(129)112 『Chelsy』25

シャワーでまとわりついた汗と砂を洗い流すときは至福の時、命も心も洗われる
加えて今日は、だいっきらいな赤い血まで見てしまった。最悪だ
諜報員という仕事は「情報収集」が主に任される。それ故に血を流す、流させるのは御法度に近い
もちろんそういった場に対応できるように訓練は積むが、戦わずに済むならそのほうがお互いにいいはず
武力行使で生まれるものはない、その考え方には大賛成
・・・だからこそ、さっきの戦いは悲しかった
私は手加減して命まで盗ろうとしなかったが、不運なことに神のもとへ運ばれてしまったかもしれない

命は尊い、命に善はない 誰にも命を奪われる権利などない

★★★★★★

「チェルシー、はい、ジュース」
ジョニーからオレンジジュースを受け取る、オレンジの酸味が喉奥の不快感を洗い流してくれる
「いいお知らせを二つと悪い知らせが一つ。どっちから聞く?」
・・・気分は最悪だから、悪いことを先に訊きたい、と伝えた

「自白剤を使ったけれども、チェルシーが聴きだしたこと以上は得られなかったよ
 スーツにつけたレコーダーで僕も聴いていたから間違いはない」
そう・・・それは、思っているよりは悪くない話だわ
「いい話を。君が戦った組織は日本の『暴力団』と中国マフィアだったけれども、死者はなし。
 重傷者はいるけれども、命には別条ないって。今、ここのドクターが治療しているよ」
そう・・・それは、思った以上にいい話だわ

「それからね、班長がね、痩せたよ」
それがいい話?
「いいや、チェルシーが戦いに巻き込まれたときいて怖くなったみたいだ。あとで謝ったほうがいいよ、『ごめんなさいね』って」
それがいい話?
「No. 驚かないでくれ シルベチカが見つかったんだ」   (Chelsy


投稿日時:2016/09/03(土) 21:17:16.57





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