げ茶色のドアの取っ手に手をかけ、小春はそのドアを引き開けた。
* * *
さほど期待せずに入った店の内装に、小春は思わず溜息がもれそうになる。
アースカラーを基調にした落ち着いた内装は小春の好みとよく合致していた。
平日の夜ということもあるのか、小春以外に客は見あたらない。
とりあえずカウンター席に座った小春に、ギャル風のウエイトレスがメニューとおしぼりを出してくる。
「ご注文が決まりましたら、声をかけてください」
どこか上擦ったような声に、このウエイトレスは小春が月島きらりなのだと気付いているのだと確信する。
はい、と一言だけ返して小春はメニューを捲っていって…この店を選んだのは失敗だったかと溜息を付いた。
一般的な喫茶店、ファミレスでもよく見るような品物に混じって書かれている、名前だけでは一体何なのか想像もつかない
品物名の数々は小春でなくても頭を抱えたくなるのは仕方のないことと言えた。
名前からじゃ一体どんな味なのか本当想像付かないんだけど)
こういう時は、店員にお勧めを聞くに限る。
大概、店員にお勧めを聞くと一番高いメニューを勧められるが…一番高いものにドリンクやデザートをつけても、二千円強。
コンビニ弁当よりは高くつくが、それでも栄養価的にはコンビニ弁当よりはいいはずだ。
小春はギャル風のウエイトレスを呼び止めて、お勧めは何ですかと聞いた。
案の定、しどろもどろになったウエイトレスにそれでも接客業のプロかと言いたくなりそうになった小春の耳に、柔らかい声が届く。
「沢山食べる人にはうええおええ丼がお勧めですよ、後、今日はほうれん草のスープパスタセットがいつもよりも
10%オフで、ドリンクはお好きなものに変更しても値段はそのままです」
「じゃ、そのほうれん草のスープパスタセットで、飲み物をミルクティーでお願いします」
カウンターから顔を出した若い女性の言葉に返事をして、小春は鞄から教科書とノートを取り出した。
もっとも、その内容は小春が最後に受けた授業よりも先に進んでいたため、教科書とノートを交互に見たところで
内容は余り理解できるものではない。
芸能界に身を置く以上、仕方のないことだった。
平日の昼間でも普通に仕事が何日も入ることは珍しくなかったし、普通の学生ならば土日は休みだが、
土日はここぞとばかりに事務所が仕事を詰めてくる。
むしろ、小春の成績はそうした特殊な環境を考慮した場合、出来る方の部類に入ると言ってもいい。
得意科目は平均点を超えるし、そうでない科目も大体の教科は平均点を修めている。
そうした成績を修めることが出来るのも、こうした空き時間に、例え内容が余り理解出来なくともコツコツと
復習をする小春自身の性格のおかげだった。
失礼極まりないウエイトレスの呟きを無視して、小春は教科書とノートに交互に視線を走らせる。
級友がまとめてくれていたノートは分かりやすかった。
重要なポイントをしっかりと赤ペンで記載し、周りを蛍光ペンで囲んである。
文末には教科書のページ数と思われる数字が記載してあり、ノートの内容では分かりにくいところも
その数字に該当するページを参照すると比較的分かりやすかった。
忙しくて余りその級友とじっくり会話することはなかったが、これだけ分かりやすいノートを
提供してもらっていることには素直に感謝している。
もっとも、級友が自分に優しいのは―――自分が芸能人であるからかもしれなかった。
自分に色々な噂が立っていることは一応知っている。
男性アイドル事務所のとある男性アイドルと親しいとか、声優業界に強いコネクションがある等、
人とは違う世界に憧れる年頃の女の子にとって、その噂の中心人物はさぞかし魅力的に映っているのだろう。
彼女と仲良くすれば、きっと自分にも何らかの見返りがあるに違いない。
自分は、周りからそういう風に思われていても不思議ではない環境に身を置いているのだ。
復習を始めて十五分程度経っただろうか。
出来ましたよ、という柔らかい声に顔を上げた小春が見たのは、見るからに食欲をそそる料理だった。
特別凝った感じはしないシンプルな見た目だったが、出来たてのスープパスタから立ち上る湯気の匂いに思わず小さな笑みがこぼれる。
出来たての温かな料理に、いただきますと小さく呟いて小春はフォークとスプーンを手に食事を始めた。
美味しい。
変な名前のメニューが混ざっていたことによって生まれた不安は、一口パスタを口にした途端に吹き飛んだ。
高級レストランのような気取った味じゃない、家庭的な味。
心の籠もった温かい料理を食べながら、小春の思考は過去へと遡っていく。
もう、しばらくこんな温かい料理は食べていなかった。
* * *
小春が生まれたのは、新潟のとある街だった。
自然の豊かな街でのびのびと、友達や家族と楽しく暮らしていた小春。
幼少時から既に、小春の容姿は飛び抜けた美しさだった。
将来は東京にでも行かせて女優かモデルにでもしたらどうだ、と両親はよく周りの人間から言われていた。
美しく、天真爛漫な小春。
だが、両親は小春に対して一定の距離を保ちながら接していた。
子供に恵まれない久住家に持ちかけられた、とある契約。
それは、小春を成人するまで育て上げることを条件に多額の資金を提供するという、現実離れした内容だった。
小春を育て上げる、それだけで得られる金額は一介のサラリーマンからしたら宝くじにでも当選しない限り、
自力で稼ぐのはとてもじゃないが難しい額である。
子供が得られる上に莫大とも言える富を得ることが出来る、それは駆け落ち同然で結婚した若い夫婦にはとても魅力的なことだった。
それが何かは分からないが、用心しておくに越したことはない。
美しく性格も可愛らしい子である。
これで血が繋がった本当の我が子であったなら、惜しみない愛情を注ぐことが出来ただろう。
複雑な想いを抱えながら、両親は小春を育て上げていく。
このまま何もないまま小春が成人してくれたら、その時はきっと―――実の子のように、小春と接することが出来るに違いない。
両親の想いは小春が小学五年生になった年の夏に、呆気なく打ち砕かれた。
ある日、庭で遊んでいる小春へと話しかけた母親。
いつもならすぐに返事をする小春は、母親の方に一つ笑顔を見せたきり、そのまま遊びを再開する。
何度母親が話しかけても、小春はもう顔を母親に向けない。
その態度に、母親の痺れが切れた瞬間だった。
『お母さん、話しかけても無駄だよ―――あれ、あたしが作った幻だから』
声がした方を振り返って、母親は絶句した。
庭で遊んでいるはずの小春が、いつの間にか自分の背後に立っている。
そんな馬鹿な。
庭でずっと遊んでいる小春を見ていたのだ。
その自分の視線をくぐり抜けて家の中に入るなんて、ありえない。
母親の驚いた顔を見ながら、小春は庭の方に視線を向ける。
その視線を追いかけるように、母親も庭の方を見て…蛙が潰れたかのような声をあげた。
慌てて家の中を振り返ると、そこにはニコニコと微笑んだ小春が立っている。
一体、これは何だというのだ。
真っ青な顔をした母親に、家の中にいる小春は柔らかい声でもう一度同じことを言う。
あれは、小春が作り出した“幻”だ、と。
パチン。
小春が指を鳴らしたと同時に、庭にいたもう一人の小春は消滅する。
そして、小春は母親に止めを刺すかのように―――自分の隣に、再びもう一人“自分”を生み出した。
“幻術-ハルシネーション-”、その名の通り、実際にその場にいない対象物をあたかもそこに存在するかのように見せる超能力。
能力者のレベルによって見せられる幻影の数、質が変わる。
『すごいでしょ、お母さん。
何か気がついたら使えるようになったんだけど、この能力、もっと上手く使えばいいお金になるかも。
そうなったら、今よりもお父さんもお母さんもお金持ちになれるね』
小春の声は母親には届いていなかった。
ただただ、母親は今起きたことが信じられずにいた。
美しく、可愛らしい子なのに―――やはり、裏があったのだ。
こんな得体の知れない力を持っているから、あんな契約を取り交わさせたのだろう。
今更ながら、母親は契約を結んだことを後悔した。
目の前に立つ小春は、ただの人間ではない。
その事実が、今まで複雑な想いを抱えながらも小春を育て上げてきた母親の心に重くのしかかる。
柔らかく微笑む小春。
その微笑みを横目に、母親は今晩夫と話し合わねばと思う。
今後も今までと変わらず小春を育てていけるのか、自信がなくなってしまった。
沈黙の中、母親の耳に届いたのは遠くの方で鳴いている蝉の声だった。
それから、両親の小春に対する態度は一変した。
小春が話しかけても邪険にあしらい、時には完全に無視する。
今まで見てきたものは、小春が自分達に見せていた幻なのかもしれない。
部屋を覗いたときに見えた、勉強机に向かって一心不乱に勉強をしている後ろ姿も、いつもニコニコと笑っていた顔も。
何もかも、小春が見せていた幻。
そう思うようになったからこそ、今までのような接し方は出来なかった。
両親に疎まれている。
そのことを感じるようになった小春は、やはりあの能力を見せるべきではなかったのだと痛感した。
家族だから大丈夫だろう、その程度の感覚で見せた幻。
見せなければ、今までのように心穏やかに日々を過ごせただろう。
自分の浅はかさに歯噛みし、受け入れてくれぬ両親に募るのは悲しみばかり。
思えば、物心付いた時から両親は自分に対して何処か距離を置いて接していた。
ひょっとしたら、両親はこのことを知っていたのかもしれない。
自分は―――両親の実の子供ではないのだろうか。
募る疑念はあたかもそれが真実であるかのように、純粋だった小春の心を占めていく。
小春の能力が発覚してから一年、小春は親戚家族に連れられて東京へと観光旅行に行くことになった。
今まで見たこともない都会、田舎にはないようなものも沢山あるだろう。
両親との溝が深まって心の冷え切った小春にとって、その旅行は待ち遠しいものだった。
東京はすごい街だった。
今まで見たこともないような人の山、田舎では取り扱っていないブランドの数々、電車の本数の多さ等々、
まだ小学六年生という小春には刺激的なものばかりだった。
折角東京に来たのだから、田舎では買えないような服が欲しい。
そう言う従姉妹に連れられてやってきた渋谷の街で、小春は芸能事務所からスカウトされる。
芸能界に特別興味があるわけではなかった。
だが、小春はそのスカウトを受け入れることにする。
芸能界に入れば、両親から離れて生活が出来るのだ。
友人達と離れるのは寂しいが、それ以上にあの家で両親と共に生活するのは苦痛だった。
きっと、両親は何も言わない。
むしろ小春が自分から家を出ると言えば、喜んで送り出してくれるだろう。
寝付けぬ夜中、部屋を抜け出た時に聞こえてきた両親の会話。
そうしたら寮住まいになるのは必至だし、高校にも大学にもエスカレーター式で進学出来るから、
年に一度か二度程度しか顔を合わさなくて済ませられるんじゃないかしら?」
『そうだな、成人するまで育て上げないと契約違反になってしまうし、かといって、あんな力を持っている
化け物と一緒に住み続けたらこっちが気が狂いかねん。
幸い、小春はそれなりに学力はあるようだし、いざとなったら幾らか金を包めばそこに入れることは出来るだろう』
『じゃ、早速パンフレットとか入手しておくわ。
―――上手くいくといいわね』
捨てられるくらいなら、こっちから捨ててやる。
あの人達が傍にいなくても、立派に一人で生活出来ることを証明してみせる。
そして、時は流れ―――中学進学時と共に、小春は東京へと一人でやってきた。
自分を庇護する家族などなくとも、自分は立派に一人でも生きていけることを証明するために。
「ごちそうさまでした」
小春がそう言い終わるのと同時に、小春の前に差し出されたティーカップ。
カップから立ち上る湯気に、何だか泣きたい気分になったのは気のせいに違いない。
口に広がる、甘く優しい味に自然と笑みがこぼれる。
あの日、自分が持っていた能力を母親に見せる前まで確かに流れていた、温かな時間。
それを想起させるような味に、胸を締め付けられる。
どれだけ願ってももう、戻らない時。
自ら放棄した以上、戻ってくることを願うことすらおこがましい、大切だった時間。
これ以上この温かい空間に身を浸していたら、泣いてしまいそうだった。
二千三百八十円です、というウエイトレスの声に五千円札を置いて。
お釣りを受け取ることなく、小春は喫茶リゾナントを後にする。
外に浮かぶのは、銀色に光り輝く細い三日月だった。
* * *
大通りへと向かう小春は、不意に得体の知れない気配を感じて立ち止まる。
自分に対して敵意を剥き出しにした、禍々しい気配に小春の心は恐怖に支配された。
カツン、カツン。
ヒールの高い靴特有の足音に、小春は反射的に背後を振り返る。
そこに立っていたのは、黒いレザースーツに身を包んだ色白の女性。
どこかで見たことがあるような顔に似ている、と思いながら小春は警戒を怠らない。
普段の営業スマイルからは想像も出来ないような表情を浮かべる小春に、女性はあでやかに微笑んで口を開いた。
「月島きらり、だっけ。
“あたし”がいなくなった後のアイドル業界を牽引する、業界ナンバーワンアイドルって聞いたけど…大したことないね」
「―――あなたは、ひょっとして…」
「ふふ、まぁ、あたしのことはさておき…きらりちゃん、あたしと遊ぼうよ。
退屈してたんだよね、なかなか出撃機会に恵まれなかったあたしにようやく訪れた、暴れ回るチャンス…。
今日でもう、月島きらりとして活動できなくなるかもしれないけど…別にいいよね、代わりなんて幾らでも見つけてこれる世界だし」
いきなり殴りかかってくる女性の攻撃を避けながら、小春は女性から少しでも距離を置こうと後ずさる。
だが、それこそが女性の狙いであった。
距離を空け、様子を窺う小春へと女性は手を翳し―――闇色の念動刃を放つ。
間一髪でその攻撃を避けた小春へと、次から次へと飛来する念動刃。
当たったらとてもじゃないが、命が助かるとは思えないような攻撃を必死で避け続ける小春を嘲笑いながら、
女性は小春めがけて念動刃を繰り出し続ける。
必死に逃げまどいながら、小春はこの状況を打開するべく己の持つ能力を解き放つ。
“幻術-ハルシネーション-”を使い、もう一人の自分を生み出した小春はその幻影と共に女性へと突っ込んでいく。
「そんな子供だましの技でどうにかなるほど、このAは雑魚じゃないよ!」
そう言いながら攻撃の手を休めない女性に返事を返すことなく、小春は走りながらもう二人自身の幻影を作り出す。
女性の攻撃を避けながら、四人の小春はまるでトランプの手札をシャッフルするかのように位置を入れ替わっていった。
「目くらましするんなら、せめて後三十人くらい一気に生み出さないと意味ないよ。
この程度なら、本体がどれかなんてすぐに……!」
「―――別に本体がバレたっていいんですよ、AYAさん。
あたしの目的はそこじゃない」
その声と共に、四人の小春は女性を取り囲んで一斉にその頭部目がけて手を伸ばした。
小春の真の目的、それは小春が持つもう一つの能力にある。
本来、焼き付けを行う対象物は白紙などの二次元的かつ無地のものを用いるのだが、小春はその能力を相手の網膜に直接解き放った。
途端、動きを止めてその場に立ちつくす女性を横目に、小春はこの場から逃げ出すことを選択する。
人や物を傷つけ破壊するような超能力は有していなかった。
このまま女性を相手にし続けていれば、分が悪いのは間違いなく自分である。
女性が、網膜へと直接焼き付けられたビジョンに困惑している隙に早くここから脱出しなければ。
幻影を消し、小春が走り出したその刹那だった。
「あああああああ!!!」
「よくもこんな汚いものを焼き付けてくれたわね…殺す、絶対殺す!!!」
女性に背を向けて走り出した小春のふくらはぎに生まれたのは、赤い一筋の傷。
その場に膝を付いた小春目がけて、女性は容赦なく念動刃を解き放つ。
このまま、訳も分からずに殺されてしまうのか。
何故か脳裏を過ぎったのは、両親でも友達でもなく―――今日初めて訪れた喫茶店のマスターとウエイトレスの姿だった。
こんな時に家族や友達ではない人間を思い浮かべた自分を嘲笑いたくなりながら、小春は目を閉じる。
「―――セーフ、っと。
キミ、大丈夫?」
「ダークネスの手先め、よくもきらりちゃんを……あれ、何かどっかで見たことがあるような顔っちゃね」
小春を庇うように立ち、女性の方を見つめる凛とした立ち姿に小春はただただ見とれた。
ウエイトレスが女性へと一気に距離を詰めて殴りかかる。
一瞬遅れて、マスターも女性の方へと飛び出していく。
息の合った連係攻撃に、女性はどんどん追い詰められていった。
女性が本来の調子であったなら、少しは対抗できていたのかもしれない。
だが、先程の小春の能力によって、女性の視界は半分ほど小春によって植え付けられた映像に支配されている。
ウエイトレスが繰り出した下段蹴りによって体勢を崩した女性に、マスターは右手を突き出して鮮やかな閃光を放った。
その光に胸を貫かれた女性は、その場で霧散して消え去る。
まるで、SF映画に出てくるレーザー銃みたいな攻撃だったなと、小春は他人事のように思った。
戦いを終えた二人が、小春の方へと歩み寄る。
「…ひどい怪我、待ってて、今治癒能力使える子呼ぶから」
その声に、小春は痛みを堪えて立ち上がる。
命を助けて貰っただけで十分だった、これ以上彼女達に迷惑をかけるわけにはいかない。
立ち上がって二人に背を向けて歩き出す小春に、次々と飛んでくる声。
「きらりちゃん、その傷治さないとちゃんと仕事出来んから治さんと!
きらりちゃんが仕事休んだら悲しむ人一杯いるっちゃ」
「キミの呼ぶ声が聞こえたから、あーし達はここにいる。
キミがどんな仕事をしてるかとかあーしはよく知らんけど、よかったら…あーし達の仲間になってほしい」
小春の態度に、なおも声をかけようとした二人は―――振り返った小春の微笑みに言葉を失った。
その微笑みは凍てつく冬の氷河を想起させる程、冷涼としている。
「ウエイトレスさん、あたしは月島きらりじゃない、久住小春。
あと、マスターさん…悪いけど、あなた達の仲間にはなれない、あたしは―――仲間なんて必要ないから」
そう言って、小春はもう二人の方を振り返ることなく去っていく。
余りにも冷たい微笑みの衝撃から二人が立ち直った時には、もう小春の姿は何処にも見あたらなかった。
しょげかえった二人が店へと戻ろうとしたその時、物陰から一人の少女が現れる。
おそらく二人の知り合いなのだろう、少女は落ち込む二人に声をかけた。
「大丈夫、きっとあの子、そう遠くないうちにまたうちらのところに来るって。
今までだってそうだったじゃない―――“共鳴の声”を聞くことが出来る人間は、絶対にその声を無視することなんて出来ない。
あの子を呼ぶ声があの子に聞こえ続ける限り、きっとまたリゾナントにくるって」
「そうやとええけど…てか、そこにおったなら手伝ってくれてもよかったのに」
「きらりちゃん、大丈夫かな…」
理由は違えど落ち込む二人に溜息をつきながら、少女は一瞬だけ鋭い視線を小春が去っていった方向へと向ける。
少女の視線の意味を知るものはなく、銀色の月は小春がリゾナントを後にしたときよりも随分高い位置で輝いていた。
* * *
今日もいつものように仕事を終えた小春は、タクシーに乗って帰宅する。
怪我したことでマネージャーにはこっぴどく叱られた。
だが、綺麗な傷だったということもあり跡は残りませんよと医師が太鼓判を押したことで、幾分マネージャーの機嫌は治ったのだった。
怪我をしているため、足を露出した格好をすることは出来ない。
とはいえ、それでも細々とした仕事が常に入ってくる。
忙しいことは喜ぶべきこと、駆け出しのアイドルでもそのことは十分過ぎるくらい熟知していた。
タクシーを降車した小春は、ゆっくりとした足取りで目的の場所へと向かう。
目的の場所―――喫茶リゾナントへと。
「いらっしゃいませー!
って、きらりちゃんやー!!!」
「ちょっと、れーな、うるさいで。
…来てくれたんやね、あーし、すごく嬉しい」
「―――別に、晩ご飯作るの面倒だったから食べにきただけです。
今日のお勧めは何ですか、マスターさん」
素っ気ない小春の声に苦笑いしながら、マスターは自分の名前を告げる。
そして、マスターに倣うようにウエイトレスも自分の名前を伝えた。
温かな空気が流れる、落ち着いた内装の喫茶店。
変な名前の料理もあるけど、料理の味は確かなもの。
思わず溜息を付く小春に、マスター…高橋愛は小さく微笑んだ。
久住小春、十四歳。
アイドル界に颯爽と躍り出た、今売り出し中の駆け出しのアイドル“月島きらり”でもある小春。
―――彼女が仲間になるのか、それは未だ誰も知らない。
第6夜に続く
大作乙!
読みたいけど明日の通勤電車の中まで我慢・・・
面白かったぁ~(しみじみ)
出会いの瞬間っていいですね・・・感動する
∋oノハヽ
∩*・ 。.・)') < キター オモシロカッタノ
〉 /
。 (_ノ ノ
+ 彡 。
+ ゚ 。
+ ___
⊂ 。⊃ +
⊂ ゚̄ + 。 ゚  ̄⊃ +
⊂_。+ ゚+_⊃
⊂__⊃.
大作、乙でした
思わず読み入ってしまってました
リゾナントの暖かさを拒む小春の心情が健気でクールだった
それにしても小春はどんな映像を敵の網膜に焼き付けたのか気になる
ヲタの群れ
ロングパス?
あたしの目的はそこじゃない」
自分の中でのイメージ画像(拾い物ですが)
ttp://toromoni.mine.nu/up/files/data/34/toro34739.jpg
ジョジョばりのオーバーアクションwww
ゴゴゴ・・・とかドドド・・・とか聞こえてきそうですw
しかしイケメンだなぁ
しまったorz
もちろん>>566の間違い
スゲー嬉しい!!!
すげーなーそして嬉しいのう
初期からいても読んで「ほんとだー」って初めて知ったこともある
お守りってこんなに早くからあったんだなーって思った
おおっと、挑発的なレスだなw
俺は期待してるぜ>>586!(他人事&ハードル上げ
お守りの話を書いた人はまだスレにいらっしゃるのだろうか?
>>581
読みたい!たい!
「伝説の>>586」の略称。
「リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第17話」において、難問極まるロングパスを見事な形で受け取った伝説の鬼才。
ってwiki項目とかできるかな
楽しみ
・・・誰も書けないまま585を最後にスレが落ちたら誰のせい?w
ともかく次覗くのは夜なのでどうなってるか楽しみにしておく
> ・・・誰も書けないまま585を最後にスレが落ちたら誰のせい?w
>>566ですがその時は間違いなく自分のせいです
昨日から考えてたのに…
仕事中にも関わらず>>586取りのためにスタンバってたのにw
かかってきた電話のせいでぇぇぇぇぇ…orz
ちょw おまwww
まとめんさんの考えは?
今さら発表なんて悲しいからしませんw
むしろハズカシス
ttp://eshiyousei.s4.x-beat.com/upload/data/up0868.jpg
一体誰が予想したことでしょうか…w
小春がAYAに焼き付けた映像は…何なんでしょうねないやいも知りません
そして>>586さんある意味GJです見事なループに出先で見て吹きましたw
さて特別編もようやく折り返し地点これからもよろしくお願いします
_, ,_
( ・e・)<だーからあれほど濡れたら
すぐにお風呂入りなさいって言ったでしょーが!
偶然でわ無い、必然。
暗号?予言?未来?
[5こ][8は][6る]?ん~
>>587-588
ということで申し訳ないですw
リo´ゥ`リ<気になる気になるきぃにぃな~るぅ~☆
川*^A^)<ワタシモ気ニナリマース♪
∥c|;・e・)|<コラ! 二人ともサボリン困らせちゃダメでしょ! ほらみっつぃも言ってあげて!
川=´┴`)<・・・ウチも気になる・・・ボソ
Σ∥c|;゚e゚)|<エエエエェェェ?!
残念w
ww
それは萎えるw
みっつぃーめちゃめちゃかわええw
さる対策で2つに分けようと思っています
「今日は一日、自由行動なのだっ!」
大浴場ジュンジュン獣化祭りから一夜明けた早朝、
3組臨時学級委員長新垣里沙の声がロビーに響く
「いやっほーぃ!」
リゾナンター達は一気に色めきだつ
その周りにいるクラスメート達は予め予定を知っているため、喜びの声を上げる者はいなかった
明らかな温度差が浮き上がる
「ねぇ愛佳…みんなすっごいテンション上がっちゃってるんだけど…」
ある種、異様な盛り上がりを見せるリゾナンター達を控え目に指差しながら
愛佳のクラスメート安倍夏子ちゃんは怪訝な顔をしている
「あは…あはは…みんな朝からえらい元気やなぁ…あはは」
愛佳は笑顔をひきつらせながら適当に誤魔化した…
そして、ススス~と里沙に近づいて耳打ちする
「新垣さん…あやつら、早いウチにシメといた方がええんやないですか?」
「おぉみっつぃー…それはワシも今、思うとった所よ…」
「さすが新垣殿…先を見る目は確かでいらっしゃる」
「いやいや、光井殿。そちもなかなかの者じゃよ…フォッフォッフォッ…」
「フォッフォッフォッ…」
「ぅおっとぉ!」
「あ、いや、何でもないです!」
「ほーか?なんや二人とも悪っそうな顔しとったで?」
「愛ちゃんの気のせいだから!ってか、今日はあんまりハメはずさないでよ!」
「わかっとるがし!」
「愛ちゃんが一番心配なんだけどなぁ…」
「あーしは良い子にしとるがし。ほやけどあっちで早速モメとるで」
愛がニヤニヤしながら自分の背後を指差す
「ワタシはたこ焼き食べタイ!」
「絵里ちゃんはどっちかって言うと~お好み焼きな気分かな~」
「その前にミナミで買い物するったい!」
「小春、かに道楽のかにが見たいっす!」
「カニドーラク?ダッタらエビドーラクもアルですカ?」
「いいんちょー…早くも混乱してるの」
さゆみが呆れ顔で里沙に向かって両手を上げて降参のポーズ
「こっ…コラーーーーーッ!!!!」
今日一発目の委員長の雷が落ちた
リゾナンター&安倍夏子ちゃん一行は買い物を済ませ、
おいしいたこ焼き&お好み焼きを食べた後大阪の観光地のひとつ
道頓堀橋(通称ひっかけ橋)に来ていた
「おぉ~この人テレビで見たことあるったい!」
橋の側のビル壁面にドでかく設置された陸上選手をモチーフにした企業看板を見上げる
「すっごい笑ってるね、この人ウヘヘ」
「そこなの?」
「ワタシテレビで見たノもっとギラギラ光ってマシタ!ギラギラ!」
「ニガキ、アレ光らナイのカ?」
「今はお昼間だからねぇ…」
「小春が光らせましょーかー」
「いいから!光らせなくていいから!」
「あっちにかにがおるったい!」
「ほんとだぁ~。大きいねぇ…おいしそうですよ?」
「そこなの?絵里は相変わらず視点がおかしいの」
「エビは?エビはドコにいマスカ?」
「リンリン、もともとえびはいないから」
「ニガキ、あのカニの動きトテモゆっくりデ異常ダな」
「異常なのはジュンジュン、アンタの感覚だから…」
「はいはーい!小春が早く動かせましょーかー」
「いいから!絶対しなくていいから!」
「里沙ちゃんもなんだかんだ言うて楽しんどるがし」
「これのどこが楽しんでる風に見えるのよ…もー愛ちゃんもしっかりしてよ…」
里沙が苦悶する横でバシバシ写真を撮りまくるリゾナンター達
「平和だねぇ…」
「ほんまやなぁ…」
ハイテンションについて行けない愛佳と夏子ちゃんは少し離れた所で他人の振りをしていた
「愛佳ぁー!なっちぃー!一緒に写真撮るとー!」
れいなが大声で呼びつけて、二人の他人の振りを台無しにする
「田中っち!なななななっちって呼ばないの!」
「なん?なっちはなっちじゃないですか」
「コラーッ!ダメーッ!」
「ガキさん、細かい事は気にしない方がいいですよ?」
「カメはもうちょっと細かい所を気にしなさーい!」
苦笑いの二人と、かにの下で騒いでいる集団に通行人の視線が集まる
「しゃーないなぁ…」
「せっかくだしね…一緒に写真撮ろっか?」
「せやな!」
愛佳と夏子ちゃんはみんなの方へと歩み寄る
しかし、通行量の多いこの場所
前を横切る人が邪魔で、なかなか皆の所まで辿り着けない
愛佳がつぶやく
「わっ!ちょ…やだっ!」「ナツ?大丈夫?!」
夏子ちゃんの慌てた声に愛佳が振り返ると、人混みのむこうでもがいている夏子ちゃんの姿
「何してんの…」
愛佳が夏子ちゃんに向けて右手を差し出す
しかし、その手を握ったのは夏子ちゃんではなく見知らぬ男だった
愛佳は反射的にその手を振り払って、睨み上げた
視界に入るだけで気分が悪くなる様な、ニヤニヤした不快な笑い顔
「こんにちは、光井愛佳さん」
「ッ!!」
愛佳は危険を察知して素早く二、三歩後退った
「お前…何者や」
「愛佳!大丈夫と?」
いち早く愛佳の隣に駆け付けたのれいなが小声で問いかける
「愛佳は大丈夫ですけど…」
夏子ちゃんとの間には真っ黒いスーツを着た男が立ち塞がっている
愛佳は男に警戒しながら、夏子ちゃんの様子を伺う
橋の向こう側の欄干の前で体の大きい男に背後から羽交い締められている夏子ちゃんが見えた
続いてれいなとは反対側に立った愛の冷たい声
「ようこそ大阪へ、リゾナンターの皆様」
唇を曲げて下品な笑いを浮かべる男
リゾナンター9人とスーツ姿の男が橋の真ん中で対峙する
その周りを通行人達が何事かと取り囲む
「白昼堂々とこんな場所で…何考えてるの…」
さゆみがいらついた気持を吐き出す
「おや…我々の歓迎がお気に召さない様ですね」
スーツの男はパチンと指を鳴らした
野次馬の中から数人の男達が飛び出して来る
その数は5人で、計7人のお揃いの黒スーツ男達がリゾナンターの前に立ちはだかった
「何するつもりや…」
愛が威嚇する
「それは貴方のお得意の精神感応で読み取ってはいかがですか?高橋愛さん
あぁ、光井愛佳さんの予知能力で観てみるのも良いですね」
「この人達…さゆみ達の能力の事も把握してるの…」
「もちろん…何故ならば…」
バラバラとリゾナンター達に向かい合っていた男達が一斉に動き出して横一例に整列する
………。
両者の間に一陣の風が吹き抜ける
シーン。
「フッ…フハッ…フハハハハ!恐怖のあまり声も出ぬか!」
言葉を失ったリゾナンター達の中で最初に動いたのは愛だった…
「アッヒャー!ダークネス関西やて!関西!」
「安易なネーミングなの…」
「ウヘヘ…寒いですよ?」
「ちょっ、アンタ達!思ってても口に出しちゃダメでしょーが!」
「そう言う里沙ちゃんも“関西”はどうかと思うやろ?」
「うん…まぁ…あのネーミングセンスは…厳しいよね…」
里沙でさえフォローできず、愛に同意せざるを得なかった
「なっ…きっ…貴様ら…」
馬鹿にされきったダークネス関西のリーダー格の男はわなわなと拳を震わせた
そんな男へトドメを刺したのはれいなの一言だった
「………ダッサ」
【一旦コマーシャル】
残りは今晩中には…
また暫しお付き合い下さい
相変わらずいいテンポですね
ってか>>596のマルシェの見解普通に凄くないか?w
おお!久しぶり!
このシリーズ好きだけど底辺とか言うのはやめてほしいw
それとなく待ってたりして・・・
「!!!」
リーダー格の男の顔色がスッと青ざめた後、一気に紅潮した
「お前らっ!しょーもない事ぬかしとったらシバき倒すぞ!ワレェ!」
激昂した男は声を荒げて喚き出した
「ニガキ、アイツの日本語オカシイ」
「いや、あれは関西弁って言ってね…」
「!!おちょくっとったらしまいには泣かしたんぞボケェ!」
「イヤや…あんなんと同じやなんて関西人として恥ずかしいわ…」
思わず愛佳は本音を溢してしまう
しかし、それを聞いた男はすかさず反論する
「アホか!滋賀県民はホンマの関西人ちゃうやろが!
滋賀県はなぁ琵琶湖があるからしゃーなしに関西にしてやっとんねん!」
「うっさい!偉そうな事言うとったら淀川の水塞き止めんで!
そしたら大阪人干からびんねんで!」
※解説しよう!
滋賀県の琵琶湖は別名“関西の水瓶”と呼ばれ、
そこから流れる淀川の水は大阪府内流域の水道水として使用されているのだ!
「やれるモンならやってみろや!淀川塞き止めたら琵琶湖の水、溢れてまうねんぞ!
滋賀の田舎モンは溢れた水で溺れてまえ!そんで隣の田舎の福井にでも亡命せぇや!」
「ちょっと待つやよ!!」
「アンタ…今…福井を…福井をバカにしたやろ!」
「え?ちょ…愛ちゃん?」
「は?…あぁ…お前が幼少期に過ごしたのは福井の田舎だったな…フン」
「またバカにしよって!許さんやよっ!」
ムキーと怒り出した愛
「愛佳っ!徹底的にやったるで!」
「はい!」
ここに強力な福滋同盟が立ち上がったのだった
愛佳はスッと目を細めた後、リゾナンター達だけに聞こえる小声で告げる
「右から4、1、6、2、3、5です」
「了解~」
愛佳の発言に絵里がやんわりと答える
「あーしは最後にするがし!」
「じゃぁ、れなが一番に行くと!」
「その次は小春が行きまーす!」
「アー…ジャァ、ワタシ3番目ですネ?」
「なっち!アタシはなっちをっ!」
「新垣さん…少し落ち着くの…」
次々に交される会話にとまどいながらも、引くには引けないダークネス関西からの刺客達
「何ごちゃごちゃぬかしとんねん!もぉええわ!お前ら!かかれっ!」
リーダー格の合図に男達が一斉に動きを揃えて飛びかかる
いくら訓練を重ねようともその攻撃には若干のズレが生じてしまう
先程の愛佳の指定した番号はその僅かなズレを予知したものだった
リゾナンター達は愛佳が告げたそのズレの順番を頼りに迎え打つ
“1”と指定された、右から2番目に立っていた男の足にれいなの下段蹴りが叩き込まれる
バランスを崩した男は前のめりになり、思わず両手を突き出した
その手は地面に届く前にジュンジュンに捕まれる
ハッとして顔を上げた時には既に遅し
ジュンジュンは男が駆け込んで来た勢いにジュンジュン自身の怪力も加え、後方にポーイと投げ捨てた
男の体は空高く舞い上がり、橋の欄干の向こう側へと消えて行った
同じように、愛佳の予知能力によって見透かされた男達の攻撃は次々に看破されて行く
2番目の男は小春の念写能力によって仕掛けられた足元の大きな穴に気を取られ、
怯んだ隙にジュンジュンに首根っこを掴み上げられて飛ばされた
3番目の男はリンリンの漫画模倣術のひとつであるカメハメ波(もどき)による炎に右足を燃やされ、
慌てた所をジュンジュンの強烈なアッパーで打ち上げられた
ジュンジュンの重量感のある裏拳によりライナー性の放物線を描いて消えて行った
5番目の男は絵里が起こした竜巻にきりもみ状態で飛ばされて行った
その間、僅か数秒
ボチャーンと道頓堀川の水面を叩く激しい水音が連続して辺りに響いた
「残されたのはアンタとアイツだけや…」
愛は表情を崩さず夏子ちゃんを捕まえている男を顎で指す
「クッ…」
リーダー格の男の顔に明らかな焦りの色が滲む
「ほれ、アンタの仲間達と同じ様に大腸菌と一緒に水遊びするやよ」
静かに最終宣告を浴びせた愛の姿が音もなく消えると、
リーダー格の男は苦しげな息をひとつ吐いてその場に崩れ落ちた
瞬間移動した愛が背後からお見舞いした首筋への一撃があっさりと効いたのだった
ジュンジュンは小石でも拾うかのように倒れた男の上着を摘み上げて川へ放り込んだ
「で、アンタ一人になってもーたワケやけど?」
ゆっくりと振り返る愛
夏子ちゃんを捕えたまま、最後に残ってしまった男は恐怖のあまり小さく悲鳴を上げた
「その子を離すやよ…」
「今更許しを乞うたって遅いわよ!」
「アンタはねぇ!それぐらい大きな罪を犯したんだからね!」
「ウヘ…ガキさんがキレましたよ」
「なっちを…なっちを人質に取るなんて外道の風上にも置けないのだっ!」
「よくわかんないけどブチギレてるのは確かなの…」
「卑怯なその行い、なっちが許してもアタシが許さないのだっ!」
「新垣さんマジギレしてるっす…」
「怒ったニガキはつおソウだナ」
「怒った新垣サンは何スルカわからナイデス!」
「キレガキさんの眉毛が揺れよう!ハッハッハッ!」
リゾナンター達が口々に切れたと騒ぎたてる度に男の顔から生気が消えていく
手も足も震え、喉から途切れ途切れの息がかろうじて吐き出だされる
「その罪、地獄で未来永劫悔やみ続けるのだ!」
カッと見開かれた里沙の両目
その目に射抜かれた男は突然頭を抱えて暴れだした
怯えきった絶叫を上げ、その場でのたうちまわった挙句、
自らその身を道頓堀川へと投げたのだった
それを見届けた里沙は我に返り、フゥとため息を吐く
そして愛佳はペタリとその場に座り込んでしまった夏子ちゃんの元へ駆け寄った
「ナツ!大丈夫?!」
「あ、うん、なんとか…」
パチ…パチ…パチパチ…
「へ?」
どこからともなく起こったまばらな拍手に愛佳が気付いた時には既に大きな拍手の渦になっていた
パチパチパチパチパチパチ!!
周りの群衆は拍手と共に、感動と讚美の言葉をリゾナンターへ向ける
「あ…人が見とること忘れとったわ」
「ちょ…愛ちゃん…これ…」
「自分ら凄いな!テレビかなんかの撮影なん?」
野次馬の中の一人が愛佳に声を掛けてきた
いきなりの事に動揺しつつも愛佳は素早く切り返す
「あ…あの…わっ私達、新喜劇に入りたくて大阪に来たんです!」
おぉーー
ひっかけ橋全体を大きなどよめきが包む
あの演技力ならいけるやろ
むしろ可愛すぎてアカンのちゃう?
どっちかっちゅーと、手品師の方が向いとるやろ
口々に感想を述べ合う野次馬達
「それで、あの…なんばグランド花月はどこですか!?」
その角ピュッて曲がってブワーて行ったらドーンてあるわ」
「ありがとうございます!」
愛佳が元気良くお礼を告げると同時にリゾナンター達は教えられた道に向かってグワーっと走りだした
愛佳も夏子ちゃんの手を引いてメンバーの後を追いかけた
背後から野次馬達の“がんばれよー”なんて激励の声が飛んで来る
「ハッハッハッ!あの人達、愛佳の言い訳信じとーよ!」
先頭を走るれいなが体を反転させ、後ろ走りしながら笑いかける
「みっつぃー!どうせならもっと上手い嘘つきなよ!」
「やって、とっさの事で何も思いつかへんかってんもん!」
「ちょっと愛佳!?どーなってんのよぉっ!!」
まだ状況を飲み込めきれない夏子ちゃんは、必死に走りながら問いかける
「後で説明するわー!グフフ」
笑いながら答えた愛佳は隣を走る里沙にチラリと視線を送る
里沙は少しバツが悪そうな笑顔を返した
その後、人通りの少ない路地に入ったリゾナンター達は里沙の精神干渉能力をれいなの能力で増幅し、
辺り数km内に居る人間の記憶から自分達を跡形もなく消し去った
だけど、今日だけは、愛佳は笑っていた
能力を晒け出した後でも、友人は愛佳の手を握ってくれた
恐怖に怯えるでもなく、不快感を表わすでもなく
夏子ちゃんは愛佳が差し出した手を握って、ついて来てくれた
それだけで愛佳は嬉しかった
その気持ちはこの場にいる誰もが理解できた
だから、里沙は夏子ちゃんの記憶に少しだけ残して置いた
夏子ちゃんのために果敢に敵に立ち向かう愛佳の姿
そして、すべてが終わった後、素早く夏子ちゃんの元へ駆け寄る愛佳の姿
ちなみに、里沙が「なっち!なっち!」と取り乱した部分は勿論、綺麗さっぱり削除された
「なんや、自分に都合の悪い記憶を消せるてええですね…」
「いや、あの、普段からこーゆー事してるわけじゃないから!」
「ホンマですかぁ?」
「ホーントだってば!」
愛佳は日記でも始めようかな…とちょっと思ってしまったのだった
共鳴修学旅行~リゾナンターでんねん~
変に時間を空けてしまいご迷惑をお掛けしました
今回は以上になりますありがとうございました
自分、絶対関西人やろ?w
今回も笑わせてもらいました
道頓堀に次々ダークネス関西の犠牲者さんを投げ込んでゆくジュンジュンになんだか風情を感じました
>「ほれ、アンタの仲間達と同じ様に大腸菌と一緒に水遊びするやよ」
>「あぁ…それやったらこの道グワー行ったらラーメン屋あるからその角ピュッて曲がってブワーて行ったらドーンてあるわ」
この2つが特にツボでしたw
朝一で笑ったww
このシリーズ好きやわ~
( #~・e・~)
これ知り合いがリアルで言ってたw
関西人てバレてもうたかwww
今回はちょっと地方ネタに偏りすぎたなと反省の意味を込めて
ラストをあんな風に持って行ったんですけどね…失敗失敗
まぁ、あのテンションが理解し難くてもこの話で関西の事ちょっとでも好きになっていただければ…
ノノハヽo∈
从*` ロ´)<ナイナイ
ヾ=シ )
し--J
ちなみに関西では>>634の様な地域間紛争は日常茶飯事wやんな?
こういうちょっとガラの悪い感じが自分のスタイルなんで苦手な方は読み飛ばしてくださいw
>>633ガキさん眉毛がキュートだよガキさん
ノシ
これ→川#’Д’)が真っ先に浮かびましたw
今回は笑いありバトルあり感動ありでこのシリーズで1番好きかもしれないです
みっつぃー良かったなぁ
関西方面のホゼナンターさんが頑張るのかもしれませんがw
ダークテイスト話第4弾です
スレが下がっていたからと言い訳しながら上げておきます
※注意
・単発の読み切りです(全6レス分)
・能力等の設定は踏襲していますが今までの作品にはない異質な世界での話です
・やや残酷な描写を含みます
・そういったわけで不快に思われる方はスルーをお願い致します
・って注意するほどには今回は正直なっていなくてダークなのを期待している方には逆にすみません
「どうした?何泣いてる?」
夕暮れの迫る茜空の下、道端で一人泣いている幼い少女に、銭琳(チェン・リン)は思わず声をかけた。
同じ視線の高さになるようしゃがみ込み、優しく微笑んで首を傾げる「お姉さん」に、少女はしゃくりあげながらも拙い言葉でその理由を話す。
「そうか。お母さんに叱られて家を出てきたか。でも、今頃きっとお母さん心配してるぞ?」
「しん・・・ヒック・・・ぱい?」
「そうだ。もうすぐ日が暮れる。だから家に帰ろう」
「でも・・・おかあ・・・さん・・・きっとミクのこと・・・きらいに・・・なったんだもん・・・ウッ・・・ウッ・・・」
「嫌いになった違うよ。お母さんが怒ったのはミクちゃんに立派な大人になってほしいからネ」
「りっぱな・・・おとな?」
「『正しいことは正しい。いけないことはいけない。』それがちゃんと分かる大人が立派な大人だ」
「わかんないよ・・・・・・ゥゥ・・・」
「アイヤちょっと難しかたか。とにかくお母さんはきっともう怒ってないよ。だってミクちゃんのこと大好きだから」
「・・・ほんと?」
「ミクちゃんがちゃんと今日のことごめんなさい言ったら大丈夫だ」
「うん、ミク、ちゃんとごめんなさいする」
「おう!いい子だ!・・・お。あれ、ミクちゃんのお母さんじゃないか?」
「えっ?あっ!ほんとだ!おかあさん!」
傾いた日に照らされた母親の顔が安堵の表情を浮かべていることを見て取り、琳は静かに微笑む。
母親の元に駆け寄った少女が母親に身振りを交えて懸命に何か話している。
やがて、母親は少女の頭を抱き寄せながら琳の方に向き直り、申し訳なさそうな表情と共に会釈をした。
微笑みながら会釈を返し、少女に小さく手を振る。
少女が満面の笑みで手を振り返すのを確認した琳は、再度軽く母親に会釈をすると、踵を返し歩き出した。
先ほどまでとはうって変わった厳しい表情で―――
* * *
「好久不見了,銭琳」
「・・・・・・一年ぶりだな」
「ふん、もう言葉マデすかりこの国に馴染んダカ。銭家の“継承者”ヨ」
完全に日も落ち、煌々たる満月の明かりに照らし出された幽闇の中、琳は一人の女と対峙していた。
「・・・私を呼び出した理由を聞こう、王翠英(ワン・ツェイイン)」
王翠英――かつての朋輩であり、同士であり、好敵手であり・・・ある事件以降袂を分かつこととなった相手。
「思い出話をする気もない・・・カ。まあイイ。では手短に用件を済ませヨウ。・・・我らの組織の一員とナレ、琳」
――もう、互いに交わることはないだろう。
「・・・・・・貴様、自分が一体誰に何を言っているか分かっているのか?」
・・・そう思っていた。
「無論ダ。お前の力が加われば、我らの計画の実現はより容易くナル。・・・こちらへ来い、琳。私はお前を殺したくはナイ」
もしも交わることがあるとすれば―――
「もしも用件がそれだけならば、もう話すことはない。帰らせてもらう。今度こそもう二度と会うこともあるまい」
それはどちらかが滅するときになるであろう―――とも。
「・・・・・・残念ダ。ならば死ネ、銭琳。愚かなる者ヨ!」
翠英の全身から立ち昇る殺気に満ちた気を感じながら、琳は小さくため息を吐き、覚悟を宿した目で“敵”を見据えた。
「破ァァ!!」
瞬時に間合いをつめてきた翠英が、殺気をそのまま叩きつけてくるかのように手刀を突き出す。
手刀が琳の胸を貫いた・・・と見えた瞬間、琳の体は半回転してそれを躱し、同時にがら空きとなった相手の側面へ打撃が飛ぶ。
だが、それは身を低くした相手の頭上の空気を抉っただけに終わり、今度は下方向からの蹴撃が琳を襲う。
打撃を放った琳は、その勢いで相手の上を弧を描くようにして飛び越え、それを避ける。
着地と同時に振り向きざまの回転裏拳を放つ。
しかしその拳も目標に届くことはなく、同じく琳の着地と同時に放たれた相手の掌底突きによって相殺される。
瞬間、体勢を崩した琳を再び強烈な蹴撃が襲う。
咄嗟に防御した腕越しに激しい衝撃が伝わる。
反射的に自ら後ろに飛びのくことでその威力を軽減させたものの、琳の腕には鈍い痛みが痺れとともに残された。
「少し腕を上げタカ・・・さすがダナ。とは言えまだまだワタシの敵ではナイ」
ほんの数瞬の攻防を終え、間合いの外に相手が去ったことを確認すると、翠英は楽しそうに笑みを浮かべた。
「だがやはり死なせるには惜シイ。もう一度聞くが我らの同志になる気はないカ?琳」
「ない。何度も言わせるな」
「何故ダ。それほどの力を持ちナガラ、何故それを自分のために使わナイ」
「・・・私の力は私のためにあるのではないからだ」
「自己を殺して生きることに何の意味がアル」
「貴様には・・・分かるまい」
「琳、お前は間違てイル。お前が真に立つべき場所は我らの隣ダ。何故それが分からナイ」
「『正しいことは正しい。誤っていることは誤り。』・・・それが分からずに邪道を往く貴様に立つべき明日などない」
「・・・未だに亡き母の教えとやらに掣肘せられて自らを見失うカ。愚かさは母譲りダナ、琳」
「・・・今の発言を撤回しろ、翠英。さもなくば・・・殺す」
「できるものならバ、やてミロ。愚かな銭家の娘ヨ」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、赤々とした紅蓮の?が闇を引き裂いた。
―念動発火能力(パイロキネシス)
琳が 持つ、銭家の歴史の中でも前例のないほどの強力なチカラ。
掌に握り込んだ物体を媒介として発生する、全てを焼き尽くす火?。
琳の怒りを具象化したかのようなその?は、一直線に翠英を呑み込んだ――かに見えた。
だが直後―――突如?はその鎌首を翻し、琳を襲った。
「くっ・・・!」
突き出された琳の掌から新たな?が生まれ、ぶつかり合った2匹の?は相殺された。
熱波にゆがむ景色の向こう、冷笑を浮かべた翠英の前に、薄黄色に光る“壁”が浮かび上がっている。
「“反能力光壁(リフレクト・ウォール)”――安ぽい怒りのあまり、ワタシの能力を忘れタカ。お前の?はワタシには通じない」
「貴様・・・そのチカラ・・・」
「そうカ。お前は“消能力障壁(イレース・ウォール)”しか知らないのだたナ。・・・あれは能力の一部に過ぎナイ。切り札は隠すものだからナ」
「・・・・・・・・・」
「絶望に言葉もないカ、琳。・・・これが最後の勧告ダ。我らの仲間とナレ、銭琳。決して悪いようにはしナイ」
「・・・何度も言わせるなと言ったはずだ、王翠英。それに私はもう決めている。貴様を殺すと」
「なるホド。ならばもう何も言うマイ。自らの愚かさを呪いながら死ぬがイイ」
「死ぬのは貴様だ、翠英。切り札を持つのが自分だけなどとは思わないことだ」
「・・・何ダト?」
揺らめく?に照らし出された琳の顔が、立ち込める熱気の中、それとは対照的にどこまでも冷たい表情を湛えているのを翠英は見て取る。
微動もしない水面のようなその表情から、翠英は琳の覚悟を改めて知らされた。
「愚かナ・・・」
微かに呟いた翠英を、再び紅蓮の?が襲う。
“反能力光壁”を展開するべく自らのチカラを解き放つ瞬間、翠英は微かな違和感を覚えた。
琳の掌より放たれた?は一直線に翠英へと向かい、その燃え盛る体内に獲物を取り込まんとする。
だが、?が獲物にたどり着くより前に、先ほどと同じように薄黄色に輝く障壁がその行く手を遮った。
刹那――
?はまるで生き物のように蠢き、障壁を避けるようにしてバラバラに分かれた。
そしてそれは各自が意思を持つかのように、唖然とする翠英を八方から襲う。
あっという間に、翠英の姿は?の体内に消えた。
「・・・・・・!?」
―だが直感的に、琳は今の攻撃が失敗に終わったことを悟った。
同時に迎撃の態勢をとる。
直後、翠英のいた場所を中心に、幾本もに分かれた?が激しく噴き上げた。
明々と照らされた闇の中、弾き返された?が時間差で琳に飛来する。
「っっっ!!」
相殺しきれなかった?が身体を焼き、強烈な熱波は琳の小柄な身体を吹き飛ばした。
地面に叩きつけられて背中を強打し、絶息する琳のもとから小さな赤瑪瑙のペンダントが転がる。
転がり続けたペンダントはやがて、薄闇の中に悠然と立つ翠英の足に当たって止まった。
「今のがお前の切り札とやらカ、琳。見事だ。だが残念だたナ。言たはずダ。『切り札は隠すもの』ト。“反能力光球(リフレクト・ボール)”――それがワタシの真の能力ダ」
足元のペンダントをゆっくり拾い上げると、翠英は再びその能力を解き放った。
薄黄色の光の膜が、翠英を中心に球状に広がる。
「お前の?はワタシの“光球”に全て弾かれタ。切り札が敗れた今、お前にもう為す術はナイ。・・・何か言い遺すことはあるカ?」
地面に倒れ臥す琳に、翠英は静かにそう訊ねた。
「それは・・・母の形見・・・だ」
苦しそうに身体を起こしながら、琳は翠英の手元に視線を注いだ。
「形見?・・・ふん、先ほども言たが、未だ母の影を背負い続けるような弱い精神だからお前は負けるのダ」
「・・・そうかもしれない。私は未熟だった」
「ようやく悟タカ。ほんの少し遅かたナ。だがもしお前が・・・」
「貴様を殺す――そう言いながら、私にはその覚悟が足りていなかった。その為に何かを捨てる覚悟も。人は何かを捨てなければ・・・前には進めないのだな」
「・・・・・・何ダト?」
「『切り札は隠すもの』――だったな、翠英」
「っ!琳、お前――」
「再見、王翠英」
言葉と同時に、薄黄色の球体の中が赤瑪瑙のような鮮やかな赤の?に包まれた。
赤々と燃え上がる球状の?――
その、ある種壮観たる稀覯の景色は、ほんの一瞬だけその姿を現し、すぐにその形を崩壊させた。
?を包み込んでいた薄黄色の光の膜が――その術者とともにこの世から消滅したためであった。
「“遠隔発火能力(リモート・イグニション)”――特殊な媒介を通じて、離れたところに?を発生させる――それが私の本当の切り札だ、翠英」
全てを焼き尽くす紅蓮の業火。
その残り火に照らされて揺らめく琳の表情は、どこか淋しげだった。
―やがて?はすべて消え去った。
後には、いつしか月さえも雲に覆われた、悠久の闇だけが残る。
――先に地獄で待っていろ、翠英。私もそのうち行くことになるだろうから・・・
それはあたかも、全てを燃やし尽くす?でも滅せない、銭琳の心の内の闇を象徴するかのようであった―――
>>640-645
『禍刻Ⅳ―Flame burn down all―』
以上です
なんだかバトル漫画のようになってしまったのは自覚しております
次回があれば原点回帰を目指したいです
ですね・・・
事前に他所のスレで確かめたときはいけたのですが・・・
もう一度やってみよう「?」
ともあれ「炎」を各自当てはめてお読みくださいませ
普通にそう書いときゃよかったかっこつけずに
焰 焱 燚
?の所には脳内でとてつもなくカッコイイ
梵語みたいな文字に変換して読みましたから無問題です
面白かったです!自分もバトル物を書き始めたところなので
とても参考になりました!炎使いもカッコイイなあ
熱いバトル乙です
リンリンを闇に引き込もうとした組織はいったい何だったんでしょうか?
ダークネスでも無さそうだし刃千吏な訳は無いだろうし
リンリンは謎が多くてミステリアスだね
リンリンカッコイイね!
炎の数え方が良いねぇ ぶつかり合う二匹の炎か…かっこいい!
ちなみに「?」となっている字は元々は>>650さんが1文字目に挙げられている「焰」でした
・・・出るかな
読みは「ほのお」もしくは「ほむら」ですかね
まとめサイトに上げていただく際は・・・テキストとしてお送りした方がよいですね
続き番号ふってなきゃ見送ってもらえば済む話だったのですがw
漢字にこだわりたい気持ちも分かるけど
サボリン∞さん乙です
おやすみなさい
今日もリゾナンターのみんなが頑張っている
面倒なのれす
もうまとめサイトやめちゃうかもなのれす
え?のんは本物のサボノンちゃんれす
ほ、本当なのれす
・・・しまった作戦失敗なのれす
なんでバレたのかわかんないのれす
・・・すみませんでした
お、おはようサボノン∞ヽ( ´ⅴ`)ノちゃん・・・
きっと、疲れてるんだね・・・
少し・・・横におなりなさい・・・さあ
いい子だから・・・ね。
目がさめたら、枕元に沢山のお菓子を用意しておいてあげるから・・・だから今は、おやすみなさい。
免許取得おめでとうサボノン∞ちゃん
だからついておいで いい所へ連れていってあげよう・・・
サボリンはサボってるわけないだろ!
ワーイ
ε=ヽ( ゚∀。)ノ §←アメ
なっちの歌声とかならともかく飴でいいんですか飴でw
警察、リゾスレ住人の懸命な捜索が続いていますが
依然として行方は分かっておらず・・・
住人の声「あの子はサボるのが好きな子よw、でもまとめる時はきちっとする真面目な子w
まさかいなくなってしまうなんて・・・ww」
なお現場に飴の包み紙が大量に残されている事から
今後は誘拐の線も視野に入れての捜査が行われる予定です
サボリンちゃん乙です
いつもバラエティに富んだ壊れ方
楽しませてもらってます
って らめめめめめめめ!
ダークネス饅頭・・・
「あ、吉澤さん!」
「おう、ヒサブリだな!これ、お土産。ダークネス饅頭。」
「・・・食っていいんすか・・・コレ?」
そろそろダーク饅の季節やね
ホカホカのさ
人間の心に少しでも悪の心があるとそれを増幅させることが出来るらしい
ドラゴンボールでいうアックマンの技みたいなもんだね
解説乙・・・ しかしただの黒飴かも知れんぞww
その話に繋がっている短歌詩を一つだけ投下します
心の中を一瞬で駆け巡っては掴まれた
真実(ほんとう)の姿を見せても逃げなかった
その屈託の無い笑顔 優しい心に包まれた
なぜ忘れていたのだろうか
なぜ気付かなかった
自分の背中を後押ししてくれたのは
哀しみに暮れた自分を包み込んでくれたのは
誓った言葉を貫いてくれているのは
今でも求めてやまない 誰よりも大切な君なのに
瞬間に 過ぎる笑顔は 君だった
闇を退き 君を救おう
かっこいい・・・
実は80%ぐらいは出来上がっているのですが、どうしても最後がなかなか書けず…
他にも推敲していたら誤字・脱字などなどけっこうでてきたので、お見せできるようにしている最中です
いざ小説みたいな話を投下しようとするといろいろと気になってなかなかできませんw
だけど次回予告した以上ちゃんと話は書いていくので、期待している方々にがっかりされないようにがんばって書きます!
今週は無理かもしれませんが、完成したら投下していくのでよろしくお願いします
最後の俳句もカッコイイですね!
ゆっくりでいいので頑張って下さい
楽しみに待ってます
バッドエンドものですので苦手な方は読み飛ばし願います
皆を裏切り、謝罪すらせずに消えるように去ったあなたを。
だから、私は―――あなたを、殺す。
『死の棘~The thorn of Death~』
それさえも見当がつかないくらい、彼女は私達を見事なまでに欺いていた。
共鳴という得体の知れぬ感覚によって繋がれた、リゾナンターという仲間達。
時には言葉にすら出来ないような感情さえも瞬時に皆に伝わる、愛おしくもありながら同時に厄介な鎖のような絆。
共鳴という鎖に彼女は縛られていなかったというのだろうか。
そうとしか思えない程、彼女は呆気なく私達を捨てて何処かへと消えてしまった。
今も、仲間達はいなくなってしまった彼女のことを思っては胸を痛めているに違いない。
もう帰ってくることのない裏切り者を思って胸を痛め、涙を流す。
本来なら、私も仲間達と共に胸を痛めて泣き暮らしているはずだった。
だけど、そうしなかったのは―――この胸を満たす感情が、悲しみよりも激しい怒りだったから。
スパイとして私達と共に過ごした彼女が有している情報は、彼女の所属している組織であり、
私達にとっては敵であるダークネスへはまだ渡っていないはずだった。
それを確信したのは、彼女がいなくなってからすぐに起きたダークネスとの戦闘。
情報が既にダークネス側へと渡っていたなら、私達は随分苦戦を強いられていたに違いない。
だが、結果は誰一人大きな怪我を負うこともなく、普通に勝利することが出来た。
それに加えて、決め手となったのは―――対峙したダークネスの戦士の動揺。
戦いの時に誰かがいない、という事態は大して珍しくもないことだった。
向こうにしても、こっちが常にフルメンバーで戦いを挑んでくるなんて思ってなんかいないだろう。
それなのに、対峙したダークネスの戦士は明らかに動揺していた。
おそらく、彼女はダークネス側に何も告げずに消息を絶ったのだろう。
ダークネス側はそれを―――彼女の裏切りだと思い、私達に戦いを挑んできたのだ。
裏切り者の彼女と私達を始末するために交戦したというのに、彼女の姿は何処にも見あたらない。
その答えを知るのは彼女以外に誰もいない。
ただ一つ言えることは―――私達の情報が彼女以外の人間に流出することだけは避けなければならないということだ。
ダークネスの人間にも何も言わずに去っている時点で、ダークネス側へと私達の情報が流れる可能性は薄い。
彼女はダークネス以外の組織に属しているスパイで、私達の情報を集めると同時にダークネスの情報も収集している可能性もあり得る。
もっとも、その組織が―――私達にとって、敵でないとは限らない。
ダークネスを相手にするだけでも命を失う危険性は常にある。
その上、さらに他の組織まで相手に出来る余裕などない。
―――彼女を殺さなければ、私達が死んでしまうのだ。
仲間達は悲しみにくれる余り、そのことに気付いていない。
仮に気付いたとしても、彼女を殺すことなど出来ない、何とかして彼女を説得しようとするだろう。
共鳴という絆で一度は結ばれた仲間だから、きっと説得すれば元通りになれると思うのは目に見えていた。
断言してもいい。
説得して帰ってくるような人間なら、最初からリゾナンターを去ることなんて出来るわけがない。
裏切りを知った時の私達の悲しみ、動揺が共鳴によって何倍にも増幅されて心に伝わっている時点で、
普通なら―――彼女が真にリゾナンターの一員ならば、私達の傍から離れることなんて出来るわけがなかった。
彼女は共鳴の絆に繋がれてなどいない。
ただの裏切り者であり、間接的に私達の命を危険に晒そうとしている敵なのだ。
そう言ったところで、きっと仲間達は聞く耳など持たないだろう。
何よりも共鳴という絆、可能性を信じている仲間達。
裏切られても尚、信じる気持ちを持って彼女を待ち続ける仲間達。
共鳴という絆を、可能性を―――私達そのものを彼女は真っ向から否定したというのに。
愚かな仲間達、けれど私にとっては何物にも代え難い仲間達。
彼女達を守るためなら、私はこの手を汚すことを躊躇わない。
かつての仲間であり、尊敬していた彼女をこの緑炎で焼き尽くしてみせる。
そのために、私は―――もう仲間達の元へは戻らないつもりで、彼女を追ってきたのだ。
共鳴という絆を断ち切り、ただひたすらに彼女への憎しみだけを力へと変えて。
もう何ヶ月もの間、何の手がかりもないまま街から街へと移動してきた。
彼女に関する情報が得られないかと能力者組織を虱潰しにあたり、時には…戦いを挑んできた者を
この手で焼き払い、薙ぎ払い、叩き潰した。
ひたすら彼女を追い求めて捜索と戦いに明け暮れた日々も、もうじき終わる。
中国の組織時代から重用してきた馴染みの情報屋から先程、待ち望んでいた連絡があったのだ。
それなりに前金の値も張ったが、その分確度は高い。
彼女を殺して―――全てが終わる。
もう、あの頃にはけして戻ることはできない。
だからこそ、絶対に成し遂げてみせる。
見上げた夜空に浮かぶ月。
燃えるように紅く光る月は近く訪れるであろう彼女との悲しい再会を暗示しているようだった。
* * *
この土地を再び訪れることになるとは思ってもいなかった。
過剰なネオン、ドラッグと吐瀉物と血の悪臭が染みついた土地。
刃千吏時代幾度か研修で訪れたことのある私には、むしろ懐かしさのある、あの平和な喫茶店よりも余程リアルな土地だった。
人の欲望渦巻く街の片隅にある、現地の人間ですら近づかない一角。
近寄ってくる物乞いを蹴り倒し、銃を向けてくる黒服に身を包んだマフィア達を容赦なく念動力で吹き飛ばした。
まさにアングラな地帯を一歩一歩進むうちに、徐々に懐かしい気配が近づいてくる。
幾重にも張られた、黄緑色の結界。
私は迷うことなくその結界に手をかけ、無理矢理引き開けて体をねじ込んだ。
「やっぱり、リンリンが一番最初にきたね」
まるで、最初から私が来ることを分かっていたかのような言葉を発して、彼女は小さく自嘲した。
以前と何も変わらない姿で彼女はそこに立っているのに、私と彼女の間には間違いなく、けして埋めることの出来ぬ溝があった。
かたや裏切り者、そしてかたや―――裏切り者を粛正しにきた者。
この体の震えは一体何なのだろうか。
彼女は戦闘系能力は使えない、そして、どの程度の実力者なのか誰よりも知っているというのに。
ああ、この震えは―――恐怖ではなく、歓喜。
何ヶ月というけして短くはない期間、目的を果たすためだけに私は全てを賭けてきた。
暖かな場所も大切な仲間も共鳴も、何もかも切り捨て、ただ、彼女を殺すためだけに生きてきたのだ。
「リンリンは、あたし側に近い人間だから。
だから、絶対に誰よりも早くあたしのところへ来ると思ってた。
あたしを殺しにきたんでしょ?
―――でも、あたしにも譲れない願いがあるから、例え元仲間でも殺すよ」
「お前と一緒にスるナ。
彼女達を平気で切り捨てテ姿を消しタお前と私ハ違う」
リンリンは、気持ちの上ではそうでないつもりでも―――あたしと同じことをしたんだよ。
自分の目的を果たすためだけにあの子達を捨てた、どんな理由があってもその事実は変わらない」
「うルさイ、黙レ…」
「あたしのところに辿り着くまでの間に少しは力を付けたみたいだけど、断言してもいい。
リンリンじゃあたしには勝てない」
「―――黙れエエエエ!!!」
激しすぎる怒りが、そのまま私の力へと変わる。
能力を制御しようなどとは思わなかった。
能力者にはそれぞれ、自分の体に負担がかからない能力範囲というものがある。
だけど、私はその能力範囲を超えた能力を己から無理矢理引き出した。
能力の過剰放出、それは二度と能力が使えなる、場合によっては―――エネルギーの大量放出に体が耐えきれなくなり、死に至る。
目的さえ果たせればそれでよかった、どの道、生き残ったとしても私が仲間殺しであることには変わりない。
そして、そんな私を彼女達が再び受け入れることはないのだ。
自ら選んだ絶望さえも力に変え、私は彼女と対峙する。
以前とは明らかに違う強さをもった私を見ても、彼女は顔色一つ変えていなかった。
「…あたしを追ってこなければ、もう少しはあの子達と暖かい時間を過ごすことが出来たのにね。
リンリン、あたしを殺さないと―――あたしは、あの子達も殺すよ」
その言葉が、悲しすぎる戦いの始まりを告げる合図だった。
手から念動刃を幾つも放ち、私は彼女との距離を縮める。
それでも彼女に向かって飛び込んでいくのは、彼女のピアノ線はある程度離れた敵に対して最も真価を発揮する攻撃だから。
念動刃を無駄のない動きで避けながら、彼女はピアノ線を巧みに操り私の動きを止めようとしてくる。
私は彼女に向けて放つのとは別に念動刃を生み出し、ピアノ線を断ち切っていった。
だけど、彼女はその都度新たなピアノ線を懐から取り出して操り始める。
膠着状態が続いた。
彼女に近づきたい私と、近づかれる前に私を仕留めたい彼女。
体が燃えるように熱い。
普段、これだけのエネルギーを放出して戦うことはなかった。
早く、距離を詰めて、緑炎で彼女を焼き尽くさねば―――先に燃え尽きてしまうのは、おそらく私だ。
それだけは避けたかった。
何としてでも、彼女を倒さねば―――あの暖かい場所を、仲間達を切り捨てた意味がない。
「ウアアアアア!!!!!」
叫び声と共に、私はさらに全身からエネルギーを解き放つと、ピアノ線に構うことなく彼女へと突っ込んでいく。
体にピアノ線が幾重にも巻き付いてくるが、私はそれを体から放つエネルギーで無理矢理焼き切った。
彼女の焦った表情に、私は勝利を確信する。
手で触れないと発動することの出来ない、発火能力。
―――彼女はもう、私の領域内に入った。
『接近戦苦手なんだよねー、元々あたしあんまり運動神経よくないからさー』
どうして、あの頃のままでいられなかったんだろう。
あの頃からまだ時は大して過ぎていない、私も彼女も見た目はあの頃と何一つ変わらない。
戦い続ける日々は辛かった、でも、皆で辛さを分かち合い喜びを何倍にも感じながら過ごした時間。
大切だったし、守りたかった、それは今、目の前にいる彼女も含めて。
私の攻撃から逃げまどう彼女を、この目にしっかりと焼き付ける。
リーダーと共に、私達を導いてくれた彼女。
しっかり者で、でもどこか抜けていて、とても優しかった。
「…さよウなラ、新垣サン」
大切だった時間も絆も、何もかも焼き尽くす激しい力を秘めた腕は彼女に向かって伸びる。
指先が触れれば、それで何もかも終わるはずだった。
頬に伝う涙を感じながら私は彼女の腕を掴む。
燃えろ、燃えろ、燃え尽きろ。
想いと共に、私は全エネルギーを放出する。
緑炎が具現化しようするより早いその刹那、私の体はその場に崩れ落ちた。
「残念でした」
感情の籠もらない声で彼女がこの戦いの終わりを宣言する。
もう、小枝すら燃やせる気がしない私を嘲笑うかのように、彼女は膝をついて私と視線を合わせた。
恐ろしく澄んだ瞳で、彼女は私を見つめてくる。
見た目だけなら、何の変哲もないナイフ。
だけど、そのナイフから漂うのは闇を凝縮したかのような、負のエネルギーだった。
「言ったでしょ、リンリンじゃあたしに勝てないって。
この“死の棘”がある限り、あたしは絶対に負けない」
「死の棘…」
「これは、敵対する能力者のエネルギーを能力者に気付かれないように徐々に削り取ることが出来るの。
対峙した能力者はまだエネルギーを出せる、そう勘違いしてさらに能力を放出する…今のリンリンのように。
自滅を誘い、削り取ったエネルギーを使用者に還元する、これがある限りあたしは絶対に負けない」
そう言って、彼女は“死の棘”を愛おしそうにその胸に抱き締める。
まるで、愛する者をその身に抱くかのような仕草に目眩がした。
不意に、彼女が私の頬に手を伸ばす。
振り払うことすら出来ずに、私は精一杯の拒絶として彼女を睨み付けた。
「さっきも言ったけど、あたしにも目的があるの。
そして、この死の棘はそれを叶えるために手に入れたもの」
蕩々とした口調で、彼女は私に語る。
かつて、誰よりも何よりも大切な存在が彼女にはあったこと。
それをダークネスによって失い、復讐するためだけにこの禁断の武器へと手を伸ばしたということを。
他の皆の力も奪って、ダークネスの主要な戦士の力も奪って、それで、五分と五分くらいかもしれない。
でも、絶対に私は復讐を遂げてみせる、例え目的を果たした瞬間に―――その代償として命を奪われたとしても」
そう言って彼女は動くことの出来ない私へと、死の棘を突き刺す。
胸に生まれた痛みは、どこか官能的ですらあった。
視界が霞む。
それと同時に、ストン、と自分の胸の中に落ちてくる想い。
ああ。
共鳴という絆、可能性を捨て去った私では最初から彼女には勝てなかったのだ。
その願いを叶えるために全てを捨て、心を深い闇に染めた彼女に―――同じような力では対抗出来るわけがない。
闇を照らし出すのは、鮮やかな光。
光を捨て、心を復讐へと染め変えた闇の力では、より深い闇にただ飲み込まれてしまうだけ。
その目的を果たすために、最終的には自らの命がなくなると知りながら深い闇に身を堕とした彼女。
僅かながら、私の覚悟は彼女の覚悟よりも劣った、それこそが敗因だろう。
額に落とされた唇の感触、そして何かを囁く彼女の声。
何と言っていたのか理解するよりも早く、私の意識は深く暗い所へと落ちていった。
以上
乙です!
バッドエンド好きの私としてはすごく心に来る作品でした!
ガキさんを救うことができるメンバーはいるのだろうか…
乙!いやーシリアスに夢中になって読んじゃったよ
作品に入り込ませるのがウマイねー
長編なのに無駄な文章がないし、なによりも読みながらその場面が浮かんでくる
どんでん返しもあるし素晴らしいパチパチ
乙Death!
途中まで、誰の視点で書かれてるのかを明かさないのがかっこよかった
リンリンはナンターの中でも異質で面白いですね
別の組織に所属してるナンター同士の対決・・・
ダークネス以外の存在っていうのも興味を惹かれます
なんか世界が広がりそう・・・続きを期待に胸膨らませて待ってます!
>>696
リンリンの話が二つ続いたね
共鳴しあっている
あと言ってみれば「なんちゃって裏切り者」だったガキさんがここまで本気なのも
新たな流れはこの後の作品にも影響しそう
…っていうか…おもしろかったです!
刃千吏vsダークネスとかも面白そうだね
なんとなく誤解されてる人が多そうなので念のため
>>664はサボちゃん本人が書いたものじゃないですよ
サボちゃんをかたる?誰かが真似して書いたものです
なので>>672のニュースは根本的にまちがってるのですw
飴を追いかけたのは間違いないけどw
俺たち踊らされてたんだな
知ってるよwww
川o・‐・)φ■<計画通りに進行中っと
誰も分からない・・・のちのリゾスレ七不思議の1つである
ネタに乗るのも良いけどなんだかなぁ…
今回の件は我々「ダークネスみちのく」の作戦じゃ!!
こんこんが何か企んどるねw
何となく思いついた“死の棘”という単語からストーリーを想像してみた結果があんな感じでした
単発のつもりで書いたものなので続きは全く考えてません
またそのうちこういう話を投下するかもしれませんがその時もよろしくお願いします
注意書きをつけないだけで案外気付かれないもんですねw
まぁ気付いたけど何も言わなかった人もいるんでしょうけども
というわけで>>696こと…ないやいでした
あ!そうでしたか!言われてみれば・・・
>共鳴という得体の知れぬ感覚によって繋がれた、リゾナンターという仲間達。
このフレーズが新しいなと感心しておりました
共鳴を、絆や協力という正の感覚で捉えずに
得体の知れない感覚(パーワー)として捉えている所がかっこよかったです
僭越ながら気付いておりましたよ
里沙×リンリンは本編はもとより以前から予告めいた保全作も書かれたりされてましたしね
今回のは内緒にしときたいのかなと思っていました
サボリンさん作品も分かるようになってきましたし我ながら重症だと思います
一人称+いつもの○○じゃないやいという注意書きがないってだけで
案外別人を装えなくもないということでw
何気にリゾスレでは初めてでしたからね一人称の作品を投下したのは
連休は東京厚生があることだし何かまた保全代わりに練って投下しようと思います
存外こういうバッドエンドものも受け入れてもらえたことだし…また黒いのを一本くらいは
待ってます
どこら辺がわかるポイントなのか気になるw
ま、でも、たいていは「らしさ全開」で書いてるんでわかるんだろうなぁ
意地でも作風を変えて見せようってのは青約束sともう1作しかないですからw
ここの住人さん達みんな鋭いもんなぁ
自分も気付いてもらえてるんだろうかw
自分は誰が書いているとかなかなか判別できませんが・・・
ちょっと毛色の違うものを書いてみようとするってのはあるだろうね
獣化したジュンジュンの側で寝たいわ
いつも楽しみにしてますよ!
朝ペッタンコ
それとも巨体に潰されてもう二度と目覚めることのない眠りに入るのか
危険な賭けだなこれは
でも俺はやる!挑戦する!
川*’∀’)<リンリン必死やのぉ…
ヾ川;^A^)ノシ<ホーントアブナイダカラ!ゼターイキケン!
( ;・e・)<リンリン…試してみたんだ…
川;^A^)<……………ハイ
でも布団がずれて少し寒そうにしてるから、毛布をそっと掛けてあげた。
するとジュンジュンすぐに起きちゃって、まだ獣化してると思ってるのか、
いっぱいはしゃいでる・・・「もう解けてるよって」言うと、
真っ赤になって体を手で隠した。
自分はそんなジュンジュンを観察したい
朝からすまん・・・
ちょwリンリンww
ちょっと羨ましいwww
訪れたチャンスは神獣の恵みか・・・破滅の罠か・・・
『Dangerous bet』近日投下・・・しないしない
しないの?
じゃ修学旅行のネタにとっぴしてもよか?
素っ裸にもビックリだが・・・
パン毛がごっそり抜け落ちててダブルビックリしそう
ところで男の立場としてはそんなエロエロしい意味で言ってるわけでもないんだけど
やっぱり女性にとってはあまりいい気分ではないのかなこういうネタっていうのは
やれやれ的苦笑で流してもらえるならいいのですが
俺は好きw
このスレって女の人いるのかな
…自分がおかしいだけかもしれないがw
どうしてくれるこの気持ち!
明日パンダのぬいぐるみ買ってくるわ
友人に「そーゆーの好きやったっけ?」と突っ込まれた
空いているスペースには今度うさちゃんズを貼ろうと思う
これはリゾスレ病ですか?
間違いなくそう思われます
スレが100話くらいまでいったら「喫茶店はじめた」とか言い出すやつも出るなきっと
/::::::;ゝ-──- 、._/::::::ヽ
ヾ-"´ \::::::|
/ ヾノ
,,.r/ _ _ ヽ
,'::;'| /::::::ヽ /::::::ヽ |
l:::l l (::::::・ノ ▼ ヽ・:::::) l ガルルッ
|::ヽ` 、 、、、 (_人_) 、、、 /
}:::::::ヽ!`ー 、_ ヽノ /
{:::::::::::::::::::::::::::.ー―――''"´
';::::::::::::ト、::::::::::::::i^i::::::::::::/
`ー--' ヽ:::::::::::l l;;;;::::ノ
`ー-"
間取りが作られたころに「これは東京のどこどこにありそう」
とかいう話題が出たの思い出したw
東京の事を知らない地方人だからよくわからなかったのが悔しい
ジュンジュンもそうだけど愛佳が好きになった
そのうち捕まんぞw
どうでもいいっちゃどうでもいいが、俺はリゾナントは庶民派であって欲しい
同じこと思ったw
さらりと二千三百八十円とか言われてうええおええってなったよ
さすが東京は物価がちがうべさーって感じ入った
从*` ロ´)<接客レベルも超一流やけんね!
从*・ 。.・)<スタッフの可愛さは日本一なの
ノノ*^ー^)<味もネ申レベルですよ?
( ;客)<スイマセンもう文句は言いません…
川=;´┴`)<…………新垣さん…
( ・e・)<二億もらっても足りないぐらいなのだ
Σ川=;´┴`)<!!!
他にも頼んだORサラダも付く設定かもw
二千三百八十円のことなら>>554です
ないやいさんはセレブなのかもしれませんw
きっとセレブだw
1位小春(芸能活動による収入)
2位リンリン(刃千吏からの給与)
3位ガキさん(ダークネスからの活動費)
4位リーダー(喫茶店収入)
5位以下同率って感じです
↓
校正ミス
↓
気付かずに投下
↓
数日経った今話題に上る
↓
話題になったところでようやくミスに気付く←今ここ!
というわけでないやいはセレブじゃありません残念ながらw
東京の片隅でひっそりと庶民生活してます、セレブになることを夢見ながら(嘘
でも確かに2380円が10%引かれる前ってキレイな数字にならないですね
この東京の空の下のどこかに
やいやいさんがいるんですね・・・
リゾリゾの季節やね・・・
改めて長い物語になっていることを実感する
今度は冬季メニューを考えねばw
http://img.barks.jp/image/review/1000044500/red001_s_www_barks_jp.jpg
なんかダークな迫力があるね
リゾナンター全員でかからないと苦戦しそう
右大臣・・・後藤
http://img.barks.jp/image/review/1000044500/red006_s_www_barks_jp.jpg
左大臣・・・ミティ
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/6/toro6215.jpg
この3トップだけでも強力なのに
まだまだ手下もいるしダークネス強すぎwww
このスレも774(名無し)まできましたねー
http://toromoni.mine.nu/up/files/data/24/toro24137.jpg
普段は>>767のような美しい妖艶な姿だけど
戦闘の時は>>775のような魔物に変身って感じやねw
寄生獣に出てきた田宮良子っぽいw
その隣にいるはずの人もかつては安倍さんが敵わなかったことがあるくらい強力な敵だったとか
この強大な敵にリゾナンダーが挑むにはもっと能力を鍛えてパワーアップする必要があるね
319 :(15)928-931:2008/11/01(土) 03:00:56
再び、『コードネーム「pepper」-ガイノイドは父の夢を見るか?-』続き部分
投稿します。
どなたか宜しくお願い致します。
キリの良い所まで、と考えたら長くなってしまいました…。
突然明るい光に照らされる。
「照明弾!?」里沙が仮眠から跳ね起きる。
「始まったわね…」
既にアイたちは立ち上がり、臨戦体勢にあった。
「どうしてここが!? アタシ、つけられてた?」
「違うわ。私達は先の戦闘からずっと追跡されてた。…なぜか包囲するだけで攻撃はしてこなかったけど。」
「そうか…。秋元の意識が回復したんだわ…。たぶん。」
もっと意識を混乱させておけば良かった、と里沙は今更ながら後悔したが、脱出の際に、アイカと自分の
記憶を注意深く秋元の意識から抜き出してはいたものの、それ以上の操作は現実的には危険すぎた。
「ざっと200体…2個中隊ってとこちゃね」森の奥をうかがいながらレイナが言う。
「この前の倍ですね…。 ま、どうってことないですよ!」とコハル。
「そうはいかなそうよ…。 今回は大物が1体いるみたいね…。」アイの目は、照明弾に照らされた森の奥
に未だ残る暗闇を見つめていた。
森の奥で動き始めていたのは、秋元が開発した、警察庁特殊科学急襲部隊(SSAT)の大規模テロ制圧
用装甲ロボット、AK-B8であった。12門の大型電子砲から、超小型の地対地ホーミングミサイルまで
も備えたその姿は、ロボットと言うより「動く要塞」と呼ぶのがふさわしかった。
そのあまりにも強力な攻撃力は、防衛省自衛部隊1個大隊にも匹敵すると言われ、その必要性を疑問視
する声があがった程であり、実戦での出動は今回が初めてであった。
森の奥から光の尾を引いて、2つの光が放たれる。
「サユ!エリ! シールド!」アイが叫ぶ。
「ハイ!!」二人が同時に叫び、エネルギーシールドが周囲を包む。
2発の地対地ミサイルがシールドに炸裂する。一瞬昼間のように明るくなる森の中を、まるで空でも飛ぶ
かのようなスピードで突っ込んでいくアイ、レイナ、コハルの後姿が見えた。
ともいえる動きを見せる彼女等の動きに、AK-B40は全くついていけていない。しかし、前回とは違い、
要塞にも見えるAK-B8の電子砲が、常に援護射撃を行う。高精度の射撃をかわしながらの戦いは困難
を極め、1体のAK-B40を仕留めるにも、先回の数倍の時間を要していた。
突然、AK-B8からアイに向けて超小型ミサイルが発射された。難なくそれを避けて見せるアイだが、
ミサイルは空中でUターンし、さらにアイを襲う。高精度のホーミング(自動追尾)ミサイルである。
右へ、左へ、AK-B40の中をすり抜けるようにかわし続けるアイ。だが、そのミサイルとの距離は徐々に
せばまっていく。そしてミサイルがアイの眼前に迫り、里沙が「危ない!!」と声をあげた時、爆音と共に
吹き飛んだのは、身代わりとされたAK-B40の1体であった。しかし、超小型ミサイルにもかかわらず、
その爆発は大きく、アイは白い喉を見せ、弓なりにのけぞって宙を舞う。
くるりと身をひるがえして着地するアイの姿にはさしたるダメージは感じられず、爆発による衝撃回避の為
のジャンプとは思われたが、見ている里沙としては気が気ではなかった。
再びミサイルが放たれた。標的はコハル。一瞬目を見開き、ぎょっとした表情を見せたコハルは、なんと
一直線に里沙達のいる場所めがけて突っ走ってくる。「え? …え?」と皆が驚いていると、コハルは
「カメイさ~ん!! ミチシゲさ~ん!! 開けて!! シールド開けて!!」と叫ぶ。
意図を理解したエリとサユミが一瞬シールドを一部解除すると、コハルは頭から飛び込んでくる。
「閉めて!!閉めて!!」
「言われなくても!!」と二人がシールドを再び閉めた瞬間、ミサイルはシールドに激突し爆裂する。
シールドはビクともしないが、肝を冷やす瞬間である。
「コ~ハ~ル~! かんべんしてよね~!!」エリが叫ぶ。
「も~う、ドキドキしたの~!!」とサユミが続ける。「普通の人もいるんだからね!」
「ふ~う、助かっちゃった!」コハルは悪びれた様子もなく、再び飛び出していく。
鼻を鳴らし、「よう見とき!!」と叫んだレイナはミサイルを紙一重でかわすと、一直線にAK-B8の方
へ突っ込んでいく。立ち並ぶAK-B40の間をすり抜け、AK-B8の電子砲をかわしながら、巨大な
ロボット要塞にたどり着くと、自慢の右手の電磁カッターを閃かせ、装甲に思い切り叩きつける。
一瞬の閃光。しかし、装甲自体に裂け目は出来るものの、大きなダメージは見えない。
「ふ~ん…、じゃあ、これはどうね!?」と小さく叫ぶと、背後から追ってきたホーミングミサイルをギリ
ギリでかわし、逆にAKーB8に叩きつける。轟音と閃光が走り、爆炎がAK-B8を包む。
しかし、装甲に傷がつき、一時的に動きは止まるものの、山のような装甲ロボットの姿にはやはりさしたる
ダメージは伺えなかった。
その様子を見ながら、レイナが報告する。
「装甲は割と一般的なチタン系合金とセラミックの組み合わせっちゃねー。…でも厚い。よっぽどカッター
の出力上げんとどうもならんちゃね。」
「コハルもシャイニング・レボリューション使う隙がないです…。地道に1体1体片付けていかないとダメ
ですね。」
「救いは、秋元とやらが自分のプライドの為か、あくまでもロボット部隊だけで攻撃してきてる事ね…。
誰かを傷つける事を恐れずに戦う事が出来る…。」
しかし、夜明けが近づく頃、「pepper」の3人の戦士たちの姿には、疲労と共に、焦りの色が色濃く浮かん
でいた。AK-B40の部隊は一向に減る気配を見せず、逆にジワジワと包囲網を狭めてきている。
AK-B8も徐々に前進し、3人だけでなく、他のメンバーを包むシールドへの直接攻撃も断続的に仕掛け
始めていた。
このままではダメだ…、何とかしなくては…。そう感じながらも、何も出来ない自分に、里沙は唇を噛む。
つぶやく。その口調は、それまでの冷静なアイのものとは違っていた。
「…あーしが居なくなったら、次のリーダーはガキさんのはずやったのになあ…。」
「アイちゃん…? 何言ってるの? 変な事…。」
「…ふふ。そんなとこもそっくりやね。 …さて、と…」と笑みを浮かべ、アイが再び出撃しようとした時…。
いつのまにかアイの背後に立っていたのはレイナとコハル。
「アイちゃん、リーダーやめると? それならレイナが臨時リーダーやるっちゃ!」
「…え…?」
「コハル! あんた臨時サブリーダーに任命するったい! ついてき!」
「ハイ!」
あっけに取られる里沙とアイを尻目に、レイナとコハルはシールドから飛び出して行く。
シールドから飛び出たレイナは、いきなり超人的な跳躍を見せ、取り囲むロボット軍団のはるか上空へと
舞い上がった。そしてレイナは上空から一直線にロボット要塞、AK-B8へと向かって飛び込んでいく。
無数の電子砲が一斉にレイナを狙って動く。そして幾筋もの光線が夜空に糸を引き、リサの命を一発で
奪った光線が、何本もレイナを貫く。
「レイナ!!」アイが悲鳴にも似た声をあげた。
さらには十数発のホーミングミサイルがレイナをめがけて発射される。
しかしレイナは達人の「見切り」にも似た極少の体捌きでミサイルをかわし、身体を貫く光線にもかまわず、右手の電磁カッターを限界を超えて加熱させ、灼熱の光を放ちながら山の様な要塞に飛び込んで行った。
凄まじい閃光。そして炸裂音が響き、真っ黒に見える要塞に光の亀裂が広がる。
皆が息を飲む中、レイナの後を追うミサイルが、亀裂の中へ次々と吸い込まれるように飛び込んでゆく。
昼間のような光を放ち、AK-B8は内部から爆発、炎上する。爆風がエネルギーシールドをビリビリと
揺さぶる。
「レイナァァァ!!」「タナカさん…!!」爆音の中、皆の叫び声がかすれる。
そこにフワリと、まるで羽を持った天使の様に舞い降りたのはコハル。
レイナの消えた大地にスッと右手を当てると、
「タナカさん、お疲れです…。 …コハルもッ! …いきますッ!!」 小さく叫ぶと、
「シャイニング・レボリューションッ!!」
先日も見せた、コハルのみが可能とする攻撃である。しかし、今回は全身からの放電の量が先回の
数十倍にも見えた。
そしてさらに放電はジワジワと量を増し、しまいには巨大な球状の発光体となってAK-B40達を包み
込んでゆく。
「コハル…! ダメ!」崩壊の予感にアイが叫ぶ。
光の中心にあったコハルの影は徐々に輪郭を失い…、巨大な光球が四方に飛び散るように消え去った
時、コハルの姿は既にどこにもなかった。
そして、放電を浴びたAK-B40達は連鎖するかのように次々と爆発、炎上を繰り返し、周囲は火の海
に包まれていく。
壊滅。
実にたった2人の捨て身の攻撃により、警察庁特殊科学急襲部隊の誇るロボット軍団はそのおよそ8割
が壊滅的打撃を受け、残る2割も、炎上する炎に阻まれ思うように身動きが出来ないでいた。
「レイナ…! コハル…! なんて馬鹿な事を…!」アイは叫ぶ。
だが、里沙は気付いていた。ほんの数十秒前には、アイ自身が、自分を犠牲にする事により血路を開く
決意を固めていた事を。
そして、彼女達が持つ独自の「共鳴」作用によりそれを感じ取ったレイナ、そしてコハルがそれに先駆け
て飛び出していったのだと言う事を。
アイを、そして他のメンバー皆を救う為に。
「エリ!サユ!シールドを強化して!」アイが叫ぶ。
「このままあの炎の中を突っ切ります! レイナとコハルが作ってくれたチャンスを無駄に出来ない!」
残存するロボット軍団が炎に阻まれ身動きできない中、「pepper」達は炎の中を脱出に向けて進み始
めた。
地獄の業火のような炎の中、シールドを通しても火傷をしそうな熱気が伝わる。汗さえも瞬時に乾かして
しまう熱風の中、「pepper」達、そして里沙の頬の涙は乾く事はなかった。
「pepper」達が炎の中を脱出する数時間前の事…。
月に照らされた森の中…。レイナとコハルの姿があった。
「タナカさ~ん、話って何ですか?」森の奥から現れたコハルが問い掛ける。
「コハルに頼みがあるけん。」リサとアイカの墓標の前に座り込んでいたレイナが答える。
「コハル…。死んでくれると?」
「…ハイ!良いですよ!」屈託なくコハルが答えた。
「…いい返事しよるね…。こりゃよっぽどガキさんの教育が良かったっちゃね?」
「いいえ、タナカさんを信じてるだけですよ…。タナカさんだってよっぽどの事がなけりゃ死ねなんて言わない
でしょ? タナカさんが言うなら…、よっぽどの事なんだろうな、って。」
「いいよるね…。」レイナが苦笑しながら続ける。
「コハル、あんたの力はずば抜けとう。一人での戦闘力は文句なく一番たい。それはレイナも認めちょる。」
「だから、その分これからはリーダーを守って欲しいんよ。…いままでガキさんが皆にしてくれてた様に…。…そして、もしリーダーとコハル、どちらかが欠けるとしたら…、死ななければならないとしたら…。」
「…わかりました。」
「タナカさん…。なんかリーダーっぽいですね?」コハルが悪戯っぽく言う。
「実はレイナ、リーダーに向いとろう? リーダーはキツイ事も言えなきゃいかんとよ。 …アイちゃんは…
優し過ぎるっちゃ。メンバーに決して死ねとは言えん…。きっと自分が死ぬのを選びよる。それは本当は
リーダー失格たい。」
「…でも…。」とコハルが言う。「そんなリーダーだから…。」
「…そう、そんなリーダーだから…。」
「タナカさんもついて行くんですよね?」
「…ほんといいよるね…。」レイナは再び苦笑いするとクルリと背を向け、そのまま振り返りもせずにお疲れ、と手を振りながら森の奥に消えていく。
コハルはふとリサとアイカの墓標に目を向けると、しばらく微動だにせずにじっと見つめていた。
そんな二人の姿を、光り輝く月だけが見ていた。
代理投稿終了
326 :(15)928-931:2008/11/01(土) 03:08:28
とりあえず今回はここまでです。筆力の無さで自分の中の彼女等の物語がなかなか
上手く表現できません…。
また少しづつ投稿します。宜しくお願いします。
いえいえ里沙の涙の所とかすごくいい書き方していると思いますよ
自分を犠牲にして仲間たちを救おうとする姿・・・まさに人間ですね!
毎回感動しております 次の作品も読むのが楽しみです
作者さんと代理投稿された方、乙でした
レイナとコハルのやりとりは心に響いてきた
”優しすぎるアイはリーダー失格”の件はやられたと思った
次の更新も楽しみにしてます
段々人数が減っていくのが胸を締め付けますね・・・
最後に時系列を遡る手法は見事でした
あまりに見事でした
作者様と代理投稿様乙です
毎回どうなっていくのかハラハラしながら読んでます
代理の方乙です
作者さん乙です
毎回ガイノイドたちに感動させられてます
ペッパーたちは残り5人になってしまったねグスン
どうなるのか・・・続きが待ち遠しい
リゾナントを祈る
リゾナンカーで行きたいと思います
東北支部とか九州支部とか全国各地にもあるって聞いたぜ
噂じゃ台湾支部も発足したとかなんとか
ダークネス道産子
え?カンデナンカナイヨ
ジュマペ~ル
…ごめん嘘ついた
夢中で何が悪いってんだてやんでぇ
サボちゃんはやる時はやる子
…やる時は。
4連敗してたらダークネスになるとこだったな
うさちゃんズとか懐かしいなw
ダークネス戦線異状なし
ダークかつ救いも何もない話だから苦手な人は回避してくださいなー
奥義共鳴の術をもって助太刀いたす!
あの子以外には何もいらないの。
あの子こそが私の世界、私の全て。
私とあの子を引き離そうとする人間は―――この手で消し去ってあげる。
『消え失せよ一切全ての者達よ』
か弱いさゆみ、人を傷つける力を持たぬさゆみ。
母が初めてさゆみを私に見せてくれた時の、得も言われぬ感覚を今でもはっきりと覚えている。
母の腕の中ですやすやと眠る、小さな命を愛しいと思ったその時から、私の世界は広がったのだ。
『さえみはお姉ちゃんなんだから、さゆみの面倒をしっかり見なきゃ駄目よ』
そう言って微笑んだ母に、うんと頷いたあの日。
それから、ずっと、私とさゆみは何をするのも一緒、どこでも一緒だった。
少しだけ年の離れた私達は、成長すると共に嫌でも離れなければならなくなる。
小学校、中学校、進級する度に離れ離れになった。
それは、この世界においてはごく普通の、当たり前のこと。
だけど、私は―――その、当たり前が何よりも憎かった。
私とさゆみを引き離す“当たり前のルール”など、なくなってしまえばいい、そう思っていた。
だってそうでしょう?
さゆみには私しかいないの、さゆみの全ては私なの。
それなのに、さゆみと私を引き離すなんてありえない。
幼かった私は、憤りを感じながらそのルールを飲み込むしかなかった。
親の庇護なくしては生きていけないこの世界。
でも、ある日私は―――全てを消し去る力を手にした。
手に触れたものを跡形もなく完全に消し去ってしまう、この力。
成長しても尚、さゆみと私の関係がただの姉妹のそれではないと気付き、私達を引き離そうとした母。
―――そのまま、何も見えぬ振りをしていれば消されてしまうこともなかったのに。
母がいなくなったことに狼狽するさゆみを宥めるのは、誰よりも傍に居てさゆみのことを知り尽くした私には容易いことだった。
母は私達を捨てて出ていった、もう二度と会うことはないと言う言葉に泣き崩れるさゆみを抱き締めて。
私はさゆみにこう言った、大丈夫、私はさゆみを捨てたりしない、さゆみのことは私が守るから、と。
私の半身、守るべき存在。
さゆみを私から奪おうとするものは―――消えてしまえばいい。
母がいなくなってから、私達の世界には私達以外の存在は誰もいなくなった。
誰も立ち入れることなく、誰も近づかせることなく私達はこの世界に二人きり、二人ぼっち。
幸せだった。
誰にも邪魔されない、完全かつ美しいこの世界。
この力があれば、何だって叶うのだ。
母がいなくなり、経済的に苦しくなることも―――赤の他人を消し、お金を奪えば問題なかった。
母の件もあり、さゆみは学校に通うこともなく常に私の傍を離れない。
そう、それでいいの、さゆみ。
学校も、そこで知り合うであろう友も、淡い憧憬を抱くかもしれない異性も―――さゆみには必要ない。
さゆみの全ては私で、私さえ傍にいれば他に何も必要なんてないでしょう?
人を傷つける力を持たぬ代わりに、人の傷を癒す力を持って生まれたさゆみ。
私とは真逆の力を持つさゆみは、まさに私の半身。
さゆみと私は二人でいて、初めて完全な存在なのだ。
私達に必要の無い者は、私が消してあげる―――跡形すら残さず、完全に。
* * *
私達はその日、新しい服を買うために外へと出かけた。
さゆみももう18歳になる、そろそろ大人っぽい服を買ってあげるのもいいだろう。
美しく可憐に成長したさゆみを連れて街を歩くのは痛快だった。
道行く者達が振り返っては、さゆみの姿に心を奪われる。
美しいでしょう、私のさゆみは。
誰にも傷つけさせることなく、ずっと大切に守り育ててきた美しい華。
これからも、ずっと、私が守り育てていく美しく愛おしき存在。
本当は、部屋から一歩も出さずにずっと、閉じこめておきたい。
だけど、さゆみが一度外に出たいと言えば、私はそれを拒むことが出来ないのだ。
聞くことの出来ない願い以外のことは、全て叶えてあげる。
淡い色のワンピースも、その白い肌を引き立てるアクセサリーも買ってあげる。
さゆみが欲しがるものを買うだけのお金なんて、幾らだって手に入れられるのだから。
二人で仲良く買い物を済ませて、後は晩ご飯の材料を買って帰るだけだった。
買ってあげた服やバッグの詰まった紙袋を大切そうに抱えるさゆみの手を取り、ゆっくりと歩いていた刹那。
私とさゆみは、突然―――外界から隔離された。
さゆみと二人で出かけている時にこうした事態に遭遇したことはない。
震えるさゆみの肩を抱き寄せて、大丈夫、お姉ちゃんが絶対に守るからと宣言して。
私はこの空間を生み出した者が何処にいるのか、精神を集中して探る。
出来うるならば、さゆみと二人で居る時に戦いたくはなかった。
全てを消し去る禍々しい力を、さゆみの目の前では行使したくない。
だけど、そうも言ってはいられなかった。
この結界を生み出した者は、確実に能力者である私達を標的にしている。
さゆみを守れるのは私だけなのだ、私が守らなければ誰が守るというのか。
いつ来るか分からない攻撃に備えながら、私はさゆみから手を離し集中を開始する。
「―――それなりに楽しめそうだな」
溢れ出そうになる殺気を押し殺したかのような、低く鋭い声が聞こえた瞬間、私はさゆみを突き飛ばす。
刹那、さっきまでさゆみが立っていた地面に生まれた、球状の抉れ。
闇色の光弾が飛んできた方向へと、私はそのまま走り出す。
余りにも強く禍々しい力だった故か、全てを消し去るこの力には制限があった。
それは、その能力を行使する対象のどこかに必ず触れていなければ発動することが出来ないということ。
飛んでくる光弾をかいくぐりながら、私は徐々に相手に詰め寄る。
この指先が掠めるだけでいい、それだけで―――何処の誰が相手であろうとも、消し去ってみせる。
金髪の麗人は、かなりの手練れのようだった。
距離が詰められたことに動揺することなく、彼女は光弾を放ちながら鮮やかに後方に飛ぶ。
私の能力が遠隔操作出来ないものだと知っているかのように、距離を詰めたら詰めただけ離れていった。
だけど、唯一の救いは彼女は標的を私だけに絞っていることだ。
早く逃げて、と叫びたかったけれど、それを言うのは躊躇われる。
その言葉に、彼女の意識がさゆみへと向けられてしまったら、庇いきれない。
何としてでも、私がこの手で彼女を消し去らねば。
心臓がバクバクいって、苦しくて、目眩がするけれど…さゆみを守るのはこの私。
「いつまでも逃げて…芸のない」
「んー、相手のテリトリーでやり合うほど馬鹿じゃないだけなんだけどね。
まぁ…そろそろ飽きたし、一気に止めを刺しますか。
そこの可愛い女の子は、あなたを仕留めた後にでもじっくり料理するよ」
そう言って冷笑を浮かべた彼女は、一気に私の方に向かって飛び出してきた。
―――速い!
横転してその拳を避けたものの、地面に転がった私に向かって容赦なく彼女は攻撃をしかけてくる。
この体勢で避けきれる程、彼女の攻撃は甘くない。
ミシッと軋んで折れたのは、自分の肋骨。
腹部を中心に走る激痛に、思わず声が漏れた私を嘲笑うかのように、彼女は私に向かって手を翳す。
絶体絶命のピンチ、だけど、この手さえ彼女に触れればこっちの勝利。
激痛に意識が霞みながら、私は必死に彼女の方に手を伸ばす。
痛みによって私の意識は拡散しつつあり、通常のように集中しきれなかった。
思うように手に力を込めることが出来ないまま、私の手は彼女に届くことがないまま。
「じゃあね」
低い声と共に、彼女の手から闇色の光弾が放たれようとした刹那。
私が目にしたのは、さゆみが女性に向かって体当たりした姿だった。
2メートル程転がった彼女は、ゆっくりと起きあがるとさゆみに向かって鮮やかに微笑みかける。
その微笑みは、絶望的な結果を予感させるのには十分だった。
怪我を負い、満足に動けない私と攻撃能力を一切持たないさゆみ。
しかも、私を助けるためにとさゆみが体当たりをしたことによって―――彼女と私との間には距離が出来てしまった。
手を伸ばしても触れられぬ距離。
私は息を吐いてから、必死に四肢に力を込めて立ち上がる。
倒すことが出来ないなら、せめて、さゆみをどうにかして逃がさなければ。
立ち上がった私は、さゆみを庇うように前に立って彼女を睨み付けながら、さゆみに小さく逃げなさい、と囁く。
出来ないよ、と言ってくるさゆみに、さゆみだけでも何とか生き延びなさいと声をかけた私に、さゆみはしっかりとしがみついてきた。
お姉ちゃんがいないと生きていけないの、だから、お姉ちゃんも一緒じゃないと駄目なの。
甘美かつ私の心をこれ以上ない程に震わせるさゆみの想いに、私は今起こっている事態を忘れそうになる。
可愛いさゆみ、そうね、あなたは私がいないと生きていけないんだものね。
ならばいっそ―――彼女の凶弾によってその命を奪われてしまうくらいなら、私がさゆみを…。
私の中に生まれた仄暗い想いをかき消すかのように、閃光が彼女の胸を貫いた。
突然の事態に私とさゆみは、閃光が放たれてきた方向を振り返る。
そこに立っていたのは、モノトーンの服に身を包んだ数名の少女達。
さゆみの方を見つめながら、リーダーとおぼしき少女が口を開いた。
「助けを求めるあなたの声が聞こえたから、私達はここにいる。
共鳴の声を発し、その声を聞くことが出来るあなたは―――私達がずっと探していた、仲間。
私達と共に、戦いましょう、この世界に闇を呼び込み壊そうとしている組織、ダークネスを倒す戦士として」
そう言って微笑む彼女達。
私の体にしがみつきながら彼女達を見つめ返すさゆみの瞳が、今までとは違った光を宿す。
何かが変わっていくことを感じながら、私はただただ、神に祈るしかなかった。
神様、どうか、私からさゆみを奪わないでください、と。
* * *
祈りは届かず、私とさゆみの間には徐々に溝が生まれつつあった。
“共鳴”というものを感じ取れることが出来るさゆみ、それを感じ取れない私。
彼女達は優しかった。
さゆみにも、そして、共鳴の声を聞くことも発することも出来ない私にも。
その優しさが屈辱だった。
さゆみの全ては私でなければならないのに、彼女達は私の想いなど知ることなく、さゆみの心へと踏み込む。
外の世界をよく知らないまま成長したさゆみにとって、彼女達は姉である私以外に初めて出来た大切な存在。
奪わないで、さゆみから私を奪わないで。
そう言葉に発して言うことの出来ないまま、彼女達と共にダークネスという組織と戦う日々が続いた。
傷を癒す力を持ったさゆみは、この力が役立つようになって嬉しいと私に微笑む。
さゆみが変わっていく。
外の世界を知り、彼女達と関わっていくことで、徐々に今までのさゆみから違うさゆみへと。
さゆみと二人でいる時に、お願いだから余り深く彼女達とは関わらないでと懇願した。
今までのさゆみなら、私のお願いを必ず聞いてくれたのに。
皆大切な人達だから、それは出来ないよと言って私に背を向けた。
私の世界が壊れていく。
壊され奪われ、元の形を思い出すほどが困難な程に、変わっていった。
私とさゆみの間に生まれつつあった溝が、完全なものへと変わったのは、ある戦いがきっかけだった。
後方にさゆみを置いて、私と彼女達は敵に向かって突っ込んでいく。
それなりに何度も共に戦ってきたので、連携は完璧なものだった。
だが、敵は私達の攻撃を華麗にいなしながら、無防備なさゆみに向かって念動刃を放つ。
回避するのは困難な速度でさゆみに向かって飛んでいく念動刃に、私の心臓は張り裂けそうになった。
目を見開き、固まったままのさゆみに念動刃が触れそうになる刹那。
彼女達の一人が放った鎌鼬によって、念動刃は相殺された。
さゆみの方に向かって、鎌鼬を放った少女が微笑む。
そして、その微笑みにさゆみが微笑みを返したその瞬間―――私の中で何かが完全に崩壊した。
だけど、私の心は一段落つくどころか、吹き荒れる感情の嵐に翻弄されている。
絵里ありがとう、そう言って甘えるように鎌鼬を放った少女に抱きついたさゆみ。
さゆみを抱き締め返し、柔らかな微笑みを浮かべる少女を―――私は、憎いと心底思った。
二人の傍へとゆっくりと近づく私。
消さなければ、私とさゆみの間に入る人間は消し去ってしまわねばならない。
精神感応で私の心を読んだのか、彼女達のリーダーが二人に向かって叫び声を上げる。
その声よりも速く飛びかかった私の攻撃を避けながら、少女は私の方を何故という目で見つめてきた。
無理もない。
妹を守ってくれてありがとう、その言葉が飛んでくるはずが、飛んできたのは全てを消し去る力を手に纏った私の鋭い攻撃。
何も分からないなら教えてあげる。
「―――さゆみを守るのは私の役目。
私からさゆみを奪おうとする人間は、全て消し去るわ。
さゆみの世界は私で、さゆみの全ては私なのに…あなた達は、私達を引き裂こうとする。
だから、私はあなた達を消し去るわ、そしてさゆみと二人で前までのように仲良く暮らすの」
「…お姉ちゃん、止めて!
―――お姉ちゃん、駄目だよ、そんなことしたら。
さゆみは、自分の意思で皆と一緒に戦っているの、それなのに何でそんなことしようとするの?
さゆみの世界にはお姉ちゃんだけがいるわけじゃないし、さゆみの全てはお姉ちゃんだけじゃない!
なのに、何でお姉ちゃんはそうだって決めつけて、私の意思を無視するの?
そんなお姉ちゃんなんか大嫌い、どっか行っちゃえばいいんだ!」
彼女達と出会うまでの間、一体誰がさゆみの傍にいて守り続けてきたと思っているのか。
慈しみ、愛し、さゆみを傷つけようとする一切の者から庇護してきたのはこの私だというのに。
共鳴が、私とさゆみを引き離した。
彼女達が私とさゆみ二人だけで完結していた世界を壊してしまった。
元に戻したい、その想いを他の誰でもなくさゆみに否定されてしまった私は、そのままこの場から逃げ出した。
ひたすらに走りながら、追ってくる足音のないことに絶望しながら。
私の頬を伝う涙は、風に流れて消えていった。
* * *
どれだけ走っただろうか。
気がつけば辺りは深い闇に覆われ、空に輝くのは禍々しいオレンジ色の月。
涙はもう出てこなかった。
糸が切れたように、私の体は脳が出す指令をはね除けるようにその場に崩れ落ちる。
拒絶されたことで、私は今まで目を背けていた事実に嫌でも目を向けることになった。
さゆみの世界が、全てが私ではなかったのだ。
私にとっての世界が、何もかも一切全てがさゆみだけだった、それだけのことだった。
思い返せば、その兆候は彼女達と会う前からあった。
時折、私の言うことに瞳を曇らせるさゆみ。
でも、それでもさゆみは最終的には頷いてくれたから―――私は、さゆみも何だかんだ言いながら私と同じなのだと思っていた。
私しか庇護する者がいなくなったから、さゆみは仕方なく私に依存するしかなかっただけで。
実際は、彼女達のように他に頼れる者が出来てしまったら、さゆみはいとも簡単に私を拒絶した。
滑稽だった。
この想いを抱えていたのは私だけで、さゆみは全くそんなことはなかったというのに。
気付かないまま、ずっとそうなのだと思いこんで、必死になっていた。
全てを消し去るこの力を自らに使えるのならば、今すぐ使いたい。
私の全てだったさゆみに拒絶され、もう元に戻ることなどありえない今、生きていても仕方がなかった。
再び、目尻に熱いものがこみあげてくる感覚を感じながら、私は目を伏せる。
拒絶されても尚、私にはさゆみしかいない。
そのことが余りにも悲しすぎて、死にたくなった。
「―――自分を消すことが出来ないなら、それ以外の者を全て消すしかないんじゃないの?」
その声に、私は目を開けて声がした方に顔を向ける。
鮮やかに微笑むのは、私とさゆみが離れていくきっかけとなった戦いで、私に重傷を負わせた金髪の麗人だった。
あの時閃光に胸を貫かれて絶命したはずなのに、金髪の麗人は微笑みながら私の傍へと歩み寄る。
柑橘系の柔らかい香水の匂いが私の鼻を掠めた。
「可哀想に、大切だった者に拒絶されて居場所をなくしちゃったんだね。
でも、もう大丈夫―――おいで」
傷つき絶望した私に、その声は何処までも甘く優しく染みこんだ。
おずおずと手を伸ばした私の手を引き寄せ、そのまま彼女は私をしっかり抱き締める。
先程よりも強い香水の匂いにくらくらしながら、私は彼女の背に腕を回した。
あの子が全てだった自分の世界を変えて、新しい世界を切り開かなければキミはそのまま潰えてしまう。
憎いだろう、あの子が。
キミなりに大切に育ててきたというのに、他人にうつつを抜かし、今までのことなど何もなかったかのように
彼女達の手を取りキミを切り捨てたあの子が。
そんなこと、許していいわけがない―――さぁ、共に、彼女達を、あの子を消し去るために戦おう」
耳元で囁かれた言葉に頷いて、私は彼女の唇へと己のそれを寄せる。
甘く切ない口付けは―――誓い。
私の全てだったさゆみを消し、彼女達も消し、何もかも一切全てを消し去ってみせる。
何もかももう元に戻らないなら、全部消してしまえばいいのだ。
さようなら、さゆみ。
私の世界、私の全て、何もかもであったさゆみ、でももう、いいの。
闇に墜ちていく感覚が心地よかった。
多分、私は、元々こっち側の人間だったのだろう。
自分の想いのままに、生んでくれた母親を消し、さゆみに近づいてくる一切の存在を消し去ってきた私。
待ってて、さゆみ。
もうすぐそこに行くから―――あなたを消し去るために。
* * *
黒衣に身を包み、私は戦いの場へと赴く。
結界を展開し、目を伏せて。
どんな表情を見せてくれるのか、それを考えただけで背筋に甘い震えが走った。
結界をこじ開けて、彼女達が私の前へと姿を現す。
目を開ければ、そこには驚愕の表情を浮かべた少女達。
私は微笑みながら口を開いた。
「久し振りね―――さあ、始めましょう。
私はあなた達を消し去り、新しい世界を生み出すわ」
私の言葉に愕然としたまま、動こうとしない少女達を見つめながら私は婉然と微笑んだ。
さぁ、始めよう、私の世界を生まれ変わらせる戦いを。
―――消え失せよ、一切全ての者達よ。
以上
めっちゃダークな展開ですな
面白い!
さえみ・・・10人目のリゾナンターにしてダークネスの申し子のような人格・・・
いやめっちゃ面白かったです!
超大作乙!
いやー独特な世界観で斬新だったわ
これだけの長編をしっかりした内容で書いてるのが凄いね
凄い世界だね・・・
ラストが超クール
>私の言葉に愕然としたまま、動こうとしない少女達を見つめながら私は婉然と微笑んだ。
>さぁ、始めよう、私の世界を生まれ変わらせる戦いを。
さえみ視点から見たリゾナンターたち・・・今まで無かった構図かも・・・カッケー
ジェノサイドが始まる・・・
―――消え失せよ、一切全ての者達よ。
こう言う設定は恐ろしくカッコイイ
地上には破壊と殺戮が蔓延し、生命の灯も途絶えようとしていた。
『ちょっと待てや』 私は精一杯大きな声を上げた。
ちょっと裏返ってオカマ声になったけどかまへん、言う時は言ったる。
『勝手に終わらすなや、うちの世界を』
『お前は…、そうか共鳴する娘。達の最後の生き残りか。 見ての通り終わった、ジ・エンドだ。
この世界は私が創造し、私が消費し、私が退屈して、私が終わらせる。
言わば製造者責任というやつだな。
今度創る世界は、…二本足のヒトでなく別の種族に任せてみるか』
『あぁ、お前が神様って奴か。 ほんなら聞けや。
確かに世界なんて終わらすんは簡単や。 何と言っても世界なんて全て、あんたの、私の、
そして世界中の人間の脳味噌の中で出来てるんや。
あんたやわたしが今こうして存在して視ている世界の姿、それは世界の発している光や
光が反射した情報を目の網膜で感知して、その情報を脳で処理、再構築した上で「これは世界や」って
認識してるだけや』
『……』
あんたの視てる世界の夜明けが例え闇色をしてても、それは別に構わへん。
夜と朝の違いさえ解ってれば
色んな人が色んな違いを認め合って一緒に生きていけるなら』
『それでもあんたにとって、世界が絶望に満ちたもんなら、変えたらええ。
終わらせたらええんや、あんたの世界を。 でもあたしは世界に失望してない、絶望してない。
そやから守る、守ってみせる、あたしの世界を』
『愚かな、脆弱な人間がたった一人で何が出来るというのだ。』
『大したことは出来んなあ、確かに。 でもあんたの目を覚ましてやることは出来る。
あんたを悪い夢から引きずり出す事はできるやろ。 ええか、あんたが感じてる世界は
あんたそのもの。
あんたが世界が終わったと感じてるということは、あんた自身が終わってるという事や
見てみい、自分の体を。
綺麗な闇色がボケてきて、向こう側から光が透けてきたわ。
光に照らされたあたしの世界はちっぽけで、薄汚くてうんざりするわ。
でもあたしはあたしの世界が好きやから、明日も明後日もここで生きていく
心臓が止まって、脳が死んで、灰になって、土に還っても』
『グワァーーーッ
馬鹿な、こんな小娘に、こんなガキにーッ』
アラームで目が覚めた。
携帯のディスプレイを見たら、午前5時を越えた辺り。
カーテン越しに見える外は、昇り始めた日の光で仄かに明るい。
肌寒さを感じるのは、もう11月になったから。
この頃嫌な夢を見るのは、嫌なニュースをよく見るからだろうか。
食品は汚染され、子供は命を奪われ、老人は冷遇され、貧困は増大し
政局は混迷を極め、未来予測には明るさを感じず
私の見た夢が、未来のこの世界に起こる出来事なのか、それとも下向きな潜在意識の
具象化したものかは、はっきりしない。
唯一つだけいえるのは、世界は変えられる。
今「私」が存在している「世界」とは、「世界」を感じている「私」そのものだから。
「私」が変わることで、「世界」も変わっていく。
そのためにも、変わらなくては。
今日の私は昨日の私よりも強く、明日の私は今日の私よりも強く
もう一度夢の中に戻りたいという誘惑を振り切って、走りに行こう。
まだ辺りは暗いけれど、段々と日の光が差してくるだろう。
そこは薄汚くて、悪意に満ちたちっぽけな世界。
でも私はこの世界に絶望していない。
何たってまだ15歳の女の子やから。
以上です。
また最初に書きたい話と全然違ってしまったっというw
どちらも新機軸と呼べる斬新な切り口ながら即座に受け入れられるレベルの作品ですねえ
素晴らしい
このスレ(17話)は一つの新しい支流の分岐点になった感じですね
この世界がどこまで広がりを見せるのか・・・楽しみです
こういう作品も読めるようになったのは個人的に嬉しいです
そしてwikiも久々に更新きましたね!
まだまだ楽しめる余地が残されたこのスレはほんとすごい
「この手があったか!やられた!」って感じで興奮してます
ダークネス視点から書くのって思いつかなかった!
しかもしれが途中まではリゾナンター(正義)の側にいると言う・・・凄い!凄すぎるよこのアイデア
朝から背筋に甘い震えが走りました。
>>841
こっちも凄かった!正直クヤシイです!これ書いた人の発想に嫉妬!
ダークネス=神だったとは!
>あんたが世界が終わったと感じてるということは、あんた自身が終わってるという事や
>見てみい、自分の体を。
神にタメ口きいてる!!何とも頼もしい15歳!
なるほど、この世界が退屈なのではない。退屈だと感じるお前の心があるだけだ・・・と。
恐るべき15歳!
魑魅魍魎どもが降って来そうな闇色の空の下を
ジョギングする彼女の後姿が凄く禍々しくってカッコよかった!
ストーリーも練られて凝ってるし
レベルが上がりすぎて逆に自分が適当に書きにくい空気・・・
乙です
神が人間的なのが変にリアリティがあるね
それとは逆に愛佳?が神のごとく達観してるのが面白かった!
練り直すかなあ…
でも絶望的に届かないレベルだわー
いろんな文章を書く人がいるからこのスレは面白いんだと思う
二人の作品を楽しみにしてるよ!
お姉ちゃんって、圧倒的な強さってイメージだったから、
弱いお姉ちゃんがなんか新鮮でした
今までのお姉ちゃん像が打ち砕かれた感じw
とりあえずカッケー!!
>>841
みっつぃカッケー!!
私が変わることで世界も変わっていく、って所がスゲー好きです
自分の世界はどうなんだろうって思っちゃいました
予告通り?ダークな感じの話を投下させて貰いましたが、受け入れて貰えてよかったです
特別編第4夜を書いた時に、ふと、さえみで何か書けないかなーと思ったんですが、自分でも
思ってもいなかったような話が出来上がっていましたw
元々闇に近かったさえみが、共鳴によって大切な存在を奪われて壊れていく過程が伝わっていれば幸いです
視点を変えて見れば、共鳴ってある種残酷なものだよなと思わなければこんな話にはならなかったでしょう…
後一本ほど黒い話を書いてから特別編再開しようと思います、よろしくお願いしますー
乙です
特別編も楽しみにしてます
>>841
乙です
不思議な作風ですね
短編で鋭くって深い話って憧れます
また書いてください
「私」が変わることで、「世界」も変わっていく。
俺にも 変えられるのかな・・・
>>841
この二作品凄いね・・・
なんとなしに共鳴し合っているのも凄い
どちらも”世界”がキーワードだね
>>841を書いた人が意図的にリゾナントしてるのか
>>841の方は神を殺す話。若しくは宇宙の意思に抗う新しい神の話
なんてね・・・無理やりこじつけてみたりして
そんなん詳しく書かなくていいよw
下痢気味なのは大きくリゾナントしてます
~九州支部福岡支店~
そんなとこでリゾナントしなくてもw
空気読まずにダークネスのリーダーっぽい人晒します
この人は恋レボPV時のルックスが好き(宇宙人っぽいのじゃないほうね)
http://eshiyousei.s4.x-beat.com/upload/data/up0870.jpg
加工別バージョン
http://eshiyousei.s4.x-beat.com/upload/data/up0871.jpg
>>863
ダークネスのリーダーっぽい人キタ━川*’∀’)*・e・)*^ー^)*・ 。.・) ´ ヮ`)o´ゥ`リ=´┴`)´・_o・)*^A^)━!!!
いやぁ、月をバックに妖しく微笑むダークネスの首領、格好いいです。
どんどん絵が上手くなってますよね、今度は誰を書くのか今から楽しみです
かっけええええええええ
誰?
ダークネス様ってもっと邪悪な化け物っぽいイメージだったけど
こういうクールなハンサム系のダークネス様もいいね
実は美少年だったって感じで斬新w
作品全部見れてないから中澤がそういう役のパターンもあったの知らなかったw
れいなの生誕看板リゾナントVer.はまかせたよ~
从#~∀~#从<みなを守る為や
(● ゚ー ゚)<リゾナント・アンプリファイアの開放
全ての能力者が共鳴増幅
非能力者に審判がくだる
後、8日
カッコイイ!!
月明かりがいいね!
パソコンからだといつもそのAA違和感あるんだよね…半角だから
ダークネスって恐ろしいね
ってか逆に現メンがリゾナンターだからそこに人増やされても困るかもw
ガキさんもその一人になるのかな
設定は作品によって様々だけど
そうだ!肝心な人忘れてた
そこから始まってたんだ!
ウィキが更新されてて嬉しい!!って気づくの遅すぎか・・・
スペル間違ってたらスマソ
ドモドモ
あとは何気に夢爆弾もそうかもしれない
でも今度大阪へリゾナントしに行くからがんがる
昼にジュンジュンがパンダに言及
感想戴いた皆さん、ありがとうございました。
感動などと言われますと恥ずかしいですが、とても励みになります。
また、彼女等の為に涙して戴いた方、ありがとうございました。
私も彼女等の行動にはよくうるうるさせられながら書き起こしております・・・。
今後も週1位のペースで投稿できたらと思っています。いましばらく彼女等の
行く末を見守っていていて下さい。よろしくお願いします。
楽しみに待ってるよ!
「pepper」たちが好きになっちゃったからさ・・・俺・・・
彼女達の未来にどんな結末が待っていようと
行く末を見守って行きたいって・・・今は、そう思ってる・・・
リゾナントブルーの青いライトアップ見るだけで鳥肌が立つぜ
しかし未だにみっつぃは小春にタメ口きけてるのか判別しがたい
でもタメ口じゃない方が自分の中ではイメージに合うからそのままでいいけどw
紹介時にそれぞれのキャッチフレーズ(自分で勝手に考えた)が流れる私はリゾスレ病ですか?
サボたんの近くにいたなんてショック・・・
最近書いてないので顔向けできない
>>891
DVD出たら誰か絶対OPV作ると思うw
おろ、今日の夜公演に二人もリゾスレ住人がいたなんて
今日の夜公演めっちゃもりあがって楽しかったよねー
次は千葉、チケ確保出来たら大阪まで行って今年の現場は終わる予定w
な、何がショックなのwww
そんなこと言われたら最近まとめてないからこのスレに顔向けできないことに
自分も含めて作家が少なくとも4人リゾスレ住人がいたことになるw
(サボティ・>>892サン・ないやいサン・あと自分)
しかもないやいさんとは千葉でもリゾナント予定w
千葉行くのやめようかしらw
>>895
マターリ行ってくださいな
リーダー! 私は地方からの遠征なんです
・・・もちろん愛ちゃんを研究素材として差出しますw
このスレの最初の方で愛ちゃんを研究材料にしようとした人間がどうなったか知らないのかw
手遅れでないことを祈る
明日明後日くらいかな次スレは
体の一部だけ瞬間移動させられていたな・・・ガクッブルッ
>>891
宜しければオリジナルのキャッチフレーズを教えてください
共鳴しよう
会場で
今日はリゾナントも定休日だというのに、なぜかこんな時間に目が覚めた。
枕元の時計は、朝の5時。
「…うー…」
寝返りを打ってうつぶせになって、枕に顔を押しつけながらもう一度目を閉じる。
朝が苦手、というほどでもないけれど、寝る時間がある時くらいはゆっくり寝ていたい。
だいたい5時といえば、普段だってまだ寝ている時間だった。
どうしてこんな日に限ってこんな時間にと、ゴロゴロ寝返りを打ってみては恨めしく思う。
「…眠れんし」
しかも目覚めが良すぎる。
幸せな二度寝の時間は、今日のあーしにはやってこないみたいだ。
仕方なく、今度は仰向けになって天井を眺めてみる。
耳を澄ましてみても、居候の気配はない。
今朝も早くからロードワーク中なのだろう、まったく、頭が下がる。
外はおそらくまだ人通りもまばらで、足音もほとんど聞こえない。
少し起きる時間が違うだけでこんなにも空気が違うのかと思う。
「早起きは三文の、何とやらってゆーし」
なんか得するかもしれん。
あーしはベッドを抜け出してみることにした。
昼の青空も見慣れているし、夜の闇にも慣れてはいるけれど、
その中間を創るこの時間の空は、こんなにじっくりと見ることなんてあんまりなかった。
窓を開けて、そのままの格好でベランダに出てみる。
強すぎない優しい風が髪の毛とパジャマを揺らした。
少しだけ肌寒いけど、わずかに残っていたらしい眠気を洗い流すようで気持ちいい。
ベランダは2階だし、ここは高台にあるわけでもないから、
ここから外を覗いてみたって特別に景色がいいというわけでもない。
でも、いつも同じように生きてきたこの街の、ちょっと違う姿がそこにはあった。
どうでもいいといえばどうでもいいことだけど、
朝になって街の街灯が消える瞬間なんて気にもしたことがなかった。
だから、ぼんやり眺めていた明かりが一瞬で消えたことに驚いたし、なぜか感動もした。
いつもは開店準備中に店の前を通るおじさんが、いつもと逆の方向に歩いていく姿を見つけたり。
毎朝、この時間に散歩に行くんだなぁと、これも早起きしたから知ったことだ。
空の色がだんだん青くなってきた。
東の空はよりいっそう明るさを増してきた。
きっと、もうすぐ日の出の時間。
あーしはケータイを取り出して、なんとなく写メの準備をしていた。
「うっわ、めっちゃキレーやなぁ…」
広がるあったかい光。
カシャリと大きく響いたシャッター音。
生まれた村の夜明けも大好きだけど、今を過ごすこの街の夜明けも、捨てたもんじゃない。
あーしは手早く普段着に着替えて、厨房へと降りていった。
食器棚から取り出したのは二つのティーカップ。
一つは自分用に。もう一つは、その居候のために。
ダージリンの茶葉を蒸らして、準備はほぼ完了。
喫茶店の中にいい香りが広がってくる頃、パタパタとせわしない足音がドアの向こうから聞こえてきた。
「愛ちゃん!? 何でもう起きとーと!?」
案の定驚いているれいなの疑問には答えず、手招きをしてカウンターに座らせる。
パーカーを着たままのれいなの顔は、ランニング帰りで少し赤らんでいた。
「本日は、喫茶『リゾナント』の定休日ではありますが―――」
あーしはわざとらしく気取って言う。れいなは、唖然としたままだ。
「マスターの気まぐれで、臨時開店とします」
カウンター越しに、ティーカップを並べた。
「ただし、先着1名様限定です。
あなたが記念すべき、本日最初で最後のお客様です。さぁ、ご注文をどうぞ」
あーしは伝票を手にするフリをしながら、お客様へと問いかける。
れいなもそろそろこのお遊びに気づいてきたのだろう、満面の笑みでこたえてくれた。
「ミルクティーで!!!!」
掲げたティーカップ。その色は、もちろんレモン色。
昨日無駄に早起きしてしまった人が昨日の朝方に書いてみました
でも書き上がったときにはもう11時くらいだったので自重w
愛れなっぽさがいかんなく発揮されていて素敵です
このスレ中にまとめはきますかね
日本シリーズ次第ですかね
ヒ^^ューリフォーな空の描写にうっとりです
東京暮らしにも少し疲れてきた私ですけど
この作品を読んでもう少し頑張ってみようと思いました
この街の空の下のどこかにリゾナンターたちが居る限り・・・(重度のリゾスレ病)
あ、題名忘れてた
『臨時開店、先着1名様』
空の描写を見ていただけたようで何より
そこら辺は当スレの『女神~』を意識してるのでご参照あれ
新スレになる前に多少はやらないとなーとは思ってます
いや、毎日思ってはいるんだよ思っては
ほのぼのするお話でした!!
もちろん急かす意味で言ったわけでは決してないですので
このような素敵な作品を読ませてもらえる方が嬉しいですw
>>914
レス番を意識してのレスですか?
それともまさか本当に?
ついに本物のリゾナンターがこのスレに!?
自分は夜2階7列上手側でした
でも5連戦目だったので声枯れてるし体が動かなかったorz
二人がカウンター越しに笑い合う姿が浮かびます
やっぱりみんなの作品を読むと自分も書きたくなるなぁ
作品の多さにびっくり
おつかれさまです
自分も最初は驚きました
ようこそ!
自分の手からも火を出そうとしたとか言ってて噴いたw
ええリゾスレ病ですとも
リゾスレ病に気をつけてね
連休明けたらきれいに規制されていました
ダークテイスト話第5弾です
あくまでダーク“テイスト”なので 本格的なレベルの高いダークな作品を書かれる方が出てこられた今となっては正直あまり意味を為さないようになってきましたが;
どうやらこれでお終いにした方がよさそうですね
そういったわけで お暇の許す方は保全の代わりに空いている時間帯にでも上げてやってくださいませんでしょうか
他の方が上げられていたら放置で構いません
※注意
・単発の読み切りです
・やや残酷な描写を含みます
・そういったわけで不快に思われる方はスルーをお願い致します
自分の他には誰の姿もないオフィス街の中を、駅へと向かって一人歩きながら、光井愛佳は時計の針を眺めていた。
蒼黒のビル群に切り取られた夜空には、どこか濁ったような光を放つ満月が浮かんでいる。
――なんか不吉な色調(いろ)の月やな。
手首の時計から目を離し、その月を見上げながら胸のうちで呟いた愛佳は、思わず苦笑を浮かべる。
「不吉」などという曖昧な言葉は、自分にとってほとんど意味を持たないことを思い出したからだった。
愛佳にとって、「縁起がいい」「嫌な予感がする」などといった表現は本来無縁と言える。
そのような漠然とした表象ではなく、はっきりとした映像として“未来”が“視”えるのだから。
それでも、朝淹れたお茶に茶柱が立っているとなんだか嬉しいし、入院見舞いに鉢植えを持ってこられたらきっと嫌な気分になるだろう。
人間というのは不思議なものだ。
――そろそろや。
そんなことを考えながらも再び時計に目をやっていた愛佳は表情を引き締め、ぶら下げたカバンを握る手に力を込める。
――3、2、1・・・0!
声なき秒読みをしていた愛佳は、カウント0の一瞬前に身体を半回転させ、カバンを持った手を振り上げた。
布地を引き裂く音が静まりかえったオフィス街に響き、同時に愛佳は僅かな狼狽の気配を感じた。
だが、その気配は瞬時に遠ざかり掻き消える。
後には、愛佳の“身代わり”となったカバンとともに、置き土産が残されていた。
コンバットナイフ――
それは明らかに殺傷を目的とした形状の、禍々しく鋭利な置き土産だった。
カバンに垂直に突き刺さったナイフを少し眉をしかめて見遣った後、愛佳は虚空に向かって話しかけた。
「それにしても見事に迷いがありませんね。完全に愛佳のこと殺す気ぃで来はったんやな」
姿も返事もない相手に対し、愛佳は一人のんびりと話し続ける。
「当然それなりの自信と覚悟があってのことやろうけど・・・・・・ちょっと相手が悪かったんとちゃいます?」
愛佳の声のトーンが微かに低くなる。
声は、傍らの建設中のビルに反響して尾を引いた。
「“不可視化能力(インビジブライズ)”・・・でしょ、そちらさんの能力。自身の姿と、触れているものを見えへんようにできるってやつ」
「・・・・・・少しお前のことを見縊っていたのは確かのようだ」
暫時の沈黙の後、虚空から声が聞こえ、愛佳はやや斜め方向へと体を向けた。
「あ、そっちにいはったんですか。話しにくいからちょっと姿現しませんか?それとも怖いですか?」
「挑発には乗らないよ、光井愛佳。自らのアドバンテージを放棄するほどバカではない」
「そうですか。まあ愛佳みたいな若い美人さんを前にしたらそら顔は出せませんよね、オバちゃん」
「・・・たまたま初撃を回避できただけで随分威勢のいいことだな」
「姿隠して後ろから不意打ちするだけしか能のない人にこれ以上のかける言葉はあらへんと思いますけど」
「・・・やれやれ。随分と調子に乗らせてしまったようだ。そろそろその口閉じてもらった方がよさそうかな」
「そう言いながらえらい警戒してますね。・・・多分こう思ってはるんでしょう?」
僅かに口の端を持ち上げ、愛佳はシニカルな笑みを浮かべる。
「『こいつはどこまで“未来”が“視”えているのだろう』――って」
返事のない虚空に向かい、愛佳は一人話し続ける。
「予知能力者相手にするんは初めてですか?・・・まあ初めてでしょうね」
全く声のトーンを変えずに話していた愛佳は、突然身体を沈め、カバンの持ち手を強く握ったまま円転した。
「ぐっ・・・・・・」
鈍い衝突音と呻き声が静まりかえったオフィス街に一瞬響き、すぐに霧散した。
目に見えぬ相手が、再び慌てて距離を取る気配が伝わる。
「あんたは予知能力者を相手にするということの意味をなんにも分かってへん」
ゆっくり振り返りながらそう静かな声で言う愛佳の姿が、月の光に照らされて妖しげに揺らめく。
先ほどまでの皮肉な微笑も消え去り、静かな無表情を湛えたその姿は、満月夜のひんやりとした空気を纏ってぞっとするような光景を描き出していた。
「不可視化しようが気配を殺そうが無意味やってそろそろ気付いたらどうですか?結局それは“現在(いま)”でしかないんやから」
再び静寂が辺りを支配する。
「・・・予知能力者というやつはどいつもこいつも偉そうで反吐が出るな」
やがて、吐き捨てるような口調の声がその静寂を破った。
愛佳の声にやや感情が戻る。
だが、それも僅かの間のことだった。
「ふん、知り合いには違いないな。そいつは自分のことを“神”と称している。自分は未来をこの手に収めた存在だと。・・・どうやらお前もそのクチらしいが」
「・・・・・・神なんかとちゃう」
一瞬、辺りの空気が凍りつきそうなほど冷たい声が、無表情の愛佳から発せられた。
愛佳は静かに言葉を継ぐ。
「そのお知り合いとは話が合いそうにないですね。愛佳は自分を神やと思たことなんて一度もない」
「ならば何だ?普通の人間だとでも言う気か?常人に見えないものを“視”ることのできるお前が」
「・・・・・・普通やとは思いません。“神に選ばれた人間”・・・そうは言えるかもしれんけど」
「ははっ!そうきたか!笑わせてくれるな光井愛佳。神じゃないけど神に選ばれたお偉い人間サマってわけか」
「偉い?愛佳はそんなこと一言も言うてへん。神に選ばれたら偉いなんて誰が決めたんですか?」
「ご高説だな。偉いと決めるのは自分じゃない、周りが勝手に崇めるだけだ・・・というわけか」
「・・・・・・言うだけ無駄なんは分かってましたけど・・・会話が成立せえへんのは不快ですねやっぱり」
「さすが予知能力者様は何でもご存知だ。我々とはレベルが違う。なにしろ未来を改竄することさえできるんだからな」
「改竄?・・・未来は最初から一つや。“未来”を変えることはできても本当の意味で未来が変わるわけとちゃう」
「低レベルな我々には予知能力者様の高尚なお話は理解できそうもないな。分かるのは、神様ぶって悦に入っているお前らには反吐が出る・・・それだけだ」
やり取りのうちに、やや激しかけていた愛佳の声のトーンが再び温度を失う。
「・・・・・・取り消す気ぃはないですか?今の言葉」
「おや、神様のご機嫌を損ねてしまったようだ。天罰が怖いな」
冷笑するようなその声に愛佳は一瞬下を向いてため息を吐き、顔を上げると静かに言った。
「いくら待っても誰も来ませんよ」―――と。
「初撃を失敗した時点でお仲間さんにメールで連絡をとったことくらいお見通しです。無駄に喋って時間を稼いでることも。そやけど待ち人はここには来れません」
虚空に向かい、淡々と愛佳は“予言”を告げる。
「ふん・・・ハッタリを言っても無駄だ。なんとか未来を変えたくて必死なんだろうがな」
そう鼻で嗤う声の端には、言葉を発した本人も気付かないほどの微かな不安が滲んでいた。
数瞬の沈黙の後、愛佳は軽く息を吸い込み口を開く。
「さっきから『未来を改竄する』だの『未来を変える』だの言うてはりますけど、そもそも未来ってどういうもんやと思ってはるんですか?」
「はっ。そんな高尚かつ無駄で無意味なことなど考えたことはないな」
「未来は唯一無二の存在や。でも愛佳ら予知能力者の“視”る“未来”は無数の“可能性”のうちの1つにすぎひんのです」
「で?」
「簡略化して言いましょか。例えばサイコロを振ったとき、どの目が出るかによって“未来”は6つある。そやけど実際に出る目=未来は1つやいうことです」
「だから?」
「それを踏まえて、『1』の目が出て欲しいのに他の目が出るいう“未来”が“視”えたとしたら・・・どうします?」
「さあ?投げ方を変えるとか?あ、でも“未来は唯一無二の存在です”でございましたっけか」
「いえ。“未来”は変えられる。そやから言わはったとおり『1』の目が出る投げ方をすればええんです。その投げ方をひたすら探して」
「そのとても分かりやすいお話がどうかなさいましたのですか?」
「まだ分からへんのですか?自分でさっき言うてはりましたけどほんまに低レベルですね」
「・・・なんだと?」
「あんたは予知能力者を相手にするということの意味をなんにも分かってへん」
愛佳は静かに先ほどの言葉を繰り返した。
辺りを覆う闇ですら後退しそうなほどの、凄みのある不気味な空気をその身に纏って。
「愛佳は未来を変えられるわけやない。そやけど・・・・・・自分の思い通りの未来を選び取ることはできる」
言葉を失くした相手に対し、一転、嫣然たる笑みを浮かべて愛佳は告げる。
「すなわち・・・“予知能力(プリコグニション)”――“予め未来を知る能力”は、“予定能力(プリディシジョン)”――“予め未来を定める能力”と同義やいうことです」
「思い通り・・・だと?は・・・はは!バカな!お前が未来を創っているとでも言う気か?」
言葉とは裏腹に震え始めた声を置き去りに、愛佳は続ける。
「明日買い物に行く予定、これからご飯を食べに行く予定、来週末旅行に行く予定・・・・・・人は普通、自分のことしか“予定”はできませんよね?そやけど・・・・・・
予知能力者はその気になれば、他人の“予定”も組むことができる。ロマンティックな言い方してほしいんやったら、他人の運命を左右できる・・・ってとこですね」
抗い難い不可思議な説得力を持って、愛佳はそう厳かに宣言した。
「他人の運命を左右できる・・・だと?ふざけるな!お前ら予知能力者はどこまで尊大で傲慢になれば気が済む!何が『自分は神ではない』だ!」
「・・・神なんかとちゃうからそう言うてるだけです。・・・・・・神なんてクソくらえや」
「どこまでも不遜だな光井愛佳。自分は神を越えた存在だとでも言う気か。これ以上は聞くに堪えない」
「・・・心配せんでももうすぐ聞かんで済むようになりますよ。この話聞かせるときは“予定”を組み終わった後ですから」
「何・・・?」
「言うたでしょ?愛佳にはできるんですよ。例えばサイコロで『1』の目が出る未来を選び取ることも・・・・・・あんたがこの場で死ぬ未来を選び取ることも」
「ふざけ・・・」
「時間、場所・・・他にも色んな要素が組み合わさって今この状況がある。そして今もひたすら愛佳が選んだ未来に向かってる。・・・つまりあんたの“死”に」
「あ、ありえない!そんなこと・・・」
「主観的にはそやろな。そやけど人が死ぬんは当たり前のことや。生きてる限り死は常に隣り合わせなんやから。死が『ありえない』なんてことが逆にありえへん」
「お、お前が・・・お前らがそんなに偉いのか!お前らに何の権利があって・・・」
「時間です」
死はいつでも不意にやってくる。
建設中のビルから、一本の鉄材が落下した。
まるで、その下に“運悪く”立っていた者の命をただ奪うためだけの如く―――
“不可視化能力”が解けて現れた、鉄骨に貫かれた女の無残な姿を眺めながら、愛佳は吐き捨てるように呟く。
「こんな光景が見れてさぞかし喜んでるんやろな。それともこんな程度は見飽きたとでも言わはるんやろか」
もし存在するとすれば。
この世界を創るだけ創って放置し、気分のままに適当に管理しているだけの神。
自分やその他数人に気まぐれに特別な力を与え、それが為に苦しんでいても、その理由すら説明しない神。
残酷な過去を背負い、過酷な現在を懸命に生き、それでも明日を見据えていた《あの人》の命を思いつきで奪った神。
恐らくは自分の創った世界で自分の創った者たちがもがき苦しむのを、薄ら笑いを浮かべながら眺めているに違いない神。
この世の中のどんなものよりも穢らわしく、醜い存在――それが愛佳の中に在る“神”だった。
そんな神に行き当たりばったりに選ばれ、その暇つぶしのためだけに生きている自分。
「・・・・・・神なんかとちゃう」
その神と同列に扱われるなど冗談ではない。
様々な感情が渦巻く中、胸から鉄材が突き出た女に、愛佳は再び吐き捨てるようにそう呟いた。
そう、自分は神などではない。絶対に。
強いて言うならば・・・・・・
「あんたにとっての“死神”ではあったかもしれへんな」
女が遺したナイフをハンカチを使って引き抜きながらそう言うと、それを無造作に持ち主の脇に放り投げる。
そして踵を返し、静かに歩き出した。
不吉な色調(いろ)の月明かりに照らされた幽闇の中を―――
以上です
タイトルは『禍刻Ⅴ―Thanatos in the future―』です
「愛佳と神」の話(>>838-840)が書かれる前に上げられなかったのは正直致命的だったなと思います
「真似して書いて失敗した例」と受け取られること確実だと思いますが その辺りはあの作品が上がる前にもう書いてしまっていたので・・・
同じような発想が湧いたことは喜ばしいのですが それを描く能力の絶望的なまでの差に打ちのめされました
転載お疲れ様です
>>926
そんなこといわずに是非書き続けてください
ダークテイストの話好きです
これはまた全く別の色調を持った作品と感じました
なんでそんなに謙遜しまくるのかわからない
そんな書かれ方したら先に書いた人の方が恐縮するでしょ?
このスレに真似とかの概念はないし
どんな角度からどんな設定を使ったって受け入れられるんだよ
時々こうやってあの話を真似したことになるとかわざわざ書く人いるけど誰もそんなの気にしないから
つーか、メチャメチャ面白いんですけど!
かなり夢中になって読ませてもらいました
見えない敵との心理戦。引き込まれました。
>「『こいつはどこまで“未来”が“視”えているのだろう』――って」
この台詞から始まる会話劇にはメッチャ興奮しました。
予知能力者、カッコイイ!!!!最強だなって読み終えた今思ってます。
まさにリゾナント!!
乙です
愛佳カッケー!惚れた
乙です、次回作も楽しみにしています
940超えたしそろそろ次スレが見えてきたね、今スレは過去にないくらい多色なスレだった
僭越ながら
――――刃千吏最強の炎術師――――
リンリン
――――闇夜に響く野獣の咆哮――――
ジュンジュン
――――「未来」を覚悟する女――――
光井愛佳
――――雷神の申し子――――
久住小春
――――稀有なる共鳴能力――――
田中れいな
――――心優しき癒しの力――――
道重さゆみ
――――他人の痛みは私の痛み――――――
亀井絵里
――――苦悩の裏切り者――――
新垣里沙
――――全てを消失する光――――
高橋愛
以上私が勝手に考えたメンバー別キャッチフレーズでした
・・・我ながらセンス無いなorz
何か良いのあったらみんなで出しません?
完走までのネタにもなるし
おもしろかったです
最後なんていわないで
もっと書いてくださいよ
どれも個性が出ててイイ!
想像力がかきたてられるね
キャッチフレーズとはちょっと違うけど
メンバー別のそれは考えてるんで
自分のは次スレで発表することにする
かっこいいよ!
自分も考えて見ます!
>>945
楽しみです!
裏切り者って言う聞こえの悪い呼び方が逆にいいねぇ
今サボティにメールフォームからメールを送ってくださったそこのアナタ!
残念ながら機種依存文字が化けまくって悲しいことになってしまっています
(これはひとえにシステム側が悪い
お手数ですが直接メールでくださると助かりまっす
本当にそやってオープニングでながれたら鳥肌
テンプレ修正提案あればお願いします
のっけから残酷シリーズで震えて共鳴修学旅行で笑い
ガイノイドで泣かされ満月の夜にで感動させられた
これが100スレ以内に投下されたんだから凄いスレだよな
そんな魅力に溢れたこのスレが素敵
テンプレいつもご苦労様です
そしてありがとうございます
今度はあの作品ですね
色々理由はありそうですがともかく充実してました
理由なんてない
浮かび上がるままにキーを叩いただけさ
サボリン=インフィニティ
え?まとめのためにキー叩け?アーアーアーキコエナイ
そしてなぜか同時期に全く別の個性を持つ「ペッパー」氏と「ダイヤ」氏の参戦・・・
「修学旅行」シリーズのギャグも大炸裂、「満月の~」や「臨時開店~」の
ほのぼの路線もさらに光るなか、ないやいさんの大作も登場・・・
・・・こりゃすごいわ
爽やかな読後感のある作品たちが好みでした
スレ的にはやはり何と言っても「ダークテイスト」話の起こした共鳴が
面白い流れを作ってくれたかなぁと思ってます
自分は前スレで作品が少なかったのとテーマが出たことから書き始めたんだけど
間に合わなくてたまたまこのスレになってしまったw
だからどうとかじゃなく意図も意味もないぼーっとした疑問だけど
意外な作品同士が同じ作者さんによると後から知ったりしたとき特に
このスレでのないやいさんやサボリンさんのもそうだったし
その意味で基本名無しの投下ってのはこのスレのおもしろさを増してる要素な気がする
作品カミングアウトってあったよね
ドモドモ
秋の気配が作品を書かせるようです
2スレ続けて2作書くなんて我ながらシンジラレナーイ
>>965
そっかな?w
もう自分の中では自分らしさ全開で書いてたつもりなんだけどもw
>>966
本人はあとがきやWikiで勝手にカミングアウトしてるという始末
作者を隠してナンボって場合もあるし難しいですなw
この作品の人ですが…って前置きしないといけない作者さんは
なかなかしにくい部分もあるかもねぃ
乙です
いつも感謝!
でも、まとめるものが多いというのは嬉しい悲鳴だよね、きっと
正解
今スレが生きているうちにまとめきってやる
ってことで
・作品収録
・題名スレ(未更新分あるかな
・タグ
以外にサボティが忘れてそうなことがあれば言ってください
すみません>>948のときにメールした者です
お返事遅れまして申し訳ありません
内容が分からないくらい文字化けしていたのでしょうか
添付ファイルさえ行っていればまあ大したこと書いていないですのでよいのですが・・・
まとめ作業が煩雑にならないようにと思ったのですが却ってややこしいことになりまして恐縮です
是非とも今スレ中にまとめ終えて次のスレでも作者としてのご活躍を期待しています
まぁ添付ファイルの中身は無事っちゃ無事なんですが
なぜか添付ファイルが1個だけでした
(でも、本文に書き出されてる添付ファイルデータは2個になってる
じゃ、メールフォームからでけっこうなので、機種依存文字(ギリシャ数字)・半角カタカナ全て外して再度送っていただけますか?
このスレではしかし実に約30もの作品が上げられたんだね
ざっと数えてみたけど
1レスものや短歌を合わせると当然もっとえらい数
まとめ作業ほんとご苦労様です
なので眠くなる前に立てます
リゾナントブルーAnother Versからストーリーを想像するスレ 第18話
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1225892965/
>>424 「短歌」
>>426 「短歌」
>>430 『眠れない夜...Resonanted.Eri』を「亀井絵里」
>>444 「イラスト館」
>>447-450 pepper話を「MM。」 追記してきましたが長さも長さなので勝手ながらここから「2」とします
>>471 『心揺さぶる帰り道...Resonanted.Sayumi』を「道重さゆみ」
>>489 『哀しき共鳴の行方...Resonanted.Reina』を「田中れいな」
>>495-500 『茜色した空の下、届ける幸せ...Resonanted.Eri, Sayumi, Reina』を「6期」
>>509 『水守』イラストを「イラスト館」
>>514-516 次回予告風を「愛ガキ」
>>535 「短歌」
>>542-560 『蒼の共鳴特別編第5夜-その想い、緋色の如く-』を「蒼の共鳴」
>>593 川=゚┴゚) を「イラスト館」
>>605-611と>>622-629 『共鳴修学旅行』を「番外編」
>>640-645 『禍刻Ⅳ―Flame burn down all―』を「リンリン」
>>680 「短歌」
>>685-695 『死の棘~The thorn of Death~』を「ガキリン(新分類)」
>>781-786 pepper続き
>>816-830 『消え失せよ一切全ての者達よ』を「道重さゆみ」
>>838-840 光井と神の話を「光井愛佳」
>>863 ダークネスのリーダー?イラストを「イラスト館」
>>907-909 『臨時開店、先着1名様』を「愛れな」
>>927-933 『禍刻V―Thanatos in the future―』を「光井愛佳」
>>984
いつも迅速スレ立て乙です!
新スレ化作業今からしてくる
お二方とも乙です!
次スレも盛り上げていきましょう!
スレの存続を担うお二方に心底感謝です!
それにしても18話ってめっちゃすごくない?
だってリゾナンター2組分だよ?(意味不明)
成程、リゾナンターとガイノイドが1組ずつというわけですね(意味不明
>>680に題名つけて分類も「高橋愛」に変えました
新スレ化作業も何もできることはテンプレ収録しかなかった
第18話
>>1-16 テンプレ 完了!のAAまで入れてみた
>>977
テキストファイル再送ありがとうございました
もうあのメールフォームがどうしようもなくダメすぎる
次スレも今スレに負けないくらい盛り上がったらいいなー
もちろん元々それが中心なわけですが
>>989
結局送付がまとめ作業の最中になってしまってすみませんでした
機種依存文字・・・本スレでも今後気をつけます
今後どんな作品が生まれてくるのか楽しみにしつつ、これからも楽しませてもらいます
・・・リゾスレ住人諸君!!
だからどうした、こっちにはリゾナンターがいる!
彼女達がいる限り俺達は負けないぜ!!!
悲しいがこちらの戦いの記録は光の中へ埋めよう
リゾナントしたいけど難しそう・・・
oノハヽo
从*・ 。.・)=つ≡つ
(っ ≡つ=つ
./ ) ババババ
( / ̄∪
/ヽ /ヽ
':' ゙''" `':,
ミ *・ 。.・ ;,
:; . っ ,つ
`:; ,;' モコッ
`( /'"`∪
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。
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