(123)199 『Chelsy 』4
- 仕事、というのか、はたまた訓練、とでもいえばいいのか、汗を流した私は社会に溶け込む
体に染みついた硝煙の臭いをシャワーで流し、さわやかな香水で世間に溶け込む
機関の外では私はチェルシーではなくなる。
平凡よりやや上の高校に通い、部活にはいけないけどバイトと勉強に勤しみ、
- 平均的な恋にあこがれる高校生野中美希となる
家にかえれば宿題が待っている。テストも近いので勉強しなくてはならない
同級生に合わせるために流行りのお店を知らないといけないし、思っている以上に高校生は忙しい
出来すぎてもいけないし、かといって地味でもいけない、普通より少しだけ目立つくらいがちょうどいいのだ
晩御飯を用意しなくてはいけないと思いながら、歩いていると後ろから声をかけられた
「ミキちゃん!!」
見知った声だった。気を張る必要はない。ポケットの中のスイッチから手を離す
「やっぱり美希ちゃんだ!バイト終わったの?」
声の主は高校のクラスメイトだった。確か、名前は・・・・古風な名前だったけど、なんだっけ?
「うん、終わり。疲れちゃったよ。どうしたの?」
そんな名前を覚えていないことを悟られないように会話の主導権を握る
「ねえ、美希ちゃん、千佳を知らない?」
「チカ?」
・・・はて誰だっけ?
「うん、ほら、茶道部の千佳ちゃん。美希ちゃんの二つ後ろの席」
ああ、思い出した。小柄でなんとなく独特そうな雰囲気のクラスメイトだ。
「見てないよ。どうしたの?」
「実はね、昨日から千佳と連絡が取れないの」
そういえば今日学校休んでいたっけ
「みんなに『千佳を見なかった?』って訊いているんだど、みんな『千佳なんて知らないわ』って答えるの」
「そうなの、心配ね」
でも、その日から彼女は姿を消した。
テレビでニュースが流れる。
『現在も高校生、標 千佳さんの行方はわかっておりません』 (Chelsy
- 更新日時: 2016/06/15(水) 01:17:32.36