(132)275 『Chelsy』37

「おいおい、ノックぐらいしてくれよ。プライベートな空間なんだぜ?」
急にドアが開いたのでジョニーは文句をいいたげな低い声で不満を呟いた
「ごめんなさい、ジョニー」
そこで机の上に足をのせ、膝をくみ、資料を読んでいたジョニーは振り返り、そのまま椅子から転落した
「ちぇ、チェルシー?ど、どうしたっていうんだ?休みを取るといっていたじゃないか?
 ・・・ははあ、さては、この僕が恋しくなって」
「ねえ、あの密売人の事務所って調べられるかしら?」
「え?ウルを売っていたあの密売人のことかな?」

頭を掻き、白衣を羽織りながらジョニーは立ち上がり、パソコンの前に座った
「電磁データを辿れば不可能ではないね。逮捕されるより前の期間で動かないでいる場所が事務所だろうかな」
「すぐに調べてほしいの」
「・・・事務所はここだよ」
パソコン画面を覗き込むとそこはここから遠くはない場所だった
「もう調べたの?さすがジョニー、仕事が早いのね」
「褒めてくれてうれしいよ、と言いたいところだけどそうじゃない。班長から指示されていたんだ」

「ありがとう。班長に捜索の許可をもらってくるわ」
「ああ、今は日本の警察が捜査の最中であろうから、僕らは入れないよ」
「ああ、なんてことなの・・・」
頭を抱えて、落ち着きなく歩き出した私をみて、ジョニーがグラスを手に取って差し出した
「ほら、オレンジジュースだ。飲んで落ち着くといい」
「・・・落ち着いたわ」
ソファーに腰をおろし、程よい酸味が喉を刺激する
「冗談でも言おうか?班長が健康診断で肝臓が悪いと言われたんだ」
「・・・」
「冗談を訊く余裕もないみたいだね。チェルシー?どうしてそんなに焦っているんだい?」
一瞬言おうか言うまいか悩んだが、ジョニーなら、と思い打ち明けた
シルベチカと偶然会ったこと、薬をのまんと闘っていたこと、薬を飲んだとたんに崩れたこと、そして・・・
「その薬は『ウル』かもしれない」
力強く私はジョニーに伝えた。  (Chelsy


 投稿日時:2016/10/12(水) 00:33:31.62





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