(106)53『秋氷』1

なんやねん!
ウチが何したんや!?

「待てや女ァ!」
「言われて待つ奴なんかおらんわ!」
「んだとガキがァ!」

夕方
森の中
か弱い女の子がおっさん2人に追いかけられとる

か弱い女の子はウチの事な

なんて
ゆっくり説明しとる暇なんかあらへん!

「見ず知らずのおっさんに、追いかけられて喜ぶ趣味なんかないで!」
「こっちもやりたくてやってるんやないわ!」
「とにかく待てや!」
「嫌やーっ!」

怪しい!
怪しすぎる!
誰やねん!
このおっさん2人!?
捕まったら何されるかわかったもんやない!

学校が終わって家に帰って、写真でも撮ろうかと一番近い山に来たら
森のくまさんやなくて、2人のおっさんが追いかけて来るとか

ホンマありえんわ!

「こんガキ……いい加減にしーや!」

ベキベキベキッ!

突然、樹が折れてウチの前に倒れて来た

「うわっ!」

慌てて立ち止まる

あかん……道が塞がれてもうた
いや、それよりも

「さあ、大人しくせんかい!」

なんで後ろにおるおっさんがウチの前にある樹を倒せるん?

もしかして……
このおっさんら、超能力者なん?

「自分、さっきの写真どうする気や?」
「写真? 空とか森とかしか撮ってへんわ!」
「嘘言うな!」

ポケットに入ってるデジカメを掴む

変なモン撮ったつもりはないのに……

ようわからんけど
あのおっさんらに都合の悪いモンでも写っとるんやろか
やったら、このデジカメ渡したら終わり?

「どっちでも構へん。疑わしきは罰せよ、やろ」
「せやな」

あかん!
この会話はあかん!
ウチ絶対に殺されるわ!
もう逃げるしかないやんか!

倒れた樹に向かって走り、思いっきりジャンプする
飛び越せなくても、上に乗れば──

「逃がさんで」

──念動力──サイコキネシス

「うわっ!」

倒れてた樹が転がり足元がふらつく

「駄目押しや!」

ベキベキベキッ!

別の樹が倒れて来る

あかん
もう死んだわ
ここで何もかも終わりや

もっと生きたかった
もっと色んな事したかった
もっと……

まだ
死にたくない

助けて
誰か──!


更新日時:2015/06/25(木) 21:34:02.62





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