(122)315 『Chelsy』 2
「班長、チェルです。入りますよ」
班長の部屋は正直汚い。机の上はごちゃごちゃで、本棚には書物がぎっしりだが読んだ形跡がない
このネット時代になり、書類の多くはデータ媒体になったにも関わらずだ。恐ろしい
そして何より恐ろしいのは
「待っていたよ、チェルシー。どうだ?この桜のシフォン君も食べないか?」
こんな汚い部屋で(嫌いではないものの)上司とオヤツを食べさせられることだ
「いいえ、結構です。ダイエット中ですので」
「そうか、それは残念だ。おすすめするのはまたのきかいにしよう」
その後、報告書の内容について幾つか問われ、特に機関が重視している要点にまとめ再提出することとなった。
中には「このはらぺこあおむしにみえる謎の生き物はなんだ?」とわたしのスワスワに対して失礼な質問もあった
確かに私の絵は巧くはないが、けっして下手ではない、にもかかわらずだ。あのクラゲちゃんを芋虫だなんて失礼だ。
ふと気になったので班長に質問をしてみた
「私が捕らえたダークネスの構成員はどうしたんでしょうか?」
「・・・残念なことだが、自白剤を使うことも躊躇わなかったのだが何も得られなかったよ
もちろん、チェルシー、あれだけの構成を捕らえたのは大手柄だった
しかし、構成員たちは全員、『イイィィー!!』しか言えないように喉を改造されていた」
「!!」
「そして、我々の質問に答えようとすると、どうなったか?こうだ、バアアーーーーン!!」
両手を胸の前から外へと花が開くように広げた
「ひどいことをするもんだ。喉に埋め込まれた機械が爆発して、物言えぬようにしてしまったよ」
「・・・」
アメリカの本部を置く私達の機関は能力者の把握と平和の維持に努め、各国に私のようにエージェントが派遣される
そんな私達の機関がもう何年になるのであろうか、常に最大の脅威としてマークし続けている組織がある
規模は不明だが、数万とも言われ、戦闘技術、情報技術、科学技術も飛びぬけていることしかわからない
中東での革命運動を裏で操っているだの、幾つもの能力者で構成された組織を破壊しただの情報もある
その名はダークネス、私の両親を奪った憎き敵
更新日時:2016/06/04(土) 18:09:43