(125)128 『ズッキの決意(仮)タイトル募集中。。。~名(迷?)探偵は誰だ!?~』7




そそくさと自分たちのマンションに戻った3人―――。

「どうだった?」
「・・うん。やっぱりよくわかんなかった」
鞘師の問いに譜久村は浮かない顔で答える。
「まっ、しょうがないっちゃね。ダメ元やったし。あとはまた明日考えようや。寝よ寝よ」
生田は言うが早いか部屋へと行ってしまった。






「ねぇ、里保ちゃん。香音ちゃんは聖と話したときも悩んでいたのかもしれない・・・。
元気になったように見えただけでずっと悩んでいたのかもしれない」
譜久村の様子が少しおかしいことに鞘師は気付き、
動かない譜久村と同様にそのまま立っていた。
少し考え込んでから譜久村は意を決したように鞘師に話す。

「よくわかんなかったんだけど・・・香音ちゃんの残留思念は読み取れたの。
でも真っ暗だったの・・・。
悩みを解決した人が真っ暗なままなのかな?
真っ暗というか闇というか・・・。
日にちがたってたからそれしかわからなかったけど・・・」
譜久村はなおも思案顔だ。

「闇だった香音ちゃんの心かぁ」
鞘師は誰に言うでもなく呟いた。

「そうかもしれんね。
先輩に相談したっていうのも聖ちゃんに心配かけたくなくて言ったんかもしれんね。
先輩に相談させるっていうのは諦めたほうがいいかもしれん。
他のアプローチから香音ちゃんが元気になることを考えよう」
鞘師は優しく言った。
「そうだね、明日また考えようね。おやすみ」
譜久村は納得したように頷いて生田の後を追って部屋へと入っていった。
鞘師もなるべく音を立てずに部屋へと入り、そのまま眠った。




翌朝、3人は寝坊した。

「あれー?ズッキーニさんお一人ですかー?」
佐藤が朝からハイテンションで絡んでくる。
「うん。何回起こしても起きないから置いてきた」
そう答える鈴木には朝から疲労がにじんでいた。

「もう遅刻すればいいんだろうね」
「キャハハハ。ずっきーにさん、こわーい」
ため息つきつつ言う鈴木に佐藤は大声を出して走り出すのであった。



※ 


昼近くになってようやく3人は起きだしてきた。
学校に行くことはすでに諦めたようだ。


「どうする?」
口火を切ったのは生田だ。
生田に譜久村は昨日の鞘師とのやり取りを聞かせる。

「ふーん。ってことは先輩に相談して悩みを解決するってことは出来そうにないっちゃんね。
じゃあうちらが香音ちゃんから話聞く?」
猪突猛進型の生田は直接的な解決策を提示した。
「それは難しいじゃろうね。
話せてるんなら今までの間に多少なりともそういった素振りを見せたじゃろうし、
それをせんかったってことは出来ないとかしたくないからだと思うんじゃ」
「うん。聖もうそう思う・・。
共鳴を切ること自体少し異常だよ。
でも香音ちゃんはそうしたんだから聖たちが何を聞いても答えてはくれないと思うよ」
鞘師の返答に同意して譜久村も付け足す。


3人に暗雲がまたもや立ち込めた時
「・・・おなか空かん?」
生田が声をかける。
それに同意する2人。
解決の糸口が見えない3人は空腹を覚え、リゾナントに行くことにした。


※ 

「いっらっしゃ・・・ってあんた達、学校行かんかったと?」
店番をしていた田中が3人の姿を見て問いかける。
店の中は深夜のことが嘘のように綺麗になっていた。


「「「すみませんでした」」」
まさか田中がいるとは思わなかった3人はすぐに腰を90度に折り謝る。
「はぁ。もういいちゃっん。店も結局さゆと二人で片付けたし。
やけんどうしたと?学校は?」
「それが・・・寝坊しまして・・」
鞘師が田中の問いに恐る恐る答える。
「ふーん、そうったい。鈴木は?行った?
あんたら腹減っとるやろ。ちょっと待ってり」
そう言って田中はカウンターの中に入り作業を始める。
田中が意外とあっさり許してくれたことに驚きつつ、3人はカウンター席に並んで座った。


「さゆは買い物行ったよ」
鞘師がきょろきょろとあたりを見回していると田中が教えてくれた。
道重を探していると思ったのだろう。
田中が手際よく料理をしている姿が目に入る。

「人間腹減ってる時と眠い時は凶暴になるけんね。
ジュンジュンもしょっちゅう暴れてたし。
ご飯いっぱい食べたらきっといいことがあるけん、食べり」
田中はそう言って3人分のオムライスとスープ、ミニサラダまで出してきた。
優しすぎる・・・3人は恐怖を感じた。
しかし作ってくれたものを食べないのは失礼なので、
「いただきます」と口々に言い、手を付ける。

「おいしい」
スープを飲んだ鞘師がほっとしたように呟いた。
それを聞いた田中は嬉しそうに笑い、
「いい味してるやろ?これさゆに言って店で出そうと思ってるんよね。
作るのも簡単やけん、さゆでも出来るったい」
満足そうに説明した。

※ 

「さて。
れーなはちょっとお出かけしてくるから食べたものは洗って片付けて。
さゆが戻るまで留守番よろしく。
さゆには遅くならずに帰るって言っといて」
エプロンを脱ぎながら田中は言うが早いか鞄を持ち帽子をかぶり店を出て行った。

3人の緊張の糸が切れた。
「なんか田中さん優しすぎじゃなかったと?」
「そうだよね、少し怖かったよね」
「留守番してほしかったからちょうど良かったと思ったんじゃろうか」
そんなことを言いながらオムライスを食べる3人。


完食した3人はじゃんけんをして勝った生田が席でそのまま休憩、
譜久村と鞘師が片付けることになった。
「本当においしかったね。
さっき田中さんも言ってたけど、人っておなか空いてるとろくなことなんないよね。
イライラするし集中力もなくなるし」
譜久村が洗い物をしながら言った。
「そやねぇ。香音ちゃんもご飯食べてるときは本当幸せそうだもんね」
譜久村が洗ったものを綺麗な布巾で拭いてる鞘師が答え―――止まる。

「里保ちゃん?」
「里保?」
2人が怪訝な顔をして鞘師をのぞき込む。

「ご飯じゃ!!ご飯ご飯」
鞘師は興奮して譜久村の肩をつかみ揺さぶりながらまくしたてる。
「ご飯がどうしたと?」
譜久村も生田も鞘師の言うことが理解できず戸惑った。

「香音ちゃんにご飯あげれば喜ぶと思うんじゃ。
悩みを解決出来なくても幸せな時間が増えればきっと大丈夫になるじゃろ。
だからご飯じゃ」
鞘師は興奮で早口になり声はうわずってしまった。
それでも譜久村と生田に鞘師の意図は伝わった。

「そっか・・。なるほど・・。
そうだね。そうだよ!」
鞘師の言ったことを理解し考えた譜久村も同調する。
「そやね。田中さんが言ったみたいにご飯食べたらきっといいことあるけんね」
生田はそう言って微笑んだ。



投稿日時: 2016/07/11(月) 17:42:46.65






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