(134)421 次回予告・リゾナンター'14 『やめてよ! シンドバッド』

リゾナンターが活動を続けられるのは支援者がいるからだ
民間の支援者からは活動資金の援助を受け、公的な支援者から公的制度や法的な面での便宜を受ける
その代償としてリゾナンターのような能力者でなければ解決できない紛争や事件に関わることがある
その頃、新垣里沙はあやしげなイベントを主宰する団体の調査を依頼されていた
ここ数か月の間に急速に発展を遂げた「さとうみ」というその団体は、家族単位で航海に出て、自然に触れ絆を深めるという目的で設立された
目的自体は何の問題も無いが、航海に出た家族の何割かは、その数週間後に資産を売却した現金と共に消息を絶っているという
その経緯から航海の間に【催眠】による暗示を受けているのではないかという資料を読み込んでいる里沙を見た衣梨奈は独断専行してしまう

慎重に調査を進めようとしていた里沙を出し抜いて、航海に潜入したのだ
里沙の役に立って里沙に認めてもらいたいという純粋な願いから
「さとうみ」の所有するシンドバッド号が出航する直前に里沙にメールした衣梨奈は船内の異変に気付く
フェリーを改造したシンドバッド号の家族ごとに割り振られた船室の一つで人が争っている音がする
潜入が発覚することも恐れずその船室に乗り込むと、そこでは家族が木材や鉄パイプを手に争っていた
止めようとすると衣梨奈に襲い掛かってくるが、里沙仕込みの体術の前には一般人の攻撃など敵ではない
傷を負わせないよう制圧し、武器を取り上げ、シーツ等を使って拘束した頃を見計らって船内電話のコール音が鳴った

電話の声は衣梨奈が今いる船室から少し離れた船室番号を告げ、三十秒後にその船室で殺し合いが始まると言った
電話が切られると、衣梨奈は船内を疾駆する
そうやっていくつもの船室で争いを止めているうちに、衣梨奈の体力は確実に削り取られていった
手足には軽い擦り傷もできている
最後に告げられた場所、船内のホールに着いた時、そこには一人の男が立っていた
それは盗み見た里沙の資料に載っていた「さとうみ」の主催者だった

この男を抑えれば…
そう思った衣梨奈が足を踏み出そうとした時、壁一面にスライドが映写されていった
それはどれも凄惨な怪我人の映像
眼球が飛び出た者、腕がちぎれかかっている者、足があらぬ方向に曲がってしまった者
様々な怪我人に共通しているのは誰もが制服を着た学生だということだった

「これもみんなあんたのやったことか~」

怒りに震える衣梨奈の言葉を主催者はにこやかに否定した

「何を言ってるんだ生田衣梨奈。これは全部お前が【精神破壊】でしでかしたことだろう」

凄惨な傷を負った犠牲者はみんな衣梨奈のかつての同級生で、その元凶は衣梨奈であるという事実を告げた
新垣里沙によって迷彩を施されて、直視せずに済んでいた過去を突きつけられて惑乱する衣梨奈に主催者は追い打ちをかけた
少数の支配層に対して憎悪に近い不満を抱く国家に衣梨奈を放り込めば、国一つを転覆することさえできるかもしれない
この度の航海は衣梨奈の【精神破壊】にそれだけの価値があるというバイヤーに対しての見本市だという言葉に怒りを燃やした衣梨奈が目にしたのは…

衣梨奈が奮闘して武装解除した各船室にいた家族の姿だった
拘束を解かれ角材や鉄パイプを手にした彼らの目には生気が無かった
衣梨奈を襲う理不尽な暴力
先刻までの奮闘で体力を消耗している衣梨奈はそれでも反撃しようとするが、自分の能力が原因で凄惨な傷を負った同級生達の映像が目に入ると手が止まってしまう

主催者の【催眠】によって操られた人たちの攻撃をなんとか躱し続けていたが、やがてホールの中央で廻りを囲まれてしまう
浅手ではあるものの傷ついていく衣梨奈

「やめて、やめてよ、やめてよ」

13歳の少女の素顔を晒す衣梨奈に主催者の容赦ない言葉が浴びせられる

「反撃しろ、生田衣梨奈。あのおぞましいまでに美しい狂気の紫を見せてくれ」

次回、モーニング戦隊リゾナンター’14『やめてよ! シンドバッド』

傷ついた少女の魂を、今闇が覆おうとしている


投稿日時:2016/11/09(水) 06:09:04.63







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