(106)962『春水』4

今度は、春水の身体が勝手に動き出す
右手が左手首に延びる

「え、え? どういうこっちゃ? てか、コレなんか関係あるん?」
「あるはずさ」

外したのは、静電気防止のリストバンド
それに
春水が愛用してる黄色の腕時計

「両方預かる」

春水の意思と関係なく、傀儡師にリストバンドと腕時計を渡してしまう
まるで操り人形みたいに

「なるほど……〝傀儡師〟っちゅうんは、そう言う事やったんか。てか、それ返せや!」
「力尽くで取り替えすんだな。さあ来い。遠慮はいらないぞ」
「言われんでも!」

──油念動力──オイルキネシス

動きを止めてた油が、傀儡師に向かって地面を進んで行く

「コントロールが不安定なのか? ただ地面を這うだけじゃないか」
「やかましいわ! まだ能力者デビューしたてや!」

浮け!
飛べ!
当たれ!
なんでもええから起これ!

「うおっ!?」

いきなり春水の足元が動いて倒れそうになる

「なんや!?」

いつの間にか、春水の足元に油が集まって来とった
倒れそうになったんは、これが動いたから?

「何をやっている、能力のスタミナ切れか?……思っていたのと違うな」
「やかましいわ! 勝手に期待しといて勝手に落胆するなっちゅうねん!」

後ろに下がり、傀儡師から離れる
すると、油が春水を追う様に流れて来た

「不安定やけど、なんとなくわかってきたで。この能力の使い方が!」

多分、春水に近い油が動かしやすいんやろ

油と言ったら滑る
滑ると言うたら

「これしかないやろ!」

──油念動力──オイルキネシス

足元の油に集中してコントロールする
常に地面に油がある様にすれば

「春水は誰よりも自由に動けるんやで!」

交互に両脚で地面の油を蹴って進む

「得意のフィギュアスケートか。急に人が変わったな」

傀儡師の周りを移動しながら加速する
充分なスピードが出た所で

「これでも喰らい!」

回転しながらジャンプ
そして、足元から油を撒き散らす

「うわ!」

撒き散らされた油は辺りに飛び、もちろん傀儡師にも掛かった

「……これだけか?」
「必殺! オイル・ダブルトゥループや!」

ドヤァ!

「……これを頼む」
「オッケー」

傀儡師が変身女子(略)にタブレットを渡す
そして、壊れた一斗缶を拾った

「オラァッ!」

ガコーンッ!


投稿日時:2015/08/22(土) 20:49:20.81



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