(134)550 『THE FUTURE』
センターを務めるのは清純そうな歌姫
そういう性癖のある金持ちに矯正されたのではないかというほどウエストのくびれた女と
最初は好奇の目で見ていた現地の人間も、
幼さの残る彼女たちをある者は微笑ましく、ある者は危険な熱を帯びた視線で見つめている
♪壊して 壊して 自分で壊して
♪破って 破って そいつを破って
米国内でも比較的日本人の多い地域ではあるが、それでも観客は現地人が多い
白人、黒人、ヒスパニック、イスラム、アジア系
様々な言語を話す彼らが、日本語の歌に魅せられるのはパフォーマーの功績が大きいが、それでも彼らを惹きつける最大の理由はボーカルの歌声だった
♪戦いもしない 悔しさ知らない
♪何の為にここに居るんだろう WOW
彼女の歌声が観衆に浸透していった
最初は様々な表情をしていた観衆たちがやがて一つの感情に支配されていく
それは、怒り
“あんな選挙は無効だ!”
“奴らは金で大統領の椅子を買った”
“我々こそが真のアメリカ人だ”
“カリフォルニア州は独立するぞ”
【quiet voice】静かなる歌声
特殊強行部隊セルシウスの一員、鈴木愛理の保有能力の一つ
歌声を対象の深層心理に浸透させることで、催眠状態に至らしめるその能力は【精神干渉】ほど精緻な掌握は出来ない
ただ感情を支配するのみ
しかし彼女の歌声を正確に再現できるメディアがあれば、その対象はまさに無限大
組織を離脱したアンジュルムの和田彩花が“支配者の瞳”を有するなら、鈴木愛理は“支配者の声”を持つ
しかし両者には決定的に異なる点がある
和田彩花が力と恐怖で臣民を支配する破壊の女王ならば、鈴木愛理は支配されていることさえ気付かせぬ君臨せざる女王
♪今更引き戻れないんだ 未来しかないんだ THE FUTURE
1曲限りの公演を終えた鈴木愛理は観衆に向って軽く一礼する
しかし怒りに支配され、デモ行進を始めた彼らは自分たちを煽動した女王に見向きもせず、ストリートを練り歩く
セルシウス本来の任務とはかけ離れた、人身煽動が此の度の彼女たちの任務だ
「いやーっお疲れっした」
大仰な仕草で愛理の肩を揉んでいるのは、セルシウスの白兵戦要員、岡井千聖
主として攪乱や護衛を務める萩原舞はミネラルウオーターのペットボトルを愛理に手渡している
「とりあえず西海岸はこれで終了よね。次は東海岸」
「私たちの本来の仕事では無い気がするけど」
「あー株とかドルとか売ったり買ったり出来たらひと財産出来たんだろうけどな」
「千聖は絶対破産すると思う」
「それは舞だって」
いつもと変わりないやり取りをする二バカを見ながら愛理は思う
いつか私の心からの歌を聞いてもらえるような、そんな未来は来るのかな
投稿日時:2016/11/13(日) 12:28:09.76
作者コメント
ドナルド・トランプ 米大統領選挙当選記念第二段(嘘
二人ほど足りないのは別行動を取って、ボスの秘密を探ってる途中でバトルに突入ってことではなく登場させるだけの表現力を作者が有していないからです
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