(127)187 『Chelsy』15

私はジョニーにウルと呼ばれた薬のことについて尋ねた
「薬で人を完全に支配する、か」
彼の視線は上向きになり、考えている表情となる
「そう、秘密にしてほしいの。ただ飲むだけで思いのままに操る薬ができているらしいの。恐ろしいでしょ?」
「そりゃそうさ。そんな薬を間違えてチェルシーが飲んでしまったら、僕以外の男の手に落ちてしまうんだから」
この男は真面目に考えているのか?それともふざけているのかわからないときが時たま存在する

「例えば『歩け』という命令をずっと出し続けるのは簡単だろう」
「そうなの?」
「知り合いのドクターから聞いた話だと単純な指令を送り続けるのは脳のある部分に断続的に刺激を与えるだけでいいんだ
もちろん徐々に耐性ができるとはいえ、同じ刺激を与えるだけだから不可能ではない
薬なんて、所詮は化学物質の集合体だからね。定期的に内服させることさえできれば同じ指令を維持はできるはずだ」
「じゃあ、ウルがあってもおかしくはないの?」
「僕はあくまでも機械工学の専門家だからね。医務室のドクターにでも聞けばいいんじゃないかな?」
「・・・」

この相談をどこまで拡げていいものか、そこがネックなのだ。下手に広げてしまい、裏切り者の耳に入ってしまってはいけない
班長もそのことを十分理解したからこそ、『人を選べ』と指示したのだろう
ジョニーなら大丈夫だが、ドクターはどうであろうか?班長は秘書にも秘密にしているようだし・・・

「ただ、他人を支配に置く、というのは動くな、という命令でない限り、複数の行動を指示するわけだからね
そうなると脳に一定の刺激を与え続ける、というわけにもいかないだろうしね、ウルが薬である以上は難しいかもね」
「でも、存在するらしいの。それは確かなのよ」
一刻も早く、その薬の出所を抑えなくてはならない。危険な薬なのだから
「班長にもお願いして他の仕事をキャンセルさせてもらったわ。ウルを追わなくちゃ」
「手掛かりはあるのかい?」
「ないわ。でも、私は足で情報を集めるしかないの。気持ちが止まらない!の」

ジョニーは困った顔で頭を手で掻き始めた
「シルベチカ事件にも首をつっこんでいるんだろ?無茶しすぎじゃないか?」
「大丈夫よ、自分の限界は自分でわかっているつもりよ。それに私ができることは私しかできないんだから」
「One and only?」   (Chelsy


投稿日時:2016/08/07(日) 21:49:11.83



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