(127)167 『開発!?新・・・メニュー???』1

あ…、暑い……なんなんだこの暑さは!!
流石8月。夏休みの特権、2度寝すらもままならん!!!

寝る事に関しては、もはや○び太君並に上級者なウチだけど、
エアコンを付けていても快適に惰眠を貪っていられない気温にまで上昇してきて、
こりゃぁ流石に起きにゃいけんじゃろうなーとゴロゴロしていたら
香音ちゃんから「里保ちゃんいい加減起きて!起きたらリゾナント集合!」とLINEが来た。

なんかあったのかな?あ。フクちゃんからも来てる。
えりぽんは……既読、スルー。うん知ってた。

寝ぼけた頭じゃ緊急事態なのか何なのか分からないので、取敢えず電話をかけることにした。
コール1回ですぐ出てくれるあたり流石香音ちゃんだと、感心してしまう。
「おはよ。里保ちゃん、起きたー?」
「おはー、どしたんじゃー。こんな朝早くに」
「早いって、もう10時だよ!とにかく、リゾナントで皆待ってるからさ、早く来て!」

お、おう…有無を言わさず早く来いと言われるなんて、
敵襲じゃなさそうだけど、よっぽどの事じゃなと思いつつモソモソと布団から這いだした。
この暑さで流石に汗をかいてしまったので全部脱ぐ。脱ぎ脱ぎ。ぽいっ。ぽいっ。
取敢えず下着と、動きやすいようにいつものトレーニングウェアとTシャツを身に付ける。
え?脱いだ服?ソファーの上だけど……あっ、後で片付けるにきまっとるじゃろ!

たまにどっか行ってしまう時もあるけどウチの気のせいじゃろ。


……これは深く考えてはいかん、鞘師家の7不思議の一つじゃけぇの。

ご飯はっと。あー、食べてる場合じゃないね。急がんと。
遅くなったら『里保ちゃん……?早く来てって言ったよね?』なんて微笑みながら
フクちゃんと香音ちゃんに挟まれて静かに怒られるとか、もうウチにとっては恐怖でしかない。
土下座ものである。いつも通りな2人の間になら幾らでも挟まりたいけど、怒らせると怖いんじゃ。
え?えりぽん?『里保ー、汚れるとよー』って言いながら爆笑して見てるだけじゃよ?
ちょっとは助けてくれても良いじゃろにと思うけど、どんな時でもいつも通り。
それがえりぽんの優しさらしい。


出来るだけ日陰の道を選びながら喫茶リゾナントに着くと、
くどぅーの横に最近良く来るようになった羽賀ちゃんがひっついていた。

「あー、鞘師さん。おはようございまーす」
「おっはようございまっす!!」
おっ、くどぅーが店の前に打ち水をしてくれてたお陰なのか、店の周りがちょっとだけ涼しい。
今日も元気一杯な羽賀ちゃんはニコニコしてて、何故か2人共シャボン玉で遊んでいる。
「どぅー、羽賀ちゃん、おはよう。他の皆は?」

「あー、まだ中に居ますけど。………鞘師さん、残しちゃ駄目ですからね。
もうハル、本当、ガチで入んないんで」
「朱音ももう今は無理です……工藤さんと1時間位休まないと」
うん、2人ともさっきからとても苦しそうだ。お腹だけがフードファイター並に出ている。
羽賀ちゃんに休むだけなら、一人でも良いんじゃないかと突っ込むのも無粋だから止めておこう。

そんな2人を見ても尚、お店に入らなくてはならないとは。
お腹は確かに空いているし、普段なら何も考えずに入ってるけど、
今日に限っては何故だか嫌な予感しかしない。

喫茶リゾナントは、道重さんから最年長のはるなんへとお店自体の経営を、
店舗オーナーとしての責任はウチ等のリーダーのフクちゃんが兼任という形で引き継いだ所だ。

しかし、ある日営業を始めようとした矢先にダークネスの陰謀なのか、
先輩達から受け継いできたメニューに怪しげな製法があるだとかの因縁を付けられ、
果ては営業するのに必要な食品衛生責任者が1人も居なくなったとかで、
結局の所は食品衛生法だかにこのままでは引っかかる、と保健所からの指導を受けてしまった。

はるなんとフクちゃん、ほぼ調理を受け持ってた亜佑美ちゃんの3人が年齢的にも妥当だという事で、
空き時間で食品衛生管理者講習とか調理師試験を受けてくると、確かここ2週間程は臨時休業の最中だ。
ウチらにとっては敵襲の時以外はいつも通りの夏休みなので、なんとものんびりしたものだ。
常連さん達の中にはいつものうええおええ丼が食べられなくて禁断症状が出てる人も居るらしいが、
そればっかりは営業再開まで我慢して頂こう。

「それにしても。一体、何が行われてるんじゃ……ん?」
店の入り口に貼っていた【都合により臨時休業とさせて頂きます】の張り紙が
【お待たせしました!明後日OPEN予定です!】にいつの間にか張り替えられている。


ごくり…と息を飲んで扉を開けた。
入店を告げる涼やかなベルの音と流石に店内には効いているクーラーを吹き飛ばすかのように
甘ったるい香りと出汁と醤油の香りが一気に襲いかかって来る。


「んっ!?なんなんだこれは!!」
次いで目に飛び込んでくるのは所狭しとテーブルに積み上げられた皿。皿。皿。

「もう飽きたー!ねー!ねー!あゆみー!チョコトッピングしても良いのこれーーー!?」
「まーちゃんの好きにして-!」

「ま…真莉愛、残しません……ううっ。でも苦しいです」
「あんま無理せんでよかよー。もうすぐ里保が来るけんね」
皿の向こうでえりぽんと優樹ちゃん、真莉愛ちゃんのウェイトレス3人衆が何かを一心不乱に食べている。
奥から聞こえる亜佑美ちゃんの声からして、残りの皆はどうやら厨房に居るようだ。

「おはよう。皆して何食べとるんじゃ?」
「あーー!やっさんやっと来たー!遅ーーーい!」
「おはよー里保、ってもうお昼だけどね。ちょっと、それでここまで来たと?……Tシャツ後ろ前っちゃよ」
「あー!ホントだ!やっさんうけるー」
「え?うおっ、マジか!……通りで今日は首が暑苦しいと思った」
「嗚呼…!!鞘師さんっ!おはようございまりあ……」
えりぽんに言われなきゃ多分丸一日気付かんかった後ろ前なTシャツを「ちょっとだけよ~」と言ったせいで
3人に爆笑されつつ腕だけ抜いて、くるりと回して今更ながら正しく着直す。

「よーし、生田さん!やっさん来たし、暫く食べなくて良いですよね?まさも休憩!シャボン玉やってくるー!」
「真莉愛達、リゾナント営業再開に向けて試作品を食べてるんです。…美味しいんですけど量に挫けちゃいまりあ」
「あー、優樹ちゃん、外行くなら帽子被って行きーよ!
そー、試作品。聖達が折角作ってくれたんだし残しちゃいけんからね~。はい里保、あーん」

ぱく。

こっ……これは!!


投稿日時:2016/08/07(日) 11:35:13.42

作者コメント
『登場!新メニュー!』 http://www45.atwiki.jp/papayaga0226/pages/101.html からリゾナント



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