(128)200 Rs『ピョコピョコ ウルトラ』8 side R-Niigaki

音がした方を見ると、お客さんが立ち上がっていた
その足元には、割れたグラスと溢れた氷水があった

「あなた大丈夫? 怪我はない?」

お客さんに近付いて声を掛ける

「ゴ、ゴ、ゴ……ゴメンナサイ!」
「えっ、ちょっと!?」

カランコロン!

お客さんが慌てて店を出て行った

「グラス1つくらい気にしなくて良いのにね」
「真面目そうな感じやったし、悪いと思ったんやろうね。めっちゃ良い子やーん」

さゆに田中っち、冷静って言うか他人事?

「あっ! アイツお金払ってないっすよ!」

ドアへ向かう工藤

「ハルが追いかけ
「工藤」

動きが止まった
と思ったら、
引きつった表情であたしを見る工藤

なによ、そんなに怖がる事ないでしょうが
……ん?

「あ、あの……」
「……お客さんを〝アイツ〟なんて言わないの」
「あ、ハイ……すみませ

カランコロン!

「すみません! グラスの弁償代と注文した分のお金です! 本当にすみませんでしたぁっ!」

カランコロン!

さっきのお客さんが戻って来たと思ったら、あっという間に出て行った
テーブルには、千円札が2枚

「思い出して戻って来たんだ。若いのに偉いね」
「やっぱ良い子やーん。今時じゃ珍しいっちゃん」

だから、冷静って言うか他人事って言うかオバサンっぽいよ

「このままで良いんすか!?」

工藤が2人に迫る

「謝罪もあったしお金も置いてったし、一応はOKなんじゃない」
「あえて言うなら、申し訳なさで2度と店には来んやろうね、あの娘」
「大事な客ですよね!? だったらこのままじゃダメじゃないっすか!? そうっすよ! ハル今から追いかけます!」

なぜか必死に説得しようとする工藤

もしかして……

ドアまで続く床を見る

……まさか

「工藤」
「ハイっ!」

賭けてみるか 

テーブルのお金を手に取り、工藤に差し出す

「え?」
「これをお客さんに返して、店に連れて戻って来て」
「あの……」

今のあたしに出来る事は、これ位だと思う
あんたがしたい事、しっかりとやりなさい

「出来る?」
「……はい!」

カランコロン! 


投稿日時:2016/08/23(火) 22:41:44.60







ページの先頭へ