(117)12  Rs『ピョコピョコ ウルトラ』4 side Ishida

 
ヒュウッ

「ううっ寒!」

ただでさえ空気が冷たいのに
風が吹いたら余計に冷たく感じるじゃん!

コート・帽子・マフラー・手袋のフル装備でも寒い

「まだ1月かぁ。もうすぐ3学期……あーあ、冬休みがもっと長かったら良いのに」

そしたら、学校に行かなくて済むのに
クラスメイトにも会わなくて済むのに

ずっと“ステップ”にだけ行きたいな

ビュウ!

「うわっ! 家から遠いのだけ我慢しなきゃいけないんだけど、この寒さは耐えられない……あ」

アレ、使っちゃう?

辺りを見回す
誰も居ない

「よし!」

──加速──アクセレレーション

ビュン!

身体の動きを早めるウチの、超能力
100mなら7秒で走れる

やっぱり早い!
これならすぐ着くね!
だけど
冷たい風が顔に直撃

「肌が痛ぁーいっ!」

──

「ハァ、ハァ、ハァ……つ、着いた……」

顔が凍ったみたいに動かせない
っていうか痛い
早く中へ入って暖まろう

ガチャ

「おはようございます! 石田、到着しました!」
「石田さん。あなた、能力を使って来ましたね?」
「えっ!?」

ヤバい!
バレた!

「いつも言っていますが、外で能力を使う事がいかに──」

声は平静を保っているみたいだけど
眉間には皺が寄り、眉毛はつり上がり、目元や口元や鼻はピクピクと動いてる

こ、恐い……

この先生の話って長いんだよね
ルールを破ったウチが悪いんだけど

「まあまあ、外は寒いですから」

えーと、どちら様?

先生の後ろから、知らない女の人が現れた
ハーフみたいに綺麗な人

「早くここへ来たくて、つい使ってしまったのでしょう。ね?」
「あ……ハイ」

先生の肩に手を添えてなだめつつ、ウチに笑顔を向ける女の人

この人、ウチが能力者って解ってる?

「はじめまして。今日、ここを見学させてもらう“ヨシ”です」

見学って言った
やっぱり能力者って解ってるんだ

大きな眼がウチを見てる

笑顔なんだけど、なんか違う
ウチに、期待してる?
なんで?

「あの……石田、亜佑美です」
「よろしく」

ヨシさんは、ウチに手を差し出した

握手、で良いんだよね?

「よろしくお願いします……」

ヨシさんの手まで、自分の手を伸ばす

綺麗な手
モデルさんみたい

ウチも大人になったら、こんな人になれるのかな
大人に、なれるのかな
ちゃんと生きていけるのかな

伸ばしたウチの手が、ヨシさんの手に触れた

(愛ちゃん!!!!)
(高橋さん!!!!)

今の!

思わず手を離す

手が触れた瞬間、声が聴こえた
耳からじゃない
頭の中から聴こえた

ウチは、この声を聴いた事がある
でもその時は胸の中、真ん中で鳴り響く様に

「去年、君は不思議な体験をしたね?」

ヨシさんを見ると、さっきまでの笑顔じゃなかった
これはきっと

「やっと見つけたよ。君は“共鳴”する者だ」

欲しいモノが手に入った、喜びの笑顔 


更新日時:2016/03/15(火) 21:42:27.32







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