(137)323 「木々に佇み、風に吹かれる。少女の、名は」
葉をすっかり落とし、枝と幹だけになった木々の中で少女は立っていた。
腰を落としたその姿は、何かの構えのように見える。
凛々しい眉、意志の強さを感じさせる鼻、一文字に結ばれた口。
瞳は、何かを待っているかのように固く閉じられていた。
右手は、腰に据えた刀の鍔にそっと添えられていた。
そこに堅さや、力みは感じられない。
気を尖らせるのではなく、ひたすら透き通らせてゆく。
まるで、無色透明の薄い刃を自らの中に作ってゆくかのように。
ただひたすら、研磨する。
遠くから鳥の啼き声が、聞こえる。
木々を縫うように吹く風が、地面の枯葉を撫でる音がする。
風の流れは少しずつ、旋回し、円を描き。
そして、枯葉を宙に巻き上げた。
その瞬間を待っていたかのように。
少女の両目が、かっと見開かれる。
空を一閃。
斬った。少女は確かに斬った。何を。
少女が斬ったのは、舞い上げられた枯葉。
断ち切られていた。綺麗に、真っ二つに。ただ、それだけではなかった。
斬られた枯葉の延長上。
そこに位置していた別の枯葉もまた、斬られていた。
その先の枯葉も、そのまた先の枯葉も。
一振りの斬撃で、そんなことが可能なのか。
刀が生み出した風の刃が、枯葉を斬り伏せたのだ。
大きくため息をつき、少女は納刀する。
しかしその表情は、いまいち優れない。
「…まだまだ、か」
どうやら少女の得た成果は、自らが想定していたものには届いていなかったようだ。
少女の研鑽は、続く。木々の間を通り抜けてゆく風のように。ずっと。
加賀楓が保有する風を操る能力
通常、風使いの能力者は空気の流れを操作することで風を巻き起こす。しかし、加賀の場合は自らの刀によって
風を呼び起こして操る。現在は、3から4条の風の刃を作り出すことが可能
生み出された風は刀の分身になったかのような切れ味で軌道上にある物体に襲い掛かる。その様は分裂する斬撃
であり、また飛ぶ斬撃でもある。受け止めようものなら初撃には耐えることができても、連続してやって来る二
撃目、三撃目に耐え切ることは困難である
ただし現在の加賀の力量では、刀の軌跡と平行の軌跡を描くことしかできない。
暁の戦隊さん風に書いてはみたものの当たり前のようにうまく行かずw
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