(130)102 Rs『ピョコピョコ ウルトラ』10 side Iikubo

「能力……者、ってなんの事ですか?」

知られちゃいけないの!
バレたら私……
もう、あの店に行けない!

「私には、なんの話か、わかりません……」
「ごまかすなよ。ハルにはわかってんだよ」

……わかってる?
まさか

「もしかして、あなたも?」
「そう、能力者さ!」

目の前に居る小さな女の子は、テストで100点を採った事を自慢する様に言い切った

こんな小さい子が、能力者?
どうしてそんなに堂々としてるの?
他人とは違う自分に、絶望していない?

「あなたも、私と同じ能力を持ってるんですか?」
「違うよ。コッチは〝透視〟能力」

女の子は、笑顔で自分に眼を指差した

透視って事は、物が透けて見えるのかな

「私と全然違うんですね……私の能力は
「物を動かすチカラ、念動力だろ?」

え?

「どう? 当たってる?」
「はい……でも、どうして?」
「土だよ」

女の子は腕組みをして、探偵が推理を披露する様に歩き始めた

「アンタが店に入った時、入り口は綺麗だった。ハルが掃除してたからね。
もちろん、後からハルが入った時も綺麗だったのも覚えてる」

立ち止まった女の子は、私を見る

「アンタ、道重さゆみが好きなんだろ?」
「え、はい……。それもわかってたんですか」
「見る目が違ったもん。なんつーか、メロメロな感じ?」

なんか、恥ずかしくなってきた……

「それで、道重さんとなんの関係が?」
「道重の足元にあった土。あれは道重に意識が向いてたアンタが、無意識に能力を使って土を動かしていたんだ」

凄い……

「アンタ、まだ能力を上手く使いこなせてないんだろ?」
「はい……去年いきなり発現して、誰にも相談できずに持て余していて……」
「最初はみんなそうだって。ハルもそうだったし」

私の肩に手を乗せ、笑顔で話す女の子

能力を持ってるからって、悲観する事もないのかも
この子は私より小さいのに、こんなにもしっかりしてる

「私も……自分の能力を受け入れられる日が来るのかな?」
「来るさ! ハルが手伝ってやるよ!」

腰に手を当てて胸を張る女の子

小さいけれど、頼もしい

「よし! じゃあ店に戻ろうぜ」
「……はい。ちゃんと謝らなきゃ」
「あ、能力の事は店のみんなには言わないからな。ハルとアンタだけの秘密な」

口の横に手を添えて小声で言った

周りに誰も居ないのに、ヒソヒソ話
可愛らしいな

「ありがとう」
「行こうぜ!」
「うん」

2人並んで土手道を歩く

誰かと並んで歩く日が来るなんて、思ってもみなかったな
嬉しい

「ところで、あなたのお名前って」
「工藤遥」
「やっぱり! 私もハルがつくんだ! 飯窪春菜。よろしくね」
「ハル被りかー。ねえ、いいくぼってどんな字?」
「ご飯のめしに窪みのくぼだよ」
「ふーん。じゃあ、これから〝メシ〟って呼ぶね」
「えぇっ!?」 


投稿日時:2016/09/13(火) 20:51:33.18



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