(128)160 『Chelsy』22

信じられなかった、人が宙に浮いていること、ではない
そこにいたのが、少女といっても差し支えのないくらいの女であったからだ
それも笑っているのだ。どこかのテーマパークにでも連れられているかのような自然な笑み
(な、なんだこの女は??)
しかし、男の手は背中に隠して置いた拳銃に伸びていた。少女は宙に固定されているかのように浮いている
(今なら、的が大きい。簡単なことだ。しかし、殺さない。私の部下を殺したのだから、死よりも恐ろしい世界を見せる
 それこそ、ウルを使い、奴隷、いや、それ以下のものとして・・・)

男がそう考えていると、少女は表情を崩すことなく語り掛けてきた
「無駄ですよ。諦めたほうがいいです。それにあなたには用があります」
「(それは都合がいい。俺もお前に用がある。)」
「WAO それは奇遇ですね」
(ふざけるな、何が奇遇、とでもいうのか?)
湧き上がる憎しみに蓋を抑え男は少しずつ引き金に指を添えていく。

「『ウル』という薬を知ってますね。それを詳しく知りたいので教えてください」
(なにが教えてください、だ。それは我々の秘密の薬ではないか、教えられるか!)
男はそう喉元まで言葉が出かけたが、冷静な部分が働いてくれたのだろう、口は閉じたままであった。
より近づいてきたところで足を撃ち、自由を奪う。相手は男を殺さないといっている
それは男にとって大きすぎる情報であった?しかし、その前に一つだけ確認しなくてはならないことがあった
「(おまえはダークネスか?)」
もし、相手がダークネスであるならば・・・恐ろしい敵を相手に廻したことになる
それは避けなくてはならない。ダークネスの場合は命があるだけでも有り難いと思わなくてはならないだろう

幸いなことに、少女は答えた、「違う」と。その声には憎しみを超えた何かを男は感じたが、すぐにそれは忘れ去られてしまった。
男に再び怒りの炎が燃え上がった。許さん、許さん、許さん・・・
「(それならば降りてきてもらえないか?伝えるにも遠くては声が届かない)」
「Oh! それもそうね」
少女はゆっくりと降りてきた。一歩、また一歩と近づいてくる
そして、男は憎しみの弾丸を放った。少女の足を狙って。   (Chelsy 


投稿日時:2016/08/21(日) 20:21:59.32





ページの先頭へ