(107)240 『春水』8 完結

──


「……ん、あれ?」

目を覚ますと、樹にもたれ掛かって寝てた

ここ、どこや
森の入り口?

「そうや! あいつらは!?」

慌てて立ち上がり、辺りを見回す
けど、誰もおらん

「逃げたんか? てか、春水はどうやってここまで来たんや?」

生きてんのは良いけど、訳が分からなすぎるわ

ふと、左手首の違和感に気付いた
見ると、黄色い腕時計が付いていた

「春水の腕時計……傀儡師に取られて壊されたはずやのに」

ショックで記憶が曖昧になっとるんか
無事ならそれで良いんやけど

「……帰ろ」

いつまでもこんな所に居ってもしゃーないし

帰っても良い事は無いねんけどな

パタン

足を踏み出すと、足に何かが当たった
足元を見ると、タブレット端末があった

「これ、傀儡師のちゃうん? 忘れてったんか?」

タブレットを拾って操作する

「ロック掛かってへん……えらい無用心やな」

ホーム画面には、基本アプリのアイコンしか無い
通話履歴を見てもなんも無くて、さっきのテレビ電話の相手はわからん
撮影した写真や動画が無いか見てみる

「あるやん。撮影日は……去年の11月?」

再生してみる
監視カメラみたいに、高い場所から撮られたらしい映像が流れる

「屋内? 人が米粒みたいに小ちゃいで。えらい広い建物なんやな」

小ちゃい人影をよく見ると、10人の女の子が群がる大人達を蹴散らしているのがわかった
しかも、素手以外にも超能力らしい方法で戦ってる

「あ、ズームした」

再生中の動画がズームされて、戦闘の様子が見やすくなった

超能力者の女の子が10人も集まって戦うって、どんな状況やねん
それに10人の内の1人は、女の子って言うより女性って感じやな

「あれ、コッチの娘……」

先陣を切る女の子の能力、春水と同じ?
いや、ちょっと違うっぽい
春水の能力は油らしいけど、この娘は水みたいや

てか

「めっちゃ使いこなしてるやん! ほんで、めっちゃ強い!」

群がる大人達を次々と倒していく

あんなに力強く動かせるなんて、今の春水やったら全然出来へん
それに能力だけやのうて、素手でも強い

「メッチャ凄いで、この娘!」

ウチが嫌ってた超能力
出来るなら使いたく無い超能力

でも
この娘は
自身の能力を
自信を持って使ってるみたい

会いたい

名前も知らない能力者の娘によって
黒ずんでた春水の心が
洗い流される

この娘に会いたい
だって

強くて
カッコ良くて
自信を持ってて

そして
何よりも


「メッチャ可愛い!」


投稿日時:2015/09/11(金) 01:05:08.45

作者コメント
これにて『春水』完結です。
タイトルにひねりがなくって、ごめんね。

話題に上がった合流編ですが、野中さんと牧野さんの能力が固まらないので未定です。
12期編の未来は、皆様の手の中にあります。




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