(126)66『Chelsy』10

電磁銃をよくわからない機械につなぎながら、ジョニーはデータを収集する
パソコンの画面には3Dで表示された電磁銃と放たれた砲弾の目標位置とのズレが示される

「う~ん、まだ少しずれがあるね。ミキ、本当にオート標準機能使っているの?」
私は頷くのだが、実は嘘をついてる。オート標準機能はついているのだが、私は使わない

「おかしいね、誤差は5cmにも満たないから、満足といえば満足なんだけど、100%当たるようにしたいからね
う~ん、ミキ、最近手を怪我しなかった?肘を痛めてない?太ってない?」
・・・おい、最後のはLadyに訊く時はもっと婉曲しなさい。アメリカ人は女性にやさしいはずでしょ

そう思いながらも軸がずれているのか?だとか回路の補正機能の云々唸っている

私がオート標準を使わないのは、もし電磁銃を使わないとき、

本物の拳銃を打つときに正確に的を射抜けられるようにするため
常にこの電磁銃を持ち歩くわけにもいかないのだから、そのための準備、というわけだ


私は唸っているジョニーの横で、筋トレマシーンで鍛えている
筋肉を鍛える時に必要なのは自分が筋肉を意識すること
負荷をかけることで私の筋肉細胞が悲鳴をあげ、強くなる
歩く、それだけの行為でもどの筋肉をどのように使うのか考えるだけで効果が違うと雑誌に書いてあった
・・・いや、ダイエットの雑誌であり、筋トレ専門誌ではないんだが、そう思われないな、この表現では
と、とにかく今日の私はいつもよりたくさん食べてしまったから、内なるカロリーを消費せねば!!
イ、イメージだ!先程食べた炭水化物が、燃えて消費される姿を
『ぼく、おこめちん。チェルシーの血となり肉となるために生まれてきたんだ
だからこうやって消えていくのは怖くないんだ、だってそれをチェルシーが望んでいるんだから』
・・・なんだ、今の妄想??ゆるキャラみたいな像が浮かんでしまった。おこめチン、こんにちは、そしてさようなら


そう考えていると、ノックの音がした。顔を向けると、他部署のエンジニアの姿があった
ジョニーが作業を止め、書類を受け取りに立ち上がった
私の姿を見つけると、「またチェルと二人きりの訓練か」と言っているのが聞こえた
私は聴こえないふりを貫くこととした。言葉尻に棘を感じたのだ

「現場もいいが実績のあるものは会議に参加するのも大切な仕事だ。次は会議にきてくれよな」

はいはい、といってジョニーは適当に流している。いつもどおりの流れだ。

ジョニーは現場が好きなタイプで指導、教育、管理には向いていない

新しい武器を作れるが、「頑張って慣れてね」といい私に渡すだけで彼は一回も指導してくれたことはない

それにマイペースで自分の好きなことしかしない。そんな彼は組織の上には向いていない。  (Chelsy


投稿日時:2016/07/20(水) 00:56:43.79



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