(128)141 『Chelsy』21

「(み、見えないぞ。これではお互いと連携が取れないではないか)」
「(大佐、私の傍から離れないでください)」
しかし、周囲から金属と金属がぶつかり合う高い音と明らかに重量のある何かが倒れる低い音が次々続々と聞こえてくる
それだけではない、時折響き渡るような爆発音も混じっているようだ
「(大佐、あれは爆弾でありますか?)」
「(可能性はありえるだろう。背を合わせ合いお互いの死角を補いながら周囲を把握せよ)」

男たちは拳銃を構え、右に左と銃口を向け背中を合わせあう。
視覚を失った今、敵の位置を探すために重要となるのは聴覚となった。呼吸の音すら聞こえる沈黙が包み込み始めた
カサッと音がした。男は拳銃を放つが、その先にいたのは味方の兵士であり、声をあげ倒れた
「(下手に動くと同士討ちとなる。敵をしっかりと補足してから銃は使え)」
そして、部下に身を低くするように指示を出した
身を低くすることで砂嵐の影響を小さくし、視界を確保でき、また敵からの攻撃を受けにくくすることができる

「(敵は人間だ。ロボットなどではない。足を狙え。我々と違う靴を履いているものがいたら躊躇なく撃て)」
通信機に向かい、指示を出そうとしたのだが、どうも通信機の調子が悪い
ノイズが多く、全然機能しないのだ。そればかりではない、なぜだか通信機が軽いのだ
「(どういうことだ?なぜ動かない?これでは指示が通らないではないか)」
そうこうしているうちにも人が倒れる音と時折、混じる赤い色彩が増していく
それは刃物で切り付けられた際に噴き出た血の色ということを感覚的に理解し、恐怖は増していく
直感的に少しずつではあるが着実に仲間が減っていくのを彼は感じていた

カサッと音がしたため、彼の斜め前にいた仲間が迎撃の姿勢を構えた
そこに飛び込んできたのは光り輝くナイフ。男は弾き飛ばさんと大きく青竜刀を振りかざした
しかし、飛び込んできたナイフは男のナイフの軌跡を読んでいたかのように動き、男の胸に突き刺さった
そして、男の握っていた青竜刀は宙に投げ出され・・・そのまま別の仲間の腹へ吸い込まれるように突き刺さった
「(な、なんだと!?)」
気が付けば部下はすべて倒されていた。しかし、驚くのはそれで済まなかった
刺された男から飛び出た血が宙に浮かんでいるのだ
「(宙に血が浮くなんて・・・待て、壊れた通信機、奇妙なナイフの軌跡、宙に浮く血、これらを説明できる方法は・・・上か!)」
「Oh! さすがに気付かれましたね。It's mistakeですね」   (Chelsy 


投稿日時:2016/08/20(土) 18:33:08.47





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