(125)104 『ズッキの決意(仮)タイトル募集中。。。~名(迷?)探偵は誰だ!?~』6





「あーもう!!!こんままじゃらちがあかんと!!」
生田が沈黙に耐え切れず頭をかきむしる。
その生田に「しー!!」っと注意する2人。

「香音ちゃんに聞こえたらどうするの。静かにして」
譜久村が冷静にたしなめた。
生田は唇を突き出し不満を表現する。

「でもこんままじゃどうにもならんとよ。
田中さんや道重さんに直接聞いてもいけんし、
ましてや高橋さんたちも入れたらもっと難しくなるやん。
先輩に聞いてもダメ、能力使ってもダメ、じゃあどうするん?」
生田は譜久村に訴える。

「―――能力?」
鞘師が聞き直す。
「能力使ったらいけんって最初に言ってたやん」
生田は変わらず仏頂面のままだ。


「間接的にも能力は使ったらいけんのじゃろうか」
鞘師がぽつりと言う。
「間接的って?」
「たとえばリゾナントでふくちゃんと香音ちゃんが話したときの席を読み取るとか・・・」
生田の問いに鞘師は自信なさげに答える。

生田と鞘師の視線が譜久村に注がれる。

「いや、聖出来るかどうかわかんないよ。話のも少し前だからもう消えちゃってるかもしれないし」
譜久村は2人の期待のこもったまなざしに臆し、早口で答える。
「でも、やってみるのはいいかも・・・」

言うが早いか3人は何も合図もなく立ち上がりリゾナントへ向かった。



―――現在時刻0:42―――



※ 

やはりというか当たり前というかリゾナントは明かりも落とされカギが閉まっていた。

鞘師が前に出て道端に溜まっていた水を手元へと呼び寄せる。
そのままドアノブへ近づけ鍵穴へ水を挿入させる。
水は中でシリンダーいっぱいに膨張し硬度を保った。
鞘師が腕をひねるとかちゃりと開錠された。

田中も道重も眠っているだろう。
3人はなるべく音を立てないように中へ入った。

『どこで話したと?』
共鳴を使って生田が譜久村へ話しかける。
『そのコーヒーマシンのとこの席に香音ちゃんはいたよ』
譜久村が言ったその場所へ鞘師は近づこうとする―――。
だが椅子につまづき転んでしまった。

生田がとっさに鞘師の体を下に潜り込むようにして支えた。
『せっかく共鳴使っているのに音だしたら意味ないやろ!!』
『ごめんごめん。椅子が見えなくて』
二人が言い合っているうちに譜久村は鈴木がいた場所へ到達していた。
そして残留思念を読み取ろうとする。


かちっ

そんな音がしたかと思えば急にリゾナントの中が明るくなった。
その眩しさに3人は目をしばたたかせる。




「なんしようと?」
話す言葉は生田のそれと全く同じなのにすごみは何十倍も違う。
田中れいなが寝ぼけ眼でやってきていた。

3人は田中の迫力に気おされ何も言えずにいた。

「なんしようとってきいとろうっちゃん!」
苛立った田中の一喝に3人は体がすくむ。


3人は目で合図をすると、

「「「すみませんでした!!!」」」

同時に頭を下げる。


『えりぽん言ったらいけんよ』
『えりぽん言っちゃだめだよ』

譜久村と鞘師が生田に釘を刺す。

『なんでえりにばっかり言いようと?』
当然生田は面白くなく反論する。
だが―――

「あぁ!!もううるさいっちゃんね。
なんねまどろっこしい。ちゃんとしゃべらんと?」
田中が生田を睨みつけながら言う。
その声も顔も目も怒りに満ちている。


3人は忘れていた。
共鳴を使うのは3人だけではないということを―――。





「それで?」
田中よりもさらに不機嫌そうな道重に続きを促される。

「やけんれいなが来ても何も答えんからちょっとヤキ・・じゃなくて注意しようと思ったら・・・」
「なんで注意が店をぐちゃぐちゃにすることになるの?」
しどろもどろになっている田中に追及の手を緩めない道重。

「・・・田中さんが歩いて来たときに聖がちょっと後ろにさがったんです。
そしたら里保ちゃんがそこにいて」
「それでふくちゃんとうちがぶつかってしまって、
うちはころんでその時にえりぽんの頭を蹴ってしまって・・・」
「蹴られた反動でえりは前に倒れたんです。
そしたら田中さんに頭突きをしてしまって・・・ごめんなさい」

「それでれいながキレて暴れたの?」
3人の説明を合わせ田中に向き直り問いかける道重。
その顔には怒りと同時に呆れも浮かんでいた。

田中は殊勝な顔をしてうなずく。
暴れて店をぐちゃぐちゃにしてしまったことについては悪いと思っているのだ。

「はぁーー。
もう遅いから今日はもう寝ましょう。
片付けとかは起きてからすればいいわ、れいなが」
大きなため息をついて道重は言った。
「なんでれいなが」と言いかけた田中の言葉は道重の一睨みでかき消された。

「じゃあ、解散。
マンションに戻るのが面倒臭かったらここに泊まってもいいけど、どうする?」
道重は鞘師に聞いた。

「いえ、大丈夫です。すみませんでした。おやすみなさい」
鞘師は早口で言うとリゾナントを後にした。
残りの二人も口々に謝りながらリゾナントを出て行った。


―――現在時刻2:39―――




 投稿日時:2016/07/10(日) 02:38:20.89






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